氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

家主居ぬ間に

それは、いつものようにゴルダに掛かってきた電話から始まった。

「はいこちらゴルダ、用件は?…ほう、なるほど」

いつものドランザニア語ではなく、英語で電話をしているゴルダを見て、ミリシェンスはおや?という顔をする。
ゴルダが地球などの別の世界へも依頼で赴くことは聞かされていたので、特段気にはしなかったもののやはり出張までして依頼を受けに行くという点では、どれくらいの期間なのかが気になって仕方ないのだ。

「はい、了解。それじゃその日に」

「誰からの電話だったんですか?」

ゴルダが電話を切り、スケジュールアプリをいじり始めたのでミリシェンスはどうかしたのかと聞く。
するとゴルダは、スケジュールアプリをいじる手を一旦止めて

「ああ、明後日からちょいと日本に行かなければならなくなった。依頼でな」

「日本にですか。それはまた遠いところへ行くのですね。それで、何日ほど行かれるので?」

日本に依頼で行かなければならなくなったと聞いて、ミリシェンスは何日くらい行くのかを聞く。
するとゴルダはは少しの間顎に手を置いて思慮にふけた後

「短くても1週間だな、さっきの電話の主以外にも10くらいの依頼を日本で受けなければならん。2週間と少しは見てていいだろう」

短くて1週間だと話し、またスケジュールアプリをいじりだす。
今までなら、レルヴィンとマティルーネはイレーヌに預けて出張に行っていたのだが、今はミリシェンスが居るので、その必要もない。

「ミリシェンス、留守の間は頼んだぞ。それから、明後日の日本行きの飛行機取っといてくれないか?どうせカードで払うからどこでも構わん」

「日本のどこ行きですか?」

留守の間は頼んだぞと言いつつ、ミリシェンスに明後日の日本行きの飛行機を手配してくれと言うゴルダ。
それにミリシェンスは、日本のどこ行きかと聞き返す。

「ドランザニア発の成田行きで取ってくれ。空いてないなら羽田でもいい」

「オッケーです」

こうしてゴルダが準備をしている間、ミリシェンスは飛行機を取ることになった。

そしてゴルダ出張の当日。
行くところがところなので、首輪以外は全て外し、ジーンズに長袖のシャツと言った姿のゴルダは

「何かあったらメールしろ、いいな?ただし急を有する場合は電話しろ。スカイプの使い方は分かるな?」

「ええ、大丈夫です」

ミリシェンスに万が一の時の自分への連絡手段を確認し、じゃあ行ってくるとスーツケースを担ぎ、座標指定テレポートで空港へ行ってしまった。

「さて、今日から2週間ほど私がこの家の代理よ。しっかり努めないと」

ゴルダを見送った後、ミリシェンスは家の中へ入って今朝の朝食の洗い物を片付けだす。
アルガントとウラヘムトは、相変わらず朝食後は部屋に戻ったっきり出てこず、マティルーネとレルヴィンはバルコニーでくつろぎ、氷麟はリヴァルスに避暑に行っていて居ない。

「相変わらず多いわねえ」

1人と4匹分の食器なので、その量は馬鹿にならない。
だがそれでもミリシェンスはちゃっちゃと食器を洗い終え、流しに溜まっている生ゴミを手に取る。

「食べ残しが無いのは良いんだけど、昨夜と今朝とでこんなに溜まるものなのね」

昨夜はゴルダが、今朝はミリシェンスが食事を用意したのだが、どちらも余らず足らずの量を作っていたのでミリシェンスが言うように残飯はない。
だが、1人と4匹分という食事の量は半端ではない。
ましてや、レルヴィンという大飯食らいと、それなりには食べるゴルダが居るので尚更だ。

「とにかくこれを捨てないと」

ミリシェンスは生ゴミの入ったネットを掴み、畑の方へと向かう。
生ゴミは全て畑に捨てて肥料にするのである。

「まだまだ暑いわね」

バルコニーのテーブルの上でややだれているマティルーネを見て、ミリシェンスはふふっと笑いながら言う。
それにマティルーネは何なんだよという顔をしたが、ミリシェンスはその時には既にマティルーネに背を向けていた。

