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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

双子-姉妹で違うところ

今日も聖リフィル王国に朝が訪れる。
ドランザニアという世界の中で唯一の島国、元は大陸側のドランザニア民主共和国の領土でエルフたちが住まう自治区。
いつの日かは忘れたが、ある時ドランザニア民主共和国より独立して今に至る。
そんな聖リフィル王国の王宮の敷地内の離れ小屋。
小屋とはいっても、作りはしっかりしており。内装もそこそこいい。
そして、その小屋の中で寝ていた1人のエルフが起床した。
容姿はこの国の女王アルガティアと瓜二つ、唯一違うところと言えば。アルガティアより少しばかり身長が低いことだろう。
それはなぜか?、実はこのエルフは女王アルガティアの双子の妹のイレーヌだからである。

「あ、また寝坊しちゃった。まあいいや」

イレーヌはそう言って、動きやすいズボンとシャツ姿で小屋を出る。
毎朝イレーヌが行う仕事は、王宮の敷地で飼っている竜などの世話から始まる。

「おはよー、皆元気かしら?」

竜舎の戸を開け放ち、イレーヌは言う。
ここで飼われている竜は大体が草食で、主に乳をとるために飼われている。
竜乳は牛乳などに比べて加工しても味が落ちにくく、それから作られるバターやチーズもあっさりしていてとてもおいしい。
王宮の敷地内で飼われているのは、10匹ほどだが。この聖リフィル王国の国内にある牧場では100匹単位で飼っているところもある。
イレーヌのここでの仕事は、まず竜の健康状態をチェックする。
少なからず竜医の知識は保持しているイレーヌだが、専門ではないので。何か異常があれば専属の竜医へ報告する。
健康状態をチェックした後は飼料をのようなもの。いわば餌を与える。
餌を与えた後、イレーヌは場所を移動して今度は鳥小屋へと来た。
ドランザニアの世界にも鶏は生息していて、卵の供給源として重宝されている。
イレーヌがここでやるのは、卵取りである。イレーヌが取った卵は、王宮の厨房にいるメイド達へと渡されて調理される。

「あらら、今日は1個もないわね…」

残念ながら、今日は1つも卵が無かったようだ。
その後、また別の竜に餌を与えて朝食のためにイレーヌは王宮の大広間の方へ行く。

「おはようイレーヌ」

「姉さんおはよう」

おっとり不思議ちゃんと、のんびり屋というどことなく似た性格では。こんな会話が日常茶飯事なのだろうか。
アルガティアとイレーヌは二言ほど朝の挨拶を交わして席に座った。
朝食の用意が出来る間。アルガティアは今日の予定に目を通し、イレーヌは昨日の自分の日報を確認する。
そして、朝食が出来上がるとメイドや従者たちと一緒に2人は朝食を食べる。
朝から紅茶を欠かさないアルガティアに対して、イレーヌは竜乳と水を交互に飲む。
むしろ、イレーヌが紅茶を飲むことはあまりなく。夜はワインを飲んだりするのだが。
朝食が終ると、イレーヌはまた世話へ。アルガティアは国務を始める。

「今日も放牧しちゃっていいかな」

そう言って、イレーヌは飼われている竜をすべて敷地内へ解放する。
ちなみに、何度もイレーヌは竜を逃がしたりしており。その度にガードの世話になっている。

「今日は大丈夫だといいけど」

イレーヌはそう言って、竜舎に居た竜をすべて敷地内へ解放する。
もちろん、ちゃんと見ておかないとアルガティアが趣味で植えた花やハーブなどが食い荒らされたりするのでイレーヌの責任は重大だ。
それでも、過去に何度かアルガティアの趣味のスペースが荒らされてしまったことがあるが。
その時はイレーヌが1人でそれを植え直したりしたという。

「あの時は夜中までやらされてさんざんだったわ」

イレーヌはそう言って、解放した竜たちがやらかさないか見張りながら呟く。
基本的に王宮の敷地内は非常時外を除いてオープンなので、一般市民もよく訪れる。
光竜王国セイグリッド国王アルカトラスのやり方を真似て、初代からずっとこのやり方は続けられている。

「あー、眠い」

まだ午前中だというのに、イレーヌは大きな欠伸をして眠そうな顔になる。
それもそのはず、昨日は夜更かしをしてある詩を書いていて。寝たのは夜中の3時ぐらいだ。

「うん?何かしらエゼラルト?乗れって事?」

イレーヌの前に、先代国王…イレーヌの両親のころから居る薄緑の毛に黒い目の竜ことエゼラルトが、鼻先でイレーヌを小突いてきた。
エゼラルトはアルガティアとイレーヌ、どちらにもべったりと懐いているが。2人ともエゼラルトの性別を今に知らない。
あいにく、エゼラルトが何を言っているかはアルガティアにしか分からないが。イレーヌはエゼラルトの仕草で何を言いたいかを把握している。

