氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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もう一人の己と

夏の容赦ない太陽の照りつけが強くなり始めた農村部の舗装もされてない道を、ゴルダの運転する軽トラが走っていた。
今朝は譲り受けた牧場の畑で育てている野菜を出荷し、今帰路についている最中なのである。

「エアコンの効きが悪いな。やれやれ、またいじらんといかんのか」

助手席で暑そうにしているマティルーネを見て、エアコンの吹き出し口に手を当てたところ、思ったより冷えてなかったので、ゴルダはそんなことを呟く。
この軽トラも、元々は買い換えるから廃車にするから貰うなら持っていけと言われたもの。
それをゴルダがもらって、修理や改造を施してこうやって使っている。

「おう、もうすぐ着くからもうちょい我慢してくれ」

マティルーネが暑いとついに痺れを切らして尻尾で叩いてきたので、ゴルダはもうちょいで着くから我慢しろと言う。
そして次の瞬間である。
わずか百メートルほど先に人の姿を確認したゴルダは、そのままあと数十メートルというところまで接近したところで、急にハンドルを右に大きく切ってブレーキを踏んだ。
すると軽トラは横滑りしながら真横になり、そのまま停止。

「おいおい、危ないだろうが」

軽トラが完全停止したことを確認し、ゴルダは車から降りてその見えていた人のところへ駆け寄る。

「これは失礼、何分炎天下の中を歩いていたもんでな」

その人は、一見して半分竜族の血を引いていることが分かる角に翼を持ち、身に纏っている服装からして王族かそれに近い者であることが伺えた。
だが、問題なのはその身に纏っている外套あるいはマントと思わしきものにある国の国章が入っていたことである。
その国章とは、雪の結晶と氷柱をモチーフにしたことをリヴァルスのものだったのだ。

「…なるほど、お前が誰かは察しがついた。こんなところでは話もろくに出来ん。俺の家に行くぞ、助手席に乗れ」

ゴルダはその王族と思わしき謎の男に助手席に乗れと言って車へ戻る。

「流石だ」

謎の王族の男はゴルダに言われた通りに車まで行って助手席に座る。
なお、マティルーネは謎の王族の男の膝の上座った。

家までの道のりの間、2人の間に一切の会話は無く、沈黙だけが流れていた。
そして、ゴルダの家に着くと2人はそのまま家に入った。

「座って待ってろ」

そう言ってゴルダは台所へ行き、何かを準備する。
謎の王族の男は、腰に差していた剣を外し、ソファの横へ置く。
ただし、その置き方はいつでも剣を抜けるような状態であった。

「氷水晶を入れるとはな、分かってるじゃないか」

謎の王族の男は、ゴルダが淹れてきたコーヒーのグラスを見てそう呟く。
そして2人は向き合うように座ると

「何用で来た、平行世界の俺よ」

ゴルダは平行世界の自分という言葉を口にし、何用で来たのかを問う。
一体どういうことなのだろうか?

この世界にもやはり平行世界は存在しており、そこへ行く方法も確立されている。
ただし、この世界の平行世界は一つだけ他の世界の平行世界とは違う点がある。
それは、平行世界上に存在する同一人物が必ずしも同じ容姿で同じ種族とは限らない点だ。
これがどういうことなのかは、シアやアルカトラス、エーヴィヒにしか分からないが、魂のレベルでは同一人物と定義されているので、その人物が別の平行世界では同じ容姿で同じ種族とは限らないというのだ。
そのため、魂的同一認識性というものがある。
これは、先程も述べたように仮にAという人物が存在したとして、そのAという人物が平行世界上では容姿や種族が違っていても、第三者は魂のレベルで同一人物と定義されているため、そのAという人物が容姿や種族が違っていても同一人物と認識してしまうのである。
これがあるために、別の平行世界の自分になりすまして悪さをする者が居たため、現在平行世界へ行くにはアルカトラスかシア、あるいはエーヴィヒの許可を得ないと平行世界へ行くことはできない。