「お昼は何にしようかしら。トマトがいい感じだし、冷やしうどんにトマトでも乗せようかな?」

生ゴミを捨て、畑の作物を見ていたミリシェンスはトマトが良い感じに熟しているのを見て昼食のことを考える。
なにしろ、これから最低でも1週間は自分を含めた4匹の食事を考えていかなければならないのだ。

「うーん、次は何しましょ」

家の中へ戻りながら、ミリシェンスは次は何をしようかを考える。
しかし、家の中へ戻った途端。やることが見つかった。
それは何かというと、洗われずにほったらかしにされている洗濯物に、乾いているのに干されたままの衣類やタオルだ。

「ゴルダ様も取り込んでから行けばいいのに、やれやれね」

そんなことをミリシェンスが言っている時、ゴルダは何をしていたのかというと

「ではゴルダ様、日本の成田空港まで手荷物1点お預かりします」

「どうも」

1時間近く待たされてようやく搭乗手続きを終わらせ、さっさと出界出国手続きを済ませようとしていた。
ゴルダが乗る便の出発時刻までは3時間ほど余裕があったので、日本で受ける予定の依頼を全て確認しようとメールを開く。

「関東近辺で6件、2件は中部、残る2件は九州の方だな」

一応の確認を済ませ、ゴルダは出界と出国手続きを済ませるためにその場所へと向かうのであった。

「ふう、終わった終わった」

その頃、ミリシェンスは汚れ物を洗濯機に突っ込み、乾いていた衣類とタオルを畳んで片付け、極限まで冷やした冷やして飲むタイプの紅茶を片手にくつろいでいた。

「家事を全部一手に引き受けてやるってのも、久々にやると大変だわ」

前の契約者のところではミリシェンスが従者として家事の全てを請け負っていたが、ここでは契約者であるゴルダも家事をするので、ミリシェンスの労力は半分で済んでいた。
しかしそれでも、今日のようにゴルダが長期間家を空けるとミリシェンスが必然的に家事を全て行わなければならない。

「あっそうだ、冷蔵庫の中身見ないと」

昼食の準備をしなければと立ち上がったミリシェンスは、ふと冷蔵庫の中のことを思い出し、冷蔵庫を空ける。
中は案の定、ゴルダの出張が急に決まったためろくなものがない。

「あらあらどうしましょ、ネットスーパー使っても良いんだけど…」

ふと、ゴルダの軽トラを運転して買い物に行くという悪しき考えが浮かんだが、それをやってしまうと後でゴルダにバレた時に何を言われるか分かったものではないのでやめておくことにした。

「とりあえず注文しておかないと」

そう言って、ミリシェンスはタブPCからネットスーパーへアクセスして食材を注文するのであった。

やがて時間は昼時に。
ミリシェンスは畑からトマトを取り、めんつゆとうどんを用意して自分とアルガントとウラヘムトの分を用意。
次にマティルーネ用の人参とレルヴィン用のも用意して

「昼食よー」

とアルガント達を呼んだ。

「いただきます」

「どうぞ」

そして全員が揃ったところで昼食を食べ始めた。
なお、昼食中は誰1人として話すことはなく終わったという。

そんなこんなで、ミリシェンスの留守番の1日目は過ぎていくのであった。
なお、その後ゴルダが帰ってくるまでの間、大したことはなかったようである。

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小説(一次) |

ゴルダと平行世界の本

「そう、エインセルスに会ったのね。それで?」

無数の時計が掛けられた家の中で、その時計を一つ一つ全て見ながらエーヴィヒは静かに呟く。
ゴルダは出されたコーヒーに一口だけ手を付けてから単刀直入に話す。

「第6平行世界に関する情報がほしい、エインセルスはお前かに話して手に入れろと言っていた」

第6平行世界に関する資料がほしいと言ったゴルダに、エーヴィヒは少しの沈黙を置いてから書き物をする手を止めて椅子から立ち上がる。
そして、ゴルダから見て右側にある本棚から千ページは超えていそうな本をその重さでよろめきながら取り出す。
どうやらこの本が第6平行世界のことが書いてある本のようだ。

