氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

幻獣の里の村で過ごすようです

翌日、ゴルダはルヴェルニッチに連れられてとある一軒の家へとやって来た。
昨日話した通り、真っ先に見る必要がある患者が居たので、診察しに来たのである。

「私だ、入るよ」

「どうぞ」

ルヴェルニッチが家の扉を叩くと、中から女性と思わしき声が聞こえてきた。
ゴルダは昨日なぜルヴェルニッチが言い渋ったのかの理由を考えつつ次いで家に入る。
そして、その理由はすぐに分かった。
家の中には余計なものが一切なく、台所に風呂場と思わしき入口の扉、2人掛けの食卓テーブルが置かれていて、窓際には相当やつれた幻竜がベッドで横になっている。
この幻竜は完全な寝たきり状態らしく、横に座っている幻竜が介護をしているようだ。
そしてこの2人の幻竜、ルヴェルニッチは一言も言っていないが夫婦であることをゴルダは見切った。

「どうも、手紙をもらってここへ来た医者のゴルダだ。旦那…でいいのか?寝たきりになる前に何があったのか教えてはくれんか?」

そしてゴルダはいつもとは違う口調で妻の方の幻竜に挨拶し、どういう経緯で寝たきりになったのかを聞く。
すると妻の方の幻竜は

「はい、もう何時からかは忘れましたが。気になる症状は数十年前にありました」

数十年前、つまり夫が寝たきりになるはるか前に気になる症状があったと言った。
ゴルダがそれはどんな症状なのかと聞くと

「そうですね、あの時は足のしびれが頻発すると言ってました」

頻発する足のしびれという症状が妻の幻竜の口から伝えられた。
これで該当する病気はかなり絞られる。
そして次に妻の幻竜から語られた症状でゴルダは血液検査をしようと思った。
それは何かというと

「それ以降足だけではなく、手にもその症状が表れるようになって歩けなくなり、寝たきりになって体も自力では起こせないような状態になっています」

しびれる個所が増えたというもの。
一通り寝たきりになるまでの症状を聞き終えたゴルダは、ルヴェルニッチに席を外すように伝えて

「血液検査をしても?思い当たる病が一つしかないもんで」

妻の幻竜に血液検査をしてもいいかと聞き、構いませんという返事をもらったのでゴルダはどこからか血液検査用の道具を出して寝たきりの夫の幻竜から血を採取。
そして、ある試薬の入っている使い捨て試験管の中にその血を投入して反応を見る。
するとどうだろうか、今まで無色透明だった試薬が赤紫に変化したのだ。
これが何を意味するのか?それはすぐに判明することとなる。

「事実を伝えてもいいのかどうかは分からんが、どうやら竜滅病の末期のようだ」

竜滅病、それはゴルダもどうにか薬で進行を抑え込んでいるいまだ有効な治療薬が見つからない病。
発病すると足の神経から徐々に浸食されていき、最終的には脳や心臓の神経を蝕まれて死に至る恐るべき病である。

「そう、ですか…薄々分かっては居たんですけどね」

妻の幻竜は覚悟していたかのような表情をし、夫の幻竜の頭を撫でる。
竜滅病は、末期まで進行するといつ脳や心臓の神経をやられてもおかしくはない状態。
ゴルダが知っている論文などのデータを調べても、末期になってから3年生きれればいいほうである。

「末期になってどれくらいかは分からんが、3年持てばいいほうだ。明日ぽっくり逝くかもしれない、最後の時間は大切にな」

「ありがとうございます…」

ゴルダはその後片づけをして妻の幻竜に一礼して家を出る。
外に出ると、ルヴェルニッチは家へ帰ったのか姿が見えず、村の住人達がいつもと変わらない生活を送っていた。
ゴルダはそのままルヴェルニッチの家へ戻ったが、ルヴェルニッチは家にも帰っていないようだ。

「どこへ行った…ん?」

どこへ行ったのかと家の中を探していると、居間の食卓テーブルの上に

「エゼラルドとフィルスを連れて隣の村へ行ってきます、夕方には戻るのでご心配なく。追伸、お昼ご飯は台所と食材を勝手に使って構いません」

というルヴェルニッチからの置手紙があった。
ゴルダはその手紙を読んでふっと鼻で笑うとまた外へ出て村を一周見て回る。
この村は一番大きいと言う割には家が20軒ほどしかなく、それ以外は畑や果樹園の他に共用の井戸があるくらい。
しかも、村と平原や森との境目を定めていないためか、家の裏手が整備されていない草原だったり森だったりもしている。
幻獣の里に住む者たちは、自然と村との区別をつけない文化か何かがあるようである。

