氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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セムテヌト=アルヴァス

身長:170cm/2.5m(竜)
性別:♀…?
種族:闇竜(通常は人の姿)
性格:ネガティブ気味
元アルヴァス国王で「闇の魔女」の異名を持つ。
赤紫のショートな髪に、縦長の瞳孔がある目にスーツ姿が普段着。
ヘルヘムスと何らかの協力関係にあったようだ。
現在は冥府の住人。
竜の姿は一見すると赤紫の毛の狼だが、よく見るとちゃんと角がある。
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テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

ヴェルペニチ=フレイルティア

身長:190cm/4m(竜)
性別:♀…?
種族:火竜(通常は人の姿)
性格:やたらポジティブ
元フレイルティア国王で「火の魔女」の異名を持っていた。
赤黒のセミロングの髪と目に、国紋入りのローブ(そのデザインは、なぜかアルガティアのものと似ていた)を着ていた。
現在は国が消えたと同時に蒸発して行方知らず。
なお、竜の姿は不明。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

メリエルとゴルダの砂漠横断チャレンジ

「いくらなんでも冗談きついわよ!」

緑茶を音も立てずに啜るシアとゴルダに、メリエルは突然怒鳴る。
一体全体何があったのか?それは10分ほど前に話は遡る。

「ほう、お前が…」

「な、何よ。胸が無いのがそんなに悪い?そうなの?どうなの?」

「なんで俺が女の胸に興味を持たんといかん?勘違いするな」

「うぐ…なんなのあんた」

面白い少女が最近ここへ来るようになったから会いに来いと言われ、シアのところへやって来たゴルダ。
一方のメリエルも、シアに面白い奴に会わせてあげると言われて待っているとやって来たのがゴルダなので、挨拶直後からあまりよろしくない雰囲気が漂っていた。
それを見かねたシアは、これまた何をトチ狂ったのかは知らないが、アストライズの砂漠を2人で横断チャレンジでもして来いと言い出したのだ。
それに対し、ゴルダは

「こんな娘っ子を、あの安全ルートを通らないと何に襲われるか分からん所に連れて行けとな。シア、俺はお前の考えていることがさっぱり分からん」

と言い、メリエルはしばらく間を置いてから先ほどのことを言った。
その間に、ゴルダとシアはメリエルを無視して互いに湯飲みに緑茶を淹れて飲んでいたのだ。

「人の話聞きなさーい!」

流石に無視されてカチンと来たメリエルは、2人の間に割って入るように大剣を振り下ろす。
だが、ゴルダはそれを正座状態のままスッと避けるという謎技をやってのけ、シアに至っては毛が少し剃られた位で実害はほぼゼロ。
それを見たメリエルは一言

「わけがわからないわ」

と言ったという。

それから更に十数分後。
2人に完全に呆れ、背を向けて体育座りでぶつくさ言うメリエルの姿がそこにはあった。
その一方、ゴルダは未だに緑茶を啜る以外は正座姿勢を崩さず、シアは定義の書を読んでいる。
そして、その状態のゴルダとメリエルを確認したシアは、2人を座標指定テレポートで、アストライズの砂漠のど真ん中へ飛ばしてしまった。

「これで険悪ムードが解消されればいいけど」

消えた2人が居た場所を見て、シアはそう呟いた。

「えっ、何ここ?暑いってレベルじゃないんだけど」

「そこまで暑いのか?」

一方、真昼間のアストライズの砂漠のど真ん中へ飛ばされたゴルダとメリエルはと言うと、あまりの暑さに慌てふためくメリエルに対し、ゴルダは正座姿勢を崩さずに残っていた緑茶を飲み干し、立ち上がる。

「ゴルダ、あんた暑さの感覚無いの?」

「この程度ではな、むしろ溶岩の横を通った方が暑い」

暑く無いのかと聞いて、ゴルダから帰って来た返事を聞いてメリエルは聞かなきゃ良かったという顔をする。
だがゴルダはそれを気にも留めず、方位磁石を出して目指すべき方向を確認する。
シアにこんなわけのわからない場所へ飛ばされても、何故平気なのかと聞こうとしたメリエルだが

「これを被れ、さもないと脳みそまで焼けるぞ」

ゴルダに頭に被る布を渡され、聞くのを止めてそれを被る。
その後、ゴルダは色々な物をどこからか出して装備するとメリエルに

「これだけは守れ。一つ、絶対に俺の後ろを離れるな。二つ、俺が武器を構えたらお前も構えろ」

二つのことを約束させ、移動を開始。
メリエルは、これは従った方がいいだろうと思って黙って後をついて行った。
歩き始めて数分後、突然ゴルダが狙撃銃を構える。
それに何なのと、メリエルも武器を構えるが数十秒でゴルダは狙撃銃を下ろす。

「なんだったの?」

「砂竜だ、砂漠地帯に住む地属性の竜。臆病だから向こうからは近付いて来ない」

砂竜と聞いて、メリエルはどんな奴なのとゴルダに聞く。
するとゴルダはどこからか双眼鏡を出してメリエルに貸すと、指差した方向を見てみろと言う。
メリエルが言われるままにその方向を双眼鏡で見てみると、砂の中を泳ぐように移動する何かが見えた。

「奴らは雑食で、飢えてたら人間だろうが食うぞ。迂闊に手を出さん方がいい」

「へえー」

その後もメリエルはゴルダに次いで移動を続けた。

そして歩き始めて一時間後。
突然メリエルは砂の上にへなへなと崩れ落ちる。
ゴルダがどうしたと声をかけると

「水よ水、喉乾いたわ」

喉が渇いたとメリエルは言う。
それを聞いたゴルダは、とりあえずこれでも舐めてろと塩飴を押し付けて何かをし出す。
これにメリエルは、何で飴なんか舐めなきゃいけないのよと、ウンディーネを召喚。
だが、これが仇になるとはメリエルは知る由もない。

「呼びましたか主…ってあちちあちち」

呼び出されたウンディーネは乾燥している上に熱された砂漠の砂の上に落ちてくるとその場で飛び跳ね始めた。
これにはメリエルもしまったという表情を隠しきれず、どうしようと考えている間にも、ウンディーネはどんどん水分を奪われ、どんどん干からびていく。
そしてゴルダが空にならないよう、水属性魔法を施した水筒を出して振り向いた時には

「ぬ、主様…私を呼び出す時は…ば、場所を考えて下さい…こんな砂漠に呼び出されましても…」

ウンディーネは、干物ともミイラとも言えない干からびた何かになってしまって居た。
そしてゴルダは真っ先にウンディーネにその水筒の水をぶっかけて、メリエルに

「今すぐ帰せ、このままだと本当に干物になるぞ」

今すぐ帰せと厳しく言うと、また溢れるほどに水が入った水筒をメリエルに渡して自分は塩飴だけを舐める。
ゴルダに言われたとおり、メリエルはすぐにウンディーネを帰し、水筒をゴルダに返す。
水筒を返されたゴルダはその中の水を少しだけ飲み、蓋をすると片付けてメリエルに行くぞとアイコンタクトする。
メリエルは同じくアイコンタクトで分かったわよと帰し、後に継いだ。

やがて、日は傾いて夕方になった。
砂漠は極度な乾燥地帯なので、昼間と夜間の温暖差はとても激しい。
このまま歩き続けてもメリエルが凍ってしまいかねないと、ゴルダは歩みを止めてここで野宿すると言い出す。
だがメリエルは

