氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

その日を過ぎても何かしたい

2の月のお返しの日など、とうの昔に過ぎ去った3の月のある日。
ゴルダは牧場の畑と自宅の畑、両方の春先に植え付ける野菜などの準備に追われる毎日を送っていた。
幸か不幸か、今はハーキュリーが居るので人手はなんとか足りていたものの、それでも忙しいものは忙しい。

「終わったぞ?」

「そうか、手洗って休んでろ。俺はまだやることがある」

さきに苗の植え付けが終わったハーキュリーに終わった報告をされ、ゴルダは先に休んでろと伝えて、自分はまだまだ減らない野菜の苗の入った籠を担ぎ上げて何も植えられてない箇所へ行く。

「むー…」

ハーキュリーはどこか納得のいかない顔でマティルーネを連れて牧場の敷地にある小さな家へ。
この牧場には、ゴルダの分身が常に3人居て、その3人でどうにかこの牧場切り盛りしている。
だが、ハーキュリーが家へ入った時には分身達は皆仕事中らしく居なかった。

「そういえば今年はバタバタしてて何もゴルダにあげてないなー」

勝手に茶を淹れて一休みしながら、ハーキュリーは今年のバレンタインのことを思い出す。
今年はゴルダがその時期に地球へ異界出張へ行っていたために何もあげられず。ハーキュリー自身もゴルダの名を借りるという前提で自分が出来る範囲での依頼を受け始めたので、バタバタしてバレンタインのことが頭から抜けてしまっていたのだ。

「遅れてでもいいから何かしらのことはしたいなー」

「無理にするものでもないでしょうに」

何かしらのことをしたいと言うハーキュリーに、マティルーネは無理してまでするものじゃないと諭す。
もちろん、マティルーネもハーキュリーを諭しても無駄なことくらいは理解しての発言だが。

「マティルーネはいいかもしれないが、私の場合良心がそれを許さないんだよ」

というハーキュリーの返しには、マティルーネはふーんと興味が無さそうに聞き流す。

「どうしよっかなー」

考えてもすぐには解の出ない問題を考えながら、ハーキュリーはゴルダに何をしようか考えるのであった。

そして帰宅後。
自分専用に買い与えられたパソコンで依頼メールが入ってないかを確認しながら、ハーキュリーはネットでなんやかんやとゴルダに何をしようかと探す。

「何かをあげるのは焼き直しな感が強いし、かと言って何かをす…ゴルダ相手じゃ無理だなー」

などと呟きながら、メールを返しながら調べ物をするハーキュリー。
2画面環境だからこそなせる技である。
本当は3画面にするつもりだったが、ハーキュリーが2画面でいいと言ったのでこの状態に落ち着いている。

「うーん」

そうこうしてハーキュリーが悩んでいる一方で、ゴルダはというと

「ギリギリか」

植え付けのスケジュールの進捗具合を計算し直し、今月中に終われるかどうかの判断をしていた。
ちなみに、計算の結果はギリギリ。
もはや1日の余裕すらない状況だ。

「無茶し過ぎてない?」

コーヒーを持ってきたミリシェンスに言われて、ゴルダはそうでもないと返すがミリシェンスは

「ハーキュリーも居るんだから頼りなさいよ、自分だけで仕事抱えて潰れるなんて愚の骨頂よ」

時には誰かを頼れと、日頃から言っている言葉を投げかける。

「まだその時ではない」

それに対してゴルダは、まだその時ではないと一蹴してミリシェンスを呆れさせた。

時は変わって夕食時。
今日はゴルダが作る日だったので、ミリシェンスは任せっきりにしていた。
なお、今日のメニューはクラムチャウダーにガーリックトーストとサラダという、ありきたりといえばありきたりなもの。
そしてワインを飲みながら食事しているゴルダを、ハーキュリーは悟られない程度にじっと観察していた。

