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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

血を与えれば

アルガントがやって来て1ヶ月半。
ようやく制御する術を見つけ、あまり長い時間でなければ1人にしておいても問題なくなったのでゴルダは度々アルガントを留守番させて出掛けるようになった。
そして今日もまた、アルガントを留守番させておいてゴルダは出かけていたのだが…。

「ただいま」

アルガントが居てはろくにできない買い物を済ませて帰って来たゴルダ。
出かけていたのは、ほんの1時間程度。
だが家の中へ入った途端に、ゴルダは妙な血の臭いを嗅ぎ取った。

「なんだこの臭いは?少し魚臭いな」

ここでゴルダは、冷蔵庫に昨日なんとなく買ってきた魚の血合いが置いてあったのを思い出して台所へ。
するとそこにはその血合いを一心不乱に貪るアルガントの姿があった。
これを見たゴルダはやれやれとアルガントに近寄り、散らかった冷蔵庫の周りを片付けると

「どうした?闇竜特有のアレか?」

闇竜特有のアレというワードを発した。
すると、アルガントは軽く頷いて

「まだ足りない」

とゴルダにこれだけでは足りないとさらに血を要求してきた。

さて、ここで感づく者も居るだろう。
闇竜は大抵、吸血鬼同様に血を欲することが普通である。
しかし、それは個人差があり毎日飲まなければ発作を起こす者から時折気が向いた時に飲むだけで十分な者までピンキリ。
やって来てから今まで、アルガントが一切血をくれと言わなかったことから、ゴルダはアルガントが時折気が向いた時にだけ血を飲むタイプだと察する。

「悪いが、俺の生き血はダメだ。竜滅病に感染してるからな」

じーっとアルガントに見つめられ、ゴルダはきっぱりと自分の血は病で汚れているのでダメだと言う。
ダメだと言われたアルガントは、少ししょんぼりした顔をして流しで口の周りを洗ったりした。

「参ったな」

そして、何を思ったのだろうか。
ゴルダは物置へ行き、床のある部分に不自然についている取っ手に手をかけてそれを持ち上げる。
すると、そこには地下に降りるハシゴがあったのだ。
アルガントが見ていないことを確認し、ゴルダはハシゴを降りる。

「…」

無言かつ無表情でハシゴを降り切った先に広がっていたのは、ゴルダが竜医の関係で使う部屋であった。
様々なサンプルを保管しておく魔動力の内部時間停止式低温ケースや各種計測機器類。
そして、なぜか手術も解剖も行えるような台が2つ設置されている。

「確かここに…ああこれだ」

低温ケースの中を探り、ゴルダが出したのはラベルの日付が1年ちょっと前の謎の血が入ったパック。
内部時間停止式低温ケースのおかげで、どんなに古くても動力源が生きている限りは内部に保管されている物はその時のままを保つのだ。

「これで満足するだろ」

ケースの扉を閉め、ゴルダはまたハシゴを登ってアルガントのところへ戻る。
ゴルダが戻った時、アルガントはソファに深々と腰掛けてゴルダが最近買った新耳袋なる怪談物のDVDを見ていた。

「おい、あったぞ」

アルガントは後ろから声をかけられ、やや涙目になりながらゴルダの方を振り向く。
怪談物のDVDを見ていたので、後ろから声をかけられたくなかったようである。

「直飲みは嫌だ」

「あー、何か飲む時はコップなり何なりに注いで飲めと教えられたんだなお前。ちょっと待ってろ」

血の入ったパックをそのまま渡したところ、直飲みは嫌だと言われてゴルダはどこからかそこそこ大きいビーカーを取り出して

「これでいいか?」

と聞く。
アルガントは微妙な顔をしながらも頷き、そのビーカーに血を注いでもらう。
ビーカーに血を注ぎ終えると、ゴルダは残ったパックをしかるべきゴミ箱へ投げ入れると食事の支度を始めた。
時刻は午後7時過ぎ、日も大分落ちて辺りは暗い。

「うーん、草食竜の血かな?」

血を飲みながらアルガントが呟いた一言に、ゴルダはん?とアルガントの方を振り向く。
するとアルガントもそれに気づいて振り向くと

「わりと健康体の草食竜から採取した?味がしっかりしてる」

ゴルダが半分忘れていたことを言ったのだ。
ちなみにアルガントの言う通りで、この血はゴルダが去年、近くの牧場のとても健康な竜から採取した血である。
ミスってあまりにも大量に採取してしまい、処分もしきれずにあの低温ケースに放置していた。

「お前、血からそいつの健康状態なんかを察せる能力でもあるのか?」

アルガントはその問いに

「100パーセントは無理だけど、一応は」

とやんわり答える。
そして、ゴルダはこのアルガントの返事からますます自分のヘルプをさせようと思ったのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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