「エーヴィヒに話すなと約束させられているから詳しいことは言えん、ただ原点世界のお前と俺がある鍵になっているとだけは言っておく。それを伝えに来たのと原点世界の俺を見に来ただけだ」

やたらと寄ってくるレルヴィンを無視しながら、平行世界のゴルダはこの世界へ来た理由を述べてコーヒーをぐいと飲む。

「鍵とな、まあそれはどうでもいい。それよりお前は向こうでは何と名乗っている?こっちの俺がどういう名かは調べているだろうからあえて教えんが」

「偽名としてエインセルス=リヴァルス、本名はゴルダ=リャダヴィルチ=リヴァルスだ。平行世界へ行く時はエインセルスと名乗るようにしている。魂的同一認識性のせいでややこしいことになるからな」

平行世界の自分がここへ来た理由を聞いたゴルダは、同じ名だとややこしいと思ったのか、向こうでは何と名乗っているかを聞く。
すると、平行世界のゴルダは偽名としてエインセルスと名乗っていることを話す。

「姓がリヴァルス、そしてその国章…どの平行世界かは分からんが、リヴァルス国王の俺が居ることは知っていたがお前がとはな」

「ちなみに俺は第6平行世界のお前だ」

リヴァルス国王の自分がどこかの平行世界に居ることは知っていたと呟いたゴルダに、平行世界のゴルダことエインセルスは、自分は第6平行世界のゴルダであると言った。

「第6平行世界で国王ということは、家系にリヴァルスが入っていてリヴァイドはもう死去して居ないということだろ?」

「そうなるな、だがそれに関しても俺の口からは言えん。エーヴィヒに口止めされてるんでな」

第6平行世界で家系などがどうなっているのかを聞いたゴルダだが、エインセルスはそれに関してもエーヴィヒに口止めされているので言えんと返す。

「真実を知りたくばエーヴィヒに直談判しろ、ということか」

「そういうことだ」

ここで、このようにややこしい平行世界が存在しているなら、エーヴィヒの居る次元と次元の間の世界も影響を受けているのでは?と思われがちだが、それは否である。
なぜかというと、エーヴィヒの居る世界はドランザニアという世界と、その世界に繋がる別の無数の世界やドランザニアの並行世界を管理監視しているためだ。
もしこのエーヴィヒの居る次元と次元の間の世界が平行世界の影響を受ければ、ただでさえややこしい世界の管理監視が余計にややこしいことになり、定義の崩壊も招きかねないからである。

「ま、もし何かあれば俺の居る第6平行世界に来い。今日はこれで失礼するがな」

「そうか帰るか、またな」

帰ると言ったエインセルスに、ゴルダはそうかとぶっきらぼうな返事をして見送った。
こんなことは、平行世界の自分でなければできない芸当だろう。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

雑多な創作設定・ネタまとめ

・弓の弦
大陸では弓の弦に竜毛や幻獣毛(カーバンクルなど)を使うことがある。
特徴として、竜毛は最大張力(引き絞り力)が最も高く、その分引き絞るのに普通の弦の倍の力を要する。
幻獣毛は、幻獣毛は最大張力が竜毛の6割程度で、引き絞りやすいし、馴染むのが早い。
また、毛の属性によってそれぞれ特性が違い、地属性だと耐久力がダントツ、水や氷だと魔力に反応して様々な変化が出る。

・幻獣や有毛種竜の毛について
毛の硬さは様々な要因に左右される。リラックスしている時は柔らかく、ストレスを感じている時は硬くなる。また、体の一部分だけ毛が硬くなる場合はそこに疾患がある場合もある。

