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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

孤独は、他者不信の者のために 下

最初にエルフィサリドがやって来て数週間ほど経ったある日、エルフィサリドは再びシスイの元を訪れた。
今度は、僅かながら野菜などの食料を手にして。
だが、エルフィサリドから食べろと渡されたその食料をシスイは全く受取ろうとしなかった。
それもそのはず、他者との関わりどころか外界との関わりを長らく絶ち。一人で生きてきた者がいきなり名しか知らぬ者に食料を施されても受け取るはずがない。
まじまじと食料を見つめるだけで、全然受取ろうとしないシスイを、エルフィサリドはさっさと受け取れとでも言いたげな目付きで見つめる。
だが最終的にエルフィサリドの目付きに折れたシスイは仕方なくその食料を受け取った。

「なぜ私がここに住んでいることを知っていた?」

仕方なく食料を受け取りながら、シスイはエルフィサリドになぜ自分がここに住んでいることを知っているのかと理由を問いただす。

「それは教えられない、あえて言うならば直感だ」

エルフィサリドの答えに機嫌を悪くしたシスイは、さっさと帰れとエルフィサリドを追い出した。

「また来る」

「もう来るな、今度から来たら追い返してやるわ」

また来ると言ったエルフィサリドに、シスイは今度から来たら追い返してやると言い放つ。
それを聞いたエルフィサリドは、面白そうだと言う顔をして帰って行った。

それ以来、一週ごとにエルフィサリドはシスイの元を訪れるようになった。
その度にエルフィサリドは食料を持ってきては、シスイに追い返されるの繰り返しをしている。
毎回、シスイは仕方なくと言った感じでそれを受け取り。一応消費はしている模様。
いつしか、シスイは無意識のうちにエルフィサリドを追い返すのを楽しみの一つとするようになった。
これこそが、エルフィサリドの狙いだったとも知らずに。

時は流れ、一年が過ぎた。相変わらず定期的にやって来るエルフィサリドとそれを毎回追い返すシスイ。
いい加減鬱陶しく思ってきていたシスイは、そろそろ本気で追い返そうかと考える。
だが、未だエルフィサリドの実力がどの程度のものなのかが分からない。
下手に突っかかって返り討ちにされては、元も子もなし。
なぜシスイがエルフィサリドを鬱陶しく思ってきているのかと言うと。
それは、心のどこかでエルフィサリドなら表面的にでも信用してもいいだろうと言う気持ちがあったから。

「あの時の誓いをこのままだと捻じ曲げてしまう、だから金輪際二度と来るなと本気で追い返さないと」

誓いを曲げてしまう、シスイにとってそれは死に値する罪。
ならば、その誓いを曲げてしまいかねない原因を排除する他ない。
そうとなればと、シスイは準備を始めた。

「元気にしてた?」

それから一カ月ほど経ったある日、エルフィサリドはひょっこりやって来た。
もう来ないのかと思って安心していたシスイは、かなり渋い顔でエルフィサリドを迎える。

「ほら、持ってきたから食べなさいな」

押し付けられた食料の中には、水揚げされたばかりと思わしき下処理済みの魚にいつもの野菜が入っていた。

「ありがと…でもね、もう私とは関わらないでもらえる?このままだと私は過去の誓いを破る事になる」

スッと受け取った食料を邪魔にならない所へ置き、シスイはやや構えを取りつつ言う。
それを聞いたエルフィサリドは、やはりかと言う顔をして

「気付いていたようね、偶然にもお前と言う存在を確認し。お前が外界との関わりを絶っていることに気付いた私が、信用を表面的にでも得ようとこのようなやっていたことを」

と静かに言い放つ。
それを聞いたシスイは、深く構えを取ると

「これ以上私に関わらないで、これ以上関わると言うなら。実力行使してでも関わらないようにする」

実力行使も辞さないことをエルフィサリドに示す。
エルフィサリドはそうかと一言だけ言って、その場に佇み続ける。

「今すぐ帰れ、さもなくば本当に実力行使する」

最終通告とも取れる口調で、シスイはエルフィサリドに帰るよう促すが帰る様子は無し。

「致し方ないな、実力行使…!」

助走をつけて飛び膝蹴りを放つシスイ、だがエルフィサリドは煙のようにその場から消えて回避。
攻撃を回避されたシスイは、そのままエルフィサリドの背後にあった木に激突して僅かながら痛手を負う。

「私の使える魔法は知っているだろうに、それにお前自身も水の使い手。考えてみるといい」

シスイの背後を取ったエルフィサリドはまた静かに言い放つ。
この後、攻撃しては回避されが二時間ほど続く。

「さっさと帰ってもらえないか?」

十何回目の飛び膝蹴りを回避されたシスイが立ち上がりながらエルフィサリドに言う。
エルフィサリドは顔色一つ変えず、またシスイの背後に現れるとこう言った。

「誓いの書き換えは大きな変化よ、なぜ変化を受け入れようとしないのかしら?」

エルフィサリドの一言に、シスイはこう返す。

「許されざる行為だから誓いを書き換えないし、変化を受け入れたくないのよ」

それを聞いたエルフィサリドは、帰る仕草を見せながら

「変化は受け入れなさい、何があろうと。もしそれを拒否すると言うならば…あとは分かるわね?」

と言い残して煙のように消える。。

「っ…」

シスイは軽く悪態をつきながらたまったものではないと言う顔をした。

そのようなことが重なり、徐々に表面だけながらもシスイはエルフィサリドだけは信用するようになった。
ようやくシスイが表面だけでも信用すると言った時、エルフィサリドはシスイにある書物を渡したという。
それが、撲竜拳と呼ばれる拳法を会得するための書物であったが。エルフィサリドがなぜそのような物を持っていたかはいまだ不明。
そして、百年ほどの月日を得て今に至っている。

「洗濯しないと」

霧を晴らし、朝食前に溜まっていた汚れ物を片付けるために洗濯を始める。
水はそこらじゅうに漂う霧をかき集めればいいので、汲みに言ったり川などまで行く必要はない。

「来たわよ」

「何でこんな朝早くに来るのかしら?」

突然朝早くにやって来たエルフィサリドに、シスイは少々呆れた様子で言う。
前のような、警戒している口調は、信用しているのは表面だけとはいえすっかり無くなっている。

「お前と私の関係だ、そうカリカリするな」

「ふっ…そうだったな」

二三言会話を交わした後、シスイは洗濯に戻りエルフィサリドは何やら周辺の湿気を集め始める。
あそこまで他者不信だったシスイを動かしたものとは、はたして何だったのだろう。
答えは誰にも分からない。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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