「ちょ、ちょっと!いくらなんでも今日知り合ったばかりなのに一緒に野宿なんて無理よ!あんまりゴルダのこと信用できてないし」

「そうか、俺が信用ならんか。なら道具は貸すから互いに距離を置いて野宿するか?」

「そういう話じゃなーいっ!」

今日知り合ったばかりなのに一緒に野宿は無理と言う。
これにゴルダはさほど驚く様子もなく、道具は貸すから互いに距離を置いて野宿をするかと冷静に代案を提案。
メリエルはこれにそういう話ではないと突っ込んだ。
もはやメリエルは、ゴルダの肝の据わりっぷりについて行くのが精一杯なのである。

「そうか、野宿は嫌か。だが座標指定テレポートはご丁寧にシアが使えないようにしていて無理だ」

ゴルダはメリエルに突っ込まれ、野宿は嫌なのかと改めて聞いた上でそっちから代案を提示しろと遠回しに言う。
砂漠を抜けるまであとどれくらいあるのかを、ゴルダに聞きたくなかったメリエルはふと閃いたように

「うーん、あんまり呼びたくないけど…」

と呟いた後に、また誰かを召喚。
その間、ゴルダは七輪を出して火打石で火を起こしていた。

「あー、なんだよ…せっかくいいとろだったのによ。ところでメリエル、いい加減平坦な胸は改善されたか?」

「うるさい!」

しばらくして、めんどくさそうにしながら出て来たのは若干ユニコーンの面影を残す、ケンタウロスのような使い魔。
たてがみなどが若干燃えていることから、火属性なようだ。
大分口が悪いが、聞いている分にはメリエルのことはかなり信用していることをなおも火を起こしながらゴルダは確信した。

「おーっす、お前メリエルの友達か?オレはサラマンダー。ところでこいつの胸平坦過ぎだよな?」

「ん、ゴルダだ…ってなあ、だから俺がなんで女の胸に興味を持つ必要がある?」

サラマンダーと名乗ったメリエルの使い魔に、余計な一言混ぜられて話しかけられ、メリエルに言ったことと同じことをサラマンダーに返す。
それを聞いたサラマンダーは

「マジで笑える、お前女に興味無いのか。だがそっち系では無いよな絶対に」

あからさまに煽る口調でゴルダにそう言ったが、ゴルダはそっち系とはどういうことだとキッと見返す。

「あー、まあうん。冗談はさておき、呼び出したからには用があるんだろメリエル?」

「そうだった。ねえゴルダ、砂漠はどっちの方角に行ったら抜けられるの?」

サラマンダーに用件はなんだと聞かれ、メリエルはゴルダに砂漠はどっちの方角に進んだら抜けられるかを聞く。
するとゴルダは、方位磁石をまた出して

「こっから西だから…このまま直進していれば抜けられるはずだ」

このまま直進していれば抜けられると答える。
それを聞いたサラマンダーはおっしゃと言うと

「お前とメリエル、乗れよ。全速力でこんな場所抜けてやるぜ」

ゴルダとメリエルに背に乗れと言う。

「あーそうだ、このお代は…メリエルはダメだからお前だ。後でオレに付き合え、酒くらい飲めるだろ?」

「あ、ああ…飲めはするが…。しかし、ドネートと言うか、報酬を要求する使い魔とはまた珍しいな」

サラマンダーに後でお代の代わりに付き合えと言われ、ゴルダはメリエルにそんなことを言う。
それにメリエルは苦笑いして

「だからあまり呼びたくないのよね」

と耳打ちした。
そして2人を乗せ、サラマンダーは砂漠を一時間足らずで抜け、そのまま日付けが変わる前にシアの所まで戻った。

「やるじゃない」

「こんなのは二度と御免被る」

戻って来て早々に、やるじゃないと言ったシアにメリエルとゴルダは口を揃えてこんなのは二度と御免だと言い放ったとか。
その後、メリエルに帰れと言われても拒否したサラマンダーは、ゴルダを引き連れて城下町の酒場で朝まで飲んでいたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

氷竜の親戚は付き合い難い娘

秋になり、急激に冷え込んで来たリヴァルス。
その冷え込みは、寒さに慣れていない者がこの時期にここへ来るとあっという間に体調を崩すレベルだという。
そんな時期にもかかわらず、ゴルダはアルカトラスからまた仕事の代理を押し付けられてリヴァルスへと来ていた。
だが今は、それも終わってさっさと帰ろうかというところらしい。

「何か食って帰るか?」

「うーん、私はどっちでも」

何か食って帰るかと氷燐に聞いたところ、氷燐はどっちでもいいと返事を返す。
一応氷燐も入れる店は知っているのだが、そこまでする必要はないかもしれないとゴルダも思っていた。
しかし、こんなところで立ち往生していても通行人の邪魔になるので、ゴルダは移動しながら考えることに。
それから数分歩いただろうか、城下町からそこそこ離れたところまでやって来た2人。
もうここまで来たら帰ってから飯にしようと、氷燐を走らせるゴルダ。
だが、その走らせた直後に氷燐が急停止。
一体何なんだと、手綱引いて落馬しないようにしてからゴルダは目の前を見る。

「これ以上近付いたら一撃入れるから、いいね?」

そこには、何処と無くリヴァイドに似たような姿の少女らしき者が槍とも杖とも似つかぬ武器を構えて氷燐を制していた。
ゴルダはその少女の忠告など聞いていなかったかのように氷燐から降り、どうしたと声を掛ける。
すると少女はその武器で一突きして来た。
だがゴルダはそれを白刃取りめいて掴むと、そのまま奪い取って地面へ捨てる。

「…やるじゃない、ってあんた…」

やるじゃないと言った少女は、ゴルダの顔を見て何かを思い出したかのような表情になった。
それにゴルダがどういうことだと問い詰めると、少女は

「はぁー、やっちゃったわ…私はキーリアス=ブルファーシュネト。リヴァイド叔父様の親戚よ。叔父様からあんたの話はちょこちょこ聞いてたの、それ忘れてて武器構えたのは謝るわ」

名をキーリアスと名乗り、ゴルダのことはリヴァイドから聞いていたと言うのだ。
ゴルダはそれにふうむと頷き、武器を構えられたことは微塵にも気にしてないと返す。
キーリアスはそうなのと言って武器を取り、ゴルダに一礼。
ゴルダ自身もキーリアスの話は聞いたことがあり、付き合い難いと言っていたのを思い出して

「リヴァイドはお前と付き合い難いと言ってたが、本当か?」

付き合い難いのは本当か?と聞く。
すると、キーリアスはこう答える

「勘違いじゃないの?私は至って普通よ?」

これを聞いたゴルダは、自覚が無いのだなと確信。
それ以上は何も言わずに、そうかとだけ返す。
だが氷燐はそれはそうだろうなという顔をしていた。

「好きなの頼め」

「えっ、いいんだ」

その後、ゴルダはキーリアスを連れて結局ここで食事をしていくことになった。
やって来たのは、リヴァルスではわりと有名なステーキ屋。
このリヴァルスという、寒冷地でしか飼育できない牛の肉を使ったステーキは地球のグルメ関係の者が来るほどである。
具体的に何が違うのかと言うと、引き締まっているにも関わらずスッと切れる肉、普通の環境では乗らないような脂がより旨味を引き出すのだという。

