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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

封印という名の包帯下の真実

ただでさえ湿度のせいでジメジメしているにも関わらす、その場の雰囲気で余計にジメジメとしているセイグリッド城の応接室。
そこには、いかにも機嫌が悪そうに煙草のようなものを吹かすゴルダにアルガントとルナリアとラトレナス。
そして、なぜかアルカトラスにシアまでが居た。

「何があろうが、絶対に俺はお断りだ」

「あらなんで?」

吸い終えた煙草のようなものを手で握りつぶして火を消しながらそう言ったゴルダに、シアはなぜかと聞く。
一方アルカトラスは、シアの横で無表情に黙ったまま緑茶をすすっている。

「知っての通り、俺が竜滅病だってことは把握しているだろうが。妻帯してこいつらに面倒をかけるつもりはない」

今さっき、ゴルダの口から妻帯という言葉が出てきたように、今ゴルダがここに居るのは、シアとアルカトラスにルナリアとラトレナスと結婚しろと言い寄られているからだ。
しかし、実際に言いよっているのはシアだけで、アルカトラスは何かあった時の仲裁役として居るだけだ。

「それとこれとは別問題でしょ、何か他に理由でもあるようだけど?」

シアに食い下がられるも、ゴルダは他に理由などあるはずがないと断言。
ルナリアはゴルダが何か隠していると確信しているようで、顔をつまんだりして

「おにーたん、隠し事はダメだよ?」

と包み隠さず言えと言うがゴルダはそれでも譲らずに答えない。
一方、ラトレナスはゴルダの頭に乗ってやたらと揉んでいた。

「我は仕事に戻るぞ」

仲裁役は必要ないと思ったのか、アルカトラスはそう言って仕事へ戻った。
シアはちょっと待ってよと言ったが、アルカトラスは耳を貸さずに書斎へ行ってしまう。
ゴルダも早いところ家へ帰りたいところだったが、アルガントがシアから離れないので簡単には帰れそうにない。

「まあ、いいわ」

痺れを切らしたようなシアの一言に、ゴルダは何しようが無駄だという顔をする。
なお、ルナリアとラトレナスは、未だゴルダにくっ付いて離れない。

「おにーたん?」

ここでまたもやルナリアに顔をつままれ、ゴルダはん?とシアから目を離してルナリアを見る。
しかし、ルナリアの目を見ていると何かの感情が湧き上がり、気付けば持っていたメスを取り出して振り下ろそうとしていた。

「…またか」

すぐに我に返ったゴルダはメスをしまい、冷え切った緑茶を飲み干す。

「何かあるわねえ」

その一部始終を見ていたシアにそう言われ、ゴルダはこれが理由だと言わんばかりに応接室を出て行った。

「あ、おにーたん待って」

ラトレナスを頭に乗せたままのゴルダを、ルナリアも後を追って応接室を出た。
一方のシアは、塔の方へ戻って原因を調べることにしたようで同じく応接室を去った。

「おにーたん、どーいう事なの?」

城の庭園のハーブが植えられている花壇の前で、瞑想しているかのように突っ立っているゴルダにルナリアは話しかける。
ゴルダは1分ほど無視した後に、こう言う。

「種族問わず、俺は女子を見るとときたま無意識下で殺意が湧くというわけの分からん能力を持っている。しかもこの能力の発動条件や定義すらも分からん。だからお前をメスで刺そうとしたのもその能力のせいだ」

それを黙って聞いていたラトレナスは、ゴルダの頭から降りてルナリアの方へへ行くと

「おねーたん、これって…」

「ラトレナスの言う通りかもね」

まるでその能力について、何か知っているかのような会話を交わした。

一方のシアも、この能力について調べ終えた所だった。

「無意識下で異性に殺意を持たせる能力、発動条件や定義も不明。確実に聖子(ひじりのこ)の仕業でしょう。ゴルダの記憶に掛かっているプロテクトも同じく聖子の仕業です」

自らの意思で動く魔法書にそう言われ、シアは少なからずショックを隠しきれない様子。
聖子とは、シアやアルカトラスの神の力を何らかの原因で強めに遺伝し、ある能力を覚醒した者達のことを指す。
なお、それにより覚醒する能力は十人十色でシアですらもそこまで把握はしていない。
しかし、聖子が生まれればそれはそれで分かるので個々レベルで特定は可能だ。

「ゴルダにそうしたと思わしき聖子を割り出して」

シアは魔法書にそう言う。
すると魔法書は、数人をリストアップした後に

「ゴルダに対してこのようなことをした聖子は、全員十年以上前に他界しています。シア様が記録した死亡記録を出しますか?」

全員もう亡くなっていると言い放った。
シアは、頭を抱えつつも魔法書に

「私が気付かないなんて…とりあえず出して」

と死亡記録を出すように言う。

一方、ゴルダとルナリアとラトレナスはというと

「おにーたん大丈夫?」

「だいぶ落ち着いた」

ゴルダが落ち着くまで側でずっと待っていた。
そのおかげで、ゴルダはいつもの冷静さを取り戻し、ルナリアとラトレナスに自分の記憶には歯抜けした部分があり、その部分で何があったかは分からんが今のような状態になっていると話す。

「私とラトレナスとシアで協力すればその部分の記憶を安全に取り戻せるかもだけど、おにーたんはどう?」

プロテクトが掛かった記憶が取り戻せる。
ここでゴルダは、頭の中であることを考えた。
それは、記憶を取り戻すことで真実を知って曖昧な所がない生活を送れるが、知った真実の代償を背負わなければならないということ。

「難しい問題だ、真実を知るというのは多大な代償を払う必要があるという点でな」

「真実と代償を両天秤にかけてもいいことないと思うよ?」

ゴルダの一言に、ラトレナスはそんなものを両天秤にかけてもいいことはないという。
それにはルナリアも頷いて同意。

「今の段階では、俺には真実を知るべきか否かの判断はつけ難い。お前達と結婚するかすらも」

その最後のゴルダの一言には、ルナリアもラトレナスも何も返さなかった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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