「ものすごく重いから気をつけて」

「全然軽いな、装甲車のほうが重い」

重いので気をつけてと言われて本を渡されたゴルダだが、エーヴィヒが言うほど重くはなかった。
なお、軽いと言われたエーヴィヒは微妙に渋い顔をしていた。

「そうそう、セイグリッド城にも平行世界に関する資料はあるはずよ。シアに聞いてみるといいわ」

「不足していたら頼るとしよう」

その後ゴルダはそそくさと家に戻った。

「お帰りなさいませ、どこに行ってたんですか?」

「野暮用だ、それと晩飯の用意頼むぞ。やることがある」

「承知です」

家に帰ってくると、ミリシェンスがどこへ行っていたのかと訪ねてきたがゴルダは野暮用だと返し、居間のテーブルの上に例の本を置いて、やることがあるのでミリシェンスに夕食を作るように頼む。
ミリシェンスはそれに頷き、台所の方へと引っ込んだ。

「どこから読み始めたものか」

千ページどころか、数千ページはありそうなその本を開き、どこから読み始めるかと目次を目でなぞっていくゴルダ。
手始めに目をつけたのは、第6平行世界がどのような状態なのかというページ。

「この原点世界とさほど変わらんのか…ただ変わっているといえばドランザニアの国土が大分狭まっていることか。スリュムヴォルドとアストライズに両ばさみにされているな」

最初に目に入った世界地図では、この世界よりもドランザニアの国土がずっと狭いということだ。
その理由については書かれていないが、大方アルカトラスがやったことであることは予想が付く。
なお、国土がこの世界よりも広くなっているのは、スリュムヴォルドやアストライズだけではない。
若干ながら、セイグリッドやリヴァルスも国土が広くなっていた。

「となると、この世界ほど第6平行世界のドランザニアは力が無いということか?」

などと思いながら、各国の経済などの状況を記したページを開くとそれは確信へと変わった。
この世界ほどあの世界のドランザニアは経済は強くなく、逆に賢竜の里のあるリフィルがドランザニアを抜いていたのである。

「賢竜の里を前面に押し出しすというのをアルガティアが自らやるはずもなし。誰のてこ入れなんだ?」

あれこれ考えていると、マティルーネが小突いてきたのでゴルダがその方を見るといつの間にか茶が置かれていた。
どうやらミリシェンスが淹れてくれたようだ。

「ふぅむ」

その茶をぐいと飲みながら、ゴルダはさらに読み続ける。
一番気になったのは、あの世界でのリヴァルスの様子。
姿は違えど自分が国王をしているので、気になって仕方がないのだ。

「こっちでは主要産業は鉱業だが、向こうでは鉱業に農業までやっているのか」

向こうの世界のリヴァルスは、万年氷や氷結晶などの鉱業の類の他に農業までやっているようである。
深堀りして読んでいくと、国王が極寒地でも育つような農作物の品種改良を自らそれに携わって行っていると書いてあった。
そのため、永久凍土でも雪の上でも氷山の上でも育つ農作物が誕生してしまったとも書いてある。

「やるじゃないか」

そんな自画自賛めいたことを言いつつ、ある程度読み進めたところでミリシェンスに呼ばれて中断。
晩飯の後も本を読み進め、ゴルダはある結論へとたどり着く。
それは、自分以外さほど変わりはないということだった。

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小説(一次) |

メリエルとミリシェンス

夏空にモクモクと雲が湧いて不快な暑さが感じられ始めたある夏の午後。
メリエルはいつもの調子でゴルダの家に事前連絡もなしに来ていた。

「期待の天才のメリエル様が来たわよー」

これまたいつものようにお邪魔しますも言わずに玄関を開けて家の中へ入るメリエル。
ゴルダから随分前に許可を得ているので全く気にしなくなっている。
だが今日は違った。
家の中へ入った瞬間、奥の方からなぜか手裏剣が飛んで来たのだ。