「ブルファーシュネトで思い出したが、親は鉱業か?万年氷や氷水晶関係の?ブルファーシュネト鉱流通だかの社名を聞いたことがあってな」

ゴルダは、キーリアスに親は鉱業をやっているのかと聞く。
すると、キーリアスはこんなことを返した。

「一応ね、最近は万年氷の製造法を開発して大変なことになってるわ。でも私親は好きじゃないの」

親が好きではないという発言に、前菜の雪トマトのサラダに手をつけながら、ゴルダはだいたいの予想をつけながら何故だと聞く。
するとキーリアスは

「だって私のこと理解しているのかすら分からないからよ。なぜそう思うかと言うと…」

自分のことを理解しているのか分からないと言った後に、なぜそう思うかを延々と話し続けた。
その内容をかいつまむと、キーリアスの両親は、会社をキーリアスに継いで欲しいと思っているらしいのだが、キーリアスは大学で自属性の氷魔法を専門的に学んで極めたいと思っているとのこと。
そのせいで考え方に亀裂が生じ、にっちにもさっちにも行かない状態だという。

「一方的に理想を押し付けられてるのかい?」

もさもさとパンを食べながら、氷燐はキーリアスにそう聞く。
それにキーリアスはほとんどそうだと答え、嫌になると言った。
 
「うーん…」

氷燐はどう返したらいいのか分からず、黙り込む。
なお、ゴルダはステーキを切り分けながらこう返す。

「親だろうが強く出ろ、話を聞いてる限りではそのままだと堂々巡りだ。これ以上は言っても無駄だと分からぜるんだ」

そう言われたキーリアスは、その手があったのかと言わんばかりの顔で

「よしよし、ありがとう。いい考えが思いついたわ」

もうこれ以上は話さなくていいと言わんばかりのことを言った。
ちなみに、キーリアスはゴルダのアドバイスで親黙らせることに成功したという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

トスカ再び

少しスッキリしない曇り空のドランザニア中部。
その中部の農村部を、一台の魔動力エンジンのタクシーが走っていた。
タクシーに乗って居るのは、何を隠そうトスカとその息子で半ば無理矢理連れて来られたエフベランカ。
今日はまたゴルダの所へ遊びに行くのはもちろんだが、トスカらの族長であるライノートが

「その世界の神に挨拶して国交ならぬ界交を締結したいので、アポを取って来てくれないか?」

とトスカがドランザニアへ行ったことをライノートに言ったところ、ライノートがそんなことを言い出したのだ。
なのでトスカは、ゴルダならなんとかしてくれるだろうということで、こうしてまたやって来たのだ。
ではなぜ無理矢理エフベランカを?という理由に関しては、突っ込んではいけない。

ゲートポートからタクシーでおよそ2時間半。
ようやくゴルダの家に着いたトスカとエフベランカは、タクシーから降りる。

「田舎の家族はいい仲…ダメだ」

「やだぁーっ!エフちゃんったら!」

いつものようにエフベランカが駄洒落を言ったところ、トスカはこれまた何時もの調子でエフベランカをポンポンと叩く。
すると、その騒がしい声に気付いたのか、玄関の扉が開いて

「…なんだ、お前か、そっちは息子か?」

ゴルダが顔を出し、2人を家の中へと招き入れる。
ずかずかと人の家に入っていくトスカに次いで、エフベランカもゴルダにお邪魔しますと一言言ってから家の中へ入った。
今日の家の中は、以前トスカが来た時よりは綺麗で洗濯物も積まれていない。
ただし、ゴルダの部屋の中からはアルガントがPCでボイスチャットをしながらゲームをしているせいか、時折声が漏れて来る。
だが、部屋から出てくる気配がないのが幸いだろう。

「あっ、ゴルちゃん。これうちの畑で取れた人参よ」

ゴルダがとりあえず座れと言った瞬間、トスカはどこからともなく麻袋一杯の人参をドンと出してゴルダに渡す。
麻袋からこぼれ落ちた人参手に取り、ゴルダはそれをまじまじと眺める。
やや小ぶりではあるものの、足が生えていたりなどはしておらず虫食いもない。
しかも芯がさほど硬くはなく、包丁通りも良さそうだ。
そのせいか、ゴルダは生でかじってみたくなったものの、土付きだったので今は諦めた。

「紹介遅れました…エフベランカです。見知り置きを、母が世話になっているようで。話は聞いてます」

ゴルダが人参を食料庫へ片付けようと立ち上がった瞬間、エフベランカが自己紹介してきたのでゴルダも同じように名乗り返してから食料庫へ。
そして、ゴルダがいなくなった瞬間にトスカは目を光らせていきなり台所へ。
台所へ立ったトスカは、そのまま戸棚から茶葉を、次に湯と菓子を用意して戻ってきたのだ。

「…母さん何やってるの?仮にも人の家なのに」

「ゴルちゃんは心が広いから大丈夫よー」

「俺は重い矢に先を思いやられるよ」

エフベランカのトスカを心配しているのか皮肉っているのか分からないこの駄洒落を、トスカはこの時ばかりは聞き逃していたようで、何の反応も帰って来なかった。
やがて、ゴルダは食料庫から戻ってき2人の前へと座る。
エフベランカは、そのゴルダの雰囲気を感じ取り、肝の据わったとんでもない奴だと確信。

「ところで、お前何回くらい濁流に流されたことある?やっぱり5回?五流濁なだけに」

などと、名前から駄洒落を言ったのだがゴルダはそれに全く反応を見せずに一言。

「もう少し考えた駄洒落を言った方がいい、今のはいかん」

もう少し考えて駄洒落を言えと言われ、エフベランカはそんな無茶なという顔をする。
それにトスカは

「エフちゃん、今のはまずかったわよー?」

などといつもの口調でエフベランカに言った。
その後、あれこれ話をしているとトスカが突然

「そうだゴルちゃん、ゴルちゃん何でも屋よね?この世界の神とアポを取れない?私たちの族長が会って話がしたいって言うのよー」

この世界の神、すなわちシアとアルカトラスにアポを取れないかと聞いてきたのだ。
それを聞いたゴルダは

「取るも何も、俺はその神の孫とひ孫なんだが。すぐ取れるさ」

などと、トスカの入れた茶を飲みながらさらっと言い放った。
それを聞いて、トスカは

「やだぁーっ!ゴルちゃんすごーい!」

といつもよりも大きな声で言うとゴルダを強く叩く。
一方、エフベランカは

「神とアポを取るには手紙が必要…同じ『かみ』なだけに…」

また駄洒落を言い、ゴルダから鼻で笑われた。
ゴルダに鼻で笑われたエフベランカは、こいつは自分を馬鹿にしているのか何なのか分からないという顔をして魔法書を広げると、そのまま読み始めてしまう。

そしてゴルダは一旦トスカから逃げて、エシュフィルトにアルカトラスとシアに2人が直近で予定を同時に合わせられる日を聞いてくれとメール。
その際に、飲み物でも取りに来たのかアルガントが部屋から出て来て

「飲み物ー」

などとメールの返事待ち中のゴルダに飲み物を要求。
あまりトスカにアルガントを合わせたくないゴルダは、分かったからここで待ってろと言って台所へ。
トスカは本棚の魔法書をぐいぐいとエフベランカに押し付けていて、こちらを全く気にしてない。
この隙にと、ゴルダは冷蔵庫から冷えた茶を出してアルガントの所へ。
だがー、戻った時には

