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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

月に手を伸ばせば

満月でもなければ、上弦の月夜。
その日1日の仕事を終わらせ、サフィは自室で風呂を浴びようと準備をしていた。
ここでふとサフィは部屋の窓から外を見る。
多少雲はあったものの、月は隠れておらずはっきりと見える夜空。
着替えを準備し終え、なんとなく窓の外を見つめていたサフィは無意識のうちに上弦の月に手を伸ばしていた。
何でだろうとは思ったものの、それより風呂に入らねばと大浴場へ。
大浴場は誰も居らず、どうやらサフィが最後のようだ。

「1人で入ると落ち着くわ」

全身を洗って湯に入りながら、サフィはじっと浴場の壁を眺める。
セイグリッド城の大浴場の壁は時折風景を映すことがあり、それらは入っている者たちが考えていることによって変化し、飽きさせない。
今日の壁は今の外の夜空映し出し、おまけ程度に月をかなり近距離で映している。

「あら…またやっちゃったわ」

ここでもまた無意識に、サフィは浴場の壁に映し出された夜空の月に手を伸ばしていた。
なんでだろうかとは思ったが、気にせずに風呂から出て部屋へ戻るサフィ。

「うーん」

部屋へ戻り、しばらくぼーっとしていたサフィだが、急にぐいと引っ張られるようにシアに呼ばれて塔にテレポート。
塔へ行くと、なぜかシアは望遠鏡で月を見ていた。
一応来たわよとシアに話しかけてみたが、ちょっと待ってと言われて相手にしてくれない。
かといって、寝ようと戻ろうとすればテレポートを妨害されて引き留められるのでどうしようもない。

「ああもう」

そしてそのまま10分ほどむすっとした顔でサフィが待っていると、ようやくシアがこちらに向いて

「今夜の月、ちょっと不思議なことが起きてるから呼んだのよ。望遠鏡を見てみて」

月に不思議なことが起きてるので望遠鏡で見てみろとサフィを望遠鏡の前に立たせる。
サフィはそれにはいはいと言って、望遠鏡を覗く。
最初はただの上弦の月かと思われたが、よくよく見ると時折月の表面にそれなりの大きさの紫の点が光っているのが見えた。
これを見て、サフィは無意識に月に手を伸ばしていた理由が分かった気がした。
そう、この月の表面で光っている紫の点とは、可視化された闇の魔力なのだ。

「なんで闇の魔力が月に?」

サフィの質問に、シアはこう答える。

「実は月にも世界樹に似たものがあるのよ、でもそこで生成される魔力の9割は闇属性。そして今日は生成された魔力が月中を駆け巡っている珍しい日。だからあんなことが起きているの」

月にも世界樹ではないものの、似たものがあると聞いてサフィは若干ぽかんとする。
そのぽかんとするサフィを見て、シアは難しかった?と小馬鹿にするようにクスクス笑う。
それに対してサフィは何よもうとまたむすっとした顔をした。
シアはそれを見て、まあまあと言わんばかりに抱きつく。

「やめて、今日はもう寝るから戻るわ。おやすみ」

「残念、おやすみ」

抱きつかれて数分もしないうちにサフィはシアを押しのけ、今日はもう寝るとシアにおやすみと言うや自室へ戻った。
それにシアはおやすみと返して見送り、自分は深夜まで星と月を見ていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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