「ちょっと、危ないじゃない!」

意外と見切れる投擲の仕方だったので、メリエルは即座にしゃがんで手裏剣を避ける。
一方避けられた手裏剣は、そのまま外へと飛んでいった。

「私の手裏剣投稿を避けるとは、やるわね。どこの馬の骨かは分からないけど、ゴルダ様の家に勝手に、しかも事前連絡なしに入って来るとは何者なんでしょうかね?」

すると、奥の方からフィルスやイファルシアとも違う、白い前掛けエプロンをした青紫の毛のカーバンクルが次の手裏剣を構えて立っていた。
メリエルはそれにえっ?という顔をしていたが、向こうが自分に明確な敵意を持っていたので大剣を構えようとしたが、それより早く青紫の毛カーバンクルが再び投擲した手裏剣に阻止される。

「今出ていけば深追いはしないわ、どうする?」

今度はポーションのようなものを持って距離を縮めて来る相手に、メリエルは内心どうすりゃいいのよと思っていた。

しかし次の瞬間

「ミリシェンス、俺の友人に何してんだ」

「あらあら、ご友人でしたの?それよりどういうことか説明してくださいな」

庭の畑から戻って来たゴルダが青紫の毛のカーバンクルを制す。
すると、ミリシェンスと呼ばれたカーバンクルはゴルダに向き直り、どういうことなのか説明してよと迫る。
それにゴルダはやれやれと言いながらミリシェンスに説明する。

「あいつ、いつの間にか従者雇ってたのね。それにしても物騒な従者だこと」

さり気なく頭に乗って来たマティルーネを触りつつ、メリエルは青紫の毛のカーバンクルこと、ミリシェンスに説明するゴルダを眺める。
それから30分ほど経っただろうか、ミリシェンスはようやく納得したような顔で