「やだぁーっ!かわいいー!」

「ふぇ…」

アルガントに気付いたトスカが、そのままアルガント抱きしめていた。
当然ながら、アルガントはこれ以上刺激すると泣きかねない状態。

「トスカ、大変な目に会いたくなかったらアルガントを解放してやってくれ…」

「えーっ?でもゴルちゃんが言うなら仕方ないわね。そしてこの子アルガントって言うのね」

ゴルダの一言で何かを悟ったのか、トスカはゆっくりとアルガントを解放。
なお、アルガントは茶を貰うと何も言わずに部屋の中へ真っ先に引っ込んだ。

「明後日だと…?」

そして、気付けばエシュフィルトから返事が来ていたので、メールを開くと明後日しか2人とも予定が合わないと書かれていた。
ゴルダは、やれやれと携帯をしまうとトスカに

「明後日しか無理らしい、急だが大丈夫か?」

明後日しか無理なことを伝えて大丈夫かと聞く。
するとトスカは問題ないと返したので、ゴルダもそういった返事を再び返す。

「その時はよろしくねゴルちゃん?」

「あ、ああ…」

こうしてまた、トスカに振り回される一日が過ぎて行くのであった。

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小説(交流) |

メリエルとサフィ

ドランザニアに頻繁に遊びに来るようになってからというもの、メリエルにはどうしても引っかかる者が居た。
それは、城の中をほっつき歩いてたりシアの所に居ると必ずと言っていいほど見るあの紫髪のメイド。
シアに誰なのかと問いただしても、自分で調べろと言わんばかりに話を濁すので、ついにはメリエルは自分であのメイドの名を聞こうと動き出したのだが

「なーんでこんな時に限って姿見えないのよ」

肝心の紫髪のメイドの姿はどこにも見えない。
他のメイドに聞いたところ、今日は異常に忙しいらしいので姿を見れるのがレアだという。
だがそれでもメリエルは探し続け、ようやく見つけたのだが

「やっと見つけたわ!こらー、私に名前教え…ふぎっ」

「おっと……タイミングが悪かったか?」

「重い、どきなさいよ」

呼んでもないのに、どこからともなくノームが現れてメリエルを尻に敷くような形で押し潰した。
メリエルはノームにどけと言うが、ノームは聞く耳持たずに耳を掻きながら

「ここがぬしがよく遊びに行くようになった世界か…?これまたずいぶんと魔力が……ふああ」

と呟くとメリエルを押し潰したままその場で横になって寝てしまう。
こうなってしまうと、ノームは起きるまで絶対に退かないので、強制的に送り還すかないのだが、ノームだけはどうしても強制送還が出来ないのである。

「うぐぐ、作戦失敗じゃないの…」

ノームに押しつぶされたまま、メリエルは去って行く紫髪のメイドをただただ見ていた。

それから大体4時間後。
どうにかこうにかしてノームを強制送還することに成功したメリエルはまた紫髪のメイドを探して回る。
だが、4時間ぶっ通しでノームを強制送還しようと詠唱し続けたので魔力はほとんどすっからかんな上に疲労もそれなりのものなので、歩き方はへなへなだ。
ちなみに、今メリエルが居るのは城の敷地外にある魔法薬の店。
そこでどうにか消費し切った魔力を回復させ、疲労も吹っ飛ばすような薬を探していた。

「嬢ちゃん、薬に頼るのは良くないよ」

「うっ、うるさーい!今すぐ復活しないといけない理由があるのよ!」

どうにか目当ての薬を見つけて購入し、飲もうとしたメリエル。
だが魔法薬店の店主に、薬に頼るのは良くないと諭され、余計なお世話だと言わんばかりのことを店主に言い返したメリエルはその場で薬を完飲。
確かに薬の力で魔力も疲労も全快した。
だが、副作用があったらしくメリエルの髪が突然爆発したかのようにボンという音とともに煙を出した上にいわゆるアフロヘアーになってしまった。

「ほらほら、言わんこっちゃない」

「むー…」

どこからか櫛を出して髪を元に戻し、メリエルはまた城へ戻る。
今度は例の紫髪のメイドはあっさり見つかった。
というのも、塔から降りて来ていたシアと話をしている所に出くわしたからだ。

「ええい今度こそ!私はメリエル・ラーヴィックよ!そこのメイド!名乗りなさーい!」

メリエルは紫髪のメイドを指差して自らの名を名乗り、そっちも名乗れと言い放つ。
すると紫髪のメイドは、一瞬でメリエルの眼前まで来ると

「サフィ、これでいいかしら?」

と一言名をサフィと名乗り、またシアの所へ戻る。
それを見たメリエルは、シアに一体サフィは何者なのかを聞く。
すると、シアはこんな返事を返す。

「この城の従者を束ねる存在で私とあなたがまだ姿を見たことがないアルカトラスの専属医よ」

メリエルは、専属医という言葉を聞いて何それと首を傾げる。
すると、シアは

「竜だけじゃなくて、サフィは幻想生物全般の医者よ」

と補足したが、それが余計にメリエルを混乱させる。
だがしかし、そこまでバカではないメリエルは数分後にはシアの言っていることをある程度理解して

「ふーん、この世界にはそんな職もあるのね。面白そうかも?」

面白そうかもと、率直な意見を言う。
すると、サフィはそれに

「何なら、独学してみる?専門書ならいくらでもあるけど」

独学してみるかと聞いたが、メリエルはそれに対しては結構と断った。
だが結局、メリエルは後からサフィにそれ系統の専門書を借りて行ったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

秋の収穫

一足早く秋が深まり始めたリフィル。
城の庭園の畑と、敷地の外れある温室以外は紅葉が舞い始め、地面をそういう色に染め上げていた。
同じく城の敷地の外れのある果樹園では、イレーヌがリフィルグリを根元から見上げて何かを思案している。
このリフィルグリは、リフィルにしか生えない固有の栗で、普通の栗よりも早い時期に収穫することができるという。
実自体は普通の栗と変わらない大きさなのだが、とにかく外側のトゲが鋭く、殻が硬いことで有名で、食べるには少しコツが要るらしい。
だが普通の栗よりも渋みなどはなく、煎らずとも生のままで食べることができるのが強みである。
実は硬くないのかと思われがちだが、十分に熟すればやんわり噛めるくらいになるとか。
もちろん、普通の栗と同じように煎れば香りも増して美味しい。

「どうやって収穫しようかしらね」

奥の方でブドウとリンゴを収穫しているイファルシアとエゼラルドを尻目に、イレーヌはリフィルグリの木に蹴りを入れる。
だが、木はかすかに揺れただけで実は落ちて来ない。
今しかたイレーヌの蹴ったリフィルグリの木は、樹齢100年を超える老木なのだがそれでも成長を続け、実を実らせている。
ドランザニアのこういった木のほぼ全てが樹齢が3桁を超えても成長し、実を実らせるのはシアの力がそれほどまでに影響しているという見方が強い。

「もっかい蹴ったら一つくらい落ちてくるでしょ」

気を取り直し、今度はやや強めに蹴ろうと構えを取るイレーヌ。
姉妹でどうしてここまでアウトドア派とインドア派に綺麗に分かれたのかは、未だ謎である。
そもそも、イレーヌもアルガティアも、そこまで気にしてないのだが。

「イヤーッ!」

何処かで聞いたことがあるようなことを叫びながら、助走をつけてからの飛び蹴りを放ったイレーヌ。
だが、それでもリフィルグリの木は葉っぱしか落とさない。
しかも、イレーヌが埋もれるくらいに大量にだ。

「ぶふっ」

栗の葉を払い落とし、また木を見上げるイレーヌ。
これはもう登って収穫した方がいいだろうと、収穫用の籠を装備し、竜皮の作業用手袋で手をガードしてから木へと登る。
なお、それをリンゴの木の所から見ていたエゼラルドは

「危ないなあ」

と心配そうに呟いた。
だがそんな心配をよそに、イレーヌは木に登って収穫を始めていた。

「さあさあ、収穫するわよ今度こそ」

魔法で簡単には木から落ちないようにしてから、イレーヌは手袋をした手で容赦無く栗を収穫。
だが、手袋をしていても時折チクチクとトゲの感触がする程度にはこの栗のトゲは硬くて鋭いようだ。
実際のところ、まきびしにも代用できるという。
イレーヌも昔忍者ごっこと称してこれを撒き、ゴルダの足に刺しまくったこともある。
なお、その時はゴルダに素手で投げ返されたらしいが。

「残らず収穫してやるんだから」

枝から枝に飛び移り、次々と収穫していくイレーヌ。
だがそこへ、不意打ちめいてイファルシアがやって来て

「どう?収穫してる?」

と聞いたせいで、イレーヌは危うく木から落ちかけたが直ぐに体勢を立て直して

「まったくもう、危ないじゃない」

とイファルシアを注意。
だが、イファルシアは全く悪びれる様子もなく、実を一つ取ると

「今年もいい感じね」

などと言うとイレーヌの籠へ投げ入れる。
イレーヌはそりゃそうよと言い、残りはエゼラルに任せて木から降りた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

家に暖炉を

「何してんだ?」

「冬に備えて薪割りだ、手伝うか?」

「やだね」

畑の一角で斧を振り下ろし、原木を薪として使いやすいように割るゴルダ。
それを見ていたウラヘムトが何をしてんだと来て、薪割りをしていると説明し、お前も手伝うかと聞いたがあっさり拒否されて結構ゴルダ一人で続行することに。
秋に入り、ドランザニアは日を追うごとに徐々に涼しく、そして寒くなっていっていた。
もっとも、寒さなどどこ吹く風のゴルダには関係のないことではあったが。

「どこ置くか」

一旦薪割りを中断し、ゴルダは休憩を取りながらどこに積み上げておくかを考える。
一応この家は魔法冷暖房があるのだが、去年の冬からガタが来始めたらしく、そこまで冬は暖まらなくなっていた。
どれくらい暖まらなくなったかというと、朝起きると極端に冷えている場所とそうでもなく暖まっている場所との差が激しいくらいだ。
それを解消すべく、この夏からコツコツと家の一部を改築してゴルダは暖炉兼暖房と煙突を作り上げた。
暖炉自体はやや大きめで、大きさは畳1.5枚分ほどらしい。

「まだまともに火入れしたことがなかったな、試しに入れてみるか」

休憩もそこそこに、ゴルダは完成してからまともに火を入れたことがないことに気付き、薪を持って家の中へ。
暖炉はテレビなどからある程度離された場所に作られ、煙突以外の換気箇所も十二分に考慮された作りをしている。
当然ながら、テレビでは相変わらずウラヘムトがFPSをしていた。
やっているのは、ゴルダが買ってからまともにやってすらいないコールオブデューティーのゴーストだろう。
ちなみに、ゴルダはなにかとFPSを含む様々なゲームを買って来るのだが、最近はそうでもない。
むしろ最近はウラヘムトかアルガントがこれを買えとせがんで来ることが多いという。

「薪は問題ない、次は火を…」

魔法ではなく、マッチと着火剤で火を付けようとしたゴルダは、そのまま台所へ。
その間、気になったのかアルガントは暖炉の方へ。
耐火、耐爆、耐魔にという一石三鳥を備えたレンガの暖炉は、熱や風化に強いモルタルのようなものでそのレンガを積み上げて作られている。
建築などの技術も持っているゴルダには、この程度のものを作るのは朝飯前なようだ。
だがしかし、ゴルダはこの暖炉を作り上げるのに、設計から家の一部の取り壊しに、レンガを積み上げて完成するのに今夏全てを費やしている。

「んー?」

暖炉の中を覗くアルガントだったが、ゴルダが着火剤とマッチ持って戻ってきたことに気付いて覗くのをやめて引っ込む。

「危ないぞ」

ゴルダはアルガントにそう言うと、薪に着火剤を置いてすぐにマッチで火を付ける。
着火剤が強力だったのかどうかは知らないが、火はあっという間に薪へ燃え広がり、独特の音を出し始める。
やがて、煙が煙突を伝って外へ出て行き、薪も熾火になったところでゴルダは冷蔵庫からハムを取り出して来て焼き始める。
そのハムは、一つの大きな塊だったがそれを意に介さずゴルダは暖炉の中に吊るし上げて焼いていた。

「待て待て、じっくり焼かんとな」

「むー」

ハムの焼ける匂いに誘われたアルガントに、ゴルダはそう言って制す。
その一方でアルガントは早く焼けろと言わんばかりの目をしていた。
どうやら、暖炉はなんら問題なく使えるようであった。
小説(一次) |

輝星の聖水作り

ある日何時もの調子で遊びに来た輝星に、シアはこんなことを言う。

「自分の今の力を確認するために、聖水を作ってみない?」

聖水作りは、聖や光の属性を司る者にとって一人前になるための登竜門とされる。
だが、聖水とは言っても個々で作れる効力が全く違ってくるという。
聖水は主に、悪しきものを祓ったり呪いを解くための浄化と、癒すための回復という二つの異なる効力を持つ。
まれにシアのようにその両方の効力を持つ聖水を作れるものが居るが、それはごく一握り。
さらに、その効力の強さもまた個人差が生じ、最強とも言える効力を持つ聖水を作れる者もまた一握りしか居ない。

「シア様、それはどうやって作るの?」

「ついて来て」

どう作るのかと聞いてきた輝星に、シアはついてくるように言って何処かへ向かう。
それに、輝星も後に次いだ。
やがてシアが輝星を連れてやって来たのは、城のすぐ近くのこの国の水源になっている川。
洪水対策のために、この辺りには家は建てられておらず。建っているといえば、高台にある王立気象観測所の見張り櫓くらいだ。

「この瓶に水を入れて、多ければ多いほどいいわ」

輝星はシアに言われるがままに瓶に水を入れる。
その数は、全部で10本ほど。
水を採取し終えた後は、2人はまた塔へと戻る。

「さて、始めるわよ」

塔へ戻ると、シアは輝星に瓶を1本渡し、自分は樽の前で構える。
輝星も真似して構えたのを確認して、シアはこう言う。

「水に魔力を送るのよ、光のね」

「うん」

シアに言われるがままに、輝星はまだ中途半端にしか出ない光属性の魔力を瓶入りの水へと放出する。
その横では流石というべきか、安定した強さで魔力を樽の中の水へと放出しているシアの姿があった。
それを見て、輝星も負けじとさらに魔力を放出しようとしたがそれ以上出ずじまいに終わる。
だが輝星は、こういうのは魔力の出力をいかに上げるかではなく、安定した出力でどれだけ持続してできるかというのにすぐに気付き、一定の魔力を瓶入りの水へと放出し続ける。
やがて全ての瓶入りの水を全て聖水にし終えたところで

「ちょっと見てみようかしら」

と、輝星の聖水に変わったと思わしき瓶入りの水を調べ始めた。
その様子を、輝星は固唾を飲んで見守る。
そしてシアの判定の結果はというと

「初めてにしては悪くない出来よ?10本全部聖水に変化していたし」

全て変化していた。
それを聞いた輝星は、少し喜ぶような顔をして

「これ持って帰っていい?」

持って帰っていいかどうかを聞く。
シアはそれに対しては

「間違っても昏黒にかけたらダメよ?やけどでは済まされないから」

昏黒に絶対にかけないよう釘を刺す。
それに輝星は、聞いてるのか聞いてないのか分からないような頷き方をして、そのまま10本の聖水を持って帰った。

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小説(交流) |

トスカとゴルダ

それは、ゴルダが南部まで輸送の依頼のために軽トラを走らせ、帰って来た時の話。
朝早くに荷積みして出発し、家のある中部まで帰って来た時にはすでに夜。
街灯なんてものが設置されていないこの辺りは、夜になると真っ暗で夜目が効かないと明かりが必須となる。
いつもと変わらないラジオ番組を聞きながら、ゴルダは運転を続ける。
あと二十分くらいで家だというところで、ゴルダは暗闇に人影を発見。

