FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

大狼神の暇つぶし

秋の深まるドランザニア、裏の大陸も秋を迎えている。
そんな裏の大陸の一国に犬神国ムサヅキという国がある。
日本と同じ文化や風習を持ち、犬と狐と狼を神、あるいはその使いとして崇拝している国だ。
そんな国の、紅葉で染まったある山に1匹の大狼神の肩書きを持つ狼が住んでいる。
白と銀の毛に紫の目、微妙に長い2つの尻尾。名はこの国の名を取ってムサヅキと言う。
本名はあるらしいが、自身すらその名を忘れてしまったという。

「むぅ…」

「こんなに紅葉が綺麗なのに、人間どもはつくづく勿体ない事するぜ」

「我の性格がすべて悪いのだ…」

紅葉が一望できる場所から、ムサヅキは数少ない友人の八咫烏と紅葉を楽しんでいた。
この風景は、毎年恒例でその度にムサヅキはしょんぼりしている。
それもそのはず、ムサヅキの性格は人里に暮らす人間だけではなく。九十九神達からも読みにくく何を考えているか分からないので怖いと言われている。
ムサヅキ自身はそんなつもりはないらしいが、口々に言われるのでムサヅキは認めざるを得なかった。
しかし、そんな性格を唯一理解しているのがこの八咫烏である。
こちらも似た者同士で、あまりにも悪知恵を働かせるので煙たがられていた。

「少し、別の国にでも行ってみたらどうだ?何か変わるかもしれないぞ」

八咫烏に言われ、ムサヅキは少し考え込む。
大狼神ももはや肩書き、仕事と言えばこの国の行く末を静観し、見守るだけ。
気晴らしにはいいかもしれないなとムサヅキは思い

「ではちょっと行ってくる」

といきなりその場に妖力で時空に裂け目を作り出し、どこかへ行ってしまった。
それをやれやれと言う顔で八咫烏は見送り、帰る事にした。

「っと…随分と田舎だな、ここは確か…ドランザニアか」

ムサヅキがやって来たのは、ドランザニア民主共和国中部。
丁度ゴルダが住んでいる付近だ。

「確かアルカトラスの孫がこの辺に住んでたはずだが…」

少し前に来ていたアルカトラスからそんな話を聞いていたムサヅキは、その場所を探しだす。
ちなみに、妖術で姿は見えないようにしているので騒がれる心配は無い。
その頃、ゴルダはというと

「たまの休日も悪くないな」

家のバルコニーで煙草のようなものを吹かしながらくつろいでいる。
セレノアは出かけてて居ないので、家に居るのはゴルダだけだ。

「さて、今のうちにアレを…」

とゴルダは家の中へ入った。
その様子を見ていたムサヅキは、ほとんど収穫が終わってがら空きの畑の中へ飛び込む。
多少自分の足跡を付けてしまったが、ムサヅキは気にしない。
そして、そのまま待機する。

「あいつが居るとまともにこれも書けやしねぇぜ」

と言って、ゴルダが持って来たのはノートパソコン。
何をしているのかは分からないが。
数十分ほどいじっていると、急にゴルダは畑の方を見る。

「ん?異様にでかい足跡が…」

畑にあった足跡に気付いたゴルダはハンドガンではなく山刀を取り出してその足跡の方へ近付く。
この時、まだムサヅキは妖術を解除していない。

「結構でかい狼だなこりゃ、しかしこんなサイズがここら辺に住んでただろうか」

とゴルダは首をかしげながら足跡を調べる。
収穫は全て終わっており、耕してもいないので足跡などどうでもいいと言う考えなのでその面では気にしない。
しかし、よく足跡を見ようと近付いたところ。何かふさふさした物体に阻まれて近付けない。