・透明化の違い
姿だけを消すタイプと、完全に消すタイプがある。完全に消す方は周囲の気体などと一体化するため、見つけにくい。

・意思を飛ばして行う会話について
精神耐性がある程度ないと精神を蝕まれる、精神疾患がある場合は特に要注意。

・竜肉の生食
一般的には知られていない手段で消毒しないと食べてはいけない。
なぜなら、普通の薬ではなく魔法薬でないと効かない食中毒に掛かる恐れがあるため

・雪メロン
リヴァルスなどの寒いところでしか栽培できないメロン。寒ければ寒いほど糖度が増すが、癖が強くなる。

・イファルシアの片耳が折れてる理由
何かしらの特異能力があるのではないか?(アルガティア談)

・意を持つ色
青:高貴、知恵、冷静 紫:(考えetcが)読めない 赤:生の創造

・この創作でのドッペゲンガー
個人の後悔の念などの負のエネルギーから生まれるとされている、つまり誰でも生み出す可能性はある

創作関係全般 |

大陸の魔法に関して

・エーテルとマナについて
エーテル:マナが劣化したもの、あるいは汚染魔力が循環あるいは浄化され損なったもの。耐性がないと有害。
なぜ有害かというと、エーテルとマナは競合するため。
耐性を持つのはカーバンクルを始めとする幻獣族、エーテル・マナの相互変換能力を持つ一部の竜、聖子など。
エーテルに耐性がない場合、血中マナが10%エーテルに侵されると体に異常が見られ始め、15%を超えると命に係わる。
致死割合は種族や属性によって異なるが、平均して25%程度で致死量となる。
マナ:世界樹、シアやアルカトラスから放出される魔力。この世界での魔法の要。
個々にマナの許容量があり、それを超えると死に至る。

・属性
4大属性(火・水・風・地)と光・闇の属性と、例外にされている無や時の8属性に発展属性がある。
発展属性は、水→氷、風→雷、地→金・草、光→聖、闇→暗黒、月のみ。

・無声詠唱
呪文を口に出さず、脳内でイメージすることで詠唱する高等技術。
並外れの集中力と記憶力を要するため、使い手はそこまでいない。
シア、アルカトラス、アルガティアなどが使える。

・科学と魔法の関係
科学ではできないことを魔法が請け負い。逆に魔法ができないことは科学が請け負うという相互補完。

・魔法を取得できる者
異世界出身でも誰であっても、マナとある程度リンクすることができれば習得できる。
ただし、一定レベルの素質がなければならない。

・禁忌の魔法
死者蘇生系は生の創造神であるシアでもNG、体の失った部分の復元魔法はOK


創作関係全般 |

大陸と異界の関わりetc

・世界と世界の行き来
基本的に世界間の転送魔法が使えればどこからでも飛んでこれる。
それが出来ない場合は、各地にある異界間ゲートから移動するか、飛行機や船などで時空間転送装置などを用いて地球などの別の世界へ行く。
なお、地球から行くなら当然ながらパスポートが要る。
そして、シアの塔とリフィルの賢竜の里の何処か、ドランザニア北部の山中にある異界ゲート監視基地でそれぞれ異界とこの世界とを出入りするものを全て監視している。

・平行世界に関して
既にドランザニアには無数の平行世界(パラレルワールド)が存在しており、それらの平行世界も条件を満たせば行き来が可能である。
平行世界は創作中の世界を第0次平行世界(原点世界)とし、そこから第1次平行世界、第2次平行世界…というように次数が上がっていく。
なお、平行世界への行き来はエーヴィヒの許可を得た上で普通の異界転送魔法とは違う魔法で行くことになる。
その際、平行世界の次元を詠唱時に指定しなければならないが、その計算式は以下のように表される。
W=3.00+N*10^-N
W 今居る次元
N 任意数
なおこれは一例であり、計算式は複数存在する
そして、まだ仮定の段階に過ぎないが、その1つの世界に存在できる平行世界の数は決まっているという。
ただそれがいくつぐらいなのかの理論や式などは見つかっていない。