「井戸周りの整備をもう少しまともにやったほうがいいと思うが、住んでいるのがほとんどカーバンクルじゃな」

日常的に使う分にはひとまず申し分ないのだが、長年使っていると不便と感じるような作りの井戸を見てゴルダはそんなことを呟く。
それは何かというと、井戸の高さがカーバンクルに準じて作られていて、幻竜たちはいちいちしゃがんで井戸から水を汲まなければならないというところ。
だがしかし、この村の人口比率はざっと見た感じ幻竜が2にカーバンクルが8。
あからさまにカーバンクルが多いのでカーバンクルに合わせた作りの村になるのも仕方がない。
だがしかしゴルダの考えは違った。
どうにかして幻竜もカーバンクルもどっちの種族も快適に暮らせるバランスのとれた作りに村を変えられないかと考えているのだ。

「しかし実際には難しい話だな」

しかしそう簡単にいかないのが現実。
その作り直しの労力やコストをどこから持ってくればいいのかが分からない以上は机上の理論に過ぎない。
なのでそれ以上このことを考えるのをやめたゴルダは今度は森の方へ。
森の方でもいろいろと集めているのか、ちらほらカーバンクルたちの姿も見える。

「野草の採取か?」

幻獣語が全く話せない上に理解できないので、カーバンクルたちに何を採ってるのか聞くことはできないが籠に入っているもので大体分かった。
それはエーテルの影響でまた別の進化を遂げたと思わしき薬草や食用の野草や木の実。
しかし、それをエーテルに対する耐性のないものが食しても大丈夫なのかどうかは不明である。
だが、昨夜の夕食や今朝の朝食にはエーテルの影響を受けた食材を使っていたにも関わらず何の変化もないところを見ると、おそらく大丈夫なのだろう。

「さて、ここで改めて俺がここに来た目的を確認するとするか」

近くにあった切り株の上に座り、自分がこの幻獣の里に来た目的を整理するゴルダ。
ゴルダがこの幻獣の里へ来たのは、アルガティアにこの里には医者が足りないという手紙が来たのでちょっと行ってきてほしいと言われたからである。
だがしかし、このままこの村に居てもまともな診察はできないだろう。

「仮設でもいい、診療所が要るな…」

そしてゴルダが真っ先に挙げた問題点は、診療所がこの村にはないということ。
家庭医学で全てを済ましてきたであろうこの村にはまず医者がいないというのはもちろんのこと、医療行為をする場所すらない。
そこでまずは、仮設でもどこかの家の一室でもいいので診察ができる場所あるいは部屋を設ける必要があった。
しかし、この村はあと1軒くらいなら家を建てる余裕はあれど、それは村長であるルヴェルニッチの許可を得る必要がある。

「とにかく、帰ってきてから話をしてみるか」

そう言ってゴルダがルヴェルニッチの家へ戻ろうとした時だった。
何かを感じ取ったゴルダは、突如森の奥まで走る。
そしてゴルダが駆け付けた先には、野犬型の魔物に襲われている幻竜が居た。
幻竜の方は脚を負傷しているのかその場から動けないでいる。

「おい、お前の相手はこっちだ」

気が進まないものの剣を抜き、野犬型の魔物を挑発するゴルダ。
見た感じ狂犬病を発症してはいないようだが、何があるか分からないのでさっさと追い払うなりして処置をしなければならない。
だが野犬型の魔物はゴルダの殺気か何かに怖気ついたのか、そそくさと森の奥へと逃げて行った。

「大丈夫か?傷が少し深いな」

ゴルダはそう言って幻竜の足に適切な処置を施してから包帯を巻いて背負おうとそのまま村の方へ運ぶ。
なお、この幻竜は幻獣語しか話せないらしく意思の疎通が不可能だった。

「やれやれ、大変だったな」

「幻獣語学んだら?」

その夜、昼間あったことをフィルスとエゼラルドに話していたゴルダ。
だが、フィルスから帰ってきた一言は何とも言えないものだった。
そしてゴルダは、ルヴェルニッチにこの村には診療所が必要であることを話すも

「すぐにというのは難しいね、だがしかし仮設なら私の家の一室を使うといい。どのみち私1人しか住んでいない」

すぐに建てることは難しいという返事を返された。
だが、代わりに自分の家の一室を使ってもいいという代案を出されたのでゴルダはそれでも構わんという返事を返す。
それでこの件に関する話は終わったのだが、ゴルダはその後ルヴェルニッチに居間で2人で話をしたいと言って居間へ連れ出す。

「まだ何かあるのかね?」

「あんたの目についてだ、少し診させてくれ」

まだ何かあるのかと聞かれ、ゴルダは目を少し診させろと言ってルヴェルニッチの目を軽く診察し始めた。
ルヴェルニッチの目は両方とも薄紫色が透明になったような感じで、ゴルダは左目に着目する。

「今左目に光を当ててるがどうだ?眩しいか?」

「全然分からないね」

左目に光を当ててルヴェルニッチの反応を確認するも、全然分からないという返事が返ってきた。
なお、右目はかなり眩しく感じるとの反応だった。

「眼球透過症だなこれは、左目が見えてないのは透明になった目が紫外線に焼かれたせいだろう」

「うぅむ、困ったね。どうにかならないかい?」

そして、これは眼球透過症だとルヴェルニッチに告げる。
眼球透過症とは、原因はまだ分かっていないが、眼球がだんだん透明になっていき、健康な眼球に比べて紫外線への体制が著しく低下することで紫外線で目を焼かれて失明することもある病気だ。
現在のところは目薬で進行を抑えるか、復元手術で発症前に戻すかの2択しか治療法がない。
しかも、後者の場合は再発する可能性が高く、そのたびに復元手術をしなければならない。