「最初に説明して欲しかったわ、友人が居るならそうと仰ってくださいな」

「俺の能力を不死以外丸々コピーしたようなお前なら、教える必要はないと思ってたんだが」

「記憶のコピー及び共有まではできませんのよ?」

「なんだそうか」

と、ここで30分あまりほったらかしにされていたメリエルが

「いつまで私をほったらかしにするつもりよ!」

と言ったことで、ゴルダとミリシェンスはようやく話をやめる。

「…とりあえず茶を、あとメリエルに水羊羹」

「承知です」

ゴルダに無言で座るよう言われ、メリエルは不機嫌そうにソファに座る。
メリエルがソファに座ると、マティルーネは頭から降りて膝に座った。

「あのミリシェンスってカーバンクルは誰?前来た時には居なかったけど?」

ひとまず落ち着いて機嫌を直したメリエルは、改めてミリシェンスが何者なのかを聞く。
ゴルダはそれにソファに乗ろうとしたレルヴィンを制しながら

「依頼で貰った魔法書に名を書いたら召喚された、それだけだ。それ以降は俺が不在の間の家事なんかを任せている」

依頼で貰った魔法書に名を書いたら召喚されたと返す。

「ふーん、意外と役に立ってるのね。でも手裏剣投げて来るのはどうなのよ」

メリエルの手裏剣を投げてくるのはいかがなものかという一言に、ゴルダは

「それは俺のミスだな、召喚時の契約者のコピー能力を過信していた」

自分のミスだとさらっと流す。

「はいお茶です。それと水羊羹」

そこへ、ミリシェンスが割り入るようにして茶と水羊羹を持ってきてテーブルの上に置く。
ゴルダは何も言わずに茶をすすり、メリエルは水羊羹を切り分けて口へ運ぶ。

そんな2人を見て、ミリシェンスはメリエルの方を数十秒じっと見た後に

「なるほど、そうなんですね」

1人何か納得したような一言を漏らす。

「何が分かったってのよ?」

メリエルの問いにミリシェンスはふふっと笑って

「素質という器の大きさかしら、それなりに大きいのね。でも活かせてないみたい」

と答える。
それにメリエルは

「余計なお世話よ」

とだけ返し、切り分けていた水羊羹を再び口へ運ぶ。
一方、それを見ていたゴルダはどこまで俺に似ているんだと言いたげな目線をしながら茶を全部飲み干す。

「ところで気になったんだけど、あんた従者なのにその前掛けエプロンだけでいいの?」

水羊羹を食べ終えたエリエルにそんなことを言われ、ミリシェンスは必要ですかね?と言いたげに首を傾げる。

「そんな外出るわけでもなし、その上ミリシェンスは畑仕事もするからその前掛けエプロンもすぐ汚れる。欲しいなら新調するのも考えるが」

そんなミリシェンスを見て言ったゴルダの一言に、ミリシェンスは着れるならばという返事をする。
その返事にゴルダはならば考えておこうという返事をし、台所へ行ってしまう。

「ところであんた、マティルーネよりふわふわしてそうね」

台所へ行ってこちらを見ていないことを確認したメリエルは、ミリシェンスに意味深な一言を言う。
それにミリシェンスは何ですかと言わんばかりの顔をして

「これでも毎日自分で手入れしてるのよ、大変だけど」

毎日自分で手入れしていると少し自慢げに言う。
それを聞いたメリエルは、そっとミリシェンスに手を伸ばして触れた。
するとミリシェンスはくるっと一回転してメリエルの手を避ける。

「今触ろうとした?」

「いいじゃない、本当にふわふわしてるか確かめても」

触ろうとしたかと聞いてきたミリシェンスに、メリエルはふわふわしているか確かめるために触ってもいいじゃないとまた触ろうとする。
しかし今度は手が届かなかった。

「そういうのに目がないの?」

意地でも触ろうとするメリエルに、ミリシェンスは少し意地悪そうに聞く。
それにメリエルは

「あったりまえでしょ、もふもふなら触らないと損でしょ」

ドヤ顔でそんなことを言う。
するとミリシェンスはしょうがないわねという顔をして

「額の石触ったら承知しないから」

額の石は触るなと念を押してからメリエルに近寄る。
そしてメリエルはミリシェンスの頭をそっと撫でた。
確かに、ミリシェンスの毛は見た目通りにふわふわしていたが、それとは別に不思議な何かをメリエルは感じた。

「魔力吸って無いでしょうね?」

「私に触った者から吸おうと思えば吸えるけどい、今は必要ないからしないよ?」

その不思議な何かが魔力を吸っているのではないかとメリエルは勘ぐったが、ミリシェンスは必要がなければそんなことはしないと言う。
その後も何度かそれを感じたが、特に何も起こらなかったのでメリエルは気が済むまでミリシェンスを触っていたという。

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小説(交流) |

過去を紐解くようです

数十秒立っているだけで溶けるどころか昇華しそうな暑さに対して、日光が遮られて室温湿度が一定に保たれているセイグリッドの図書室。
その図書室の一角にある特殊な鍵がなければ入れない資料室の前で、ゴルダはマティルーネとミリシェンスと立っていた。
なおゴルダの手には、アルカトラスからイリアスを介して渡されたセイグリッドの国章が彫られた鍵が握られている。

「ここには滅多に入ったことがないな」

「何が保管されているんです?」

入らなければ始まらないと扉の鍵穴に鍵を差し込んで開けて入るゴルダに、ミリシェンスが何が保管されているのかを聞くが、ゴルダは答えず中に入る。
資料室の中は真っ暗でやや埃っぽく、長い間誰も入っていないことが伺えた。
暗視ができるのか、マティルーネがどこからか持ってきたランタンに火を灯し、中を一通り見渡すゴルダ。

「さて、ここに親父の遺品を保管してあると聞いたが」

ゴルダがここへ来た理由、それはアルカトラスからのある伝言が始まりであった。

「この城の図書館の資料室にロドルフォとエルナの遺品を保管してある。いつの日か渡そうとは思っていたが忘れていてつい最近思い出した。何か分かるかもしれんので持っていけ」

ゴルダ自身も、アルカトラスからあの日、家が焼き払われる前に使いに2人の遺体と遺品を回収出来るだけさせたと聞いてはいたが、どこにその遺品を保管しているかまでは聞いてはいなかった。
ちなみに、現在まで両親のロドルフォとエルナが殺された理由は、ドランザニア政府のある情報をロドルフォが掴んだためだということ以上の詳しいことは分かっていない。