「なんでこんな夜の農村地帯に人が?」

軽トラを止め、非常用のランタンを灯して人影の方へと向かうゴルダ。
一応いつでも武器が構えられるようにはしてから

「こんばんは、こんなところで何を?」

人影に声をかけてみる。
すると人影はランタンの明かりの方へと歩いて来て、その姿を見せた。
民族衣装らしきスカートの下からは人間のものではない足が見え隠れし、髪は赤を暗くしたような色、ストールのようなものを腰に巻いた女性が大量の買い物の荷物と共に立って居たのだ。

「んもーっ!ネービルのゲートポートへ向かうつもりがこんなところへ連れて来られちゃったわー。こんばんは」

「どうも、こんばんは…お困りで?」

独特の喋り方に少々押されながらも、ゴルダは改めて挨拶し、何か困っているのかと聞く。
女性がネービルのゲートポートと言っていることから、明らかに異界から来た者であることには間違いないだろう。
ちなみに、ネービルゲートポートとは、ドランザニア南部にある様々な異界とこの世界をつなぐゲートがある施設で、この世界唯一の国際空港もある場所だ。

「私ね、ゲートポートまでお願いってタクシーの運転手に言ったのに、喋ってたらこんな場所で降ろされちゃったわー。それでねー…」

女性が長々と話だしそうだったので、ゴルダは

「一旦帰ってからになるが、そこまで送ろうか?」

話の腰を折って、女性に一旦自分の家に帰ってからになるが、送るかと聞く。
すると女性はゴルダをポンと叩くと

「やだぁーっ、優しいのねー。私はトスカよ、あなた名前は?」

やたらゴルダをおだてながら自らの名をトスカと名乗る。
ゴルダはそれにやれやれという顔で両手を顔の前で合わせてお辞儀すると

「ゴルダ=ルエル=アルカトラス、これでも一応何でも屋。タクシーの代わりくらい朝飯前だ」

自らも名を名乗り、何でも屋であることも教えた。
何でも屋と聞いて、トスカはいくらかと聞いて来たが

「いや、今日は取らんよ。ともかく乗った乗った。荷物は俺が持つから」

ゴルダは今日は報酬は取らんと言ってトスカを助手席に乗せ、買い物の荷物を荷台に置いてそのまま家まで軽トラを走らせた。
その途中、トスカがマシンガントークのように話しかけて来たが、ゴルダは運転に集中するからとあまり話しかけないようは言いつつも、トスカの話はちゃっかり聞いていたという。
そして、家へ着くと一旦トスカも降ろして家の中へ。

「やだぁーっ!おじゃましますわ」

なお、今日はアルガントとウラヘムトはシアの所に泊まっている上に、氷燐はこれまたムサヅキの所へ呼ばれて行っているので居ない。
トスカに適当に座っているように言うと、ゴルダは茶を出して風呂へ。
その間、トスカはずっと待たされることになった。

「見たことない物だらけねー、エフちゃんが興味示しそうなものはあるかしら?」

ゴルダが風呂に入っている間、トスカはゴルダの家の中を見て回る。
自分の居る世界には無いものがあちらこちらに置かれていて、それがトスカの興味を引く。
ゴルダは何も触るなとは言っていないので、トスカは壊したりしないよう注意しながらそれらを手に取ったりして調べる。

「やだぁーっ!エフちゃんの好きそうな本ばかりじゃない」

トスカが目をつけたのは、いつもはアルガントがしか読んでない魔法書の収められた本棚。
トスカは仕事が司書なのである程度こちらの世界の言語を理解しており、どんな魔法書かはすぐに分かった。

「あらあら、闇属性の魔法書ばっかりね。エフちゃんには合わなさそうねー」

本棚の魔法書が闇属性ばっかりだと分かると、トスカは台所に目をつける。

「ゴルダちゃんも料理出来るのね、エフちゃんとどっちが上手かしら?」

洗われていない鍋などを見て、トスカは無意識のうちに水を出して洗い出す。
普通の者なら絶対に無断でこんなことはしないのだが、トスカはゴルダにある程度の寛容性があるのを見切っていたのでこんなことをしているのだ。

「でもこの量はゴルダちゃん一人分の汚れ物じゃないわね、他に誰かと住んでるのかしら?」

洗い物をしながらトスカはそんなことを呟くが、分からないものは分からないのでそれ以上は気にしないことに。
やがて洗い物を終えたトスカは、流しの左端に置かれた冷蔵庫に気付く。
司書だからか、異界の文明の利器などの知識は頭に入っていたトスカは

「やだぁーっ!これが本で読んだ冷蔵庫?大きいわあ」

冷蔵庫の大きさに少々驚きつつも、勝手に冷蔵庫を開けた。
そして、中に入っている食材にざっと目を通すと、パパッといくつか取ってなんと料理を開始。
ここまで無断でやると、普通なら確実に家から追い出されるのが目に見えるが、ゴルダが相手なのでトスカはなんの躊躇もなく料理を続ける。
なお、その頃ゴルダはと言うと、トスカが勝手に料理をしていることなど微塵も知らずにのほほんと湯に浸かって疲れを取っていたとか。

「んもーっ!出来ちゃったわ、後はゴルダちゃんが上がって来るのを待てばいいわね」

フリーダム状態のトスカは、盛り付けまで済ませてゴルダが上がって来るのを待っていた。
そしてゴルダが上がって来るや、トスカはゴルダを引っ張って席に座らせて

「やだぁーっ!食べましょう、ね?」

「…うむ」

食べましょうと言う。
相変わらずトスカに押されながらも、ゴルダはトスカの手料理に手を付ける。
味としては悪いものではなく、むしろ美味しかった。
やがて食べ終えると、ゴルダはトスカを軽トラに乗せて南部のネービルゲートポートまで向かう。

「…でねー、それでね」

移動中もトスカのマシンガントークっぷりは変わらず、ゴルダはラジオを消してその話に耳を傾ける。
トスカが主に話したのは、自分がどういう種族なのかということ、向こうではどういうことをしているのか、親類のことの他には、何故この世界に買い物に来たのかなどと様々な話を南部のネービルゲートポートに着くまでやっていた。
そして、ネービルゲートポートに着くとゴルダはトスカをゲート入り口まで送り

「やだぁーっ!ゴルダちゃんまた機会あったら会いましょ」

「気をつけて」

トスカがゲートをくぐって帰ったのを確認するまで、ゴルダはその場を離れなかった。

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メリエル見参 その2

あれからしばらくの日が経った。
すっかりドランザニアという世界を気に入ったメリエルは、暇さえあればこの世界へ遊びに来るようになっていた。
最も、目的はシアをもふるためなのだが。
なぜそうなったのかと言うと、話はメリエルがこの世界へ初めて来た日まで遡る。

「平坦…というか鉄板?」

「っ!…うるさいうるさい!これでも気にしているのよ!この世界の神ってデリカシー無いの!?」

シアに魂を覗かれて名がバレたことに対して、メリエルが覗き魔と言い、シアがそういうものだと言い切った後のこと。
メリエルはシアに土下座してこの世界でもまともに魔法が使えるように頼み、シアが定義の本を広げて書き換えを行っている時のこと。
ちらりとメリエルの胸を見たシアが鉄板だと言い出したので、メリエルはこれでも気にしていると叫んだ上で神ってデリカシーが無いのなどと文句を言っていた。

「概念的には性別同じだから聞いたんだけど、ダメだったかしら?」

「限度があるでしょ、限度が!」

シアが定義の書き換えを終えるまで、メリエルはずっと胸を両腕で隠してシアに文句を言いまくっていた。
そして書き換え終えた時のことだ。
本当にまともに魔法が使えるようになっているのかを試しているメリエルの背後から、なんとシアは

「もふっ?」

「きゃっ!?何するのよ!…あっでも肌触りいい」

不意打ちで抱きついたのである。
無論メリエルは驚いて抵抗はしたが、シアの力に勝てるはずもなく、しかも毛の触り心地が良かったのですぐに抵抗するのをやめてしまう。

「今日は機嫌がいいからよ、悪いと猪の毛よりも固くなるわ」

「わー…」

そしてそれ以来、メリエルはシアの毛の虜になったのである。

「んしょっ」

今日も塔の梯を登り、頂上へとやって来たメリエル。
だが、今日はシアの姿が見えない。

「あれ?おかしいなあ」

とりあえず辺りを探してはみるもの、やはり姿が見えない。
シアはどこ行ったのかとメリエル考えていると、いきなり目の前にシアが現れた。

「ちょっと仕事してたのよ、城の方へ来れば良かったのに」

「ここしか居ない思ってたのにー、何の仕事してたの?」

城の方へ来れば良かったのにと言うシアに、メリエルはここにしか居ないと思ってたと返し、何の仕事をしていたのかを聞く。
だがシアは返事を濁して答えてはくれなかった。

「答えてくれたっていいじゃないのよ」

「私にも下手に言えないことだってあるのよ」

少々雰囲気が悪くなりながらも、シアがメリエルに抱きついてしまうとその雰囲気もあっという間に改善された。

「あー、もふもふ…」

「うふふ」

この姿を、ウンディーネが見たら嫉妬されるのは避けられないとは思いつつも、メリエルはシアのもふもふに包まれていた。
それだけシアの毛は機嫌がいいと心地良いのだ。
そしてそのまましばらくそのままで居ると、見覚えのあるメイドが突然現れて2人分の茶と菓子を置いて

「あらこの間の…シアとは仲良さそうね」

と一言メリエルに言うとそのメイドは戻ってしまう。
一体あのメイドはなんなのかとシアに聞いたところ、あのメイドの名はサフィと言い、この城の従者全てをまとめる存在かつシアの専属医でもあるというのだ。

「医者でメイドなんて、変なの」

「珍しいパターンよ、そしてあれでも数十年はここで働いてるわ」

シアの数十年は働いてるという一言に、メリエルはの割には老いてる様子がないと追求したところ

「半分吸血竜の半分吸血鬼よ、あれでも」

というなんとも言い難い答えが帰って来た。
メリエルはそれに追求しなければ良かったと思いつつ、その後はシアとお茶をしたという。

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メリエル見参

秋の深まりつつあるセイグリッド、城下町にポツポツ植えられているイチョウの木の葉はそれらしい色になり地面に落ちている。
そんな城下町を、観光客用に貸し出されている騎竜に乗った平坦な銀髪の少女が暴走していた。

「ケガしたくなかったらどきなさーい!召喚師メリエル様のお通りよー!」

騎竜を全速力で走らせ、城の方へと駆け抜けて行った少女の名はメリエル・ラーヴィック。
異界渡りの能力を有しており、この世界へ来るのは初めてで、観光という名の視察をしに来ている。
召喚師と言うからには、使い魔を召喚して移動すればいいのでは?と思われがちだが、メリエルは騎竜に目が移ってそんなことは微塵にも考えていなかった。
やがて、城の方までやって来たメリエルは全速力で走る騎竜から飛び降りた---まではよかったのだが、タイミングを間違えてイチョウの木へ激突。
背に乗せていた者が居なくなった騎竜は急ブレーキでもかけるかのように停止し、メリエルの方をじっと見ていた。

「いったー…おえっ、くっさーい」

激突して地面にずり落ちた際に銀杏の実を踏んづけたらしく、とてつもない臭いがメリエルを包んだ。
セイグリッドの城下町に植えられているイチョウは、他の世界の物とは一風違っていて、葉の大きさや銀杏の実の大きさも倍近い。
それ故に、普通のものよりもこの銀杏の実は比較して四倍くらい臭いという。
騎竜はその銀杏の臭いに鼻を曲げたのか、芳しくない表情だ。

「この世界来てからついてないわ」

とりあえずは臭いと一緒に踏んづけた銀杏を落としてしまおうと、洗濯の魔法を使ったメリエルだが

「…がぼがぼ」

どうやらこの世界の魔法の定義は、今のメリエルの魔法の定義とは違うらしく、メリエルはその場に出来た渦潮にかき回され、目を回した。
そして、もしやと思い召喚魔法を使ったのが運の尽き

「うぅーん…」

召喚されたのは異形の何かで、メリエルは正気度がごっそり削られる前に失神。
完全に失神する前に聞こえたのは、城下町の住民が逃げ惑うような声だったとか。

次にメリエルが目を覚ましたのは、あからさまに城内の医務室と思わしき場所。
あの後誰かがここまで運んで来てくれたようだ。
もちろん、目が覚めたと同時に失神する前の記憶がフラッシュバックした。

「今日は厄日だわ!」

などと言いながらベッドのシーツを両拳で叩いていると

「異形の者を召喚するなんて、あんたよっぽどね」

紫髪のメイドがすぐ隣に居たので、メリエルは驚きのあまりベッドから飛び出して床に落下。
そんなメリエルを見ても、この紫髪のメイドは顔色一つ変えずにメリエルの目が覚めた一点だけを見ている。

「よっぽど…?悪い意味で言ってるようなら否とだけ返すわ、だって私は天才召喚師のメリエル様よ!?」

「召喚した何かを見て失神した挙句、その処理を第三者に任せても言えるのそれ?自称天才召喚師の間違いじゃないの?」

メイドの一言を変な意味で受け取ったのか、メリエルはそんなことを言うがあっさりメイドに論破されてうぐぐとなるしかなかった。
本当ならば、ここでいつもはちゃんと召喚できるなどと食い下がるのだが、この紫髪のメイドがどうにもただ者ではないように思えたのでやめた。

「あんたがやったってことはもう揉み消されてるから大丈夫よ、それよりあんた予想以上にマナ消費してるからあと最低一時間は休んでなさい」

メイドは分かったわね?と言わんばかりにそんなことを言うと、医務室を出て行く。
床に落下したままその場に座り込んでいたメリエルは、メイドの忠告通りにあと一時間は休むことにした。

そのころ、セイグリッド城裏手の塔の頂上では、シアがメリエルがやらかしたことの一部始終を見て興味深そうにして

「うーん、能力的には自称ではないんだけど、やっぱり定義の問題ね。名は…メリエル・ラーヴィック。不死能力と異界渡りの能力持ち、平坦…おっとこれは余計ね」

定義をどうするかを悩んでいる最中。
そうしているのは、やれそれ異界から来た者がこの世界でもまともに魔法を使えるようにすると、大問題に発展することもあるからである。
ちなみに、なぜシアがメリエルの名を知っているのかというと、メリエルの魂を覗いたからである。
魂は、生を受けた時の名を含め、己に付けられた名は全て記憶しているのでシアが魂覗けばそれがすぐに分かるのだ。

