再会も初対面も人の姿だったようです2016-04-17 Sun 15:12
「だ、誰ですか?」
人の姿のシアを見て、フウとユウは同時に同じことを言う。 それもそのはず、フウは聖竜の姿のシアとしか会ったことがなく、ユウはそもそもシアと会ったことすらない。 今目の前に居る白髪赤目のローブ姿の女性がシアであると知ったのは、その直後のことであった。 「そうだったのかー」 「お初お目にかかります」 この女性がシアであることを知ったフウは一人納得し、ユウはシアがどういう者なのかをゴルダから聞かされて頭を下げて挨拶する。 ちなみに、ゴルダがフウとユウをシアのところに連れてきたのは、シア本人が連れて来てと言ってきたからである。 「ユウの存在も薄々知ってたけど、まさか姉弟だったとはね」 「本当は分かっててもおかしくないはずだがな」 城の応接室でお茶を楽しむ二人を見ながらそんなことを言うシアに、ゴルダは本当は分かってたんじゃないのかと問う。 「そこまで詳しく見るのを忘れてただけよ」 その問いに対するシアの返しに、ゴルダはどうだかなという顔をして頭上のマティルーネに人参入りのパンを与える。 なお、このパンはわざわざサフィがマティルーネのために焼いたものだとか。 「それはそうと、シアさんはなんでまた人の姿を取るようになったの?」 というフウの素朴な疑問に、シアは 「なんとなくよ」 なんとなくだと、特に深い理由がないが人の姿を取りたくなったと話した。 そしてその次にユウが 「シアさんは竜の姿に戻ったらどんな感じなんですか?」 シアの元の姿に興味を持ちだしたようなので、それじゃあと言わんばかりにシアはその場で元の姿へと戻った。 「結構大きいですねシアさんは…でもすごいもふもふ」 元の姿のシアを見たユウは、若干驚いているようだがやはりもふもふには勝てない様子。 人見知りを発揮しながらも、恐る恐るシアに近寄るとその体毛に手を触れてみる。 「わぁ、すごいしっとり…」 相変わらずシアの毛は、自身の魔力やサフィなどのメイド達が手入れしてくれているおかげでとてもしっとりしており、絹にも負けない触り心地であった。 もしこれが触っているのがココならば、簡単には離れないだろう。 「もっと触る?あるいは埋もれてみる?」 シアの悪魔の誘惑のような一言に、ユウはお言葉に甘えてと言わんばかりにシアの毛の中へと埋もれる。 「虜になるのが早かったな」 「ユウだけいいなー」 あっという間にシアの毛の虜になったユウを見て早かったなというゴルダと、羨ましがるフウ。 すると、羨ましがるフウをシアは尻尾で引き寄せてユウと同じようにする。 「相変わらず過ぎて何も言えん」 いつもと変わらないシアの行動に、ゴルダは生暖かい目線を送るのだった。
小説(交流)
|
|
メリエルと人の姿のシア2016-04-17 Sun 08:47
まだ初夏の入り始めだというのに不快指数高めの暑さの中、メリエルは日傘もなしに城下町を歩いていた。
最初はゴルダの家へ行ったのだが、ミリシェンスにセイグリッドに行っていると聞かされて急遽やってきたのだが、この暑さである。 「腹が立つ暑さだわ」 などと言いながら城を目指して歩いていると、正面から日傘を差したゴルダが歩いてくるのが見えた。 だが、メリエルはすぐにとてつもない違和感に襲われる。 その理由は二つあった。 第一に、ゴルダは日傘を差すような性格でも雰囲気でもない。 第二に、日傘の中にゴルダ以外のもう一人居る。 「日傘で相合傘なんてどうかしてるんじゃないの?」 などと思いながら、その場で向こうからゴルダが来るのを待つメリエル。 「何してんだお前」 こちら側へとやって来たゴルダに何をしてるんだと聞かれ、メリエルはゴルダの隣に居た膝までつく白髪赤目の青がかった白いローブ姿の女性を指して 「誰よこいつ!?あんたそういうのに一切興味なかったんじゃないの!?」 そいつは誰よと言うついでに、やっぱりあんたはそういうのに興味があったのと突っ込む。 それを聞いたゴルダは、はて?と呟き、その頭上のマティルーネはまた始まったと言いたげな目線を投げかける。 一方、ゴルダの隣に居た女性はいきなり剣を抜いてメリエルに切りかかる体勢になった。 「ちょ…何よ?やる気?」 相手が本気なのかどうかが汲み取れないため、自衛のために身構えたメリエルだが、ゴルダに 「よせメリエル、シアもだ」 よせと言われてメリエルは構えを解くが、ゴルダの口から出た聞き覚えのある名前を聞いて 「えっ、その女がシア?そんなまさか」 ぽかんとした顔になる。 一方、シアと呼ばれた青がかった白いローブ姿の女性は剣を戻してメリエルに近寄ると 「実は私人化能力持ちなのよ」 と言って、その場で元の聖竜の姿へと戻る。 いつも見慣れたシアが目の前に現れたことで、メリエルはほっとした反面今目の前起こった出来事を処理するのに多少の時間を要した。 それから数十分後。 メリエルはゴルダマティルーネと人の姿のシアと城の応接室でティータイムをしていた。 「変身魔法や能力も、適性があるのよ」 「そりゃそうでしょうよ、魔法の属性にも個々で相性の合う合わないがあるんだし」 今話している話題は、変身魔法と能力の適性に関して。 メリエル自身はシア話では変身魔法への適性は高いとのことだが、メリエルは自分は自分であってこそという考えらしく、変身魔法には興味がないらしい。 なお、シアはマティルーネの変身に関する適性は皆無だと断言した。 「そういえばあんたも変身できるの?」 メリエルに羊羹をつまみながら聞かれ、ゴルダは一応できるが滅多にはしないと返す。 ゴルダのその返事にメリエルはなーんだと不満げな態度を示しながらシアの方を見る。 身長はあからさまにあっちの方が高いが、そんなことはどうでもいいというのが本音。 長すぎて邪魔になるんじゃないかと思うほどの膝までつく白髪は、メリエルの髪よりしっとりしていて手入れが十二分に行き届いていると断定できる。 「あんた、人間の姿でも魔力が桁違いよ。今この瞬間も、たまに突き刺さるようなものすごい強さの魔力を感じるから」 メリエルの指摘に、シアは制御が上手くいってないのかしらと呟きながら髪をしばらく指でいじり 「今はどう?」 数分経ってからメリエルにそう問う。 どうやら放出魔力の制御の調整をしたらしい。 「うーん、さっきよりはいいわね。刺さるような感じはもうしないわ」 「そう」 そんな会話をしていると、ゴルダが急に 「シアもメリエルと同じ髪型にして並んだら様になりそうだな」 同じ髪型にして二人で並べば様になりそうだと呟いた。 それを聞いたシアは、そうかしら?と疑問を浮かべながらも自分で髪をメリエルと同じようにして 「ちょっと立ってみて」 メリエルを半ば無理やり立たせて並ぶ。 「ふぅむ…」 「何よ?」 自分とシアを交互に見るゴルダに、メリエルは何よと聞く。 だがゴルダは何も答えず、ただただ交互に見るだけ。 このままゴルダは沈黙を続けるつもりかとメリエルが思っていると、マティルーネが突然 「やっぱり格差はあるのね」 と意味深なことを呟いたのに対して、メリエルが 「それどういう意味よ!?」 と突っ込んだとか。
小説(交流)
|
|
| HOME |
|