つまり、ロドルフォがどんな政府の情報を掴んだのかが分かっていないのだ。
アルカトラスは、それに関する情報がロドルフォとエルナの遺品の中にあると確信しているようであった。

「知っちゃいけないようなことが書かれてある資料がたくさんありますね…っと、遺品はどこですかね?」

「ミリシェンス、マティルーネと上の方を探してくれ。俺は下の方を探す」

「承知しました」

ゴルダはミリシェンスにランタンを渡し、マティルーネと上の方を探すように指示し、自分は下の棚を探す。
ミリシェンスはマティルーネに上の方を探しますよと言って、自分の横で探させていた。

「『米ソ冷戦の裏側』…これじゃないな。『回避されなかったキューバ危機』…これも違う『第三次大戦後の地球』?、これも全く違う」

よく分からない地球の歴史に関する資料を無視し、目的の両親の遺品が入った箱を探すゴルダ。
その上ではミリシェンスとマティルーネが

「『崩壊しなかったソヴィエト』は全く違うわ、その『多世界同時崩壊』もよ。どうやらここの棚は違うようですね」

これじゃないかとマティルーネが出そうとしている箱に書かれているラベルを、ミリシェンスが読んで該当するものかどうかを照らし合わせていた。

「そのようだな、ここの棚は平行世界上のものもごちゃまぜの歴史の資料ばっかりだ」

今探している棚が歴史の資料ばっかりだったので、ゴルダ達は別の棚を当たる。
今度の棚は、ちゃんと「遺品」と棚のプレートに書いてあったので、ここにあるはずだと一行はまた別れて探し始める。

「なんだこれは、オイラーの遺品?こっちはファラデーと来た。アインシュタインのまであるのかよ。爺さんは一体全体こんなものをどこから持ってきたんだ?」

なぜか保管されている地球の偉人の遺品を横目に、ゴルダは『ロドルフォとエルナの遺品』というラベルの貼られた箱を探す。
その一方で、マティルーネとミリシェンスは

「わー、あの曹操の遺品もあるのね。どこから集めてきたのかしら?」

やはりこちらもハズレばかりを引いていたが、その保管されている遺品の人物などに驚いていた。
そして、探し始めて1時間ほどが経っただろうか、マティルーネが他に比べて厳重に封された箱を取り出そうとしたのでミリシェンスはゴルダを呼ぶ。

「『ロドルフォとエルナの遺品』、ビンゴだ。早速降ろそう」

近くのはしごを持ってきてその棚にかけ、箱を降ろすゴルダ。
何故もこんなに厳重に封されているのかの理由は定かではないが、見つけてしまえばこっちのものなので箱を持って一行は資料室を出る。

「さて、問題はどうやって封切るかだ。普通に切って封切れるような封され方じゃないぞ」

図書館の机の上にその箱を置き、どうやって開封するかを考えるゴルダ。
箱を封しているのは、魔法薬に浸して作られた特殊なテープで、ちょっとやそっとの刃物で切ることは出来ない。
すると、ミリシェンスがどこからかエーテルナイフを出してそのテープを紙でも切るかのように封切って

「これで封切れましたよ」

とにこやかに言う。
ゴルダはそうかと返し、箱を開ける。
中には日記や手帳の他に手紙とエルナのものと思わしき遺品がいくつか入っていた。

「これは一旦持ち帰ったほうがいいな」

そう言って、ゴルダは一旦この箱を持って帰って家で読むことに。

そして帰宅後。
ゴルダはミリシェンスに手伝ってもらってその遺品を全て広げ、両親の死に直結しそうな情報が書かれてあるものと、そうでないものを分けた。
結果的にその比率は3と7で、そこまで多くはなかった。
だが問題はここからである。
その中から情報を精査し、一つ一つつなぎ合わせていかなければならないのだ。

