氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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季節外れの大雪の日に

ゴウゴウと吹雪く音が外から聞こえてくる窓の外、そして暖炉は火力が最大になるように燃やされている。
今日のドランザニア中部は、季節外れの寒波の影響で大雪と吹雪が吹いていた。
気象情報では、この吹雪と大雪は明後日まで弱まることはないという。

「電気も不安定だな、時々切れる」

そんなことを言いながら、テレビの前でアルガントを背に乗せて腕立て伏せをするゴルダ。
特にやることもなく、こんな吹雪の日に依頼が来るはずもないのでこうやって暇をつぶしている。

「まーだまだ」

一瞬腕立て伏せを止めたゴルダに、アルガントはまだだと背を叩く。
ちなみに、ウラヘムトは部屋でパソコンでバイオショックをしている。
だがゴルダはそれでも腕立て伏せを再開するどころか、中断して窓の外の方を見に行った。
その際、アルガントはゴルダの背から滑り落ちてそのまま部屋の方へと自分で転がっていった。

「これはそろそろ停電するだろうな、よし…自家発電機に切り替えるか」

さっきよりも電気の途切れがひどくなってきたので、ゴルダは自家発電機に切り替えようと裏口から外へ出る。
なぜかこの家は配電盤が外にもあり、ブレーカーが落ちると外のも上げに行かなければならないというめんどくさい仕様になっている。
前にゴルダは、それを解消すべく配電盤を1つにしようとしたが結局全部は出来ていない。

「もうこんなに積もってやがるのか」

外へ出ると、ゴルダの膝あたりまで雪が積もっていた。
なので、ゴルダは裏口に立てかけてあった雪かき用のシャベルで道を作りながら自家発電機の所へと向かう。

「すごい雪だね」

そのまま自家発電機の所へ向かっていると、氷麟がやけに楽しそうにしながら話しかけてきた。
実は、大雪と吹雪になる前に小屋から出してやっていたのである。

「お前はなんともないかも知らんが、俺はうんざりしている」

「もっと積もると思うから窓とかに注意したほうがいいよ、補強するとかさ」

「無論そのつもりだ」

氷麟とそんな会話を交わし、ゴルダはそのまま自家発電機の所へ到達。
さあ稼働させようとキーを回したのはいいが、うんともすんとも言わない。
どういうことだと冷静に調べていると、燃料の液体魔力がすっからかんだった。
しかも、最近全く使っていなかったせいかあちこちが故障している。

「冗談きついぞ」

自家発電機が置かれているすぐ横が、最近新たに軽トラを置いたりするために増築したガレージだったのでゴルダはそこから工具と液体魔力を引っ張り出す。
なお、修理自体はそこまで難しいものではなかったのだが、何分大雪で吹雪いているので集中力が途切れ途切れになって時間がかかった。

「よし、いい子だから一発で動けよ」

どうにか修理と燃料の液体魔力の補充を終え、稼働用のキーに手をかけるゴルダ。
そしてキーを『停止』から『稼働』の方へと回す。
すると、自家発電機は機械特有の起動音を立てて稼働を開始した。

「よしよし、後は安定するのを待って給電を発電機側に切り替えるだけだ」

自家発電機は確かに稼働したが、いきなり給電を切り替えると安定しないどころか発電機が止まる可能性があるので切り替えは安定してからだ。

「よし、あとは切り替えるだけだ。うまく行けよ?」

ゴルダは、『給電切り替え』と書かれた切り替え器のレバーを『自家発電機』の方へと倒す。
すると、一瞬停電はしたもののすぐに出力が切り替わって一瞬停電することもなくなった。
なお、ウラヘムトがパソコンをしているが大丈夫なのかと思われがちだが、ゴルダはその辺は抜かりなく無停電電源装置を置いてあるので問題ない。

「さて、次は窓補強して出入り口の確保だな」

そう言って、ゴルダはガレージに置いてあった丸太などを持って玄関と裏口の確保に向かう。
なお、確保と補強はさっさとやったので30分もかからなかったとか。

「やれやれ」

ようやく家の中へ戻り暖炉に薪を追加するゴルダ。
テレビでは、大雪特別警報が云々という臨時ニュースが流れていて今回の大雪が只事ではないことを示している。

「こんな時にはあれだな」

などと言って、ゴルダが暖炉の前に持ってきたのは小さめの鍋とウィスキー。
どうやらホットウィスキーでも飲むつもりらしい。

「あっ、ウィスキー」

「お前も飲むか?」

ゴルダがウィスキーを温め出すと、それに釣られたようにアルガントが出てきた。
それに気づいて、飲むかと誘うとアルガントは二つ返事で頷く。
なお、アルガントは酒は大丈夫なのかどうかということについては、なんら問題はない。
しかし、闇竜が故に酔うとそっちの力が強まるので注意が必要だが。

「ふぅ」

「こんなときにはこいつだ」

先にアルガントに飲ませ、自分は熱々にするためにじっくり熱するゴルダ。
端から見れば、異種族親子のようにも見えるその構図は絵にもなりそうである。

「ほえー」

そんなこんなで、時間は過ぎていくのであった。

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小説(一次) |

はーたんの手伝いと2匹の緑毛

ハーキュリーがゴルダの元で暮らし始めて数日。
ゴルダが居ない時の家事は全てハーキュリーが受け持ち、ゴルダが帰って来たら2人でやるというローテーションを組んでやっている。
なお、ハーキュリーの家事力はゴルダも十二分に納得するものであった。
掃除洗濯は完璧にこなす上、料理もゴルダをもってして上手いと言わせるほど。
さらに、ゴルダの仕事である竜医の知識にも興味を持ち、ある程度なら補佐できるレベルの知識と技術をこの数日で身につけた。
そのため、ハーキュリーはゴルダに

「おまえは賢竜に匹敵する頭を持っているようだな」

などと言われたのであった。
それに対して、ハーキュリーは

「頭の良さならゴルダに負けないぞー」

頭の良さなら負けないと自負したという。

そして、ある日。
ゴルダはハーキュリーにこう言う。

「今日は竜医の仕事を少し手伝ってもらいたいんだが、いいか?」

「いいよ、何を手伝って欲しいの?」

竜医の仕事を手伝って欲しいと頼まれ、ハーキュリーはいいよと即答し、何を手伝って欲しいのかを聞く。
それに対して、ゴルダはハーキュリーに1枚のメモを渡す。

「1つめは、メモに書いてある薬を今から調合して用意しておいてくれ」

そのメモには薬の名前が羅列されていて、ハーキュリーでも調合できそうなものばかりだ。
ちなみに、メモに載っている薬はハーキュリーは全て本で調合法や素材も把握している。