・星の数とリンクしている世界の数
シアいわく、大陸の夜空に輝く星星の数は、大陸とリンクしている世界の数に比例するという。
それらは常に増減を繰り返し、時々シアが観察して数を記録している。

・いつごろから地球と繋がったのか
正確な時代は不明だが、英の産業革命が起きた頃には繋がっていたとされる。

・文明の違い
地球で第一次世界大戦が終戦したころにには現在(2015年ごろ)から10年ほど前の文明はあったらしい。
現在は地球の文明と平行線をたどっている。

・魂的同一認識性
容姿や種族が変われど、平行世界上のAという者は魂のレベルで同じである。
なので平行世界のAを知らない第三者でもそのAを同一者と認識するというもの。
創作関係全般 |

エインセルス=リヴァルス

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性別:♂
種族:半竜半人(聖と氷竜の血を引く)
年齢:不詳
身長:180cm
性格:元の世界のゴルダと同じ
並行世界(正確には第6並行世界)のゴルダで、リヴァルス2世としてリヴァルス国王を務めている。
容姿が全く違うが、魂的には同一人物で、それ以外は元の世界のゴルダと全て同じ。
本人いわく、王都からかなり離れた集落に往診に行ったり、極寒地でも育つ植物の品種改良の研究をしているようだが、それ以上のことは謎のまま。
普段は偽名を使うが、本名はゴルダ=R(リャダヴィルチ)=リヴァルス。
一応の代理キャラである。
※リャダヴィルチは第6並行世界のリヴァルスの王都名。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

それぞれの七夕-はーたん編

すっかり夏真っ盛りとなった7の月。
ゴルダが依頼で家を留守にしている間は、ハーキュリーが家事をしてるのだがなぜか今日は家事をほっぽりだして居る。
それはなぜかというと、今日はある物が届く日だからだ。

「まだかなー」

そう呟きながら待っていると、どこからともなく飛竜便がやって来て荷物を家の前へ落としていった。
飛竜便には、このように荷物を投下していく業者も居て、その場合は必ず落下傘の魔法などで荷物に悪影響が無い形で投下される。
ハーキュリー宛の荷物も例外ではなく、落下傘の魔法が発動してふわりふわりと落ちてきた。

「おっとっと」

急いで外へ出て落ちてきた荷物をキャッチし、それを持って家の中へ戻るハーキュリー。
居間はレルヴィンがエアコンの風がよく当たる場所に陣取っている以外は、至って普通である。
ハーキュリーは台所の流しの洗い物には目もくれず、届いた荷物を開けた。
荷物の中身は、何の変哲もない浴衣だった。
だだ、そのサイズなどがハーキュリーに合わせられている以外は。

「やっと届いたぞー」

一体この浴衣はどうしたのだろうか?
それは6の月の中旬辺りに何を気迷ったのかは不明だが、ゴルダがハーキュリーに浴衣を特注で買い与えたのである。
もちろん、素材からこだわっているので値段もかなりのものなのだがゴルダはそれを意にも介さずに現金一括で支払ったという。
ちなみに、浴衣の素材は主にカーバンクルの毛を使ったもので普通の浴衣とは違っている。
なお、カーバンクルの毛は抜けた毛が使われているのでその辺りは引っかからない。

「ふふふー、これを着てゴルダと出かけるの楽しみだな」

やたらとニヨニヨしながら妄想を膨らませながら、ハーキュリーは浴衣を片付けて家事へと戻った。

その頃、ゴルダはというと

「ああそうか、今日は七夕か。またシアんところ行かんとな」

依頼主を待っている間に今日が七夕であることを思い出していた。
ゴルダは毎年七夕にはセイグリッドの七夕祭に行っており、そこで短冊も書いてる。
なお、セイグリッドの七夕祭で短冊に書いた願い事はよっぽどのことがない限り、何らかの形で叶うと言われており、観光客もそこそこ来るという。
ゴルダは毎年ありきたりな願い事しか書かないので、本当に叶っているのかどうかも怪しいところだとか。

