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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

ルナリアとラトレナスと-蘇るは姉妹の記憶

今日のゴルダは、アルガントとルナリアを連れて聖リフィルへと来ている。
その理由とは単純明快で、アルガティアがどういうわけだかルナリアの存在を察知していたらしく、いきなり単刀直入に来なさいと言われたからだ。

「めんどくさいものだ」

「あそこ?」

「らしいよ」

流石に3人まとめて座標指定テレポートは聖リフィルとの距離を考えれば今のゴルダには無理があったので、南部の港から出ている高速船を使って向かっていた。
ドランザニアから聖リフィルまでは、この高速船で1時間ほど。
ゴルダがずっと客席で学会誌を読んでいたのに対し、ルナリアとアルガントは船内のあちらこちらを散策していた。
だが、後10分で着くという船内放送を聞いてゴルダは2人と甲板へ出て降りる準備をし、自分は近くの椅子に座ってアルガントとルナリアが危ないことをしないよう見張っていた。

「わー自然いっぱい」

「この世界で最も人の手が入れられてない土地の面積が広い国だよ」

ドランザニアにはない自然を見て感心するルナリアに、アルガントはこの聖リフィルがこの世界で最も自然の残る国だということを説明していた。
ゴルダはそれを無表情に見つめているだけで、何も言わない。

やがて船は聖リフィルで唯一の港に接岸し、降りれるようになった。
ゴルダはそそくさと2人を連れて船を降り、城の方へと向かう。

「あら、こんにちは。姉さんなら待ってるわよ、国務しながらね」

城へ入るとすぐにゴルダはイレーヌと会った。
今日はエゼラルドには乗っておらず、畑仕事の服装で鍬を持っていた。
ゴルダはなんともなくおうと返すが、アルガントとルナリアはイレーヌを見て、誰この人という顔をする。
それを見かねたゴルダは、一応イレーヌがアルガティアの双子の妹である事を2人に説明。
その説明で一応2人は納得したようだが、双子というものに引っかかりを感じているようだ。

「ほら、行くぞ。イレーヌと話す時間はいくらでもある」

後でなとイレーヌに言い、ゴルダは2人を連れてアルガティアの書斎へ向かう。
書斎では、いつも通りイファルシアがアルガティアの頭に乗り、その横ではフィルスが黙々ともはや趣味となった翻訳をしている。
だが、いつもと違う光景がそこにはあった。
椅子に座って書類を片付けているアルガティアの膝の上に、蛍光系の赤毛の竜が座っていて、書類の片付けを手伝っている。
どうやら、この竜がラトレナスのようである。

「…?」

そしてラトレナスを見た瞬間、ゴルダは奇妙な既視感に襲われた。
なぜだか分からないが、ラトレナスと自分は会ったことがある。
そして、とても口には出せないようなことまでした記憶まであるのだ。

「これは…パラレルワールドの己の記憶が刻まれている現象か?」

そして、ゴルダは今度はまるで流砂にじわじわと飲み込まれていくような奇妙な時間感覚を感じた。
脳の記憶を司る部分が極限まで覚醒され、覚えのない記憶がフラッシュバックする。
だが、このフラッシュバックが起きた瞬間

「おにーたん」

ルナリアに揺さぶられ、ゴルダは我に返る。
気づけば、イファルシアが眼前まで近づいてきてじっと見つめていたのでゴルダはイファルシアを引き離す。

「いらっしゃい」

「にゅ、こんにちは」

アルガティアとラトレナスに挨拶され、ゴルダはいつも通り顔の前で手を合わせてお辞儀をする。
この挨拶の仕方は、ゴルダもいつ覚えたのかしらも分からないもの。
だが、当の本人は気に入っているので使っているに過ぎない。

「あ、おねーたん」

ここでようやくラトレナスがルナリアに気付いて近付き、むぎゅと抱きつく。
それをゴルダは見ることもなく、また自分を見つめていたイファルシアを何だという顔で見る。
そして数分の時間が経過しただろうか。
今だラトレナスと抱き合っていたルナリアは、突然何かを思い出したような顔をして

「あー、おにーたんのこと思い出した」

と呟く。
ゴルダはそうかそかと、抱きなさいと言われて抱いているイファルシアを抱きながらラトレナスとルナリアを見ていた。
なお、蚊帳の外になっているアルガティアとフィルスとアルガントはその様子を今まで静観していて、今も黙って見ているだけである。

「おにーたん、記憶取り戻したからには前みたいにはいかないからね」

ピッとルナリアに指を指され、ゴルダははいはいと答えた。
だがその返事ではルナリアが気に入らなかったようで

「はいは1回だよおにーたん、じゃないとレールガンしちゃうよ?」

はいは1回と注意する。
その注意の一言の中に、やたら物騒な言葉が紛れていたが誰もそれに突っ込まない。
それどころか、ラトレナスはルナリアらしいという顔をしていた。

「それで、なぜルナリアの事を?」

ここでゴルダは、アルガティアにどうやってルナリアの事を知ったのかを聞く。
アルガティアが何を考えているかは、幼少期を共に過ごしたゴルダですら分からないのでこうやって本人に聞くのが手っ取り早いのだ。
その問いに、アルガティアは抱っこを要求してきたアルガントを抱きながらこう答える。

「夢、それだけ」

答えは意外にもシンプルで、夢とのことであった。
ゴルダはそうかと答えて抱いていたイファルシアを頭に乗せて近くの椅子に座る。
ラトレナスとルナリアは、ほったらかしている間にいちゃいちゃし始めており、完全に2人の世界に入っている。
フィルスは動かざること山のごとしと言わんばかりに翻訳を続けていて、話しかけても無視する雰囲気を放っていた。

「お昼は?」

「朝飯は食って来たが昼飯はまだだ」

「食べて帰ったら?」

「そうさせてもらう」

この後、ゴルダはアルガティア達と昼飯を取り、そのまま帰った。
ルナリアはラトレナスとまた離れるのを好ましく思ってはいないらしく、帰る時の機嫌は相当悪かったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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