「おっけー、ゴルダはどうするの?」

「また別に準備がある、頼んだぞ」

ゴルダはどうするのかとハーキュリーが聞くと、ゴルダは別に準備があると答えた。
ハーキュリーはそれにそっかと返し、自分は調合に取り掛かる。

「えーっと、必要素材は…」

いつもは不必要に入るなと言われている物置に入り、素材を準備するハーキュリー。
中には正気度が激減するようなものもあったが、ハーキュリーはそれを見ないようにしてそそくさと素材を取ると物置を出る。

「わふー…」

規定の量を計りとり、それらを専用の道具で混ぜ合わせるだけの薬だけなのだが、それでもやり方を1つ間違えるだけで全く違うものになったりするので注意が必要だ。
だが、ハーキュリーはこの辺りは抜かりがない。
料理も同じで、注意しないと失敗したりすることがあるからである。

「混ざったかな?」

本に書いてあることを思い出しつつ、ハーキュリーは調合し終えたものを確認。
結果的にはそれで大丈夫だったので、次なる薬の調合へ。
そして、全ての薬を問題なく調合し終えることができた。

「ゴルダー、できたぞー?」

「そうか、じゃあ包んで粉末薬を持ち歩くケースに入れておいてくれ。行くぞ」

「行くぞー」

ゴルダにできたことを報告し、ケースに薬を入れるように指示されたハーキュリーは、薬をケースに入れてゴルダと家を出た。
その際、ハーキュリーはゴルダを乗せるか抱くかして移動しようとしたが

「ゴルダ重いぞー…」

「これでも標準体重だ」

予想してたよりもゴルダが重かったので、断念せざるを得なかった。
なお、ゴルダにはこれでも標準体重だと突っ込まれた。
だがそれを差し引いても、ゴルダが重いことには変わりないので結局は座標指定テレポートで移動することに。

「わふ?ここお城だぞ?」

「全くもってその通りだ」

座標指定テレポートでやって来たのは、セイグリッドとはまた違う城の庭園。
具体的に何が違うのかといえば、この城の庭園には畑が隅の方に作られていたりするくらいだろう。

「ここどこの国のお城なのだー?」

「会えば分かる」

「わふ?」

どこの国のお城なのだ?とハーキュリーに聞かれるも、ゴルダは会えば分かると言って答えない。
それにハーキュリーはきょとんとして、羽耳を掻く。

「いらっしゃい」

「ああ、どこに居るんだ?」

ゴルダとハーキュリーにそう話しかけてきたのはイレーヌだったが、ハーキュリーは全くもって初見であり、イレーヌの種族すらよく分かってない。
唯一分かったのは、ゴルダと同じくこの女性が少なくとも人間ではないということだけだ。

「どちら様なのだ?」

「イレーヌだよ、ハーキュリー。ここの国王のアルガティアの双子の妹」

「わふわふ、よろしくなのだ」

イレーヌをじっと見て、ハーキュリーがどちら様と聞いたのでゴルダはイレーヌだとハーキュリーに紹介。
ハーキュリーは、よろしくなのだとイレーヌに頭を下げた。
その後は、ゴルダとイレーヌに次いでハーキュリーは牛舎のような建物へと入る。
その牛舎のような建物の中には5匹ほどだろうか、草食と思わしき竜が飼われていた。

「わふ?この子たちは?」

「主に乳を搾ったりするための家畜の竜だ。草食だからと侮ってると痛い目にあうぞ、こいつら結構力強いからな」

「へえー」

ハーキュリーがこの竜たちについて聞くと、ゴルダはおもに乳を搾ったりする家畜竜だと答える。
それにハーキュリーは、別の世界にはこんな竜も居るのかとただただ頷くばかりであった。

「思った以上に重症だな」

「傷が膿んでてどうしようもないのよ」

その中で、1匹だけ隔離されている竜が居た。
ゴルダとイレーヌの話から、この竜はなんらかの原因で負った傷がひどく化膿してこうなっているのだとハーキュリーは察す。

「だが、もう打つ手がないわけではない」

「どうやって治療するの?」

「…ハーキュリー、お前にはどきつい光景を見せることになるだろうから、見ないほうがいいいぞ」

どうやって治療するのかと、ハーキュリーがゴルダに聞くと、突然ゴルダはそれを見ないほうがいいと忠告
する。
それになぜかとハーキュリーが問いただしたところ、ゴルダは

「化膿している部分を切り開く必要があるからだ」

とストレートに返す。
それにハーキュリーはビクッとして、すぐに背を向けて薬などの準備を始める。
それと同時に、イレーヌは牛舎ならぬ竜舎から出て行ってしまった。

「メス出してくれ」

「ほ、ほい」

ゴルダにメスを出せと言われ、ハーキュリーはゴルダが出していた器具箱からメスを出して後ろ手でゴルダに渡す。
もちろん、ゴルダの方には一切振り返らない。

「生理食塩水だ、あと聖水」

「わふほい」

こんな調子のやり取りを30分ほど続け、ゴルダとハーキュリーは治療を終えた。

「もう振り向いてもいいぞ」

「わ、わ、わふ…?」

ゴルダに振り向いてもいいぞと言われ、ハーキュリーは恐る恐る振り向く。
そこには、治療を終えて幹部に包帯を巻かれた竜の姿があった。

「あー、良かった」

「治せたということが、医者にとっては何よりも大事だ」

ゴルダのその一言に、ハーキュリーは妙に納得したという。

「わふ、大きいぞ?」

「20メートルはあるからね」

それから、庭園へと戻って手近の椅子に一緒に座ったゴルダとハーキュリー。
その目の前には、イレーヌと緑毛の竜ことエゼラルドが座っている。
ハーキュリーは、エゼラルドにかなり強い興味を示しているらしく、イレーヌとゴルダはそっちのけ。

「なんなら少し遊んでこい」

「いいのかー?」

「いいいわよ」

ゴルダにエゼラルドと少し遊んでこいと言われ、ハーキュリーはいいのかとイレーヌに聞く。
それにイレーヌはいいわよと言い、エゼラルドも軽く頷く。
するとハーキュリーは、すぐさまエゼラルドとどこかへ行ってしまった。

「楽しそうな奴だ」

どこかに行ってしまったハーキュリーを見て、ゴルダはそう呟いたとか。

「何するのだ?」

「うーん、何しようか?」

エゼラルドと畑の前まで来たハーキュリー、何をしようかとエゼラルドに聞く。
それにエゼラルドは、何をしようかと返しただけで特に何も考えてないらしい。
するとそこへ、エゼラルドとハーキュリーよりも小さい別の緑毛の何かがやって来た。
その緑毛の何かは、ハーキュリーをじっと見つめてからエゼラルドに誰こいつというようなことを聞く。