「今日もいつもと変わらないな」

そう思いながら食事の傍ら観察を続けていると、突然ゴルダが違和感を感じた時にだけ見せる顔をしたので、ハーキュリーはうん?と思い

「どうしたゴルダ?」

あくまでもさりげなくどうしたのかと聞く。
するとゴルダは

「筋肉痛のようだ。もっとも俺は痛覚がないから違和感しか感じないが」

筋肉痛だと返し、首や肩を軽く回す。
ゴルダが筋肉痛であるというのを聞いて、ハーキュリーの頭上で閃きの電球が光った。

「私が風呂の後に揉んでやるよ」

自分が揉む。
それなら大した手間もかからずに、バレンタインに何もできなかったことを清算できるとハーキュリーは考えたのだ。
それにゴルダはふうむと頷いて

「何を考えてるかは知らんが、その好意は受け取ろう」

あっさり了承してくれた。
ハーキュリーはこれに内心やったぜと、とあるクイズ番組で正解して自慢げにポーズを決めた解答者と同じポーズを取る。

「じゃ、さっさと風呂入れよな?」

「言われずとも」

夕食中、ゴルダとハーキュリーの間でこれ以上の会話はなかったとか。

そして夕食後。
わくわくしながらゴルダが風呂から上がるのを待つハーキュリー。
揉むだけなので、やましい考えはないと言えばないが、あると言えばあった。

「楽しみだなー」

そうこうしている間に、ゴルダが風呂から上がってきた。
いつ急な依頼が入るかも分からないので、服装は相変わらずだったが。

「さあゴルダ。こっち来いよ」

ハーキュリーがこっちへちと手招きして、ソファに座らせようとした瞬間。
空気の読めないゴルダの携帯が鳴る。

「はいゴルダ。…そうか、すぐ行く」

どうやら急な依頼が入ったらしく、ゴルダはハーキュリーに

「帰ってきてから頼んだぞ」

と言って颯爽と出掛けてしまう。

「どうしてこう運命って無慈悲なんだろうな?」

「そんなものよ」

やや放心状態でそんなことを呟いたハーキュリーに、マティルーネはそんなものよと慰めになるかどうかも分からない言葉を投げかけた。

なお、ハーキュリーはちゃんと後でゴルダのマッサージはできたので何ら問題はなかったという。

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フィルスとメリエル

「ねえ」

「なんだい天才さん?」

「私の名前は天才さんじゃなくて、メリエルよ。意思飛ばして会話してくるのやめてくれない?」

ゴルダの家で、フィルスとメリエルがそんな会話を交わしている。
フィルスがゴルダの家へ来る事は珍しくはないのだが、メリエルとフィルスが一緒にゴルダの家に居るのは初めてのことだ。

「それは無理な相談だね。僕は声帯が生まれつき弱いから会話は意思を飛ばしてやるし、詠唱も無声詠唱だよ」

メリエルに意思を飛ばして会話をするのをやめてくれないかと言われて、フィルスは自分が生まれつき声帯が弱いのでこうしてしか会話ができないと理由を話した。
それを聞いたメリエルは、苦虫でも噛み砕いたような表情をしてフィルスにそれは知らなかったわと謝る。
なお、フィルスはメリエルに自分が説明してなかったのでおあいこだと返した。

「あらあら、仲がよろしいようで」

「何よその皮肉たっぷりな言い方は」

台所で黙々と菓子作りをしているゴルダをよそに、メリエルとフィルスに茶を淹れてきたミリシェンスの一言に対してメリエルは皮肉かと突っ込む。
メリエルに皮肉かと言われたミリシェンスは、微塵にも気にしていないような様子で3人分の茶をカップに注ぐ。
なぜ3人分なのかというと、マティルーネは紅茶などは飲まないからだ。
仮に飲むとしても、ゴルダかミリシェンス手製のニンジンジュースか水くらい。
それ以外は自分から進んで口にしようとはしないのだ。

