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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

霧を待てば

その日、シスイの住んでいる山は異常気象かという位に晴れ渡り、湿度も例年より低かった。
朝起きた時からそのような天気だったため、最近は専ら闇属性を使うことが無くなり、水属性の方へ比率が大きく傾いているシスイにはとてもつらい状態。
ある程度水の属性を極めたものは、一定の湿度がある環境下に居なければ体調を崩すなどの症状を引き起こす。
しかし、これは水属性に限った話ではない。
他の属性においても、ある程度極めた場合において、必ずではないにしろ似たような症状が起きると魔法医学のとある論文に書かれている。
例えば、草の属性をある程度極めた場合。ある確率で常に植物に囲まれかつ光合成が行なえる環境下に居ないと致命的な呼吸障害を引き起こすなどのケースもある。

「うぅ、頭痛い」

起きた瞬間から生じている鈍い頭痛で思うように動けないシスイは、とりあえずはと水桶の中に頭を突っ込む。
すると、若干ながら頭痛は改善された。
しかし、完全には頭痛が治まったわけではないので下手に動くことはできない。

「いつもはこんなに日の光が射さないのに、どうなってるのかしら…」

さらにシスイは、いつも我流調合の薬を置いている棚から魔力を増幅させる薬と頭痛の薬を取る。
これらの薬は、エルフィサリドがなんだかんだで素材と一緒に調合法まで教えてくれたもの。
朝飯も食べずに水と一緒に薬を流し込み、シスイは家の中の湿度を魔法でカビやらキノコやらコケやらが生えて来るような湿度まで上げた。
日の光のせいもあってか、たちまち室内は蒸し暑くなったがシスイはお構いなし。

「ああ、やっと落ち着いた」

などと、全快した様子で呟きながらシスイは朝飯の用意をする。

「いただきます」

今日の朝食は、干し肉とニンジンなどの根菜に水だけ。
こんな食事で本当に大丈夫なのかと思われがちだが、シスイは空気中の湿気を水の魔力に変換し、それをまた無の魔力に変換する術をエルフィサリドから伝授してもらっている。
これはつまりどういうことなのかと言うと、足りない栄養をこの変換した無の魔力で補っているのだ。
この他にも、シスイは魔力とは別の概念の気を使って断食をすることも可能だが、こちらは気が集められないので使っていない。
これらは、自然から集める以外にもまた別の方法で集められるが、ここでは伏せておく。

「天気が変わるまで外には出られないわ、これ」

窓に遮光魔法を使い、家の中へ射し込む日の光を抑えた上で窓の外を眺めながらシスイは呟く。
完全な引きこもりに思えるが、家の外はいつもより湿度が極端に低いので仕方のないことなのである。
数分窓の外を眺めていたシスイは、寝床でごろごろするわけでもなくその場で正拳突きをしたり、回し蹴りをしたりと謎の動きを取る。
しかし

「イヤー…あだっー!」

空中で大回転蹴りをしたところ、バランスを崩して落下。
その際、足の小指が思わぬところにぶつかり、シスイは絶叫。
5分ほどそのまま床でのたうち回っていた。

「うぐぐ」

やがてシスイは起き上がり、寝床の近くにあった半分苔むした魔法書を手に取る。
一応これもエルフィサリドからプレゼントされたものなのだが、ご覧のような有様。
プレゼントされた当初はさほど苔むしてはいなかったのだが、放置している間にこうなったようだ。

「うんうん、まだ読める」

どういう定義で読めると判断しているのかが不明だが、とにかくシスイはその魔法書を読み始めた。
しかしそれも30分くらいで読み終え、次はどうしようかと考えていると家の外に霧が戻ってきているのを確認。

「やっとだわ」

シスイはそのまま家から出て、霧と高湿度にまみれた外で背伸びした。

「やっぱりこうじゃないとね」

そのシスイの姿は、どこか嬉しそうであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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