「お前はどんな願い事をしたいんだろうな」

頭に乗っているマティルーネにどんな願い事をするんだとゴルダは聞くが、マティルーネはどこ吹く風で人参を要求するだけであった。
ゴルダはそれに何かを察したように

「ま、お前ならそうだよな」

と言って、少し離れたところに見えた依頼主に合図をするのであった。

「あれ?メール?なんだゴルダからか」

一方こちらはハーキュリー。
台所で洗い物にをしていたのだが、食卓の上に置かれたタブレットから通知音がしたので確認すると、ゴルダからメールが入っており

「お前に夜は開けておけというのもおかしな話だが、開けといてくれ。セイグリッドの七夕祭行くからな」

夜は七夕祭に行くので開けておけというものだった。
このメールを読んだハーキュリーは

「ゴルダめー、出かける前に直接言えばいいのに。回りくどいんだよなー」

などとニヨニヨしながらまた家事へ戻る。

「ゴルダとー、祭りに行けるー」

だが内心、届いたその日に浴衣を着てゴルダと出かけられるのはなんとなく嬉しかった様子である。
なぜなら、それが口に出ているのだから。

そしてその日の夕方。

「やれやれ、炎天下の中歩き回るのもきついものがあるな」

「お帰りだぞー」

頭の上でパタパタ翼を動かしているマティルーネとゴルダが帰ってきた。
なお、ハーキュリーはまだ着替えていない。

「風呂入ってこいよー、私も準備しとくからさ」

「無論、そうする」

風呂入ってこいとハーキュリーに言われ、ゴルダはマティルーネを降ろして風呂へ。
ハーキュリーもその間に着替えることに。

「ちょっと失礼」

相変わらずパソコンにかじりついているアルガントとウラヘムトをよそに、ハーキュリーは部屋に入って浴衣に着替え始める。
ウラヘムトの方は相変わらずゲームばかりだが、アルガントは最近独学と若干のゴルダの助言でプログラミングなどもやるようになっているものの、ハーキュリーには何がなんだかさっぱり。
アルガントがやっている作業を見るだけで、周りに?が数十個浮かぶレベルだ。

「んー、ちょっと帯が結びにくいかなー」

浴衣の帯を結ぶのに四苦八苦しつつもどうにか結べたハーキュリーは、2人の邪魔をしないように部屋を出る。
つい最近、うっかりアルガントの作業を邪魔したばかりに泣かせそうになったことがあるからだ。

「おう、準備できたか?」

「出来たぞ、いこいこー?」

居間で既にマティルーネと待っていたゴルダに準備は出来たのかと聞かれ、ハーキュリーは出来たので行こうとゴルダの腕を引っ張る。
こうして、ハーキュリーはゴルダとレルヴィンとマティルーネと共にセイグリッドの七夕祭へと行くのだった。

「あっちこっち笹と飾りだらけだな」

「今日はそういう祭りだ」

笹と飾りでいつもとは違った雰囲気を出す城下町を、ハーキュリーはゴルダの手を握ったまま歩く。
時折浴衣のすれる音とゴルダの装備の不釣り合いな音に、レルヴィンが歩く音、さらにマティルーネが翼を時折動かす音が重なって何とも言えない雰囲気が出ているが、当人たちは気にしていない。

「どうした?」

突如ハーキュリーが歩みを止めたので、ゴルダがどうしたと聞く。
するとそこには、たまにゴルダがハーキュリーと来るアクセサリーの店の夜店。

「何か欲しいのでも?」

何か欲しいのかと聞いても、ハーキュリーは答えずに夜店に並べられた商品を眺めるだけ。
並べられているのは、店主がこの日のために作ったと思わしきものばかり。
しばらくそれらを眺めた後、ハーキュリーは1つの髪飾りを取ってゴルダの左目の辺りに当てて何か違うという顔をして