「うーん、よく分かんないけどゴルダのところに訳あって暮らしているみたいだよ。名前はハーキュリー」

「そ、私はイファルシアよ。見ての通り草のカーバンクルよ」

「かわいいぞー」

エゼラルドやハーキュリーよりも小さい緑毛の何かは、名をイファルシアと名乗って手で何かを丸めるような仕草をしてなぜかトマトを出した。

「わふ?」

「これはトマト、甘いのよ?」

ハーキュリーは、イファルシアの甘いという言葉をすんなり信じてその赤い実を頬張った。
だが次の瞬間、ハーキュリーの口の中に広がったのは名状し難い味と酸っぱさ。
そしてハーキュリーはなんとも言えない顔をして

「そのまま食べるものじゃないのだ」

と言ったとか。
なお、これにイファルシアは何も言わずにただニヤリと笑い、トマトを食べた以外は何の反応も示さなかった。

「ぬーん…」

その後、エゼラルドが季節外れのシロツメクサを出したので冠を作り出したハーキュリー。
だが、自分の元々いた世界に自生していたシロツメクサとは違い、癖はあるわ茎は硬いで冠にするのに少々手間取っていた。
なお、エゼラルド自身は自分で蔦を出して籠を器用に編んでいた。
その一方で、イファルシアは何かを彫っている。

「手慣れなのだ?」

「暇な時によく作るから慣れてるよ。簡単簡単」

エゼラルドの作り上げた籠を見て、ハーキュリーは手慣れなのかと聞く。
それに対してエゼラルドは、暇な時によく作るのでこれくらいは簡単だと話した。
それを見たハーキュリーも、試しに何か編もうとする。
するとイファルシアが異常に長い蔦を数本出して

「ロープでも編んでみる?洗濯物を干すためのやつを」

ハーキュリーにロープを編んでみるかと聞く。
それにハーキュリーは乗ったという顔をして、作ってみることに。
だが、実際に編んでみると

「むーっ」

ロープを作るためには、蔦同士を強く寄り合わせなければならないのだが、力加減が分からないハーキュリーは、何度も失敗していた。
しかし、それを見かねたエゼラルドにコツを教えてもらってなんとか作り上げることができた。

「結構大変なのだ」

こうしてハーキュリーは、蔦編みのスキルを会得した。
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空から降って来た竜

しんしんと雪が降るドランザニアのゴルダの家。
例年より少し遅めの降雪かつ、初雪から大雪という有様の中でゴルダは畑の雪対策を行っていた。
雪対策とは言っても、防雪用のテントを張るくらいなのだが。

「本当に勘弁してほしい雪だ」

ひとまず防雪テントを張り終え、タバコのようなものを吸いながら一息つくゴルダ。
空は雪雲でどんよりしていて、お世辞にも天気がいいとは言えない。
畑は防雪テントを張ってあるところ以外は一面白に染まっていて、何がどこにあるのか分からないくらいだ。

「何か空から雪以外のものが降ってきそうな天気になってきたな」

とゴルダは空を見上げて呟くが、口は災いの元。
呟いたことは、すぐに現実となった。

「ん?なんだあれは?」

そろそろ家の中へ戻ろうと、タバコのようなものの火を消してからまた空を見上げるゴルダ。
すると、空高くから何か雪以外のものが降ってくるのが見えた。
しかもかなりの大きさと質量を持った物体だ。

「っと、ありゃ竜だ。こうしちゃいられん」

目を凝らしてよく見ると、空から降ってきたのはあからさまに竜だったのだ。
大きさは3メートルくらいの体毛持ちで、2対の羽耳と翼というのがこの位置から確認できた。
竜の姿を確認すると、ゴルダは突如その場でしゃがみこんだかと思うととんでもない高さまで跳躍。
これは、ゴルダが持つ竜の力を僅かに覚醒させて常人の10倍以上の跳躍力を発揮したから出来る芸当である。

「お嬢さん、危なかったな」

「わふ?」

竜の高さまで跳躍し、何百キロもあるようなその体を両手でがっちりと掴んだゴルダ。
なお、竜の方は何が起こったのか分からず、首に巻いているマフラーを揺らしながらきょとんとしている。
ちなみに、なぜゴルダがこの竜が雌だと分かったのかについては、単なる直感であると補足しておく。
そしてゴルダは竜をお姫様抱っこしたまま地面へ着地。
その際、ものすごい音とともに土混じりの雪が飛び散ったがゴルダは全く気にしていない。

「ねーねー、ここどこなのかな?」

「ふむ、言語は通じるか…お嬢さん、名前は?俺はゴルダだ」

シアにも似た白毛の竜に、ゴルダは自分から名乗った上で名前を聞く。
白毛の竜は、ゴルダの目をじーっと見たまま

「私ハーキュリー。はーたんって呼んでいいよ?」

自らの名を、ハーキュリーと名乗った上ではーたんと呼んで欲しいと言う。
ゴルダはそうかと頷くと

「次の質問…と言いたいところだが部屋に入ろう。ここは寒いだろう?」

寒いだろうから部屋へ入ろうと言ったが、ハーキュリーは

「へーきへーき、もふもふあるし。次の質問てなーに?」

もふもふがあるのでここで大丈夫と返す。
ゴルダは本人が大丈夫と言うのなら問題はないなと思いながら

「これが分からんと少々厄介なことになるから聞くが、どこの世界から来たんだ?この世界のものではない魔力が感じられるんでな」

ハーキュリーに、どこの世界から来たのかを聞く。
だが、ハーキュリーはその問いにはあまり答えたくなさそうな顔をして答えようとしない。
その表情を見たゴルダは

「すまんな…答えづらい質問をしてしまったようだな。答えたくないなら黙秘しても構わん」

ハーキュリーに一応謝って、答えたくないなら答えなくていいと言った。
それにハーキュリーは

「気にしなくていいんだよー?」

とゴルダの頭を撫でる。
その際、ゴルダは本能的にその手を振り払って一本背負いを掛けようとしたが、理性がなんとか制した。

「しかし…参ったな元いた世界が分からないと帰しようがないんだが」

ハーキュリーに撫でられながら、ゴルダはそう心の中で呟きつつどうすればいいかを考える。
基本的に、異界から来たものは一旦全てシアの監視下に置かれる。
それはなぜかと言うと、下手に異界から来たものを野放しにしておくと厄介なことになることが多いからだ。
しかし、大抵のものはすぐに常時監視枠から外され、御痛が過ぎない限りは野放しにされる。
ハーキュリーもすぐに常時監視枠から外されるだろうが、元いた世界が分からないのではそうはいかないはずである。

「とにかく、部屋に入ろう。互いに雪をかぶっている」

「はーい」

ここで、互いに大量の雪をかぶっていることに気付いたゴルダはハーキュリーの雪を落としてから家の中へと招き入れる。
なお、アルガントとウラヘムトはゴルダの部屋にこもってゲームをしているので邪魔は入らない。

「なんというか、普通?」

「1人暮らし同然だからな、地味に決まっている」

ハーキュリーを居間に居させ、ゴルダは台所で紅茶を淹れる。
いつもは緑茶を問答無用で淹れるのだが、ハーキュリーにそんなものを出す訳にはいかないと思ったので紅茶にしたのだ。