「左目は復元手術で戻せる可能性はある、右目はこれ以上悪化しないよう目薬を使う必要があるが…あいにくその目薬は今は手持ちがない」

「そうかそうか、じゃあその目薬をもらうまでは紫外線には今まで以上に注意するようにしよう」

「そうしてくれ、全盲になると復元手術が面倒だ」

こうして、ルヴェルニッチは右目も失明せずに済むようになったという。
そして翌日、ルヴェルニッチから借りた部屋を掃除し、ゴルダは仮の診療所をこしらえた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ルヴェルニッチ=シェルル

性別:-
種族:幻竜族
身長:約2.5m
性格:物腰が落ち着いている
幻獣の里のエレティーヌ村の村長。
薄紫と白い毛のバランスが取れた容姿に、ほとんど透明に近い薄紫の目をしている。
しかしこれは眼球透過症という病気のためで、左目は現在は失明しており右目も手を打たないと危ない状態。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

幻獣の里へ行くようです

リフィル王国王都のはるか北の地に、その北部の土地の3割を占める幻獣の里というものが存在する。
ここにはカーバンクルなどの幻獣の他に、幻竜族や古代エルフ族などが小さい村を転々と作って暮らしていという。
しかし、この里はあろうことかアルカトラスやシア、そしてリフィル国王のアルガティアですらほぼノータッチという場所。
その理由は定かではないが、この里全域にマナとエーテルが混同しているからではないかという話もあるようだ。
なので、エーテルに対して何らかの耐性やエーテルをマナに変換する能力を持たずにこの里に来るのはとても危険。
しかも夜になるとエーテルの比率が跳ね上がるので、余計に危険なのだ。
そして、そんな里の平原を歩く3人の姿があった。

「ふうむ、エーテルカウンターが反応しっぱなしだ」

エーテルカウンターとマナカウンターを手に持ち、慎重に歩いているのは、ほかでもないゴルダ。
その後ろからは、フィルスとエゼラルドがついて来ている。
なおマティルーネはエーテルへの耐性の有無などが不明なので連れてきていない。

「ならこの辺りは避けたほうがいいね」

そう言ったのはエゼラルドで、フィルスはエゼラルドの頭に座って遠くを眺めている。
なぜゴルダとエゼラルドにフィルスが幻獣の里へやって来ているのか?
それは、数日前にさかのぼる。

「幻獣の里を知っているか、だと?知っているも何も昔イレーヌとその近くまで行ったことがある」

「その里へ行ってほしいの、私の代わりに」

珍しくアルガティアに呼び出され、フィルスとイファルシアにイレーヌも入れてティータイムをしながら話をするゴルダ。
呼ばれた理由は、アルガティアの代わりに幻獣の里へ行ってほしいというものだった。
それにゴルダはちょっと待てよと言って

「なんでまた急に幻獣の里に関わろうと思った?今の今までノータッチだと爺さんから聞いていたが」

なぜ今になって関わりが皆無だった幻獣の里と関わろうなどと思ったのかという理由を問い質す。
それにアルガティアは、1枚の手紙を取り出す。
一見すると普通の手紙だが、ゴルダにはこの手紙にエーテルがべったりついていることが簡単に分かった。
しかし、ゴルダはアルカトラスとシアの血を引いているので完全にではないものの、そこそこエーテルには強い耐性を持っている。
なので、エーテルがべったりついていても構わずにその手紙を取って読む。
だがしかし、ゴルダにはこの手紙の言語が何なのかが理解できなかった。
古代エルフ語や古代竜語に地球の主要言語と一部の少数民族の言語までルライエッタを含めた賢竜に教えてもらってある程度理解できるゴルダでさえもだ。

「ちょっと貸して、これカーバンクル族で使われてる幻獣語だから古代エルフ語なんかとはまたわけが違うよ」

すると、フィルスが手紙を貸してと言ってきたのでゴルダはフィルスに手紙を渡す。
手紙を受け取ったフィルスは、また別の紙にその手紙の内容をアルガティアやゴルダが最も理解しやすい英語に翻訳して見せる。
英語に翻訳された手紙の内容を翻訳すると、次のようなものになった。

「今、幻獣の里では幻獣族を診れる医者が足りなくて困っています。アルガティア女王陛下、どうにかできませんでしょうか?」

その内容を読んだゴルダは、なぜ自分がアルガティアの呼ばれたかの理由を理解した。
ゴルダは竜医である以前に、幻想獣医でもあり、幻獣族の診察および治療も可能な存在。
なので、必然的にこういう案件でアルガティアに呼ばれるのは無理もない。

