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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

レナと七夕

7の月のある日のセイグリッドの夕方、こんな変な時間にやって来たレナは城の方へ。
城に近付くにつれてレナが思ったのは、城の方がいつにも増してにぎやかだということ。
それもそのはず、今日はレナが知らないだけでセイグリッドでは聖星祭(ひじりぼしまつり)という七夕の祭りなのだから。
城の庭には、あちこちに見慣れない装飾が施され、ぽつぽつと屋台が並び、多くの人々が行き交っている。
何も知らないレナは、単なる祭りなのだろうかと思って歩いていると、エシュフィルトと狐面姿の誰かと出会った。

「今日はセイグリッドの七夕」

「アルガティアさんだったんだ、お面着けてるから分からなかったや」

「ここの七夕は短冊を万年桜の頂上に置くの」

「へえー」

狐面姿の誰かは、声だけですぐにアルガティアだとレナは分かった。
そして2人はレナに今日は七夕であることを教える。
なお、先ほどエシュフィルトが言ったように、セイグリッドの七夕は短冊を万年桜の頂上に置く。
こうすることで、願いが欲張ってなければ8割くらいは叶うという。

「あなたも書いたら?」

「どこで書けるのかな?」

「大広間で書けるよ」

アルガティアに書いたらとそそのかされ、レナな書いてみようかなとどこで書けるのかを聞く。
その問いには、エシュフィルトが大広間だと答えたので3人は大広間へ向かう。

「人がとても多い」

「誰しも短冊は書きたいと思うから仕方ないんじゃない?」

いつもは食事を取る大広間は、右も左も人でごった返していた。
奥の方には2~3メートルの笹が10本以上並べられ、それらの笹にはびっしりと短冊が下げられている。
これではすぐに書けそうにはない。

「あら、来てたの?」

「わわっ…!」

そこへ、まるで忍者のように背後に忍び寄って来たサフィにレナは気付き、思わず飛び上がった。
一方のアルガティアは面の位置を正した以外は全く動じず、エシュフィルトはまたなのねという顔をしている。

「はい、3人分。さっさと書いちゃいなさい」

サフィは特にレナに謝る素振りも見せず、エシュフィルトに3人分の短冊を渡して何処かへ行ってしまう。
そして3人はそれぞれ、次のようなことを短冊に書く。
アルガティアは

「何もない1年を」

レナは

「もっと友情が深まりますように」

エシュフィルトは

「大器晩成」

というのをそれぞれ書いた。
そして、その短冊を笹に下げて大広間を去る。
その後は、アルガティアにエシュフィルトとぶらぶらしていたレナだが、シアに

「笹持っていくのを手伝ってもらえる?」

と言われて手伝いに移る。
再び大広間へ戻った時にはもう片付けが始まっていて、短冊を書いている者は誰も居ない。
びっしりと短冊が下げられている笹が10本以上。
それをどうやって運ぶのかと思えば、3人は魔法を使って運び始めた。
さすがにレナには持てないので、落ちた短冊を拾う側へ回る。
その万年桜までの道のりの間、大広間いた時には面を外していたアルガティアだが、移動中は一切外そうとしなかったので、レナは不思議に思っていた。
だが、その読めないところというのがアルガティアの個性なので、レナはあまり気にせず短冊拾いに集中。

「やっぱ見られるわ」

「仕方ないんじゃないかな?」

一言二言交わしている間に、4人は万年桜の前に着いた。
ここから1本ずつ頂上に置いてくるという。
そして全てを置き終え、シアがあることをすると何かが起こるとか。
ちなみに、レナの拾った短冊は最後に置くとのこと。

そしてだいたい10分後。
多くの見物人に目線の中、4人は最後の笹と共に頂上へ。
葉と枝の織り成して作られた頂上は、そこまで足元は悪くはなかった。
目の前には既に置かれている笹たちが並び、時折風に揺れている。
その笹が風に揺られる様は、どこか神秘的な雰囲気さえ感じさせてくれている。

「レナ、拾った短冊をこっちに」

シアはレナに拾った短冊をいつに間にか用意されていた祭壇に置くよう指示。
レナは軽く頷き、祭壇にその短冊を置く。
そしてシアは、これまたどこからか経文のようなものを開き、レナの聞いたことの無い言語の詩を詠み始める。
それをちんぷんかんぷんになりながらも聞いて居ると、アルガティアがそれをさり気なく訳してくれた。
それは、以下のようなもの。

「一年(いっとし)訪れ7の月の今宵、短冊綴りし個々の言葉。笹に下げしそれらをば、我ら委ねんその星々に。その言葉叶わんとするならば、我らは星々に感謝示す。そして明くる年の同じきこの夜空に、再び言葉委ねんと、かしこみかしこみ願い申す」

これを詠み上げ終えた瞬間、笹が、短冊がほんのりとした光の粒となって夜空に舞い上がり、地球でしか見られないはずの天の川を夜空に作り出す。

「わあ、きれいだなあ」

「今年も上手く行ったわ」

いい七夕になったようです。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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