「紅茶でいいか?」

「わふふー!いいよー!」

紅茶と聞いて、ハーキュリーは羽耳をパタパタさせて喜ぶ仕草を見せた。
それを見たゴルダは、程よい温度で紅茶を淹れてハーキュリーの元へと運ぶ。
なお、淹れ方はあの茶の淹れ方にうるさいサフィのやり方に準じている。

「お砂糖入れないの?」

「ストレートが好みでな」

なんの躊躇もなく角砂糖をカップに入れながら、ハーキュリーはゴルダに砂糖を入れないのかと聞く。
それにゴルダは、一口だけ紅茶に手を付けてからストレートが好みだと返す。
ハーキュリーはそっかーという顔をすると、今度はミルクもなんの躊躇もなく注いだ。

「そんなに入れたら紅茶の風味が消えないか?」

「この方が美味しいよ?」

ある程度飲んでからまたカップを置き、砂糖とミルクがどっさり入って紅茶本来の色がどっかに行ってしまったハーキュリーのカップを見ながらゴルダは言う。
だがハーキュリーは、この方が美味しいんだよ?と言うとそのまま淑女的な飲み方を披露した。

「ううむ。帰れるまでの間、お前をどこに住まわせるかだな」

「わふ?」

ゴルダのどこに住まわせるかという言葉に、ハーキュリーはぴくりと反応。
それに気付いたゴルダは、ハーキュリーに今後どうするつもりかを話して聞かせた。
まずはシアのところへ行って事情を説明しなければならないということ。
次に、帰れるまでの間ハーキュリーをここに住まわせてもいいということだ。
なお、ここにすむかどうかはハーキュリー本人が決めることだとゴルダは言った。

「わふー、ゴルダと一緒に暮らすぞー。助けてもらったお礼はしないとね」

それハーキュリーは、助けてもらったお礼はしないとと言って、帰れるまではゴルダの所で暮らすと言う。
ゴルダはそれに分かったとだけ返し、後でシアのところへ行こうと言って紅茶を注いだ。
こうして、元の世界へ帰れるまでの間ハーキュリーはゴルダのところで暮らすことになったのだ。

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ドラビットの里へ

ある日のセイグリッドのアルカトラスの部屋。
そこでゴルダがタバコのようなものを吸いながらアルカトラスと話をしていた。
その話とは

「なんで俺が行かねばならん?」

「言ったはずだろう、あまりにも手が離せぬと」

ライノートのところへ行って手紙を渡して欲しいとのことなのだ。
だがゴルダは、何故自分が行かねばならないのかと乗り気ではない。
どうやら仕事を肩代わりさせられることがあまり気に入らない様だ。

「どうしても嫌というのならば、それはそれで良いが」

なおもゴルダが納得行かない目線を投げかけてくるので、アルカトラスはそんなことを言う。
それに対して、ゴルダは折れたらしく

「仕方ない…行く」

アルカトラスに仕方がないので行くと返した。
それにアルカトラスはそうかと言い、ゴルダに謎の手紙を渡す。
どうやらこの手紙をライノートに渡して欲しいようだ。

「では行ってくる」

「うむ、頼んだぞ」

こうしてゴルダは、ライノートやトスカの世界へ行くことになった。
だが、いきなり行ってはライノートも対応し難いだろうとゴルダはトスカにこう手紙を出す。

「アルカトラスからライノートへの手紙を預かっている。いつ行ってもいいかを教えてくれ」

この手紙を出したその日の夕方、すぐにトスカから返事が返ってきた。
なお、返事には

「やだぁーっ!いつでもオッケーよー。ライちゃんにも言っておくわ」

などと、トスカらしいことが書いてあった。

そして翌日。
トスカやライノートが来たのとは逆のルートでゴルダはトスカ達の世界へ。

「のどかというかなんというか、なんだこのの人参畑の多さは」

ゲートを通った直後、目の前に広がっていた景色は、ゴルダが住んでいる所とそこまで変わらなかった。
どういう風に変わらないというと、家が全くと言っていいほどになく、広がっているのは森や山。
そして、唯一ゴルダが住んでいるところと違うのは、異常に人参畑が多く、ドラビットが所々に見られるところだろう。

「うーん、ライノートが住んでいるのはどこだ?」

ドラビットたちに興味津々に見られながら、ゴルダは家らしきものを探して歩き出す。
しかし、歩けど歩けど家らしきものが見当たらない。
あるのは人参畑とドラビットたちだけ。

「こいつらに聞いて通じるはずもないからな」

ドラビットにライノートの家はどこかと聞いたところで、返ってくるのは何を言ってるんだこいつはという、首をかしげる仕草だけだろう。
なので、ゴルダはなおも自力で家を探すことに。
だが、その苦労はすぐに報われることになった。
突然森と人参畑が開けたかと思えば、目の前に洋館が現れたのだ。

「わりとでかいな、この洋館は」

その洋館は何の変哲も無いもので、これといってライノートが住んでいるという確証は見当たらない。
ここで本当にいいのだろうかとゴルダは思ったが、とりあえずは尋ねてみようと洋館の扉を叩く。
すると、トスカとはまた雰囲気も容姿も違う女性が顔を出して

「人間風情がこんなところへ何の用ですか…?」

などとゴルダにこんなところへ訪ねてきた理由を聞いてくる。
一応、この女性もドラビット族ではあるらしいが、足は完全にスカートに隠れていて見えない。

「人間風情…半分は竜なんだかなこれでも」

人間風情と言われたゴルダは、そんなことを女性に返す。
すると女性は

「どちらでも私にはいいことです…それより名はなんと?私はジルハと言います」

名をジルハと名乗り、ぶっきらぼうに頭を下げる。
ゴルダはこれには少し困ったような目線を投げつつも、いつもの調子で両手を前で合わせてお辞儀して

「ゴルダ、ゴルダ=アルカトラスだ」

自らの名も名乗った。
ジルハはそれはさておきと言うと改めてゴルダに

「…それで、何か御用で?」

とまたもぶっきらぼうに聞く。
それにゴルダは、あの手紙を見せて

「ライノートに用事があってな、通してくれるか?」

ライノートに用があるので上がっていいかどうかを聞く。
ジルハは、ゴルダをあまり好ましく思っていない表情をしながら

「…どうぞ、ただし変なことは謹んでください。人間風情にあまり家の中を歩き回られて何かあっても困るので。トスカに案内させるので待ってて下さい」

変なことはするなと言って、トスカを呼んでくるので待っているように言って家の中へ消える。
その間、ゴルダはそこら中に居たドラビットたちに囲まれていた。

「ゴルちゃんいらっしゃーい!」

「うむ、今日はライノートに用がある」

ドラビットたちにじゃあなと言い、ゴルダはトスカと家の中へ。
家の中へ入ってすぐに、この家に住む者たちの肖像画が名前のプレートと共に壁に飾られていた。
その中には、トスカやジルバの他にエフベランカやライノート、そして見知らぬ幼女と名前のプレートが剥がされ、肖像画まで引っぺがされたスペースがあった。