「ふあぁ、ちょっとお茶淹れてきますね。でもあと少しやったら今日は寝ませんか?」

「そうだな、今日はもう遅い」

適当に夕食で休憩を挟んで作業を続けていたが、気づけば時刻は12時前。
ミリシェンスが茶を入れるが、後少しやったら寝ようと言ってきたのでゴルダはそれに頷く。

「では淹れて来ますね」

ミリシェンスが台所に行ったのを尻目に、ゴルダはロドルフォの日記をペラペラとめくって何か書いてないかと調べる。
すると、日記のあるページから何か写真と手紙がずり落ちて来た。
その写真を手に取った時、ゴルダは何かを確信した。

「この写真、親父が写ってるな。だが他の奴らは何者なんだ?」

その写真には、ロドルフォを含め無表情な様々な種族の者が10人ほど写っていた。
どこかの建物の前で撮影されたもののようだが、それがどんな建物かは分からない。
そして、ふと裏面が気になってゴルダが写真の裏面を見ると、ロドルフォの字で

「もう手遅れだ、裏切るしか無い」

と走り書きがされていた。
裏切るしか無いとはどういうことなのか?この写真からでは全く理解ができない。
そこで、ゴルダは一緒にずり落ちてきた手紙の方を読む。
手紙にはこう書かれていた。

「一体何を考えているんだロドルフォ?今更抜けるなど出来ないことだ。もし抜けるというのならば、計画の全貌を知ってしまっている以上それなりの代償を払ってもらうことになるがいいのかね?君が考え直してくれることを願うよ」

計画というワードにピンと来たのか、ゴルダは既に精査済みの遺品の手帳の一冊を手に取る。

「お茶が入りましたよ」

エルナに緑茶を出され、ゴルダは手に取っていた手帳を置いて緑茶をすする。

「表面だけだが、大方分かった気がする」

「そうですか、でもまだ全てが分かったわけでは無いんですよね?」

「ああそうだ、だが表面さえ分かってしまえば全部分かってしまうような気もする」

そんな会話を交わした後、ゴルダは計画と組織という2つの両親が殺された理由に繋がるであろうワードを発見してその日は寝た。

それから数日経ったある日のこと、ゴルダはシアからあることを教えてもらい、一つの解とたどり着く。
それは何かというと、ロドルフォがドランザニアの聖子を集めている政府の組織にある意味でのスパイとして潜り込んでいたということ。
その聖子を集めている組織が聖子の能力を使い、この大陸のみならず地球までをも支配しようと言う計画を立ててていたこと。
そしてそれを知り、この計画のことを証拠とともにシアとアルカトラスに伝えようとしたがために、その組織の聖子に殺されたということをゴルダは知った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ミリシェンス=エルティーネ

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性別:♀のようだが実際は不明
種族:草と水と月のカーバンクル
年齢:概念なし
身長:イファルシアと同程度
性格:?(よく分からない)
イメージCV:弦巻マキ(ボイスロイド)
ゴルダが依頼でもらった魔法書に名を書いたところ、契約してしまったカーバンクルの従者。
赤目でイファルシアに似た感じの体型とフィルスと似た尻尾、青紫の毛に額の石も赤く、白い前掛けエプロンをしている。
家事の他に、畑をいじったりPC関係もいじれたり、武器のメンテナンスもできたりと本当にただの従者なのかが怪しい技術を所持。
なおこれは、ゴルダと契約した際の知識と技術と一部の記憶の共有により身に付いたものと、元来から持っているものがある。
なお、医者の技術は元来より若干あった。
月の属性は怒った時のみ使用可能になるが、激昂レベルまでいかないと使用できない。
ヘフィアという妹がいる。

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創作関係全般 |

契約した従者はカーバンクル

その日、ゴルダはいつものように依頼を終わらせて報酬を受け取った。
何の変哲もない、簡単なものだったのだが、その報酬の中に1冊の魔法書が混じっていたのがすべての始まりである。
その魔法書は、少し古びてはいたものの問題なく読める状態で保管されていたもののようだ。

「なんだこの魔法書は?」

「…依頼はもう終わったんだから早く帰ってくれ」

ゴルダは依頼主に聞いたが、依頼主は頑として何も答えず早く帰れと手で追い払う仕草をした。
それにゴルダは何がなんやらと思いながらも、その魔法書をしまって帰ることに。
どんな魔法書なのかは、帰ってから調べようと思ったのである。