「よっしょっと…」

イレーヌは間違っても毛を毟らないように注意しながら毛をつかんで背へと乗る。
他の毛のある竜と違って固めではあるが、イレーヌは背に乗るや寝転がって寝てしまう。
エゼラルトもイレーヌを背に乗せるとその場で座って寝てしまった。

「…寝てる」

国務の時間が空いたのだろうか、そこへアルガティアがやって来た。
やや疲れた表情だったが、寝ている2人を見てその表情も緩んだ。
2人がぐっすり寝ているのを改めて確認したアルガティアはどこからともなく鋏と櫛を取り出す。

「伸び放題ね」

アルガティアがやろうとしていたのは、エゼラルトの調毛だった。
起きているときにしようものなら、エゼラルトはどこかへ逃げてしまうので寝ている隙を使ってやるしかないのだ。

「顔の周りだけで大丈夫そう」

アルガティアは起こさないようにそっと櫛を入れ、ハサミで毛を切り始める。
その音に気付いたのか、イレーヌが起きたようだ。
アルガティアはそれに気付いて、イレーヌにあまり動くなと目線で訴えた。

「はいはい…」

とイレーヌは言って、また寝始めてしまう。
10分ほどでアルガティアは毛を切り終えてハサミを片付ける。

「イレーヌ」

「ん…?ああ、分かったわ」

切った毛を片付けているアルガティアに声をかけられ、イレーヌは再び目を覚ます。
アルガティアが何をしてほしいのかというと、髪を切ってほしいのだ。
普段ならメイドなどに切らせるのだが、バッサリ切ってほしい時にはアルガティアはイレーヌに頼む。
最も、アルガティアがショートヘアーにするほど短くするのはかなり珍しいことなのだが。

「部屋戻ってるから」

「うん、分かった」

エゼラルドを残し、イレーヌは他の竜を竜舎へ戻してアルガティアの部屋へ行く。
ほったらかしておいても、エゼラルドは勝手に戻るので起こしてまで戻す必要はない。

「またショート?」

「半年ぐらい切ってなかったからね、お願い」

アルガティアの部屋へ来るや、イレーヌはあらかじめ出されていたハサミなどを手に取る。
髪を束ねる習慣がないアルガティアの髪は、まっすぐに腰の辺りまで伸びている。
イレーヌは腰より少し上の辺りから鋏を入れた。
切られた髪は、床の上にちんまりとした山を作って落ちる。イレーヌは続けて髪に鋏を入れて切っていく。
わずか数分あまりで、小さな山が作れるくらいの切られた髪が床に落ちる。
腰のあたりまであった髪も、胸のあたりまで短くなった。

「どう?」

イレーヌはアルガティアに聞く、どうかと聞かれたアルガティアは手鏡で長さを見て

「肩ぐらいまで」

と一言だけ答える。
イレーヌはそれに頷いてまた髪に鋏を入れる。部屋の中には髪を切る鋏の音だけが響く。
髪を切り始めて15分後、アルガティアの腰まであった髪は肩のあたりまできれいにカットされた。

「イレーヌ、あなたのも切ろうかしら?」

「いいの、そんなに伸びてないから」

「ならいいんだけど」

アルガティアに髪を切ろうかと聞かれたイレーヌだが、いいと言って断る。
イレーヌが切った髪を片付けている間に、アルガティアは風呂場へ行ってしまう。

「これでいいかな」

切った髪を片付け、イレーヌは呟く。
部屋のごみ箱に捨てるとアルガティアが後々うるさいので、イレーヌは切った髪をまとめて部屋を出た。
部屋を出てきた場所は、メイドなどが休憩したりする部屋。

「どうかしましたかイレーヌ様?」

「これ、捨てておいてくれないかな」

メイドに聞かれて、イレーヌは切った髪が入った箱を渡す。
中身を見たメイドはイレーヌに

「いま、ゴミ燃やしてますよ。ついでに生ゴミを持ってってもらえると助かるんですが」

今ゴミを燃やしているのでと言うついでに生ごみの入った別の箱を差し出す。
大抵ここで出る生ゴミは害が無ければすべて肥料用に回される。
可燃性のゴミを燃やした後の灰も、何だかんだで使われたりする。

「うーん、分かった。これだけ?」

「ええそうです」

生ゴミの入った箱を持ちながらイレーヌは聞く。
メイドがもうないと言ったので、そのまま焼却炉まで持っていく。

「やれやれ」

ゴミを持って行って戻ってきたイレーヌはため息をつく。
アルガティアと違い、普段から力の要る仕事をしているイレーヌはこの程度の事では疲れない。
逆にアルガティアがやったら、先ほどのゴミ捨てでもきついかもしれない。