「トスカ、このスペースは?」

「…ゴルちゃん、世の中には知ってはいけない事があるのよ?」

そのスペースに誰の肖像画が飾ってあったのかを聞いた瞬間、トスカは今までに聞いたことがないような口調でゴルダに世の中には知ってはいけない事があると言って咎める。
ゴルダは、トスカの態度の変わりようから絶対にこれには触れられたくないんだなと確信した。

「どうも、ゴルダさん」

「御無沙汰している、アルカトラスから手紙を預かっている」

その後すぐにトスカにライノートの所へ案内されたゴルダは、挨拶もそこそに用件を切り出す。
するとライノートはおやおやという顔をして、その手紙を出すように促す。

「これが爺さんことアルカトラスから預かってる手紙だ」

「どうも」

ライノートはゴルダっから手紙を受け取ると、一文ずつゆっくりと読んだ後にゴルダにこう言った。

「アルカトラス国王さんって、とてもいい方だと思います。こんな風にこちらが出向いてくれた事への御礼までしてくれるなんて」

「その辺はきっちりやるからな」

その後、ゴルダはトスカに引っ張られてライノートの部屋を後にする。
どこへ連れていかれるのかと思えば、そこはエフベランカの部屋だった。

「お前か、よく来たな…世界を越えてここやってきて正解だったな」

ゴルダの姿を見たエフベランカは、早々に駄洒落を披露。
これにゴルダは無反応で、トスカはいつもの調子で

「んもーっ!フーちゃんったら!」

とエフベランカを小突いた。

「来客の脚は雷のように速い…すなわち雷脚」

トスカに小突かれた直後、エフベランカはまた別の駄洒落を言ったが、これは誰も聞いていなかったようだ。

その後、ゴルダは台所へ連れてこられたかと思えばトスカにメモを押し付けられ

「ゴルちゃん、このメモをの食材を食料庫から出して来てもらえる?」

食材を食料庫から出してくるように言われた。
ゴルダがトスカにその食料庫の場所はどこかと聞こうとした時には、トスカは鼻歌混じりに食器の準備中。
これは邪魔できんなと思い、ゴルダは勝手に台所の中を歩き回って食料庫を探す。

「なんだここか」

ちなみに、食料庫は以外と簡単に見つかった。
そして、食料庫の中へ入ったゴルダだが

「見渡すかぎり人参だらけだな、洗ってもいないな」

物干し棒にみっちりと下げられている土付きの人参を見てやれやれという顔をした。
もちろん、人参以外に玉ねぎやなぜか渋柿が干されていたが、ゴルダはこれを気にすら留めずにトスカから渡されたメモに書かれた食材を探す。

「こんなものか」

トスカに言われたものを取ったゴルダは颯爽と食料庫を出る。

「量と力量が試されるのが料理…しまった聞かれていたか」

出てすぐに、エフベランカがまたまた駄洒落を言いながらトスカと準備をしているところにでくわしたゴルダ。
だが、ゴルダは何も言わずに2人の間に割って入って食材を置くと

「これでいいか?」

これでいいのかどうかの確認を取る。

「オッケーよー、そうだゴルちゃん。人参摩り下ろしておいてくれない?人参ケーキ作るから使うの」

トスカはそれに問題ないと返し、ゴルダに人参を摩り下ろすように指示。
ゴルダはそれに頷き、土付きの人参を洗うために流しへ。

「トスカとエフベランカと料理ですか?」

人参を洗っているところへ、唐突にジルハが現れてゴルダにそんなことを聞く。

「ああそうらしい」

「あなたの料理の腕前がどれほどかは分かりませんが、2人にくれぐれも迷惑のないよう…」

そうらしいと答えたゴルダに、ジルハはトスカとエフベランカに迷惑をかけるなと言ってトスカの所へ行ってしまった。
ジルハは相変わらずの態度だが、ゴルダは全く気にしていない。
なぜなら、ジルハよりももっと態度が冷たい者とも関わってきたからである。

「そのなんだ…すまん、ジルハは人間をとてもよろしく思っていないんでな」

「初対面時の目線で察してた。気にするな」

エフベランカにジルハが人間をよろしく思ってないということを謝られ、ゴルダはそれに気にするなと返す。
この時、ゴルダはエフベランカにジルハが人間をよろしく思ってないことを初対面の時の目線で察したと言っていたが、これがどういうことなのかは不明である。

「やはりここの人参はそんなに固くないんだな。手まで摩り下ろしかねん」

「スリが人参を摩り下ろす…」

ゴルダの人参の固さに対する一言に、エフベランカは摩り下ろしに関する駄洒落を言う。
なお、ゴルダはこれに無反応を突き通した。
これにはさすがにエフベランカも

「お前、少しくらい反応してくれてもいいんじゃないのか?」

と苦言を漏らすが、ゴルダは辛口なことを言っていいのか?と返してエフベランカを黙らせた。
その間、トスカはジルハと楽しそうに料理をしていたとか。

「手伝ってしまったのはいいが、俺はただライノートに用があって来ただけであってだな…」

「やだぁーっ!せっかくだから食べて帰るでしょ?」

その後、流れ流れでエフベランカ達と食事の席に着いたゴルダ。
どうやらトスカの策略にまんまと引っ掛かったらしい。

「策士め…」

トスカたちと食事をしながら、ゴルダはそうトスカに対して思ったという。

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氷花竜を追って

話は少し時間を遡り、今年。すなわち大陸歴3014年の3の月の頃。
ゴルダはこんな依頼を受けた。

「氷花竜という狼竜の一種がこの時期のリヴァルスの雪原に出没しているらしい。その姿を写真に収めてほしい」

依頼主は、いわゆる幻想生物学者の端くれで、あまり姿を見ることができない珍しい竜族の研究をしているのだという。
ちなみに、氷花竜とは前述したように狼竜の一種で幼竜と成竜のメスだけが左耳の辺りに氷花というまた別に存在する花を咲かせている竜である。
その色などは個体によって様々で、同一的なものではない。
なお、オスはその氷花を自らが歩いた後に咲かせることができる能力を持っている。

そして、氷花とは雪の結晶がそのまま花になった植物。
リヴァルスなどの寒い気候でしか育たないので、栽培しようと思ったらそれなりの設備が必要だという。
その花自体は凍傷になるほど冷たく、花は枯れるのではなく溶ける。
また、解熱剤の材料にもなるので、風邪の薬としても重宝されるが、花自体がすぐ溶けるので扱いが難しい。

