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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

転送先で一騒動

ドランザニアへ何らかの原因でパスポートなどなくしてやって来る者は年に数百人単位で居るという。
その主な原因は何らかの魔法に失敗して転送されてきたり、時空の歪みをくぐってここへ来てしまったなど様々。
たいていそういう場合は罰されることはないのだが、例外としてあからさまにこの世界に害を為そうとする者ならばそれはそれで罰せられる。
さて、今日も誰かが魔法に失敗して転送されてきたようだ。

セイグリッド、シアの塔の中間地点。
様々な工具や魔道具片手に、ゴルダはこの塔の中に隠されている異界とのゲートの監視装置の整備をしていた。
少し前までは専門の整備員が居たのだが、数年前に逝去して以来シアは新たな整備役をアルカトラスに頼んで任命もせず、今の今まですっぽかしていたという。
そして、ついに監視装置がおかしくなり、その尻拭いをゴルダがしているのだ。
幸いにもなぜかこういった装置の知識があったゴルダは、たやすく故障個所を発見し、現在直している途中。

「数年整備保守してないだけでここまでガタ来るのか、やれやれだぜ」

工具と魔道具を交互に使い、要修理個所を難なく直していくゴルダ。
そして、ようやく監視装置を直し終え、テストだと魔力供給を再開した瞬間。

「うわー」

「おちるー」

監視装置が誰かを転送させてきたらしく、人影が2、3人ほど下の方へ落下していくのが見えた。
その際何かを言っていたが、ゴルダには理解できない言語だった上に何もしない。
なぜなら、この塔にはシアが落下防止用の魔法をかけてあるので転落からのお陀仏というのはまずあり得ない。

「また面倒事が起きそうな予感がするな」

ゴルダはそう言って監視装置から離れ、落ちていった人影を追って梯子を下りる。
一番下では、さっき落ちてきたであろう3人がここはどこだというようなことを言っているが、ゴルダにはそのままでは何を言っているかが理解できない。

「1人は人間、1人は不明、1人は…獣人か」

その3人に気づかれないよう忍者のごとく上から様子を伺ったゴルダは、3人の種族をそれぞれ把握。
そのまま上へ上がってシアに報告しに向かう。
上のほうでは、シアがああでもないこうでもないと監視装置の設定をいじくっていた。
ここの監視装置は、今シアが持っている本が制御盤のような役割を果たし、それで停止や稼働、そのほかの設定などを行う。

「シア、3人だ。今この下に居る」

「言わなくても分かってるわよ、そこから動くな言ってるからここ連れてきて?」

3人居ると報告したところ、シアは制御用の本から目を離さず、ここへ3人とも連れて来いと言い放って設定いじりに戻る。
なお、エシュフィルトは監視装置の魔法が最も関わる部分を現在シアと調整中なのでここには居ない。
ゴルダは結局こうなるかと首を横に振り、梯子を下りた。
再び塔の一番下へと降りると、例の3人はゴルダを見て身構えたので思わずゴルダも腰の剣を抜きかけたが自制を利かせて手を退けた。

「ついて来い」

右手の人差指と中指を地面から梯子、そしててっぺんの方を指してからその指を手前に動かすというハンドサインで3人について来るように言うゴルダ。

「ついてっちゃっていいの?」

犬獣人と思わしき少女が何か訝しむような表情をながら何か言ったが、ゴルダはそれでもハンドサインでついてこいとだけ言う。
一方、角ありの魔族と思わしき女は、ずっとゴルダを警戒しているようで、いつでも武器を引き抜けるようにしている。
もう一方の首輪を装備している少年と思わしき者は、能天気な表情で緊張感が感じられない。

「雰囲気的にまだ仲間はいるようだな、この首輪した少年。能天気な表情だが目がそうではない。この魔族っぽい女は相変わらず俺を警戒、と。この犬獣人の少女は半分警戒、半分興味津々か」

勝手に3人を分析しながら、ゴルダはそのまま塔のてっぺんへと戻った。

「その3人がそうね、他には居なかった?」

「居ねえよ」

3人をシアの所へ連れていき、他には居なかったかと聞かれてゴルダは居ねえよと即答。
シアは翻訳魔法を使って3人と会話をまともにできるようにして、どうやってここまで来たのかを聞く前に名を名乗るように促す。
そして、3人はそれぞれ名をG、ナロニィ、オージェと名乗る。
ちなみに、能天気そうに見えたが目がそうではなかった首輪少年がG、犬獣人少女がナロニィ、魔族と思わしき女がオージェだ。
その後で、シアはGたちにどうしてこの世界へ来てしまったのかを聞く。
こうやって原因を探さなければ、送り返すためにその世界を調べる際に面倒事が起きる可能性が高いからである。

「あー、うーん。なんだっけ?ナロニィ?」

「すっごく強い勝ち目がないモンスターに追われてて、オー…シェ?がたまたま使った魔法が失敗したんじゃなかったかな?」

「なっ…この私が魔法をしくじるなどありえんそれに私の名前はオージェだ」

魔法の失敗というワードにピンときたのか、シアは1人納得したように頷いた。
その横では、オージェとナロニィがバチバチと険悪ムードに陥っていたのでゴルダはGに

「この2人はいつもこうなのか?」

と聞く。
するとGは

「ナルロィは名前覚えるの苦手だからなあ、あはは…そうだよ」

ナロニィが名前を覚えることが苦手だと言い、そうだよと答えた。
そしてさらに、ゴルダはGに対してこんなことを聞く。

「お前、仲間はまだいるんじゃないのか?そのオージェが使った魔法で離ればなれになっているとか?」

それに対してGは、のほほんとした様子で

「うんまあね、でも大丈夫だと思うよ。うまくやり過ごせているはずだから」

大丈夫だろうと楽観的な返事を返した。
その後ろでは、互いに武器を構えて一戦やりそうなナロニィとオージェを、シアが前足で遮って何とか止めている。
下手に自分が手を出すまでもないだろうと、ゴルダは一瞬だけ見て無視を決め込む。