「行ってくれる?」

「構わんが、幻獣語通訳できるようにフィルスかイファルシアを連れて行きたいんだが?」

行ってくれるかどうかを聞いてきたアルガティアに、ゴルダは幻獣語の通訳にフィルスかイファルシアを連れて行きたいと言う。
それにアルガティアはうーんと考えて

「エゼラルドとフィルスを連れてってもいいわ」

エゼラルドとフィルスを連れて行くことを許可してくれた。
こうして、ゴルダが幻獣の里へ行くことになったのが数日前の出来事である。

「何か見えるか?」

「何も。でも僕以外のカーバンクルの気配は強くなってきたかな」

平地と草原と森ばっかりで何も変化がない場所を歩き続けてはや2時間以上。
村らしい村は見えず、見えたといえばこちらに気づいていない魔物くらい。
それ以外はたまにエーテルカウンターが警告音を出すほどのエーテルの吹き溜まりがあったくらい。

「ううむ、GPSも使い物にならんか」

リフィルでも平気で電波の入る自分の携帯のアプリで地図を見ようとするも、通信エラーが返されて地図が見れなかったのでゴルダは携帯を戻す。
かといって、アルガティアから渡された魔法の地図はエーテルのせいなのかどうなのかは不明だが現在地どころか周辺の様子すら表示しきれていない。

「ちょっとその地図貸して」

ゴルダがどうにかならないかと魔法の地図をいじっていると、フィルスが地図を貸してと言い出す。
それにゴルダは、何かいい方法でもあるのか?と言いつつフィルスに渡した。
地図を受け取ったフィルスは、自分の体毛を引き抜いたかと思えばそれを地図に散らす。
すると、今までまともに表示されていなかった地図がきれいに表示されて村の位置もはっきり分かるようになったのだ。

「アルガティアがエーテル対策せずに渡したみたいだね、でもこれで大丈夫」

フィルスから地図を返され、ゴルダは現在地から縮尺と地図上の距離を計算して実際の現在地から村までの距離を割り出した。
その結果は、このままのんびり移動していたら夜中にしか着かない距離だったのだ。

「これは困った、エーテルが多い場所を避けて通らねばならんのに村までの距離がこれとは」

「飛ぼうか?上空のエーテルがどれくらいかは分からないけど」

困ったと呟いたゴルダに、エゼラルドがそこまで飛ぼうかと案を出してきた。
しかし、大気中のエーテルの濃度がどれくらいなのかが分からない以上は上空を飛ぶのは危険である。
フィルスとエゼラルドはエーテルをマナに変換する能力を持っているので何ともないが、ゴルダは強い耐性があるだけなのであまり長時間高濃度のエーテルに晒されるのはよろしくない。

「背に腹は代えられないな。よし、それで行こう」

最終的にゴルダが下した決断は、エーテルの蓄積量が危険レベルに達した時は薬で抜き取るということでエゼラルドに村まで飛んでもらうことになった。
そしてエゼラルドはゴルダを背に乗せ、村のある方角へと飛び立ったのであった。

「上空だとあまり反応しないな」

「風向きもあるかもね」

上空でも常にエーテルカウンターを出しっぱなしにして値を注視しているゴルダ。
フィルスの言うとおり、今日は風向きがいいためか、エーテルカウンターは正常の値の域を出ていない。
エゼラルドも、少しでもエーテルの濃度に違和感を感じるとそこを避けて飛ぶようにしてくれていたので、ゴルダのエーテル蓄積量はそこまで上がらなかった。

「この辺かな?」

「そうだな、この辺からは降りて歩いて移動しよう」

村の少し手前まで来たところで、ゴルダはエゼラルドに降りるように指示。
エゼラルドは徐々に高度を落として軽い音とともに地面へ着地。
飛び始めて3時間ほど経った時のことであった。
日がすでに傾き、降りた瞬間にエーテルカウンターが要注意の値の域を指したのでこれは早く村に行かねばと3人はそそくさと村まで移動する。

「ものみごとにカーバンクル…と幻竜族か?それしか住んでないな」

「たぶんここがカーバンクル族が住む村で一番大きかった気がするよ」

一行がたどりついた村は、幻竜族とカーバンクル族が住む村。
幻竜族サイズに合わせて家が建てられているためか、そこまで小さいとは感じず、いたって普通の村だ。
全員こちらを凝視しているが、特に警戒している様子は感じられない。

「どこか泊まれるところないか聞いて来てくれんか?」

「ちょっと待ってて」

ゴルダはフィルスにどこか泊まれる場所がないか聞いて来てくれと頼み、フィルスが戻ってくるのを待つ。
するとフィルスはほんの数十秒で戻って来て

「どうやらアルガティアに手紙を出したのはこの村の村長みたいだね、その村長が泊めてくれるみたいだよ」

村長が泊めてくれるということと、手紙はこの村の村長が出したということを伝えてきた。
ゴルダはなら話は早いとその村長の家へ。

「どうも、村長のルヴェルニッチ=シェルルです」

村長はどうやらドランザニア語が話せるようで、ドランザニア語で挨拶してきた。
性別は今のところ分からないが、物腰の落ち着いた薄紫と白い毛のバランスが取れた容姿の幻竜族で、目は透明に近い紫色をしている。

