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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

創造神の悩み

今日もいつものように、城の書斎でアルカトラスは国務をこなしていたが、今日はどうにも様子がいつもと違っていた。
時々考え事をしているような顔をしたり、紙片に落書きをしていたりと普段は見受けられない行動が目立つ。

「どうかした?」

茶を持って書斎へ入って来たサフィに聞かれ、アルカトラスはうむと頷き

「ゴルダの事で少しばかりな」

孫であるゴルダの事を考えていたと話す。
サフィはそれを聞いて、何なのかを察した顔で

「神の力が覚醒し始めた事ね」

アルカトラスがゴルダの何に悩んでいるかを具体的に当てた。
それにアルカトラスはまた頷いてそうだと答える。

「あいつなら大丈夫よ、神の力を悪用するようなぼんくらじゃないわ」

ゴルダは神の力を悪用するような奴ではないとサフィに言われ、アルカトラスは少し思慮に耽るとこんな事を言う。

「それは問題ないにして、ゴルダは神の力が覚醒することをあまり好ましくないと思っている筋がある。その思いがある以上、神の力を昔のように制限、あるいは完全除去しろと言われた場合のことを考えるとな」

なぜアルカトラスがこのようなことを言うのかと言うと、理由は3つある。
1つ目は、神の力の除去は定義を書き換えなければ不可能であるということ。
2つ目は、仮にそうなればこの世界に住まう者全てから神の力が消えるということ。
3つ目は、対象をゴルダだけに絞ってシアにそれをやらせた場合、ゴルダはこの世界にとってイレギュラーな存在となるということ。
それが何を意味するか、それは本当の意でゴルダをこの世界から抹消しなければならなくなる可能性が極めて高いということだ。

「シアとゴルダを交えて、また話したら?」

サフィの一言で、アルカトラスは何かを閃いた顔をして

「いい考えが思いついた、感謝するサフィ」

サフィに礼を言うと、アルカトラスはそそくさと残っていた国務を片付けるや、シアの所へ。
アルカトラスが来た時、シアは途轍もない規模のクロスワードをやっているところだった。

「あなたからここに来るなんて、珍しいわね」

アルカトラスが来たのに気付き、シアはクロスワードを一旦片付けてまばたきしながらアルカトラスを見る。
そして、何の話をしに来たのかが既に分かっていたように

「ゴルダの事でしょ?よっぽど神の力が覚醒し始めたことが気にかかってるのね」

ゴルダの事ねと言い放った。
アルカトラスはそうだと言うと

「何故神の力が覚醒し始めたことを気にかけているのか、という一点に尽きる」

ゴルダがなぜ神の力が覚醒し始めたことを気にかけるのかが気になるとシアに話す。
シアはそれに対しては

「ゴルダとて、完全に神の力が覚醒したら私たちと同じ存在になることは分かってるわよね?つまり、神と同等の存在になることで、『自分が負うことになる責任』に耐えきれないんじゃないかって心配しているのよ」

神の力が完全覚醒した時、ゴルダは自分がそれにともなって負わなければならない責任に耐えられないのではと心配していると答える。

「そうか、神の力という強大なる力を得たことにより生じる『責任』に耐えられるかどうか、か…」

アルカトラスは、主神アルシェリアの手で創造されてから今まで一度たりともその責任についてそこまで深くは考えたことはなく、今日までを過ごして来た。
一方のシアは、その力と責任についてをこの世界を創造して以来。ずっと考えて来た。
自分の力があるからこそ、この世界に生命は存続できる。
その生命を生かすも殺すも、自分の思いのままであるがそれは責任を持ってしなければならない。
生命のサイクルを見守り、その最後を見とるのも生命の創造神たる自分の役目であり責任。
そしてアルカトラスは、改めて自分の力と責任について考える必要があることをシアから自家させられた。

「…分かった、数日時間をくれないか?その後ゴルダを交えて話をしよう」

アルカトラスはシアにそう言って、城の方へ戻った。

力を持つ者には、その力を行使する際に責任を生じる。
しかし、責任を生じるのは何も力を持つ者だけではない。
生あるものが誰しも、その行為の1つ1つに責任があるのだ。
そして誰しも、責任を負うという重り引きを避けて通る事は不可能なのである。
小説(一次) |
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