「ゴルダが私と同じ性別だったらなー、なーんてね」

ゴルダが自分と同じ女だったらなと言い放つ。
普通なら馬鹿なこと言うんじゃねえよといったような反応が返ってくるはずだが、ゴルダの返した返事は

「はて、そうだろうか?」

と疑問を浮かべたもの。
ハーキュリーはそれに

「なんだよー」

とゴルダの頬を軽くつねった。

その後も、時折夜店の前で立ち止まっては何かとハーキュリーがしてくるのにゴルダは付き合わされた。
なお最初はゴルダだけだったが、後々マティルーネやレルヴィンにもその魔の手は伸びたという。

「だらだら城下町歩いてたら城に着くのが遅くなったな」

「たまには寄り道回り道もいいじゃないかよ、な?」

ようやく城に着いた時のゴルダの一言に、ハーキュリーは寄り道回り道もいいじゃないかと言う。
城は城下町以上の人のごった返しっぷりで、下手すると身動きが取れなくなりそうなほどである。
それでもハーキュリーはゴルダの手を離さずに引っ張り、城の本館へと入った。

「あらあら、来てたの」

「よっ、シア」

城の中へ入ると、5メートルは超える笹を持ったシアと鉢合わせしたハーキュリ達。
よく見ると、シアの持っている笹にはびっしりと短冊が付いているのが分かる。

「なあシア、それ全部願い事書いてあるやつか?」

「これ?これは今から書いてもらうやつよ、短冊が少し特殊なやつなの」

「そうなのかー」

ハーキュリーにその短冊は全部願い事が書いてあるのかと聞かれ、シアは笹を揺らして今から書いてもらうものだと返す。
それを聞いたハーキュリーは、何かを閃いたかのように

「何枚かもらっていいか?」

と聞くもシアにあっさりと

「だめ」

断られた。
それにハーキュリーは、むーと納得できない顔をしてシアを見る。
するとシアは

「なら、万年桜のところまでいらっしゃい」

ハーキュリーに万年桜のところまで来るように言って、また持っている笹を大きく揺らしながら城を出ていった。

「ゴルダ、行くぞ」

「やれやれだぜ」

セイグリッドへ来てからハーキュリーに振り回されっぱなしのゴルダは、またもやハーキュリーに振り回されることとなる。

「とうちゃーく」

「少し休ませろ、お前に全力で走らされて息が上がった」

ハーキュリーに手を掴まれ、全力疾走させられて万年桜の根本までやって来たゴルダは一息つかせろと言う。
それを聞いたハーキュリーは仕方ないなあと言わんばかりにゴルダの手を離し、一息つかせる。

「ほらっ、登るんだぞー」

「普通には登れんぞ」

「えー?」

登ろうと言い出したハーキュリーに、ゴルダはここは普通には登れんと引き止める。
それにハーキュリーはえーと言って、じゃあどうやって登るんだとジト目でゴルダを見た。
ゴルダには、なぜだかハーキュリーのジト目が浴衣によってより映えている気がしていたが、そんなことは気にせずに

「こうする」

といきなり座標指定テレポートで万年桜の上へ。
そこでは、シアが城から持ってきたと思わしき笹を並べて置いている所だった。

「…ここまで来られたら仕方ないわね、はい」

シアはやって来たハーキュリー達を見て、仕方ないわねと短冊を渡す。
渡された短冊は少し大きいのと、材質がただの紙じゃないこと以外はただの短冊だ。
ゴルダとマティルーネが真っ先に書き出したのに対し、ハーキュリーはあれも書きたいしこれも書きたいと1つに決めかねている様子。

「叶うかどうかは別として、書けるだけ書いてもいいのよ?」

そんなシアの悪魔の囁きとも思える一言に、ハーキュリーの目が一瞬光ったかと思えば、短冊の端から端まで小さい文字でびっしりと願い事を書いた。
どれくらいの願い事を書いたのかは不明だが、少なく見積もって4つはあるだろう。

「もういい?」

「オッケー」

シアはゴルダとマティルーネとハーキュリーから短冊を受け取り、それらを笹に下げるとどこからともなく料理を出して

「私はまだ笹を取ってこないといけないから、お先にどうぞ」

先に食べていろと言って万年桜の上から消える。

「食べるぞゴルダ」

「今は酒だけでいい」

「なんだよ、食えよー」

あらゆる者の願いが書かれた短冊が下げられた笹に囲まれ、ハーキュリーとゴルダはれるヴィントマティルーネも加えて七夕の晩餐を始めた。
なお、ハーキュリーとゴルダとマティルーネはどんな願い事を書いたのだろうか?
ここで少し見てみると、マティルーネの短冊には人参だけが堂々と描かれており、ゴルダの短冊には

「とっと竜滅病の完全な治療薬ができるように」

と書かれていて、ハーキュリーの短冊はあれこれ書きすぎて解読しにくいが、かろうじて読める願い事を見ると

「ゴルダの鼻笑いじゃない笑いが見たい、そして離れたくない」

といったことが書かれていたのであった。
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それぞれの七夕-メリエル編

今年もドランザニアに七夕の日がやって来た。
だがしかし、そんなことはどこ吹く風なメリエルはセイグリッド城の庭園の木の木陰で相変わらず暑い暑いと言っている。

「あっついわね、でもなんで今日に限って城の庭園に笹の葉が立ててあるのかしら?」

この時点で、メリエルはこの世界にも七夕があることをまだ知らない。
それもそのはず、この世界に来た時は秋口で七夕などとうの昔に終わっていたのだから。
メリエルが不思議そうに笹の葉を見ている間にも、その笹の葉には次々と短冊を下げていく者が絶えなかった。

「木陰でも暑いならウンディーネでも呼んだらどうだ、お嬢さん?」

「誰がお嬢さんよ!私は天才召喚士のメリエルよ!」

聞き慣れた声でウンディーネを呼んだらどうだと聞こえてきたが、メリエルはその声にお嬢さんと呼ばれたことに過剰に反応し、ついつい自分の名を名乗ってしまう。
無論、その声の主は

「あんたねえ…」

「暑いなら中来い、アイスでも食って涼しくなれ」

不釣り合いな日傘を片手で差し、頭にはマティルーネを乗せ、氷麟に乗っかっている他でもないゴルダだった。
ゴルダはメリエルに呆れ口調であんたねえと言われると、氷麟から日傘を差したまま降りて

「そうカッカすんな、余計暑くなるぞ」

日傘をメリエルに差し出し、自分は頭部の直射日光だけを防ぐ帽子の魔法でどうにかした。
ゴルダから日傘を差し出されたメリエルは、それをたたんでゴルダに返すと

「いらないわ、ここから建物の影までそう遠くないし。それより、庭園のこの大量の笹は何?」

庭園に無数に立てられている笹のことを聞く。
ゴルダはこの問いに、知らなかったか?と言いたげな口調で

「この笹が何だと?七夕の短冊を下げる笹に決まってるだろ」

七夕の短冊を下げる笹だと即答。
ゴルダの口から七夕と言う言葉を聞いたメリエルはぽかんとして

「この世界も七夕ってあるの?」

「そうだ、さっきも言っただろ」

と改めて聞き直す。
ゴルダはそれにさっきも言っただろと返した。
するとメリエルは、何かを閃いたかのような顔をして

「私も短冊書きたい」

自分も短冊を書きたいと言い出したのだ。
ゴルダはメリエルが短冊を書きたいと言い出したのに対し

「書きたいならそれはそれで構わんが」

何か意を含んだような返事を返す。
メリエルはこれには何の反応も示さず、ゴルダの後を追った。
そして、ゴルダの後に次いでメリエルがやって来たのはシアの塔の上。
なお、氷麟は下の方で休憩している。
塔の頂上が雲より高いところに位置するため、暑いどころか肌寒く感じるようなこの場所は真夏日にはもってこいの場所だ。
こんな塔の上にもゆうに5メートル以上はある笹が立てられており、無数の短冊の重みで枝が垂れていた。