「本当に撮るだけか?」

ゴルダは、依頼主にそう確認した。
なぜ確認したのかというと、時たまついでに狩って来いなどという輩も少なからず居るからだ。
依頼主は、その問いに首を横に振って

「まさか、そんなことは言いませんよ。本当に写真だけでいいんです」

本当に写真だけを撮ってきて欲しいと改めて依頼。
依頼主が嘘を言っていないと確信したゴルダは

「分かった、引き受けよう」

依頼を引き受けることにした。

翌日、ゴルダは寒冷地用の対策を施したカメラとその他の荷物を持ってリヴァルスへと入る。
リヴァルスの3の月はまだ冬が残っていて、全く読めないブリザードが吹くこともある。
なので、それに注意しながら移動しなければならないのだ。

「…引き受けたはいいものの、どこにいるのか皆目見当もつかんな」

気象情報と地図にGPSがリンクしている携帯端末を片手に、時折双眼鏡を覗きながら歩いていたゴルダはふとそんなことを呟く。
氷花竜は、確かにこのリヴァルスの雪原にこの時期だけに出没するのだが、具体的にどの辺りに出没するというのまでは分からない。
しらみつぶしに歩き回って探すのもいいが、それだとリスクが高い。

「あまり気安く呼ぶのも何だが、この際仕方ない」

結局ゴルダはどうしたのかというと、かなり大きめに口笛を吹いた。
ちなみに、これはリヴァルスウルフを呼び出すための口笛である。

「ようお前ら、シェリスのところ連れてってくれ」

そのまま数分ほど待っていると、どこからかリヴァルスウルフがやって来てゴルダを何か用か?という目で見る。
ゴルダはそれに対してシェリスのところまで連れて行くように頼む。
すると、リヴァルスウルフはこっちだと背を向けて走り出す。

「相変わらず走るのが速い奴らだ」

ゴルダはその後を追った。

「あらあら、久しぶり」

「お前も相変わらずで何よりだ」

そのまま30分近く走り、ようやくシェリスの所までやって来たゴルダ。
挨拶もそこそこに、ゴルダはシェリスにこう切り出す。

「氷花竜を知らないか?」

「ああ…あいつらね。知ってるわ、何か用でもあるの?」

氷花竜を知らないかと聞いたところ、シェリスからは知ってるわと意外な返事が返ってきた。
そこでゴルダは氷花竜ととりあえず会いたいと言うことを、シェリスに話す。
するとシェリスはゴルダに近寄って、訳も分からず匂いを嗅ぐと。

「じゃ、ここでしばらく待ってなさいな」

と言ってどこかへ行ってしまう。
その間、ゴルダはしばらく休憩しつつも仔狼と遊んでいた。

「とりあえずこの近くにいるのは見つけたわ、でもなんだか神経質になってたから刺激しないようにね」

それから1時間くらい経っただろうか、シェリスが戻って来てこの近くにいると教えてくれた。
だが、神経質になっているので刺激しないようにと忠告された。
それに対して、問題はないと言ってゴルダは氷花竜の元へ。

「ほう、あれが氷花竜か」

シェリスのところを離れ、その周辺を探していたゴルダ。
氷花竜は確かにその周辺に居た。
最少単位の群れなのか、十数匹しかその姿は確認できない。

「さてと、やるか」

望遠レンズのついた一眼レフカメラを取り出し、ゴルダはその場でしゃがんで撮影を開始。
氷花竜の周りには氷花が咲き誇り、オスがメスと子供を囲むようにして守っている。
オスが時折地面を蹴るたびに、氷花の咲いている範囲がどんどん広がっていっているのも確認できた。

「もう少し近寄れるか?」

しゃがみ姿勢からの匍匐前進で、氷花竜との距離を縮めることを試みるゴルダ。
だが、あまりにも近寄りすぎてオスの索敵範囲に入ってしまったようでオスに威嚇されてしまう。

「おうおう、落ち着け。お前らを狩りに来たわけじゃない」

その場で立ち上がり、カメラをしまってから氷花竜にそう言うゴルダ。
オスはしばらくゴルダを威嚇していたが、ゴルダの目をじっと見ているうちに威嚇をやめ、変なことはするなよという目線を投げかけてきた。
それにゴルダも、改めて変なことはしないと言ってメスと子供の方を撮影。
メスの方も最初はゴルダを警戒していたが、自分たちを狩りに来たわけではないと分かると逆に興味深そうに見つめてくるようになった。
だが、ゴルダは写真に収めるというのが依頼だったために余計なことはせずに写真だけを撮って帰った。

そして、ゴルダが依頼を終わらせてから数日後。
報酬も貰ってもうあの件は関係ないといつものように過ごしていた時だった。

「氷花?なんでこんなところに咲いてんだ?」

家の中に置いてあった空の植木鉢に、ひっそり氷花が咲いていたのだ。
しかし、氷花はリヴァルスのような寒い場所でしか生えないし育たないはず。
それを考えても、こんなところに咲いているのはあまりも不自然だ。

「氷花竜からのメッセージなんだろうか」

ちなみにこの氷花、今でもずっと溶けずに咲き続けているという。

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浮遊土玉を作ろう

ある日のシアの塔。
そこでシアとイファルシアという珍しいコンビが何かをしていた。
2人の前には、観葉植物と果実の木と思わしき木の苗。そして蔦で作った紐と何かの繊維を編んだ布。
そして砂と土が置かれているが、これは砂を土へ錬成変換している最中だ。
一体何をしているのか?それは浮遊土玉と呼ばれる植木鉢などが要らないある意味画期的な植え方の準備だ。

「それ全部土に変換しちゃって」

「そのつもりよ」

シアが砂を土に変換している間、イファルシアは浮遊土玉本体を作っていた。
浮遊土玉は、それに植える植物やその植物がどれくらい成長するかで大きさを変える。
例えば花や観葉植物程度なら草食竜の卵くらいの大きさで十分。
しかし、これが木の苗ともなると土地が作れるくらいの大きさになる。

「果樹の苗はリンゴと杏と…何これ?」

「それ?パッションフルーツ」

あまり見たことのない果樹の苗を見つけ、イファルシアがシアに何の苗かを聞いたところ、パッションフルーツという答えが返ってきた。
イファルシアはそれを聞いて、突如どこからか太めの木の杭と棒を取り出して横へ置いてから花をどういう配置で植えるかを考え出した。
その間にも、シアは砂を土に変換し終え、団子でも作るようにしてその土を丸め始める。

「大きさはこれくらいでいいかしらね」

シアが手始めに作ったのは、果樹の苗を植えるためのかなり大きい土玉。
直径は大体2メートルくらいだろうか、イファルシアよりも遥かに大きい。
その土玉にあの布を巻き、蔦で作った紐で巻く。
これであとは苗を植えて永久浮遊の魔法を使えば完成だ。

「うーん…」

一方イファルシアは、何をどういう風に植えるかを悩んでいる様子。
なお、とにかく植えてしまえばいいのにという短絡的な考えはイファルシアには通用しない。
その辺は、さすがは草のカーバンクルといったところだろうか。