「汚れちゃったな、風呂入ろうかしら」

焼却炉でもゴミを入れるのを手伝ったため、ゴミを持って行っただけでも汚れていたのにさらに汚れてしまった。
イレーヌは風呂場へは行ったものの、従者が見張っていたのでアルガティアがまだ入ってるのだろうと悟って部屋のある小屋へ戻る。

「姉さんいったん入ると1時間は余裕だし、出てくるころには夕食の時間だわ」

ひとまず汚れたままの服だと嫌なので、上だけを脱いでベッドに寝転がりながらイレーヌは言う。
アルガティアはいったん風呂へ入るとゆっくりするので1時間は上がってこない上、一人で入るのを好むので風呂を占領する時間が長い。
しかも、入っているときに誰かが入ってこようものなら魔法を使ってくるほどだ。
それに対してイレーヌは少人数なら誰とでも入り、30分では風呂から上がる。
どうして姉妹でここまでの差がついてしまったのかは不明だ。

「もう夕食の時間だわ、とりあえず着替えようっと」

後で入ればいいと考え、着替えるとその場でテレポート系列の魔法を詠唱して大広間へと移動する。
イレーヌが来たときには、既に全員席について待機していた。
なぜか今日は光竜王国セイグリッドのアルカトラスまで居たが。

「来てたんですね」

「少しばかり話を、な」

一言二言会話をアルカトラスと交わして、イレーヌは席へ座る。
食事の間、度々アルカトラスとアルガティアが何かを話していたが。イレーヌには内容をあまり理解できなかった。
少なからず、ドランザニアに関する話であるという事は理解できたが。

「ごちそうさま」

いまだに話をしているアルカトラスとアルガティアを差し置いて、イレーヌは風呂場へ行く。
さっきはアルガティアが入っていたので入れなかったからだ。
1人で入るのにはあまりにも広すぎる風呂場は、国の主たるものが住まう場所にふさわしいものだ。

「ふう」

源泉から直にくみ出している湯に浸かりながら、イレーヌは表情を緩ませる。
デスクワーク中心の姉とは逆に、力や体力のある仕事をこなすイレーヌ。
元々同じような教育を受けていた2人だが、分岐点となったのは従妹であるゴルダら3兄弟が来たことだろう。
イレーヌはよくゴルダに連れ出されて王宮の外へ出たりもしていたし。どちらかと言えばアウトドア派だった。
一方のアルガティアはサマカンドラと色々と勉強をしていてインドア派。
良くかかわっていた相手次第でここまで変わるのだろうか。
ちなみに、アルガティアも完全なインドアでも体力が無いわけではない。

「そろそろ上がろうかな」

と言って、イレーヌは風呂から上がる。
イレーヌが入るときは、従者はついていない。仕事をあまり増やさせたくないという理由でつけないようにしているのだ。

「うーん、だいぶ溜まってるわね」

イレーヌが見たのは、脱衣場の一角に集められた汚れ物の衣類の山。
今日はたまたま当番のメイドが忘れていたのだろうか、山盛りに積み上げられている。
これではダメだと、当番のメイドを探す前にその汚れ物の山を持ってイレーヌは洗い場へ向かう。

「あっ、すみませんわざわざ」

洗い場で先に洗濯をしていたメイドがやって来たイレーヌに気付いて言う。
イレーヌは無言で洗い場の洗濯機へ汚れ物を入れる。

「ちゃんと洗わないと、ね?」

まともに服を着ていなかったので、その場で服を着ながらイレーヌは言うと自分の部屋のある小屋へ戻る。
戻ってくると、エゼラルドがずっと待っていたと言わんばかりに顔を上げた。

「一緒に寝ろって言うの?分かったわ」

大抵、エゼラルドがこういうことをする時には。一緒に寝ようという意なのである。
こうされると、断ろうにも断れない。いや、断ると信頼関係に亀裂が生じるのでイレーヌは仕方なく一緒に寝る。

「ほら、行くわよ」

先に歩いていくイレーヌを、エゼラルドは追いかける。
エゼラルドの竜舎は、がらんとしていて何もない。
ほとんど外で過ごしているので、ここは寝る場所と割り切っているからだとか。

「おやすみ」

エゼアルドが丸くなった上へ、イレーヌはその上へダイブしてそのまま寝てしまった。
そこそこ手入れされている体毛は、寝つきがいい者ならば1分もかからずに寝てしまう心地よさ。
イレーヌも例外ではなく、1分もたたないうちにぐっすりと寝入ってしまう。
そしてその頃、アルガティアはと言うと

「そろそろ、ご就寝なられては?」

「大丈夫、この書類終わったら寝るから」

「分かりました、お休みなさいませ」

「ええ、おやすみ」

いまだに起きていて、今日分の国務の残りを片付けていた。
体調が悪い時でも構わずに国務をこなすため、メイドなどから度々体の心配をされることもある。
しかし、いまだに健康診断などでは異常が出たことはない。
ほんの一部だけが違い、後は同じ。双子とはそういうものなのだろうか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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