「ねえねえ、この笹の短冊全部白紙なんだけど?」

メリエルは、笹に下げられていた短冊が全て白紙なことに気付いてゴルダにどういうことかと聞く。
しかしゴルダは何も答えず、マティルーネに上の方にある短冊を取ってもらっている。

「何よもう、人が聞いてるのに」

「この短冊は、書いた者の念が強いほど叶うように細工してあるのよ。だから全部白紙なの」

「きゃっ、ってもう驚かさないでよ」

またもや聞き慣れた声とともにふわふわしたものが体に触れたので、メリエルは驚いて後ろを振り向く。
すると、そこにはシアが10メートルはあろうかという笹を持って立っていた。
しかも同じ短冊を無数に下げたままで。

「念が強いほど叶うってことは何でも叶うの?」

「そういう訳じゃないわ、悪い願い事は絶対に叶わないし、そうでなくとも叶わない願い事はたくさんあるわ」

なんでも叶うのかと、少々期待の眼差しをシアに向けて聞くメリエル。
しかし、シアはあっさりと悪い願い事は絶対に叶わないしそうでなくとも叶わないものもあると返す。

「なーんだ、なんかがっかり」

「あら、定義書き換えでどうにかなる願い事もあるのよ?」

「やめとくわ」

とここで、ゴルダが笹の上の方にあった短冊をマティルーネに取ってもらい終えてメリエルに渡してきた。
メリエルはゴルダから短冊を受け取ると、どこからか出した羽ペンで願い事を書こうとしたが、インクが短冊に吸収されて書けなかった。
どういうことなのとメリエルが必死に書こうとしている側で、ゴルダは短冊を持ち、額に当ててて何かを念じている。
一方、マティルーネは口に咥えて同じようなことをしていた。

「あらごめんなさい、これ念書しないといけない短冊だったわ」

ここでシアがこれが普通の短冊ではないことに気づき、自分が持ってきた笹に下がっている短冊をメリエルに渡す。
本当に今度は大丈夫なのかとメリエルが書いたところ、普通に書けたのでメリエルは何を書くかを悩み始める。
一方ゴルダとマティルーネは念書で書き終えたらしく、シアから普通に書ける方の短冊も貰っていた。

それからだいたい10分後。

「そんなに悩むこと?3枚くらいまでなら書いていいのよ?」

いつの間にかシアにもふもふされてる状態で、まだ何を書くか悩んでいるメリエル。
なお、ゴルダはシアにもたれかかってマティルーネを頭に乗せたまま昼寝をしている。

「うん、もうこれでいいわ」

「あら、なにか思いついたの?」

それからさらに5分ほど悩んだ挙句、メリエルはようやく願い事を決めたようで短冊にさらさらと願い事を書いていく。

「うん、もうこれでいいわ。それで、どこに下げればいいの?」

「私にちょうだい、下げておくから」

書き終えたメリエルは、どこに下げればいいのとシアに聞く。
するとシアは、自分が下げておくからちょうだいと言う。
それにメリエルは短冊って自分で下げるものでしょと言って譲らず、シアが持ってきたあの10メートルはある笹に下げる。

「あんたは下げたの?」

「ん?ああ、とっくの昔に下げた」

「そう」

この後、メリエルとゴルダはシアに城で行われている七夕祭りに参加したという。

ここで、メリエル達がどんな願い事を書いたのかというと、メリエルは

「この世界の知り合いともっと親密になれますように」

と書き、ゴルダは言語をあれこれ混ぜて書いているので分からず。

マティルーネは

「より多種多様な人参を発見したい」

と書いた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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