「何やってんの?私も暇じゃないから早く終わらせたいんだけど?」

悩んでいて全然作業の進んでいないイファルシアに、シアは自分も暇ではないので早く終わらせたいと言う。
それにイファルシアは耳を貸さず、なおも悩んでいる。
さすがにシアもこれには

「ああもう、いいから貸しなさいな」

と痺れを切らしてイファルシアをどかし、これはこうと勝手に土玉に植えていく。
作業を横取りされたイファルシアは、特に文句は言わずにあーあという顔をしている。

「ま、こんなもんよね」

「なんか微妙だわ」

シアのやった配置は、一見いいようにも見えるが、イファルシアから見ると微妙らしい。
ちなみに、何が微妙なのかはイファルシアは教えなかった。

それから大体2時間後。

「よし、これで全部ね」

「苗木は一気に成長させるの?」

「そうよ、だって杏食べたいし」

どうにかして土玉に植え終えたので、あとは永久浮遊の魔法を使うだけなのだが、ここでいwはシアに果樹は一気に成長させるのかと聞く。
するとシアは、そうよと答えて杏をすぐにでも食べたいからだと言う。
それにイファルシアはやれやれねと返す。

「ぬぬぬ…」

「まだできないの?」

シアが自分の分の浮遊土玉を全て浮遊させ終えた後も、イファルシアは尚も浮遊させられずにいた。
それを見たシアはすぐに呪文が違っていることに気付くが、あえて教えない。

「できない?」

「おっかしいわね」

その後も1時間は試行錯誤していたが結局できずじまいで、イファルシアはシアにやらせたという。

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メリエル、ゴルダの家へ行く


「へえ、ここがゴルダの家なの」

民家の全くない農村部にぽつりと建つ家の前で、メリエルはそう呟いた。
なぜメリエルがこんなところに居るのかというと、シアにゴルダの家はどこなのかを聞いてやって来たからだ。
理由はそれだけで、他には特にない。

「で、当の本人は留守なようね」

家へやってきたのはいいが、家主であるゴルダは留守。
帰って来るまで待っていようかとメリエルは悩んでいたが、その必要はすぐになくなった。
なぜならば、ゴルダが馬のようでそうではない雰囲気を放つ馬に乗って帰って来たのだ。

「よくここが分かったな、上がって待ってろ」

その馬から降りたゴルダは、メリエルに上がって待ってろと言う。
一方、上がって待ってろと言われたメリエルは面食らったような顔になって

「えっ?鍵開けっぱなし?」

と確かめるように聞く。
するとゴルダは頷いて

「ああそうだ、こんな辺境の地にまで泥棒が来ると思うか?」

こんなところに泥棒が来るか?とメリエルに聞く。
メリエルはそれに反論できずにうぐぐと言った後で家の中へと入った。

「ふーん、綺麗なのね。男の割には」

玄関を入ってすぐが居間と繋がる台所というゴルダの家の中を見て、メリエルは綺麗なのねと感想を漏らす。
なぜならば、台所の流しには汚れた食器は積み重ねられておらず、しかも汚れた衣類がそこら中にほっぽらかしになっていなかったからだ。
だが、居間のテーブルの上は雑誌などで若干散らかってはいたがこれは誤差の範囲である。

「よいしょ」

メリエルは、ゴルダに断りを入れることもなく居間のソファに座る。
だいぶ古いものなせいか、座り心地は今一つだ。
居間にはテーブルとソファ以外に、暖炉や本棚、そして異界文明の本でしか見たことのないテレビがドンと置かれている。

「お前はなんでまたこんなつまらん場所に遊びに来たんだ?シアのところ行けばいいものを」

「それはないでしょうそれは…人がせっかく遊びに来たのに。あと今日はシアは忙しいって言われたの」

ゴルダはメリエルに、なぜこんな場所に遊びに来たのかというのと、遊ぶならシアが居るだろと言う。
それにメリエルは、人がせっかく遊びに来たというのと言ってから、シアは今日は忙しいと来た理由を話す。
ゴルダはそれを聞いて、ああそうかという顔をするとどこかへ行ってしまった。

「人がごった返してない所もたまにはいいかなと思って来たんだけどなあ」

どこかに行ったゴルダを探しながら、メリエルはそう独り言を言いながら本棚の方へ。
特にこれといって面白そうな本はなく、魔法書や竜医学や幻想獣医学の専門書がぎっしり収められているだけだ。
一応、サフィから竜医学などの本は借りて読んだことはあったのだが、天才を自称するメリエルでも簡単とは言えない内容だった。

「漫画とかは無いのかしら?」

何か興味を引きそうな本はないかと探していたメリエルは、ある一冊の本を発見。
タイトルは異界の言語で書かれており、どんな本かは分からない。
しかし、メリエルはすぐにこの本を開いたことを後悔した。
あえて内容は伏せておくが、普通の人間が読めば正気度がごっそり持っていかれるような写真が羅列された本だったのだ。
どうやら、解剖学の類の本だったようだ。

「うげぇ…気分悪くなっちゃったわ」

その本をすぐに本棚に戻し、メリエルはまたソファへ戻る。
すると、ようやくゴルダが戻ってきた。

「どこ行ってたのよ!?」

「人がせっかく好物買ってきてやったのにその態度は何なんだ全く」

人を待たせておいてと、語気を強めてどこに行っていたのと聞いたメリエル。
それにゴルダは、水羊羹の入った袋を見せてからその態度は何なんだと返す。
さすがにメリエルもそうと分かると

「ご、ごめん…」

「もういい、そういう態度取られるのには慣れっこだ」

一応ゴルダに謝ったメリエルだが、ゴルダはそんな態度をされるのには慣れていると寛容さを露わにした。

その後、ゴルダは抹茶入りの緑茶を煎れて水羊羹と共にメリエルに渡す。
ちなみに、この際のメリエルとゴルダの姿勢は互いに正座の状態だ。

「ところで、ここに1人で住んでるの?」

「今はそうではもないが、昔は1人で住んでいた」

「あんたが乗ってたあの馬みたいなのもここに住んでるの?」

二三話をしていると、メリエルはゴルダに乗っていた馬のことを聞く。
するとゴルダは一応ここに住んでいると答えた後で

「一応言っとくが、あいつは麒麟の一種だぞ?名は氷麟だ」

馬ではなく麒麟であることと、名をメリエルに教えた。
するとメリエルは

「じゃあ乗せて、いいでしょ?」

と単刀直入に氷麟に乗せて欲しいと言う。
それにゴルダはうーむという顔をした後に

「凍るかもしれんから注意しな」

と言って、メリエルに表で待っているように言う。
メリエルはそれに頷いて表へ出た。

表で待っていると、銀っぽいたてがみと体色の馬がやって来た。

「やあ、ゴルダから話は聞いてたよ」

「氷麟って、本来の姿じゃない時は馬と瓜二つなのね」

「でも、力はそれなりにはあるよ」

これまた二三話をしてから氷麟に乗ったメリエル。
だがその瞬間、メリエルはあっという間に凍ってしまった。

「おい」

「いやあ、ちょっといたずらしたくなっちゃってね」

「やり過ぎだ」

案の定、氷麟のいたずらだったのだが、ゴルダはこれをやり過ぎの一言で一蹴。
メリエルはこの後風呂場で数時間かけて解凍されたという。

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ライノートとゴルダと

昼のラジオ番組が室内に垂れ流されているゴルダの家の居間。
今日はライノートがトスカと共にアルカトラスに会うためにやって来るので、ゴルダはセイグリッドまで2人を連れて行くという仕事を請け負った。
だが、約束の時間になってもトスカとライノートはやって来ない。
トスカが約束をすっぽかすような相手ではないとゴルダは確信しているのだが、それにしても来るのが遅い。