「やれやれ、もうこんな時間か」

ゴルダが家へ帰ってきたときには、時刻は夜の7時前。
居間ではアルガントがレルヴィンとソファに座ってテレビを見ていた。

「おかかー」

「ああ帰ったぞ、飯はすぐ食いたいか?」

「今じゃなくてもいい」

飯をどうするか聞いたところ、アルガントは今じゃなくてもいいと言ったので、ゴルダは例の魔法書を調べてみることにした。
なお、ウラヘムトに聞かなかった理由は、食事の支度をすれば勝手に部屋から出てくるからである。

「さて、やるか」

食卓のテーブルに座り、あの魔法書を再び取り出し開くゴルダ。
魔法書に書いてある文字はゴルダが知らない言語で書かれており、翻訳魔法を使っても中途半端にしか読めないものだった。
そして、最初のページから順に読んでいっているうちに、あるページでゴルダはページをめくるのをやめる。
そのページには、読めない言語で書かれていてもどういうページかが、署名をする欄で分かった。
どうやらこの魔法書、何らかの契約をするためのものらしい。

「いったい何の契約の魔法書なんだこれは?」

どうにかこうにかして、書かれている言語を解読し、ゴルダが導き出した解は

「幻獣、従者、契約本?」

幻獣の従者と契約する本だということだった。
しかし、なんでこんな魔法書を報酬として渡してきたのか?
特に怪しい依頼主ではなかったので、ゴルダはそれ以上は考えずにどこからかペンを出して

「面白そうだ、俺の名を書いてみようじゃないか」

その署名欄に、名を走り書きする。
するとどうだろうか、いきなりその魔法書が爆発四散したかと思えばその場に赤目でイファルシアに似た感じの体型で、青紫の毛に額の石も赤いカーバンクルが白い前掛けエプロンをして浮遊していたのだ。
なお、レルヴィンとアルガントは何が起こったのかという顔をしてこちらを見ている。

「あなたが契約者ですね?」

その青紫の毛のカーバンクルがゴルダに問う。
ゴルダはそれに頷いて

「名を書いたんだからそうなるな」

とカーバンクルに返す。
青紫毛のカーバンクルは音もなくスッとお辞儀をすると

「私、草と月と水の属性を持つカーバンクルのミリシェンス=エルティーネと申します」

自らの名をミリシェンスと名乗る。
ゴルダはミリシェンスが3つの属性を持つと聞いて、ほうと呟くと

「2つ以上の複合属性持ちとな、3つは初めて聞いた」

ミリシェンスをじっと見る。
するとミリシェンスはゴルダからそっと顔をそらして

「そういえば、契約に関して話しておかなければならないことがあるので話しておきますね」

と言うとまたゴルダの方へ顔を向けて真剣な口調で話し出す。

「第一に、私との契約は契約者が死ぬまで永続します。途中で契約を切ることはできませんのでご了承を」

契約は一生涯という第一の注意事項を聞いて、ゴルダは特にこれといった反応を示さず、続けてくれと目線で訴える。
ミリシェンスはそれに了承したかのように頷いて

「第二に、給金などは要りません。衣食住だけは最低限確保するという約束をしていただければ結構です」

浮遊しているのに疲れたのか、ミリシェンスは食卓テーブルの上から離れ、ゴルダと向かい合うような位置の椅子に座ってまた話し出す。

「第三に、私はほぼ何でもできますが、いかがわしいことは絶対にやめてくださいね?もしそのようなことを頼んだ場合にはご覚悟を…。話しておかなければならないことは以上です」

最後のいかがわしいことという言葉に反応したのか、ゴルダはこう言う。

「安心しろ、俺は性に関することは医学的興味しかない」

「なら大丈夫ですね」

性に関することは医学的興味しかないと聞いて、ミリシェンスはなら大丈夫ですねとふふっと笑った。
こうして、ゴルダの家に新たな住人が加わったのである。

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