「アルガティアに頼まれて来たゴルダだ、一応これでも幻想獣医だ」

「そうですかそうですか、わざわざこんなところまで来ていただけるとは」

ゴルダが自らを幻想獣医であることを名乗ったところ、ルヴェルニッチは急にゴルダの手を握ってきた。
それにゴルダは無表情な顔で

「医者がいない、ということだったが。ほかの村にもいないのか?」

ゴルダのその問いに、ルベルニッチは握っていた手を離すと

「居ないわけではないんですが、どうにも自分の村で手一杯なようで来てほしいと手紙を出しても断りの返事しか返ってこないのです」

居ないわけではないが、慢性的な医者不足のせいか手紙を送っても断りの返事しか返ってこないという。
それにゴルダはそいつはかなり深刻な問題だなと独り言を言うと

「今この村に医者に診せなければならん奴はいるか?今日は無理だが明日朝一番でそいつを診察したい」

この村に医者が必要な奴はいるかとルヴェルニッチに聞く。
ルヴェルニッチは少し渋い顔をして

「居るには居るんですがね…まあいいです。明日また詳しくお話しします」

明日また詳しく話すと言って、その後3人に夕食を振る舞った。

「あの物言い、何かが引っ掛かる」

夕食を終え、風呂に入っていたゴルダはルヴェルニッチが言っていたことを模索していた。
居るには居ると言っておいて、急に話の腰を折ってまた明日話すと言い出したあの態度の裏には何かがあるとしか思えない。
ゴルダはそう確信していたのだが、それを気にしても仕方がないのでさっさと明日の準備をして今日は寝ることにしたのであった。

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小説(一次) |

初夏の雪原にて

今年は梅雨をすっ飛ばして初夏が訪れたドランザニア大陸。
しかも、初夏だというのに連日真夏日を記録している最中、リヴァルスだけは違った。
リヴァルスの夏は、1年の中で唯一気温が氷点下以上になる貴重な時期であり、この時期を狙ってリヴァルスは他国との交易を重点的に行ったりする。
そしてゴルダも、今日はドランザニアからの商人の交易の護衛依頼でリヴァルスの雪原を歩いていた。

「これといった脅威の姿なし、まだしばらくは安全そうだ。進んでいいぞ」

双眼鏡で数百メートル先を見、これといった魔物などがいないことを確認したゴルダは交易の一団の歩みを再開させる。
なお、マティルーネは寒いのを嫌がって今日は留守番。
朝早くにリビタール山脈のふもとで一段と合流し、天気が良かったため予定よりも速く昼までに通過しておきたいポイントを通過。
このままいけば日没前にはリヴァルスの王都までたどり着けるといったところだ。

「少し休みませんか?ゴルダさん、竜の状態や荷物の確認をしたい」

「そうだな、もう少し行ったところで一旦休憩しよう」

商人の1人に休憩しないかと言われ、ゴルダはそうだなと二つ返事を返してもう少し行ったところで休憩することに。
この速さで行ければ、1時間ほど休憩しても問題はない移動距離だったからこそ休憩を決定したのだ。

「よし、ここで1時間ほど休憩する。今のうちに荷物のチェックや竜の状態を調べておけ。竜に何か異常があれば俺に言え」

そう言って、ゴルダは一団から少し離れたところで煙草のようなものを吸いながらこのまま進んでもいいのかを確認する。
だが、今いる場所ははるか遠くに森が見える程度の大雪原。
ゴルダ程度の視力があればある程度は脅威があれば見つけられるのだが、それっぽいものは何もない。

「大丈夫そうだな」

一応この先も安全であることを確認し、一団のところへ戻ろうとしたゴルダ。
しかし、その途中で右足が何か雪ではない柔らかいものを踏んづけた。

「何だ?」

腰の剣に手をかけ、警戒しながら右足をそっとどかすゴルダ。
すると、そこにはゴルダの頭に程よく乗っかかりそうな水色の毛の狐がこちらを何踏んづけてんだよという顔で見ていた。
ゴルダはこれにふうむと興味深そうに顎に手を当てつつしゃがみ、その狐をまじまじと観察しようとしたが、その狐はゴルダに後ろ足で雪をぶっかけると雪の中を掘ってどこかへ行ってしまう。

「ただの狐ではなさそうだが、ただの狐ではない…とすると氷狐しか考えられんな」

ゴルダの頭に、氷狐という魔狐の一種が浮かんだ。
氷狐とは、その名の通り水と氷の属性を司る魔狐でリヴァルスにしか住んでいない。
しかも、その姿を見た者はおらず生態も分かってないらしく、1つだけある者が間違えて踏んづけて氷付にされたという逸話が残っているくらいだ。