「ああサフィか、もうしばらく爺さんに待ってるように言っといてくれ」

「まだ来ないの?どういう神経しているやら」

「約束を破る奴ではないんだがな、とにかく頼んだぞ」

「はいはい、だけど次はないからね?」

サフィに2度目の遅れるからもう少し待ってくれという電話をしたゴルダは、電話を切ると頭を抱えてどうしたもんかと呟く。
そう呟いた直後、玄関の扉をノックする音がした。
ようやく来たのかと、ゴルダが扉を開けるとそこにはトスカと、話に聞いていたライノートが立っていた。
髪の色はトスカより少し明るめで、少々ツンツンしている以外は足もトスカと瓜二つで、赤いストールのような物を着こなしている。
ちなみに、身長はゴルダより10センチほど上だろうか。
そして、なぜだか紫のウサギにも似た竜がライノートの肩に止まっていた。

「ゴルちゃん、遅れちゃっってごめんなさいねー」

「遅れて申し訳ないです、トスカ君が準備に手間取ってしまって」

2人に謝られ、ゴルダはまあいいさと言ってすぐに出る準備をする。
セイグリッドまでは、3人まとめての座標指定テレポートを使った。

「ここですか。大きい城ですね」

「これでも小規模だがな、異界のはもっと大規模なものだと聞くが」

城のすぐ目の前までテレポートしたゴルダ一行。
ライノートに大きい城だと言われ、ゴルダは異界のはもっと大規模なものだと返す。
そう返されたライノートは、かすかに笑いながら

「そうなんですね」

と言った。
そして、アルカトラスを待たせているということもありそそくさと城内へ。
中ではサフィがようやく来たのねと呆れ顔で出迎えた。

「あっ、では僕は国王さんと話をしてくるのでトスカ君は待っててください」

「やだぁーっ!分かったわー」

サフィに案内されてアルカトラスのところへ行くライノートから、あのウサギにも似た紫の竜がゴルダの方へ飛んできて頭の上に止まった。
ゴルダは何だと最初は思ったが、トスカに

「ゴルちゃん、この子にこれあげてみて?」

と人参を渡された。
ゴルダはどういうことだ?とは思いつつも、その竜に人参を与えてみると竜はものすごい勢いで人参を食べ終えたのだ。
どんな竜なんだと思っていると、トスカはこんなことを話す。

「この子はドラビットという私と同じ種族よー、人の姿は取ってないだけでね」

この紫のウサギにも似た竜は、ドラビットと言って、人の姿ではないにしろトスカやライノートと同じ種族なのだという。
ドラビットは、人参を食べ終えるとゴルダの後頭部を尻尾でぺしぺしと叩き出す。

「やだぁーっ!この子ゴルちゃんのこと気に入ったようだわ。元々ライちゃんに勝手について来た子なんだけど」

トスカにこのドラビットが自分を気に入ったと言われ、ゴルダはぽかんとする。
正直なところ、養えはしてもこれ以上同居人が増えてもめんどくさいだけだからだ。
だが、このドラビットという竜は帰れと追い払ったところで帰ってくれそうにはない。

「参ったな」

なおも後頭部をぺしぺしされながら、ゴルダはトスカと向かい合いながらそう呟いた。

一方、ライノートはというと。
アルカトラスの大きさに少々圧倒されつつも、一通りの挨拶はしていた。

「どうも初めまして。ドラビット族長ライノートです」

「一応この世界の二神の一神、アルカトラスだ。今後とも見知り置きを」

二神の一神だと聞いて、ライノートがはて?という顔をしたのでアルカトラスはどうかしたのかと聞く。
それにライノートはやはり笑って

「いえ、何でもないです。国王さん」

「そうか、なら良いのだが」

何でもないと話を濁す。
それにアルカトラスは本当にか?という顔をしつつもそうかと返した。
気まずくなると笑ってその場を濁してやり過ごす。
それがライノートのやり方なのだ。

「お茶よ」

「これはどうも」

お茶を持ってきたサフィに、ライノートは礼を言ってアルカトラスとの話を進める。

「本題に入りますが、今日は単純に挨拶と私どもの世界とこちらの世界との行き来を今後自由にしてほしいという依頼です」

両者の世界の行き来を自由にして欲しいと頼まれ、アルカトラスは少し考えた後にどこからかライノートの世界に関する書類を出してきてこう話す。

「特に他の世界と問題を起こしている様子もなし、行き来を自由にしてもさほど問題は無かろう。許可する」

「これはこれは、ありがとうございます」

許可するとの即答を受け、ライノートはすぐさま頭を下げてアルカトラスに礼を言った。

「ライノートに言ってこいつ迎え入れるか」

「いいんじゃないかしらー?」

またその頃、ゴルダは頭に乗りっぱなしのドラビットを見て、迎え入れようかと考えを改め始めていた。
それに対してトスカは、いいんじゃないかしらというなんとも無責任な返事を返す。
そこへ、アルカトラスとの話を終えたライノートが戻ってきて

「ああ、そこに居たんだね。でも君が気に入ってしまったのかな?離れる様子もないね」

ゴルダの頭の上に乗っているドラビットを見てそんなことを言う。

「報酬はいい、代わりにこいつを迎え入れていいか?」

単刀直入に、このドラビットを迎え入れていいかどうかをゴルダはライノートに聞く。
それにライノートは仕方ないよねという顔をしながら

「間違いなく帰るよ言っても聞かないだろうからね。僕は全然問題はないんだけど、あなたがどうかな?と思ってね」

問題は無いと言う。
ゴルダはそうかと言って、今度はどこからか出したドライフルーツをあげながら

「よし、今日からお前はマティルーネだ」

マティルーネと名まで付けたのであった。
その後、どうなったのかというと今まで以上にトスカが押し入るような感じで遊びに来るようになったという。
なお、度々ライノートも訪ねてきてはアルカトラスとも会っているらしい。

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