「あー…」

それから数時間後。
一時間のつもりが、思いのほかぐっすり寝てしまって気付けば夕方。
これ以上ここに長居していても仕方ないと、医務室から出たメリエル。
だが、医務室出た瞬間。メリエルは見えない力にぐいと引っ張られる感覚を感じたかと思えば、次の瞬間にはちょっと寒いどころではない高さの場所に居た。

「よく寝れたかしら?」

突如何者かに声をかけられ、メリエルはバックステップしたかと思えばその場所から地上へ向けて落下---するかと思ったが、声をかけてきた何者かが魔法で受け止めてくれたおかげで無事だった。

「不意打ちなんて卑怯よ」

「あら、私はあなたが私を視認していると断定してから声を掛けたのに?」

改めてメリエルは声をかけてきた何者かを見る。
それは、白い毛に四本角、赤い目の竜だった。
しかも、感じる力がただ者ではないことから神と同等のレベルであることも伺える。

「私この世界の生の創造神にして管理者かつこの世界の定義の全ての管理者のシアよ。あなたはメリエルで当たってる?」

この世界の生の創造神で管理者のシアだと名乗った竜に、自らの名を当てられ、メリエルはシアを指差して

「どうして初対面なのにシアが私の名を知ってるのよ!?」

と、ツッコミの如く聞く。
するとシアは、尻尾をパタパタさせながら

「あなたの魂を覗いたからよ、魂は今までに己が名付けられた名を全て覚えているの。本人がたとえ記憶喪失になろうと魂はありとあらゆることを覚えてるものよ?」

メリエル自身の魂覗いたと答える。
それにメリエルは、覗き魔に等しいじゃないとさらにツッコミを入れた。

「そういうものよ」

だが、シアにそういうものだと言い切られてメリエルは歯ぎしりする。
そしてこの後メリエルがどうなったのかは、言うまでもない。
ただ、ちゃんとこの世界に出入りする許可を貰って定義も互換性を持たせてもらったらしい。

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小説(交流) |

一次創作小説(交流系)一覧 その3

・メリエル見参
1

・メリエル見参 その2
1

・トスカとゴルダ
1

・輝星の聖水作り
1

・メリエルとサフィ
1

・トスカ再び
1

・メリエルとゴルダの砂漠横断チャレンジ
1

・夜の手解きを
雨月と水蓮とサフィ
1

・レナとお茶とかぼちゃパイと
1

・ライノートとゴルダと
1

・メリエル、ゴルダの家へ行く
1

・ドラビットの里へ
1

・空から降って来た竜
ハーキュリーとゴルダ
1

・はーたんの手伝いと2匹の緑毛
1

・ちょっと変わった迷子
フウとゴルダ
1

・他人の武器、勝手に使うことなかれ
1

・モカとコロンとフウと折り紙
モカとコロンとフウといろいろ
1

・姿同じど雰囲気は違う
1

・祝え、何を?誕生日を
1

・あなたの笑顔を見てみたい
1

・何が何でも探りたい
1

・不釣り合いな3人のお茶
1

・クリスマスは2人きりで
1

・コロンとフウとゴルダのクリスマス
1

・サジと竜医
サジとゴルダ
1

・サジの留守番
1
未分類 |

拭えぬもの

洗濯物が積まれてほったらかされている深夜の居間。
今日の放送がとっくの昔に終わって砂嵐しか映ってないつけっぱなしのテレビに、テーブルの上にはビールやらの空き缶につまみになったと思わしき菓子の箱や袋が散らかっている。
そしてテレビの前のソファでは、1人酒を飲んで爆睡するゴルダの姿。
普段はここまで酒を飲むことはないのだが、何かの拍子にこのように大量に飲むこともあるようだ。

「…っ!」

そして、ゴルダは突然目を覚ます。
酒はまだ残っているようだが、悪酔いしている様子もなく起き上がると、テレビを消してテーブルの上を片付けて台所へ行き、冷蔵庫から聖水を出して飲む。
ちなみにこの聖水、れっきとした飲用で、セイグリッドで取れる天然水にシアの加護が込められている。
一応薬にもなるので、使い道は様々らしい。

「またあの夢か、やれやれ」

ゴルダの言うあの夢とは、もう十年近く前に手術で救えなかったある竜の記憶が未だにフラッシュバックして見る夢。
ことある度に夢としてフラッシュバックされ、その度にゴルダは救えなかったことに対して自分に怒りを覚えていた。
ゴルダの竜医をひっくるめた医者としてのあり方の考えには、次の二つの考えがある。
一つ目は

「救え命は全て救う」

二つ目は

「命を救うことを含め、全ての行為は己のエゴである。だがそのエゴが可能性を生む」

というものだ。
一見して分かるように、この二つの考え方は矛盾しているとしか思えない。
だがそれでも、ゴルダはそれらを念頭に置いて竜医を続けている。

「記憶が拭えず、トラウマとなり。考えに縛られ、己を追い詰める」

そんな独り言を呟きつつ聖水を冷蔵庫に戻し、バルコニーに出るゴルダ。
氷燐はこの時間は熟睡中で、下手に起こすと機嫌を損ねるので起こさないように注意しながら、ゴルダはバルコニーの椅子に腰掛け、煙草のようなものに火を付ける。
いつもなら吸うと気が紛れるのだが、今は吸えば吸うほど逆効果。
だがそれでもゴルダは丸々一本吸い終え、家の中へ戻る。

「まともに寝るか」

自室では、アルガントとウラヘムトが一定間隔を開けて寝ており、ゴルダはその真ん中に割り入るようにしてベッドに入って就寝。
そのままいつも起きる時間までぐっすりだった。

翌朝、あまり気分が晴れないものの顔にはそれを出さずにアルガントとウラヘムトに朝食を食べさせるゴルダ。
氷燐はゴルダの気分がどこか晴れない様子を察し、こう聞く。

「どうしたんだ?らしくないじゃないか」

「何でもない、それより後でリフィル行くからな」

ゴルダは氷燐の問いには何ともないと嘘を付き、アルガントやウラヘムトと同じように朝食を与えると、後でリフィルに行くことを伝える。
氷燐は質問をはぐらかしたゴルダをあまり良くは思わないながらも、分かったと返す。
つい最近ここで暮らし始めた氷燐には、ゴルダの過去がどうなっているのかを把握し切れては居なかった。
だが、ゴルダが自ら語らずとも共に暮らしている内にその過去が普通のものではないと確信していた。
その過去は時に暗く、時に重く、そして時に無慈悲で残酷である。

それから二時間後。
ゴルダは氷燐とリフィルの断崖絶壁で海を眺めていた。
二人とも一言も話さず、聞こえるのは絶壁に打ち付ける波の音だけ。

「なあ」

「俺の過去か?いろいろあったとだけ言っておく」

「具体的に話す気はないのか?」

突如氷燐から話しかけられ、ゴルダは何を聞きたいのかを分かってたかのようにいろいろあったと言う。
それを聞いた氷燐は具体的に話す気は無いのかと食い下がるが、ゴルダは何も答えない。
だが、数分の沈黙を置いてからゴルダは煙草のようなものを吸いながらこんなことを呟く。

「拭えぬ何かに縛られてるとでも言うのか?それに悩まされている」

やっと言ってくれたかと、氷燐は安心したように鳴いた。
何かに縛られた時、立ち向かうか諦めるかでも違ってくるが、どう立ち向かうかはさらに違うのだ。
それを肝に命じておかなければ、いざという時にとてつもない痛手を負うだろう。

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