「なぜ私の名前が覚えられん!?私の名前はオージェだ!」

「だーかーら、覚えるの苦手だって言ってるじゃない。オーチェ」

「またまた間違えおって、許さん!」

シアの前足での遮りを振り切ろうと、互いに武器を振り回すナロニィとオージェを、シアは自分の毛の中へ2人を埋め込んだ。
もはや、これはシアの得意技とも言える。
無論、不意打ちだったために双方ともかなり驚いていたがすぐに大人しくなったかに思えたが、オージェだけはシアの属性を察したのか、離せと必死だ。

「ナロニィよりもふもふだね、あの竜」

「あれでも一応この世界の生の神なんだがな」

完全に虜のナロニィに対し、オージェだけはものすごく暴れているのを見ながらGとゴルダはそんな会話を交わす。
なおこの後Gたちはどうなったのかというと、シアが出身世界をすぐには割り出せないなどと言いだし、数か月こちら側で暮らす羽目になったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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真夏の氷牙

ドランザニアの氷竜の多くは、氷牙という特異的体質を抱えている。
これは、個人差はあれど噛んだもの、あるいは牙に触れたものすべてを氷り付けにしてしまうという体質で、場合によっては対象が凍って砕け散る程度にまで凍らせるものもいるという。
そして、かつて最もその特異体質の力が強い者がいた。
それは、氷竜国リヴァルスを建国した氷牙竜リヴルーテだ。
現国王リヴァイドの祖父に当たるような存在で、それこそ噛んだもののほぼ全てを砕け散る程度にまで凍らせることができたという。
その血を引いているはずのリヴァイドも、一応氷牙持ちなのだがリヴルーテほどではないとされている。
だが、血を引いていることだけの事はあり、何かの拍子にリヴルーテと同じ力になることも多い。
例えば、普段0度から上に気温が上がることのないリヴァルスが20度近くまで上がるというとんでもない日になった時などだ。

「うーん、暑い」

外から入ってくる暑い風を受けながら、リヴァイドは書斎で仕事をしていた。
今日はドランザニア側から異常に大きく、かつ強力な高気圧が入ってきてリヴァルスを数十年に一度とも言える猛暑日にしている。
現在の時刻は10時ちょっとを回ったところだが、リヴァルスの気象観測所はこの時点で気温が20度を超えたと発表しているそうである。

「ぬっ、汗で書類がダメになるところだったな」

腕から汗が垂れているのに気付き、リヴァイドは慌てて側近が汗を拭くようにと置いていったタオルで汗を拭く。
城の中はそこまで暑くないにも関わらず、なぜリヴァイドは汗をかいているのか?
それは単純解明な理由で、外から入ってくる暑い風が城内の空気を押しのけ、一気に気温を上げているからだ。
さすがにこれだと暑くなるのは無理もないだろう。

「あっちい」

氷結晶で作られた、常時冷たいグラスに入っている茶をリヴァイドが飲もうとした時である。
どういうわけだが中に入っていた茶があっという間に凍って飲めなくなってしまったのだ。
これにはリヴァイドも、どういうことだとグラスを覗くがやはり茶はグラスの中でカチンコチンに凍り付いている。

「まーた氷牙の力が戻ったのか、面倒だな」

リヴァイドはそう呟きながら、無理やり凍った茶をグラスから出して氷でも食べるかのように噛み砕いて飲み込んだ。

その後も、何事もなかったかのように仕事を続けるリヴァイド。
だが氷牙の力が強くなったせいか、欠伸をするだけでもそこそこに冷えた空気が口の中へ入ってきた。
なお、これはこれで眠気も覚めるだろうと、リヴァイドはそこまで気にはしていなかったが。

「暑いでしょうからアイスお持ちしました陛下」

ここで、アイスを持って従者が入ってきたのでリヴァイドはやったぜと言わんばかりの顔をして

「ありがとうな、気が利く奴は好きだ」

などと従者を褒めてやる。
従者が出て行った後、リヴァイドはさて食べようとスプーンを手にアイスを食べようとしたのだが

「氷牙のせいでアイスが岩みたいに固くなったか、どこまでもめんどくさい特異体質だ」

牙に微妙にアイスが触れ、岩のようにさらに固く凍ってしまった。
だがそれでもお構いなしにリヴァイドはアイスを無心で食す。
食べ終わる頃には、さらに凍って固くなったアイスのせいでやけに牙が痛くなっていたとか。

「どういうタイミングでこの氷牙の力が強まるか分からないんじゃな」

牙をいじりつつ、リヴァイドは外から入ってくる暑い風に悩まされながら今日の仕事を終えた。
そして夕食の時間。
暑さのせいでそこまで食欲がなかったリヴァイドは、野菜だけを食べていたのだが、夕食の時間になっても氷牙の力は弱まらず、牙に野菜が触れるだけでこれまた昼間のアイスのような固さになった。

「かってえ、食べれないことはないが」

なんだかんだ文句を言いつつも、夕食に出された野菜だけはしっかり食べきったリヴァイドであった。

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