「天才なんだから察すことぐらいできないの?」

フィルスとのやり取りを側で聞いていたマティルーネに刺さる一言を言われて、メリエルは

「いくら私が全世界期待の天才でもできる事には限界があるのよ。ゴルダみたいな観察眼に長けてるわけでもないし」

天才も万能ではないと逃げの台詞を吐く。
マティルーネはメリエルの返しにふうんといつもと同じ反応を示し、ミリシェンスにアイコンタクトでニンジンジュースをちょうだいと訴える。

「ちょっと待ってて」

マティルーネのアイコンタクトに気づいたミリシェンスは、また台所へと向かう。
なお、メリエルはミリシェンスが注いだ紅茶に手をつけながらフィルスを見る。
フィルスは何やら本を読んでいるようだが、その本の文字が幻獣語だったのでメリエルはタイトルを読むのをためらう。
それはなぜかというと、幻獣語には名詞や動詞などの他に、ドランザニア語やエルフ語にもある詠唱詞というものが存在する。
詠唱詞は、ドランザニア語とエルフ語には詠唱詞と名詞や動詞などと明確な区別の定義があるのだが、幻獣語にはそれがない。
そのため、ちょっとした挨拶だけでもそれ自体が呪文となって、詠唱と判断されてしまうことが多々あるため、幻獣語の習得はエルフ語などと比べてハードルが高いのだ。
だが、それでもメリエルはマティルーネと通訳を通さずに会話をするために幻獣語を1週間ほどで習得した。
だがそれでも、下手に幻獣語を読むのははばかられているのが現実なのだが。

「メリエル、この本のタイトルが知りたいの?『闇の応用魔法入門–月と星の属性』だよ」

じーっと自分が読んでいる本を紅茶片手に凝視しているメリエルに気づいたフィルスは、首輪の辺りを掻きながらメリエルに本のタイトルを教える。

「お、教えてもらうまでもなく読めてたわよ。ただ詠唱にならないか気掛かりだっただけで」

それに対してメリエルは、実は読めていたのよとドヤ顔でフィルスに言う。
だが、それは半分嘘である。
実際は『闇の応用魔法』までしか読めず、それ以降はああでもないこうでもないと頭の中で解読を試みていた。

「知識って、使わないと忘れていくものだよ?いくらメリエルが天才でもね」

知識は使わないと忘れていくものだと言われて、またもや刺さったメリエルはうぐぐと唸る。
それにマティルーネはメリエルの頭に乗って

「図星なの?」

と煽ってきた。
さすがに2人に強く言うことはできないため、メリエルは紅茶を飲んでその場をやり過ごす。
なお、この後メリエルはゴルダにまた別件で図星を突かれる事になったとか。

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実家へ引っ越すかどうかの決断

しとしと雨の降る春先のある日。
ゴルダとミリシェンスは、食卓テーブルで互いに向き合って座っていた。
特に何か重要なことを話すわけでもなく、ただただ真剣な目付きで互いを見合い、静寂の時を過ごす。
だが、それも長くは続かなかった。
今まで沈黙を守っていたミリシェンスがゴルダにこう言う。

「もう一度だけ聞いていい?本気なの?」

「もう一度だけ答える。確定事項ではないと」

おうむ返しめいた会話が二者の間で生じた後、再び静寂が訪れた。
一体何があったのだろうか?
それは昨日にまで遡る。

「引っ越せだと?」

シアではなく、アルカトラスが呼んでいるというメールをサフィから受け取り。セイグリッドへやって来たゴルダ。
アルカトラスのところへ赴いた直後、ゴルダは単刀直入にセイグリッドへ引っ越さないかと聞かれた。
あまりに唐突な提案に、ゴルダはアルカトラスに

「何でまた引越しを勧めるんだ?」

その理由を問う。
理由を問われたアルカトラスは、書類を処理する手を一旦止めてゴルダの方を見るとこう言った。

「父方ではあるが、実家に居た方が何かと不便はしないだろう。それにバハムードとサマカンドラも汝と暮らすのを望んでいる」

実家に戻って来いという理由と、弟と妹が自分と一緒に暮らすことを望んでいるという理由。
だが、ゴルダはこの理由を聞いてもいいすぐに首を縦に振れなかった。
そもそも、自分とアルカトラスやバハムードにサマカンドラとは住んでいる世界が大きく異なっている。
生き方にせよ、生活の仕方にせよだ。
そのため、ゴルダはその場での返事を渋ったのだ。
無論、アルカトラスとてゴルダが住んでいる世界が違うことはよく理解していた。
それを加味した上であえて聞いたのである。

