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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

集中こそが成功のカギ

セミがうるさく鳴くある朝のリフィル城裏山の川の滝。
若干の魔力を含んだ湧き水により作り出されたこの川は多少の汚染なら自浄作用で元通りになるという。
その滝の真下で、道着のような服装のアルガティアが滝打たれをしていた。
毎日ではないらしいが、精神的に乱れが生じた時はこういうことをして精神を正すと言う。

「ここ、夏場でもほぼ0度に近い水温なのによく平気だなあ」

とても大きな蓮の葉を帽子にして静観しているエゼラルドの横で、フィルスがそんなことを呟く。
先ほどフィルスが言ったように、この川の水温は夏だろうが冬だろうが常に0度ギリギリ。
そのため、この川は氷牙川と呼ばれることもある。
氷牙川の名の由来は諸説あるものの、かつて生半可な心構えでこの川に入った者が、何かに噛まれたような感触を感じた瞬間氷付けになったからだと言われている。
そんな川の滝で、アルガティアは薄手の服装をして打たれているが、特に凍る気配はない。

やがてアルガティアは、一旦滝打たれを止めて静観していたエゼラルドに的を用意させた。
的はそこまで大きくはないサトイモの葉を5枚くらい重ねたもの。
そしてアルガティアはまた滝に入り、どこからか弓を出して滝の水流にも負けない構えを取る。
フィルスはなんでこんなことをするのかと考えてみた。

「ああそうか、そういう鍛錬か」

フィルスが編み出した解は、劣悪な環境下でいかに精神を集中させてターゲットを射抜くかという鍛錬だと気付く。
滝から流れ落ちる水で表情は分かりにくかったが、アルガティアの目は真剣そのものだった。

「えっ…?もう射抜いてる?」

刹那、フィルスがよそ見をしていたほんのわずかな間にアルガティアは的を射抜き、新しい的を用意させていた。
しかも、今度は不規則に動く的だ。
これがまさに油断大敵と言ったところか。

その後、計10回は滝に打たれながら的を射抜いたアルガティア。
10回目を終えてようやく滝から上がり、城へと戻る途中でアルガティアはフィルスにこう言う。

「あとで付き合って」

「?」

フィルスは最初はこの意味が理解できなかったが、すぐに理解することになる。

城へと戻り、着替えていつもの服装に戻ったアルガティアはフィルスと庭の外れへ。
畑が所狭しとあるこの場所で、何をするかと思いきやアルガティアはフィルスに槍を持たせた。

「槍術なんてやったことないんだけど?」

「いいから構える」

槍なんか持ったことがないフィルスは、困った顔でアルガティアに言うもアルガティアは問答無用で構えろと言う。
そして仕方なく構えるフィルス。
そもそも素人同然のフィルスがあからさまに上手のアルガティアに勝てるはずもない。
どうしようとあたふたしていると、矛先が眼前にあったのでフィルスはビクッとした。

「何事も集中、守るも攻めるも。これがインストラクション1」

「それはそうだけどさ」

「もう一度」

さり気なく教えを言ったアルガティアにもう一度と言われ、フィルスは槍を構え直す。
今度は視界内にアルガティアを捉えていた…はずだった。
だが今度は後ろと左右を分身に取られていたのだ。

「うぐぐ…」

「インストラクション2。100が最大の集中を一方向に100全てを使ってはいけない。あらゆる方向に優先度をつけて使うこと」

唸るフィルスに、アルガティアは2つ目の教えを言う。
そしてアルガティアは槍を片付けると

「インストラクション3。優先度をつけ難い、あるいはつけられないなら全てに均等に割り当てを」

3つ目の教えを、これで最後と言わんばかりの口調で言い、アルガティアはフィルスを撫でた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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