「おかしいな、何か居るのか?」

ゴルダは山刀の背でその物体を叩いてみるが、反応は無い。
どうなってんだと思いつつ、今度はもふもふと触ってみる。
すると、その物体は若干の反応を見せた。

「おい、正体表せ」

「言われなくとも」

謎の物体は、ゴルダの前にその正体を現す。

「ほう、お前がアルカトラスの孫…」

ムサヅキはゴルダをまじまじと見る、武器こそは持ってるがあまり警戒はしてないようだ。

「でかいな、お前」

「8メートルほどある」

「なるほど、そりゃでかい訳だ」

普通の者ならば、警戒したり逃げ出すはずなのに。全く動じない。
アルカトラスから聞いていた、図太い性格は間違いではなかった。

「話は聞いていたが、おかしな奴だお前は。あまりにも動じなさすぎる」

ムサヅキが言うとゴルダはそれが俺だと言い返す。

「やめろ」

正面に回ってきたゴルダの顔を、ムサヅキは舐め上げたがやめろと手で押しのけられる。

「んで、何の用だ?爺さんからは色々聞いてたが…読みにくい性格らしいな。せいぜい問題起こさんでくれよ」

顔を拭きながらゴルダはムサヅキに言う。
ムサヅキはそれを聞いて冗談半分に

「そうだな、ここに紅葉の落ち葉を山積みにしてやろうか?」

と言う。
するとゴルダはどこからかサツマイモを引っ張り出して来て

「いいだろう、やろうじゃないか」

焼芋をやる気緩慢の様子で言う。
ムサヅキはどうなっても知らんぞという顔をし、妖術でどこからか大量の落ち場を集めた。
その量は、2人が見上げられるほどの量だ。

「集め過ぎたな」

「いや、十分だ」

そんな話を交わし、ゴルダは火起こしの準備をする。
ムサヅキはその間尻尾を揺らしてその様子を見ていた。
その間に、どこからともなく近所の者や近くの山に住んでいる竜などが集まって来た。

「なんか増えてないか?まあいいや、俺とお前じゃ食いきれないほどあるしな」

と言って、ゴルダは火が付いた着火剤を落ち葉の山の中へ放り込む。
それと同時に、落ち葉が勢いよく燃えだす。

「よし、焼いてくぞ」

そう言って、ゴルダは火の中へ芋を放り込む。
何故こんなに集まって来たのかというと、実はムサヅキが妖術でおびき出したせいだが。ゴルダは全く気付いてない。
畑の真ん中で落ち葉が煙をもうもうと上げて、芋を焼く。
かなり火に近い位置に居るのも関わらず、ゴルダは平然とした顔で火傷もせずに芋を焼いている。

「どうだ、どれくらいで焼ける?」

ムサヅキは早く焼芋が食べたいのでゴルダに聞く

「時間掛かるぞ、時々串を通して火加減を見ないといけないからな」

ゴルダは時間がかかるとだけ返事を返し、芋の焼き加減を1つづ丁寧に調べて行く。
集まって来た者たちは、暇疎にしていたりムサヅキを触ったりして遊んでいる。
ムサヅキはそれを気にせず、させたいようにさせる。
さすがに体に上って来てもふったりするのには渋い顔をしたが。

「なあなあ、これもやろうぜ」

獣人がムサヅキにどこからか持って来た魚の干物を差し出して言う。
これまたうまそうだと思ったムサヅキは獣人に

「1匹よこすのだ」

と言う。

「まあ、いいですけど…」

獣人はムサヅキに干物をすんなりと差し出す。
ムサヅキは干物を差し出されると、そのまま一口で食べてしまう。
悪くない味だったので、ムサヅキはゴルダに

「悪くないな、ゴルダ。この干物もやってくれんか?」

と先ほどの干物を差し出すが、ゴルダは

「勝手にやってくれ、芋を焼く邪魔にならない程度にな。他の奴らにも言え」

とムサヅキに言う。
ムサヅキがそれを他の者達に言うと、集めて来た落ち葉や薪を勝手に使って個々であれこれ焼きだす。
それを見てムサヅキは

「まあよいか」

の一言で片づけた。
そしてゴルダが芋を焼き始めて40分ほど経過した頃

「おい、最初のが焼けたぞ」

ゴルダが最初に焼けた芋を火の中から出すと、餌に群がるピラニアのように一斉に集まって来て。一瞬で無くなる。
早すぎるだろと心の中でツッコミを入れながら、ゴルダはさらに芋を追加する。