「また会えるかどうかも分からん以上、惜しいことをしたな」

惜しいことをしたなと思いつつ、ゴルダはまた交易商人の一団を王都まで護衛する仕事に戻る。
その後は何事もなく護衛を終え、氷麟を呼んで帰路に就くゴルダ。

「ここは涼しいね」

「今氷点下1度だからな、そりゃドランザニアの30度よりは涼しいだろうよ」

のそのそと氷麟を歩かせつつ、他愛もない雑談を交わすゴルダ。
時間的にはまだ日の入りには早い時間だが、日が傾いて辺りは薄暗くなっている。
一応ゴルダも氷麟も夜でもある程度見えるので急いでいないのだ。
そしてそれから数分移動した時だった

「ぶっ」

ゴルダの顔に何かが飛びついて引っ掻いてきたのだ。
その何かを、ゴルダは淡々と引っぺがし、その正体が分かった途端

「お前、昼の奴か?」

昼の奴かとその何かに聞く。
昼の奴とは誰なのか?
それは紛れもなくゴルダが間違って踏んづけた氷狐である。
どうやらずっと後を付けていたようで、仕返しする隙を狙っていたようだ。

「なんか言ったらどう…って無理か」

なぜゴルダが無理かと言ったのかというのは、氷狐が使っているであろう言語がそもそも不明なので理解しようにもできなかったからだ。
すると氷狐はゴルダの腕に噛みついてきたが、あっさり振りほどかれると、氷麟の背の上に座ってゴルダの目をじっと見る。
どうやら、向こうも何を言っているのかが理解できていないらしく意思を介して話をしようとしているようだ。

「久々に人間に会ったと思ったらまさか踏んづけられるとは…」

「大丈夫か診てやろうとしたらお前は逃げただろうが」

久々に人間に会ったと思ったら踏まれるとは思わなかったなどとくどくど言い始めた氷狐に、ゴルダは大丈夫か診てやろうとしたら逃げただろと指摘。
すると氷狐はうぐぐという顔をすると分が悪そうに後ろ足で顔を掻くと

「そっちが武器抜こうとし…ああもういいいや、こんな話しててもつまんないや。やめやめ」

ゴルダが武器を抜こうとしていたからだと言いかけたところでこんな話はやめようと言い出す。
それを聞いてゴルダは構わんがと返し

「ところで氷狐にも名はあるだろ?よければ」

名を教えてくれんかと言ったところ、氷狐は

「メーヴィエル=ルライスさ、そっちの名はゴルダで当たってる?」

メーヴィエルと名を名乗ったばかりか、ゴルダの名を言い当ててきたのである。
だがしかし、ゴルダは特に驚く様子もなく

「俺の名を言い当てるとはな、たまげたな」

たまげたなとだけ言ってメーヴィエルを撫でる。
だが、メーヴィエルは撫でられた瞬間に頭を横に振ってその手を払う。

「触られるのは嫌いか?」

渋い顔をしているメーヴィエルにゴルダが聞くと、メーヴィエルはそうだよと言って氷麟の背からひょいと降りると

「んじゃね、近かれ遠かれまた会うかもね」

んじゃと言って夜の雪原の中へ消えてしまった。

「何がなんやら」

メーヴィエルが消えた方を見ながら、ゴルダはそう呟いた。
なお、どういうわけだかこれ以降メーヴィエルが家に勝手に遊びに来るようになったという。

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小説(一次) |

川で遊ぶようです

4の月が足早に過ぎ去り、5の月に入ったある日のこと。
バルコニーで暇を持て余していたゴルダに

「わっ!!」

「何だ、どうした?」

フウがいきなり脅かしてきたので、何だと聞くゴルダ。
しかしフウは居間の方を指さすだけで何も言わない。

「なるほど、茶でも出してやれ」

「えー?」

人離れした感知力で誰が来ているかを察したゴルダはフウに茶を出せと言うも、渋られた。
はたして、誰が来ているのだろうか?

「こんにちは」

「よく来たな、暑くないか?」

「少しだけですわ」

来ていたのは、他でもないコロンとモカ。
ちなみに、なぜゴルダが暑くないかと聞いたのかというと、今年は初夏の入りが例年より早く、梅雨がない。
そのため、5の月のはじめから最高気温が25度を軽くオーバーしている。
なお、現在の気温は30度手前で真夏日である。

「ここまで暑いと、あれしかないと思いません?」

「そう、あれあれ」

コロンとモカの言うあれとは何なのか?
それに答えを出したのはフウだった。

「泳ぎに行くとか?」

「そうそう、どこかに泳ぎに行きませんか?」

泳ぎに行こうと言ったコロンに、ゴルダは携帯のスケジュールを見て

「構わんぞ、今週ならの話だが」

今週ならいいという返事を返す。
コロンはその返事を聞いてやったと呟くと

「もう1人2人呼んでも?」

と聞く。
ゴルダはそれにいいだろうとだけ返し、また携帯を出して地図を見る。

「あと海と川、どっちでもいいですよ」

地図をいじるゴルダに、コロンはそんなことを言う。
それを聞いたゴルダはふうむと一言呟くと

「ならばいい場所がある、楽しみにしてろ」

などと言いつつ明後日なと言ってコロンとモカを帰す。
一体ゴルダは何を考えているのだろうか?

そしてあっという間にその日はやって来た。
待ち合わせはゴルダの家だったので、朝から1人で準備をするゴルダ。
一方のフウは部屋から出てこず、アルガントは帽子をいじっており、ウラヘムトは俺は行かねえと準備する以前の問題であった。

「どう?」

「おい、その瓶の上に立つな」

ズッキーニを丸ごと酢漬けにしたものが入っている瓶の上に立って、この帽子はどうかと聞くアルガントにゴルダは立つなと言って降りさせる。

「ちぇー」

「じゃじゃーん」

アルガントが瓶から降りると同時に、薄着姿のフウが部屋から出てきた。
かなり透けているTシャツと半ズボンの下には、その体には不釣り合いな、いわゆる海パンと呼ばれる水着をつけている。

「着替えも用意しとけ」

「もちろん」

着替えも用意しておけとゴルダが言うと、フウは手に持っていたバッグを見せた。

「よしよし、コロン達が来るまで待ってろ」

あからさまなバーベキュー用食材の準備を続けながらゴルダはフウとアルガントにそう言った。
それから1時間もしない間に、コロンとモカが見慣れない2人を連れてやって来た。
1人はモカにべったり、もう1人は日焼け止めを念入りにすり込んでいる。

「2人とも初顔だな、多分俺の名はコロンから聞いているだろうからあえて名乗らんが」

いつもとは少し違う調子で2人に挨拶をするゴルダ。
すると、日焼け止めを念入りにすり込んでいた1人が

「チーノです」

と名乗る。
なお、ゴルダはこの時点でチーノが男なのか女なのかの判定ができなかったのでどっちもどっちだということにした。
さらにそれに次いで、モカにべったりだった金髪のもう1人も

「…ココ、ココ=カフェテリア」

と恥ずかしいのか何なのかよくわからない感じで名乗った。

「チーノとココか、よし行くぞ」

一応全員揃ったので、一行は目的地へと向かう。

そして一行がやって来たのは、セイグリッドのアッバサト川。
とても増水しやすいため、好き好んでここで遊ぶ者はほとんど居らず、貸し切り状態だ。

「じゃあ遊んで来な、ただし川の奥の方は深くて流れも速いから行くなよ」

ゴルダはそう言いつつ、自分はバーベキューの準備を始める。
モカとココは上着を脱ぎ、ブーツも外して川の方へ。
フウは海パン姿で岸辺でチーノとレルヴィンと遊び、アルガントは川辺に不釣り合いに生えている木の下で何かをしていた。

「手伝います?」

バーベキューコンロに入れる炭の火起こしをしているゴルダにコロンが話しかける。

「火起こしは汚れるからいい。それより食材とテーブルなんかをいいか?」

「もちろんです」

ゴルダに食材出しとテーブル設置などを頼まれ、コロンはそっちの方に取り掛かる。

「泳がないの?それとも泳げない?」

「あっ、いや別にそういうわけじゃ…」

モカとそこまで深くないところで泳いでいたココにそんなことを言われ、フウはそういうわけではないと返す。
ちなみに、モカはレルヴィンと泳いでいた。

「じゃあ泳がないとね」

「わっ…ちょ、ちょっと!?」

いきなりココに腕をむんずと掴まれて足が届くか否かの深さまで連れてこられたフウ。
若干沈みそうになりながらもなんとか泳いでいるフウを、レルヴィンは近寄ってサポートする。

「ぷはっ…」

「本当に泳げるの?」

レルヴィンに掴まって泳いでいるフウに、モカは心配そうに聞く。
だがフウは見栄を張って、大丈夫だ問題ないと言わんばかりに親指を2人に立てて見せる。
ココはそれを見て心の中でニヤリと笑うとフウに

「じゃあ、素潜り勝負しましょうよ」

と勝負を吹っ掛けたのだった。
その一方でチーノはというと

「雷撃使ったら魚とれるんだけどなー」

川面から見える魚を見ながら、さらっと危ないことを呟いていた。
すると、その横からアルガントが手製の石槍を持って川に入ったかと思いきや、その槍を川の中に突き入れる。
そしてアルガントが槍を川の中から上げると、槍先に魚が突き刺さっていたのだ。

「とったどー」

そういいながらゴルダのところへ行くアルガント。
これを見たチーノは

「釣るって手があったね」

と言ってゴルダのところへ向かう。

「魚か、調度いい」

ゴルダはアルガントの持ってきた魚を見てそんなことを呟く。
後ろでは、コロンがなおもバーベキューの準備を続けている。

「いっちょ釣りするか」

「わーい」

「私もいいかな?」

ゴルダが釣りをするかといったと同時に、アルガントがわーいと言ったのに混じってチーノも自分もいいかと聞く。
するとゴルダはいいぞと即答して、3人分の竿を出して上流の方へと向かった。

「いつまでやるの?」

「まだまだ」

その頃モカ達はというと、いまだにココとフウが素潜り勝負を続けていた。

「はい、私の勝ち」

「むー」

半ば呆れた様子で2人を見ているモカとレルヴィンをよそに、2人の決着はいつまでたってもつきそうにない。

「向こう行きましょ」

結局モカはレルヴィンとこっそりその場を離れたのであった。

「ふんふんふ~ん」

そしてこちらはコロン。
バーベキューの準備を終わらせ、クーラーボックスに入っていたスイカのような何かを網に入れて川の流水に浸す。

「どこまで釣りに行ったのかしらね」

バーベキューグリルに木炭を足しながらコロンは言う。
この時点で、ゴルダ達が上流の方へ行ってから1時間は経っている。

「ま、いっかぁ」

などと楽観的なことを言いつつ、コロンはゴルダが現地で作るつもりだったであろうサラダを作り始めた。

そしてこちらは、上流の方へと来たゴルダ達。
釣果は芳しくないらしく、イワナが3匹釣れたくらい。

「足りないんじゃないかな?」

「どうだか」

自分の膝の上にアルガントを座らせているチーノに足りないのではと聞かれ、ゴルダはどうだかと返す。

「触るなーっ」

「なんで?もふもふしてるのに」

アルガントに触るなと言われ、なんでと返すチーノ。
ちなみにアルガントはもふもふされるのが好きではない。
なぜかというと、触られたときにびっくりし過ぎて制御が利かなくなるかもしれないからだ。

「つまんないの」

「にひひ」

チーノはそのままアルガントを座らせたまま釣りを続行するも、ゴルダに戻るぞと言われ、戻ることに。

「行くよ」

「やー」

チーノはそのままアルガントを抱いてコロンの所へと戻った。

「もうこの辺にしましょ」

「そうだね…」

その一方で、素潜り勝負を続けていたココとフウはようやく勝負がついたのか、川辺へ戻って来た。
その時モカはコロンを手伝い、バーベキューを始めていた。
テーブルの上にはサラダの他に飲み物と個々の皿とコップが並べられている。
バーベキューコンロでは、野菜や肉が独特の音を出して焼かれている。

「ほら、皿持って来てモカ」

「はーい」

コロンの指示を受け、皿を持ってくるモカ。
ゴルダが戻ってこないので、先に焼き始めているのだ。

「もう焼いてるのか」

「ごめんなさいね」

それから数分してゴルダ達が戻って来た。
その手にはイワナ3匹が握られており、ゴルダはすぐさまイワナを下ごしらえして焼き始める。
バーベキューコンロの火が強いためか、イワナは10分もしないうちに焼き上がる。

「それでは」

「いただきます」

「やー」

一行はバーベキューを食べ始めたのであった。

「いい焼け具合だ」

「そうですか?良かったです」

焼け具合を評価されてほっとするコロンの横では、ココがアルガントにちょっかいを出して嫌がられていた。
一方モカとフウは普通に食べている。

「初対面から思ったけど、笑わないんだね、ゴルダって」

ふとそんなことを言ったチーノに、ゴルダは食事の手を止める。
これを見たフウはあたふたし、ココは頭上に?を浮かべ、コロンとモカはあちゃーという顔をする。

「理由があるとだけ言っておく」

だがしかし、ゴルダの反応は淡白なものであった。

「ふーん」

グラスに注いだワインをぐいと飲みほしているゴルダを見て、チーノはそう呟く。

やがて食事も終わり、片付けもほどほどにしたところでコロンが川の流水に浸していたあのスイカのようなものを持ってきた。

「これどうします?」

「割るんだ」

どうするのかとコロンに聞かれ、ゴルダはいきなり腰の剣を引き抜いたかと思えば、そのスイカのようなものに振り下ろす。
だが、スイカのようなものは剣をつるんと受け流して割れなかった。

「割ったり切ったりするのにコツが要る」

ゴルダはさらっとそんなことを言って安定しているところにそれを置くと、どこからかタオルを出して

「最初にやりたいのは誰だ?」

と聞く。
するとココがフウを引っ張って来て

「はいはい、フウとやる!」

と言い出す。
これにゴルダは本当にやるのか?と目線で訴えてからココとフウを二人三脚と同じようにし、そのままやってもらうことに。
ちなみに結果はというと

「わーっ」

「ぬわーっ」

大きくコースアウトして2人は川に突っ込んだ。
その後、モカやチーノも挑戦したが、結局割れなかった。
そして、コロンの番が回ってくる。

「やっても?」

「かまわん」

コロンにやっていいのかと聞かれ、かまわんと返すゴルダ。
するとコロンは目隠しをしたかと思えば、スイカのようなものと距離を一瞬で詰めるや後手切りですっぱりと切った。

「簡単すぎますわ」

剣をゴルダに返しながら、コロンはそんなことを言う。

「流石と言ったところだ」

剣についた汁を拭きながらそう言ったゴルダにコロンは目元に影を落とした表情で

「暗殺スキルの応用ですわ」

とゴルダに返してテーブルの上にあった包丁を取りに行く。
ちなみにその後は普通にスイカのようなものを食べて帰ったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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