「すぐには返事が出せんな祖父さん」

ゴルダがしばらく考えて出した答えは、保留。
逃げているように見えて、そうにも見えないその答えにアルカトラスは軽く頷いて

「急ぎ答えを求めるものではない。よくよく考えて出した答えを聞かせて欲しい」

よく考えた末の答えを出すようにと言い、その日は帰した。

そして今日。
ゴルダはミリシェンスにその話を持ち出して今この状況に至っている。

「私が首を突っ込むことじゃないわ。あなたがどうしたいか、それだけよ」

やがて、ミリシェンスのあっさりした返答にゴルダはそれもそうだなと頷くと

「大方考えはまとまった。あとは祖父さんにどう話すかだ」

その日はミリシェンスとの話を終えた。

その翌日。
ゴルダはまたアルカトラスの所に居た。
だが、今日はサマカンドラやバハムードも同席している。
そう、決断を告げるためにだ。

「では汝の答えを聞こう」

淡々と言い放ったアルカトラスに、ゴルダはうむと頷いて口を開く。

「やはり一緒には住めない。理由は簡単だ。俺はあの場所とあの家が好き、それだけだ。そこまで周りに民家はなく、あるのは空き地や畑、そして森だけ。ミリシェンス達と静かに暮らすにはこれ以上最適な場所はない」

ゴルダが下した決断は、否だった。
その理由は、セイグリッドでは静かに暮らせそうにないから。
それを聞いたアルカトラスは、そうかと呟くと

「ならば無理強いはしない。汝の好きなようにするといい。だが、今まで通り時折帰って来い。それだけは守るのだぞ?」

「そうだぞ兄貴」

「これからもたまには変わらない兄さんの顔を見せに来てね」

アルカトラス、バハムード、サマカンドラの三人に今まで通り時折帰ってくるように言われ、ゴルダは言われなくともという目線を投げかけたのであった。

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小説(一次) |

お返しは慎重に

その日、ゴルダは真剣に悩んでいた。
それはもうすぐやってくるホワイトデーの時のコロン達へのバレンタインのお返しについてだ。
あんな立派なものをもらってしまった以上は、それに見合うもので応えなければならない。

「四人別々が、それとも同じものか」

牧場からの帰り道、マティルーネをもふもふしているフウをよそにゴルダは何をお返しにあげるかを運転しながら考える。

「何考えてるの?」

「それに触れちゃだめ」

いつもの無表情な目付きと違い、思慮にふける真剣な目付きになっているゴルダにフウは何を考えているのかを問うが、何かを察したマティルーネに触れちゃだめと言われて、えーという顔をする。
なお、ゴルダはその問いに対しては

「何をか?それは今日は俺が晩飯を作る日だが、何を作るかが決まらないから悩んでいたのさ」

とそんな嘘をシフトチェンジしながら返す。

「怪しい…」

と、ジト目で怪しんできたフウに、ゴルダは何の反応も示さず。突如スマホに入っている音楽を流し始めた。
これは、運転中にゴルダが聞かれたことをはぐらかしたりするのによく用いる手段であり、これ以上は問いかけても答えてはくれなくなる。

「ちぇー」

それ以降、フウは帰宅するまでゴルダに一言も話しかけなかったとか。

「ただいま」

「あらお帰り」

「お帰りなさいゴルダさん」

そして帰宅後。
ミリシェンスとユウにお帰りと言われて、ゴルダは

「ああ」

とだけ返事をし、居間のソファに腰掛けて今月号の幻想と医学を読み始める。
そのゴルダのそっけない態度に、ミリシェンスはフウに何かあったのかと聞くが

「さあ?どうしたのか聞いたら晩御飯の献立決まらないって言われたよ。嘘だと確信しちゃったけど」

晩御飯の献立が決まらないと嘘を言われたと返され、結構何があったのかはわからずじまいである。

「もうすぐホワイトデーってのが関係あるのかも知れないわねえ」

ミリシェンスのその一言に、フウとマティルーネはそういうことねという顔をした。

「ねえ」

「ん、どうした?」

幻想と医学を読んでいるゴルダに、二時間ほど経ったところでミリシェンスが話しかけてくる。
ゴルダはそれに幻想と医学から目を離し、どうしたとミリシェンスに聞く。

「今日はあなたが作るんでしょう?そろそろ準備しないと間に合わないわよ」

「サボっちゃダメですよー?」

ミリシェンスとユウののその言葉で、ゴルダは晩飯のことを思い出して

「すぐ準備しよう」

と言って準備に取り掛かった。

その準備をしている最中も、ゴルダはコロン達へ何をお返しにしようかを考えていた。

「やはり四人別々ではなく統一した方がいいのかもしらんな」

だが、結局行き着いた解は四人同じものをあげるというものだった。

そしてやって来たホワイトデー。
朝からなんだかんだで準備をするゴルダに対して、ミリシェンスとユウはのんびり。
なおフウはゴルダに手伝わなくていいと言われ、ただボーっとしている。
いや、正確には掃除以外は手伝わなくていいと言われていて、その掃除が終わったのでやることがないのだ。

「結局四人分同じのを用意したが、反応がどうかだな」

事前にコロン達からは今日来ることを告げられていたので、こうしてゴルダは朝から準備しているのだ。

「お邪魔ー」

「します」

「こんにちは」

そうこうしている間に、コロン達がやって来てしまう。
なおこの時ゴルダは、全員分の昼食作りの真っ最中でコロン達が来たことに一切気付いていない。

「あら、昼食の準備中でしたか」

「朝からずっとね」

コロンとミリシェンスがそんな会話をしている間、ココとチーノはまたゴルダに断りもなくゲームを引っ張り出してフウとやり始め、モカはユウとマティルーネとのんびりしている。

「お茶淹れてくるわ」

「わざわざすみませんね」

ミリシェンスが茶を淹れてくると言ったのに、コロンはわざわざすまないと言う。
ミリシェンスはそれにいいのよと言わんばかりの顔をして台所へ。

「順調?」

「ぼちぼちだ」

昼食用にパスタを深鍋で茹でる傍ら、ソースを作っているゴルダにミリシェンスは進捗を問う。
ゴルダはミリシェンスの問いにぼちぼちと返し、かなり熱くなっているはずの深鍋の取っ手を素手で掴んで流しの湯切り籠に中身を流す。

「見た感じ、少し鍋から上げるのが早かったようね」

「どうせなら固めがいいさ」

パスタの茹で上がり具合を見たミリシェンスが少し早いと言ったのに対し、ゴルダは固めがいいと返す。

「コンロ一口貸して、お湯沸かすから」

「構わんぞ、後はソースだけだからな」

そう言ってスッとコンロを一口貸したゴルダを見て、コロンとモカは

「強い相互信頼の結果ね」

「私も雇い主とあそこまで信頼築けたら良いんだけど」

二人を少し羨ましそうな目線を投げかけた。

一方、ココとチーノとフウはというと

「うわー」

「ネス強すぎ」

「何このヨッシー」

スマブラに夢中で、こちらに一切気がない。

「無邪気な心を忘れないって、とても大事だと思うの」

唐突なマティルーネの一言に、ユウとコロンとモカは面食らった顔になって

「えっ…うんうん、そうね。ああいう心を持ち続けるのは大事ね」

「自制が利く大人の心と、純粋な子供の心。年を取っても若々しい人ってそれらを持ってますからね」

「純粋すぎるのもどうかとは思うんだけど」

それぞれに思いを語った。
それにマティルーネは、くすくすと若干笑ったがそれには誰も気付いていない。

「お茶入りましたよ」

とそこへ、ミリシェンスが淹れたての茶を持って戻ってきた。
するとコロンがミリシェンスのところへ歩いてきて

「持ちますよ」

とミリシェンスから茶を受け取る。
ミリシェンスはそれに悪いわねと言い、自分は食器棚からカップを取りに行く。

「ふう」

「おいしいですわ」

お茶でくつろぐ三人と、スマブラで盛り上がる三人に、黙々と昼食の用意を進める一人。
それぞれが思い思いに違う空気を同じ空間に作り出しているのは、なんとも不思議である。

「昼飯の時間だ」

やがてゴルダから声がかかり、皆が皆食卓テーブルへ集う。
テーブルにはカルボナーラとサラダがそれぞれ並べられ、どれもおいしそうだ。

「いただきます」

「構わず食え」

こうして、楽しい昼食が始まった。

「やはりミリシェンスさんに引けを取らない腕ですね」

「暦と腕前が比例するかはそいつ次第だからな」

モカとそんな会話しながらも、淡々とカルボナーラを口に運ぶゴルダに対し、ココとチーノはイタズラをしようとしてはミリシェンスに咎められるを繰り返している。
なおコロンは一切話をせず、ユウとフウは互いに食べさせ合っていた。
なお、マティルーネはガツガツと食らうレルヴィンをよく食べるのねという目で見ている。

「ティッシュあります?紙ナプキンでも構わないんですけど」

突如コロンにそんなことを聞かれ、ゴルダはカルボナーラを食べる手を止めて紙ナプキンをコロンに差し出す。

「ごめんなさいね」

そう言ってコロンは紙ナプキンを受け取り、口周りを拭く。
そしてゴルダは、コロンに紙ナプキンを渡したことであることを思い出す。
それは、コロン達へのバレンタインのお返し。

「後で渡したいものがあるんだがいいか?」

ゴルダの一言に、コロンはきょとんとした顔で

「構いませんが、何でしょうか?」

何を渡すのですかと聞いてくる。
だがゴルダはそれには何も答えず、またカルボナーラを口へと運ぶ。

「変ですね。怪しいものをこれまでに一度も貰ったことはないからいいんですが」

コロンのその一言は、ゴルダを信用そているからこその発言であった。

やがて食事を終え、生チョコケーキのデザートを楽しんでいるコロン達にゴルダがバレンタインのお返しが入った箱を持って来た。
持って来た箱は一つだが、中身は四つあるのでその辺は全く問題がない。

「誰が開ける?中身は三つだから心配するな」

「私が!」

緑茶の湯のみ片手に聞いてくるゴルダに、真っ先に反応したのはココ。
風の属性の使い手なだけあってか、コロンより速くその箱を奪い取って箱を開ける。
中に入っていたのは、色の違う三枚のストールが入っていた。
ちなみにこのストール、竜毛や幻獣毛を使って作られたもので、それぞれ属性が違う。

「何にするか考えたが、やはりおしゃれの一つくらいはしてほしいからな。これにした」

「青と緑と…これはワインレッドでしょうか?」

中に入っていたストールは、それぞれ青と緑に銀にワインレッド。
何故緑が二つ入ってないのかは謎である。

「好きなのを選べ」

ゴルダがそう言うやココは真っ先に青を、チーノは緑、モカはワインレッドを、コロンは残った銀のストールを取る。
コロンとモカはあっさりストールを身に纏えたが、ココとチーノはこれどうやって身につけるの?と四苦八苦していた。

「こうかな?」

「それだと忍者だ」

頭巾のようにして、口元を覆うようにストールを身につけたココにゴルダはそれだと忍者になると指摘。
だが正しい付け方はあえて教えない。

「ストールはね…こうするのよ」

やがて、二人して忍者のようにストールを身につけたココとチーノを見かねたミリシェンスが二人のストール外して、肩にかけるようにしてつけてやったt

「へえー、こうやって身に纏うんだ」

「マントみたい」

四人の嬉しそうな様子を見て、ゴルダは満足そうだったという。

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