「しかし、この家の敷地は広いな」

「まあな、畑がほとんどだ」

他愛もない話をしていると、セレノアが帰って来た。

「あら、たいそうな客の数ですこと。で?あんたはなにやってんの?」

あちこちで焚火をしている者たちを見てセレノアはゴルダに言う。
ゴルダはまだ3分の2は残っているサツマイモの箱を指して

「焼芋だ」

とセレノアにぶっきらぼうに言う。
セレノアはそのサツマイモを見て

「ねえねえ、これ全部焼芋にしちゃダメよ。来年植える種芋もこれから使うんだから」

と言う。
ゴルダは分かったと背を向けたまま返事をした。

「で、あなた様の名は?私はセレノア、それにしても随分立派な毛ね。手入れしてる?」

やれやれと言う顔をしながらセレノアはムサヅキに名を聞く。
ムサヅキは毛の事を聞かれて

「いや、手入れは全くしとらん。我はムサヅキ、見知り置きを」

自らも名を名乗る。
そして、そんなこんなで芋を3分の1残して謎の集会は終わった。
ゴルダが燃えカスの始末をしている間、セレノアはずっとムサヅキの毛の手入れをしていた。

「本当に手入れしてないの?してない割には綺麗すぎるんだけど」

「生まれてこの方、1度もやったことはない」

「そうなの、しっかし不思議ねぇ…」

1度も手入れをしていないのに、毎日手入れをしているかのように綺麗なムサヅキの毛にセレノアは首をかしげる。
何か術でも使っているのではとこっそり調べるもそんなことは無かった。

「不思議でたまらないわ…」

「我にも分からんよ、蚤はひっ付くがな」

蚤と聞いて、セレノアは蚤殺しの薬を取り出してムサヅキの全身に振り撒きだす。
すると、ポロポロと大量の蚤の死骸が落ちて来た。
ちなみにこの蚤殺しの薬、サフィが調合した即効性のものである。

「これでしばらくは付かないわ」

「ふむ、便利だな」

「でしょ?」

そうしている間に、ゴルダは燃えカスの片付けが終わったようだ。
しかし、ここでムサヅキは

「おっと、そろそろ帰らねば」

「もう帰るのか、また来いよ」

「無論、ではな」

ムサヅキはその場にスキマを開けて帰ってしまった。
この日はこれで終わったのだが、その翌日。

「っと…冬が来る前に畑を耕さねば」

昨日休んでいた分、ゴルダは畑を耕していた。
燃えカスを畑の土に混ぜ込み、休作の準備を進める。
しかしそこへ

「また来たぞ」

とムサヅキが時空の裂け目から現れた、それもゴルダの真上に

「ん?どこ行った?」

「お前の足元だ…」

ムサヅキがふと足元を見ると、ゴルダの頭が畑の土に完全に埋まっていた。
これは失礼とムサヅキが足をどかすと、ゴルダは土の中から頭を引き抜いて髪に付いた土を落とす。

「出てくる時は、位置と場所を確認しようか?」

「すまんすまん、詫びに畑を耕すのを手伝おう」

と言って、ムサヅキは前足で深々と土を掘り起こす。
その深さにゴルダはムサヅキに

「深すぎな上に掘り起こし過ぎだ、何かを埋葬するんじゃないんだからな…まあいいさ」

ここまで掘り起こしてしまった以上は、この深さを維持して耕そうと考えたゴルダは

「この深さで掘り返し続けてくれ、後は俺が戻す」

深さを維持したまま掘り起こすように言い、ムサヅキに後を任す。
それに調子に乗ったムサヅキは、次々と畑を深々と掘り起こして行く。

「やれやれだぜ」

その後からゴルダが後を追って土を戻して行った。
これ以降、ムサヅキは何かある度にゴルダの所へ来るようになったと言う。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |