氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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騒がせトリオと不思議系女王

G、ナロニィ、オージェの一行がこの世界に飛ばされてから一週間程が経った。
あの後はシアの計らいでこの国の国王のアルカトラスに会い、元の世界へ帰るまでの間の最低限の衣食住と短期でセイグリッド国籍を与えられた3人。
しかし、衣食住の衣と食はほぼ現物支給で、住は国で管理している空き家。しかもそれ以外は何も無いので、オージェとナロニィはなんだかんだ何処かで小遣い稼ぎをしている。
もちろん、それはアルカトラスからやるなと禁止はされてないからできることだ。

「モンスターに襲われる心配もせずにのほほんと過ごせるのって久々だな」

Gはここへ来て以来、何もせずにぼーっと過ごす日々を送っている。
それにナロニィは何も言わなかったが、オージェだけは

「時にGよ、このまま自堕落な生活をしていたら戻った時に苦労するぞ?私と鍛錬をしよう」

そんなGを見かねて、鍛錬をしようと誘うのだが。

「いいよ、ここで自堕落に過ごしててもすぐ感は戻るさ」

Gはこのような返事を決まって返すだけで、一切鍛錬をしようとしない。
それが何十回と続いたため、ついにはオージェも

「もう私は知らん。Gがそう言うならな」

匙を投げてしまった。
そして、またオージェが小遣い稼ぎのために出かけてしまうと、Gはのんびり窓の外を眺めるのに戻る。
窓の外では様々人が行き交い、それなりの活気に溢れていた。

「あれ?」

数分Gが外を眺めていると、緑の毛の竜に乗った王族正装と思わしきローブを纏った女性が城の方へ歩いていくのを発見。
距離はそれなりに離れているが、ここからでもかなりミステリアスな雰囲気が伺える女性だ。
それ以外にも、緑の毛と青い毛の見たことの無い小さい生物も一緒に乗っているのも見えた。
Gはその一行に何かしらの興味が湧いて来たので

「後を追ってみよう」

その一行の後を追いかけることに。

「ああ、やっぱ城の方行ったな」

そのままGが一行の後を追うと、城の中へと入って行くのが見えた。
そしてGは気付かれないよう、尚も後を追う。
すると、その一行はアルカトラスが仕事をしている書斎ではなく応接間の方へ。

「誰なんだろうな」

Gはここで追跡をやめ、城の中を歩き回る。
普通の城ならば、勝手に城内を歩き回るとたちまち衛兵などに追い回されることになるのだが、この世界の城は特に変なことをしなければ一部の部屋を除いて出入り自由。
なのでGもこうして城の中を歩き回ることができるのだ。
Gが庭園の方まで歩いていくと、ナロニィが自分の鎚を使って水路をせき止めている岩を破壊しているのが見えた。
ナロニィは岩を破壊するのに集中しているためか、こちらには気付いてない。

「やるねえ」

そんなナロニィを横目に、Gは別の場所へ。

再び応接間の前へ戻ってきたGは、少し開いていた扉の隙間から応接間の中を覗く。
中では、アルカトラスとあの王族正装のローブの女性が何かを話している。
その横では緑の毛の竜が緑の毛と青い毛の生物と座り、扉の方を見ていた。
だが、3匹ともGには気付いてないらしい。
もう少しよく見て見ようと開いている扉の隙間に首を突っ込もうとしたところ、反動で扉が開き、Gは前のめりに倒れこんだ。

「やれやれ…」

「どなた?変に魔族の力が抑え込まれてるけど」

アルカトラスが仕事の話をしていたのにと、呆れ顔でGを見ながらそう言うと、王族正装のローブの女性がGを見てどなた?とアルカトラスに聞く。
アルカトラスはその女性にGがこういう者だと説明すると、女性はそうと呟く。

「一応汝には紹介しておこう。ここからそれなりに離れた島国、聖リフィルの女王のアルガティアだ」

「どうも初めまして、Gです」

「こんにちは、アルカトラスに紹介されたとおりよ」

何と無く察しはついていたので、Gはさほど驚くこともなくアルガティアに挨拶する。
普通の王族なら、ここであっさり切り捨てられただろうが、ドランザニアの王族は最低限の礼節を守れば気さくに接する王族ばかりなのである。
最も、それが故に礼節を守らない不届きものには容赦しないのであるが。

「Gよ、今は席を外してくれ。一応仕事の話中なのでな」

「はいはい了解」

アルカトラスに席を外すように言われ、Gは軽く頷いて応接間を出る。

「お、岩砕き終わったのか」

「うん、じーちゃんはなにやってるの?」

再び庭園まで来ると、一仕事終えたナロニィがくつろいでいた。
Gはナロニィに岩砕きは終わったのかと言いながら隣に座る。
その際、遠くでオージェが何かしているのが見えたが、Gは何も言わずにナロニィと話を続けた。

それから10分後。
Gがナロニィと庭園内を歩き回り、色々見て回っていた時のこと。
背後からの謎の気配で身構えるG。
だがそれがすぐにオージェだと分かると身構えを解除した。

「鍛錬はしないのにナロニィとは遊ぶのだなGよ」

「何よ、いいじゃない」

「まあまあ」

オージェの一言で、またもやナロニィが食ってかかったのでGはそれを制そうとしたが

「あーんもう我慢なんない、一回黙らせる!」

「ほう、やるのか?私に連敗中のお前が?」

結局制せずじまいかつ今度は止められる者も居ないので、ナロニィとオージェは完全に決闘体制になってしまう。
これには思わずはわわと、Gはとばっちりを食らわない所へ逃げる。
そして、ナロニィがオージェに鎚を振り下ろしにかかったところで完全に決闘が始まってしまった。

「てい!」

「甘いな」

地面を穴だらけにしながらやり合うオージェとナロニィを、周辺に居たものたちは被害が及ばないところから観戦。
戦況は互いに譲らずといったところだろうか。

「やっべえ、これ絶対アルカトラスに怒られる」

手頃な柱の影から2人の様子を見ていたGはそう呟く。
いくら紳士的で寛容なアルカトラスでも、庭園ここまで荒らされたら何も言わないはずがない。
そればかりを気にかけてGはどうしようか策を練る。

「お困り?」

ふと後ろから声をかけられ、Gが振り向くとそこにはアルガティア一行が居た。
どうやらアルカトラスとの話は終わったらしい。

「あの2人、止め切れる?」

Gはやり合うナロニィとオージェを指差し、アルガティアに言う。
アルガティアは数秒の沈黙の後に頷き、緑の毛の生物を2人の方へけしかける。

「さっきのはイファルシア。草のカーバンクルよ」

「へえー」

ややめんどくさそうにしているイファルシアを見ながら、Gはどうなるのかと気になっていた。
するとイファルシアはスッとオージェの背後を取ると、蔦を出して両手拘束すると

「はいはいそこまで、これ以上庭園荒らしちゃダメ」

と言う。
そしてそこへナロニィの振り下ろした一撃がヒットして勝負は付いた。

それから2時間後。
アルガティアがナロニィとオージェに名乗ったり、イファルシア達を紹介したり、イファルシアがナロニィとオージェに荒らした庭園の修復をエゼラルドと共にやらせたりして今に至る。
ナロニィはイファルシア、フィルス、エゼラルドを見てかわいいと目を輝かせていたが、イファルシアからの印象はあまり良くなかった。
それもそのはず、オージェと決闘して庭園を穴だらけにした上に、植え込みの植物まで荒らしてしまったからだ。
それでも、一生懸命修復していたためか時間が経つにつれてイファルシアからの印象は改善されて行った。

「何か引っかかる」

「え?何ですか?」

また一息ついていると、アルガティアが気になる一言を言ったのでGはえ?と返す。
アルガティアは紅茶のカップを置くと、Gにこう言う。

「それだけ強力な封印をかけられていて、何も支障がないのが引っかかるの。記憶抜けは除外するにしても」

封印と聞いて、Gはぽかんとする。
なぜならば、Gには封印に関する記憶まできれいさっぱり抜けているからだ。
それを聞いたオージェは、どういうことだとアルガティアに前のめりになって聞くも、エゼラルドに頭突きをされる感じで制された。

「言わない方がいいことがあるし、知らない方がいいこともある。必ずしも真実を知るのがいいとは限らない」

一方、ナロニィはイファルシアにフィルスと遊んでいるのでこちら側の話は耳に入っていない。
アルガティアの必ずしも真実を知ることがいいとは限らないという話を聞いて、エゼラルドに頭突きをされる感じで制されていたオージェは

「それは主観だろう?私はどんなリスクがあろうがGに関する真実は知りたい。何が分かった?」

どんなリスクがあろうがGに関する真実は知りたいと言い、何が分かったのかと聞く。
アルガティアはそれに対しては

「相当強力な封印をされていることくらいしか分からない。それ以上探ろうとすると多分Gの命に関わる。この手の封印はそれなりの防衛機能がついてる」

相当強力な封印がされていることしか分からないと話す。
オージェは、それなりの防衛機能という言葉に反応して

「それはどういうものだ?私とて魔法を使うので気になる」

それがどういうものなのかを聞く。
それに対してアルガティアは、エゼラルドの毛を撫でながらこう答える。

「簡単に言うと、封印をかけた者以外が封印を探ったり解除しようとしたら被封印者の脳が焼かれる。封印により記憶抜けが生じている場合はほぼ確実に」

完全にほっぽり出されていたGがここで

「よく分かんねえけど、俺はこのままの方がいい気がするな。アルガティアの言うとおり、知らない方がいいのかも知れない」

自分はこのままでいいときっぱり言う。
それに対しオージェはそれはならん云々と反論するも、アルガティアに

「他者との関わりで重要なことの一つに、自分の価値観を相手には押し付けないというのがある。あなたはそれを守ってる?」

などと言われ、オージェは何も言い返せず悔しげに黙り込む。
ここまで来て、なおもナロニィはフィルスとイファルシアと遊んでいて、こちらとは別世界を作り出していた。

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小説(交流) |

星を見る

ある晴れた夜のシアの塔。
そこでエシュフィルトとシアが星を観察していた。
なぜ星なんかをと思うかもしれないが、時折今までは見えなかった星が見えたり、逆に今まで見えていた星が見えなくなったりすることがある。
これは、今までに繋がったことのない世界とこの世界がリンクされた時や、リンクしていた世界が一方的にリンクを解除、あるいは世界が崩壊したなどといった事が起きたから生じる現象である。

「うーん、特に変化無しかしら?」

自分の大きさに合わせて作られた望遠鏡で星を見ながらシアがそう呟く。
その横では、エシュフィルトが自分より一回り大きい本を広げて記録を担当している。
なお、エシュフィルトがここへ来る前は、シアが自分で片手間に魔法で記録していたのだという。
一体どういう感じで書いていたのかと想像したエシュフィルトだが、一切この本を見ずに望遠鏡だけを覗いているシアの姿しか浮かばなかったので、そこで想像するのをやめた。

「えーっと、ちょっと記録してもらえる?」

その直後、シアからいきなり記録してと言われ、エシュフィルトはインクの要らない羽ペンを構える。
そして次の瞬間、シアが早口で消えている星を伝えたのでエシュフィルトはそれを別の紙に速記。
次にシアはまた早口で昨日まで無かった星を伝える。
これもエシュフィルトは同じ紙に速記した。
無論、速記してはいお終いではない。
これをちゃんとした文にしてまた本に記録しなければならないのだ。

「消えてた星が12、新たに出現した星が20…」

正確に記録しないと後々面倒なことになるので、エシュフィルトは本に記録した全ての星に間違いがないかを確認。
自分の目で間違いがないと判断したら、今度はシアによる第三者チェック。
自分では正確に記録したつもりでも、他者が見たら間違っていたというのはよくある話である。
シアのチェックの結果は、問題ないとのことだった。

「一つ気になるんですけど、パラレルワールドが出来た時って星増えるんです?」

本と望遠鏡を片付けるシアに、エシュフィルトはふとした疑問を投げつける。
それは、パラレルワールドが増えると星も増えるのかというもの。
シアはこの問いに次のように即答。

「よっぽどの事由がないと増えないわ、その世界の存続かなんかに関わるとかのレベルじゃないと」

それにエシュフィルトはふーんとあまり納得がいかないような返事を返す。
さらにエシュフィルトはこんなことも聞く。

「このリンクしている世界を表す星って、数に限界値はあるのかな?あと明るさが違うのはなんで?」

シアは限界値という言葉に少し困りながらも、次の返事を返す。

「私も限界値は知らないけどあるみたいよ?賢竜が理論的な限界値出してるけど、兆以上だったしら。それから、明るさが違うのはどれくらい繋がりが強いかや繋がっている期間が長いかでも変わるわ。地球を示してる星なんて月ぐらいの明るさはあるし」

エシュフィルトは地球を示す星が月ぐらいに明るいと聞いて、試しにその星を探してみた。
すると、月から少し離れたところに同じくらい明るい星が数個あるのが見えた。

「そうそう、あの星々よ。なんで数個あるのかは私も分からないけど」

なんで数個あるのか分からないと言ったシアに、エシュフィルトはなんで分からないの?と揺さぶりをかけようとするも自制。
その後もいくつか月並みとまではいかないものの、それなりに明るい星を見つけてはあれは何あれはこれといった感じでシアとエシュフィルトは遊んでいたという。

そしてそんな中、いきなり一瞬強く輝いたかと思えば、次の瞬間には消えていた星をエシュフィルトがたまたま見つけてシアに言うと

「ああ、星が爆発したってことは世界がまた一つ崩壊したのね」

あまり気に留める様子がない口調でそう呟いた。
エシュフィルトはそんなに気に留めないのねと言うと、シアはそれにいちいち憂いていても仕方ないでしょうと返す。

「ドライな時はドライなのねシア様って」

「そうでもしないと精神面で持たないわ」

ドライな時はドライなのねとエシュフィルトに断言されたシアは、そうでもしないと精神が持たないと返す。
そんな風に返されたエシュフィルトは、シア様ってやっぱり時々よく分からなかったり理解できないところがあるわと言った。

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小説(一次) |

転送先で一騒動

ドランザニアへ何らかの原因でパスポートなどなくしてやって来る者は年に数百人単位で居るという。
その主な原因は何らかの魔法に失敗して転送されてきたり、時空の歪みをくぐってここへ来てしまったなど様々。
たいていそういう場合は罰されることはないのだが、例外としてあからさまにこの世界に害を為そうとする者ならばそれはそれで罰せられる。
さて、今日も誰かが魔法に失敗して転送されてきたようだ。

セイグリッド、シアの塔の中間地点。
様々な工具や魔道具片手に、ゴルダはこの塔の中に隠されている異界とのゲートの監視装置の整備をしていた。
少し前までは専門の整備員が居たのだが、数年前に逝去して以来シアは新たな整備役をアルカトラスに頼んで任命もせず、今の今まですっぽかしていたという。
そして、ついに監視装置がおかしくなり、その尻拭いをゴルダがしているのだ。
幸いにもなぜかこういった装置の知識があったゴルダは、たやすく故障個所を発見し、現在直している途中。

「数年整備保守してないだけでここまでガタ来るのか、やれやれだぜ」

工具と魔道具を交互に使い、要修理個所を難なく直していくゴルダ。
そして、ようやく監視装置を直し終え、テストだと魔力供給を再開した瞬間。

「うわー」

「おちるー」

監視装置が誰かを転送させてきたらしく、人影が2、3人ほど下の方へ落下していくのが見えた。
その際何かを言っていたが、ゴルダには理解できない言語だった上に何もしない。
なぜなら、この塔にはシアが落下防止用の魔法をかけてあるので転落からのお陀仏というのはまずあり得ない。

「また面倒事が起きそうな予感がするな」

ゴルダはそう言って監視装置から離れ、落ちていった人影を追って梯子を下りる。
一番下では、さっき落ちてきたであろう3人がここはどこだというようなことを言っているが、ゴルダにはそのままでは何を言っているかが理解できない。

「1人は人間、1人は不明、1人は…獣人か」

その3人に気づかれないよう忍者のごとく上から様子を伺ったゴルダは、3人の種族をそれぞれ把握。
そのまま上へ上がってシアに報告しに向かう。
上のほうでは、シアがああでもないこうでもないと監視装置の設定をいじくっていた。
ここの監視装置は、今シアが持っている本が制御盤のような役割を果たし、それで停止や稼働、そのほかの設定などを行う。

「シア、3人だ。今この下に居る」

「言わなくても分かってるわよ、そこから動くな言ってるからここ連れてきて?」

3人居ると報告したところ、シアは制御用の本から目を離さず、ここへ3人とも連れて来いと言い放って設定いじりに戻る。
なお、エシュフィルトは監視装置の魔法が最も関わる部分を現在シアと調整中なのでここには居ない。
ゴルダは結局こうなるかと首を横に振り、梯子を下りた。
再び塔の一番下へと降りると、例の3人はゴルダを見て身構えたので思わずゴルダも腰の剣を抜きかけたが自制を利かせて手を退けた。

「ついて来い」

右手の人差指と中指を地面から梯子、そしててっぺんの方を指してからその指を手前に動かすというハンドサインで3人について来るように言うゴルダ。

「ついてっちゃっていいの?」

犬獣人と思わしき少女が何か訝しむような表情をながら何か言ったが、ゴルダはそれでもハンドサインでついてこいとだけ言う。
一方、角ありの魔族と思わしき女は、ずっとゴルダを警戒しているようで、いつでも武器を引き抜けるようにしている。
もう一方の首輪を装備している少年と思わしき者は、能天気な表情で緊張感が感じられない。

「雰囲気的にまだ仲間はいるようだな、この首輪した少年。能天気な表情だが目がそうではない。この魔族っぽい女は相変わらず俺を警戒、と。この犬獣人の少女は半分警戒、半分興味津々か」

勝手に3人を分析しながら、ゴルダはそのまま塔のてっぺんへと戻った。

「その3人がそうね、他には居なかった?」

「居ねえよ」

3人をシアの所へ連れていき、他には居なかったかと聞かれてゴルダは居ねえよと即答。
シアは翻訳魔法を使って3人と会話をまともにできるようにして、どうやってここまで来たのかを聞く前に名を名乗るように促す。
そして、3人はそれぞれ名をG、ナロニィ、オージェと名乗る。
ちなみに、能天気そうに見えたが目がそうではなかった首輪少年がG、犬獣人少女がナロニィ、魔族と思わしき女がオージェだ。
その後で、シアはGたちにどうしてこの世界へ来てしまったのかを聞く。
こうやって原因を探さなければ、送り返すためにその世界を調べる際に面倒事が起きる可能性が高いからである。

「あー、うーん。なんだっけ?ナロニィ?」

「すっごく強い勝ち目がないモンスターに追われてて、オー…シェ?がたまたま使った魔法が失敗したんじゃなかったかな?」

「なっ…この私が魔法をしくじるなどありえんそれに私の名前はオージェだ」

魔法の失敗というワードにピンときたのか、シアは1人納得したように頷いた。
その横では、オージェとナロニィがバチバチと険悪ムードに陥っていたのでゴルダはGに

「この2人はいつもこうなのか?」

と聞く。
するとGは

「ナルロィは名前覚えるの苦手だからなあ、あはは…そうだよ」

ナロニィが名前を覚えることが苦手だと言い、そうだよと答えた。
そしてさらに、ゴルダはGに対してこんなことを聞く。

「お前、仲間はまだいるんじゃないのか?そのオージェが使った魔法で離ればなれになっているとか?」

それに対してGは、のほほんとした様子で

「うんまあね、でも大丈夫だと思うよ。うまくやり過ごせているはずだから」

大丈夫だろうと楽観的な返事を返した。
その後ろでは、互いに武器を構えて一戦やりそうなナロニィとオージェを、シアが前足で遮って何とか止めている。
下手に自分が手を出すまでもないだろうと、ゴルダは一瞬だけ見て無視を決め込む。

「なぜ私の名前が覚えられん!?私の名前はオージェだ!」

「だーかーら、覚えるの苦手だって言ってるじゃない。オーチェ」

「またまた間違えおって、許さん!」

シアの前足での遮りを振り切ろうと、互いに武器を振り回すナロニィとオージェを、シアは自分の毛の中へ2人を埋め込んだ。
もはや、これはシアの得意技とも言える。
無論、不意打ちだったために双方ともかなり驚いていたがすぐに大人しくなったかに思えたが、オージェだけはシアの属性を察したのか、離せと必死だ。

「ナロニィよりもふもふだね、あの竜」

「あれでも一応この世界の生の神なんだがな」

完全に虜のナロニィに対し、オージェだけはものすごく暴れているのを見ながらGとゴルダはそんな会話を交わす。
なおこの後Gたちはどうなったのかというと、シアが出身世界をすぐには割り出せないなどと言いだし、数か月こちら側で暮らす羽目になったとか。

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小説(交流) |

真夏の氷牙

ドランザニアの氷竜の多くは、氷牙という特異的体質を抱えている。
これは、個人差はあれど噛んだもの、あるいは牙に触れたものすべてを氷り付けにしてしまうという体質で、場合によっては対象が凍って砕け散る程度にまで凍らせるものもいるという。
そして、かつて最もその特異体質の力が強い者がいた。
それは、氷竜国リヴァルスを建国した氷牙竜リヴルーテだ。
現国王リヴァイドの祖父に当たるような存在で、それこそ噛んだもののほぼ全てを砕け散る程度にまで凍らせることができたという。
その血を引いているはずのリヴァイドも、一応氷牙持ちなのだがリヴルーテほどではないとされている。
だが、血を引いていることだけの事はあり、何かの拍子にリヴルーテと同じ力になることも多い。
例えば、普段0度から上に気温が上がることのないリヴァルスが20度近くまで上がるというとんでもない日になった時などだ。

「うーん、暑い」

外から入ってくる暑い風を受けながら、リヴァイドは書斎で仕事をしていた。
今日はドランザニア側から異常に大きく、かつ強力な高気圧が入ってきてリヴァルスを数十年に一度とも言える猛暑日にしている。
現在の時刻は10時ちょっとを回ったところだが、リヴァルスの気象観測所はこの時点で気温が20度を超えたと発表しているそうである。

「ぬっ、汗で書類がダメになるところだったな」

腕から汗が垂れているのに気付き、リヴァイドは慌てて側近が汗を拭くようにと置いていったタオルで汗を拭く。
城の中はそこまで暑くないにも関わらず、なぜリヴァイドは汗をかいているのか?
それは単純解明な理由で、外から入ってくる暑い風が城内の空気を押しのけ、一気に気温を上げているからだ。
さすがにこれだと暑くなるのは無理もないだろう。

「あっちい」

氷結晶で作られた、常時冷たいグラスに入っている茶をリヴァイドが飲もうとした時である。
どういうわけだが中に入っていた茶があっという間に凍って飲めなくなってしまったのだ。
これにはリヴァイドも、どういうことだとグラスを覗くがやはり茶はグラスの中でカチンコチンに凍り付いている。

「まーた氷牙の力が戻ったのか、面倒だな」

リヴァイドはそう呟きながら、無理やり凍った茶をグラスから出して氷でも食べるかのように噛み砕いて飲み込んだ。

その後も、何事もなかったかのように仕事を続けるリヴァイド。
だが氷牙の力が強くなったせいか、欠伸をするだけでもそこそこに冷えた空気が口の中へ入ってきた。
なお、これはこれで眠気も覚めるだろうと、リヴァイドはそこまで気にはしていなかったが。

「暑いでしょうからアイスお持ちしました陛下」

ここで、アイスを持って従者が入ってきたのでリヴァイドはやったぜと言わんばかりの顔をして

「ありがとうな、気が利く奴は好きだ」

などと従者を褒めてやる。
従者が出て行った後、リヴァイドはさて食べようとスプーンを手にアイスを食べようとしたのだが

「氷牙のせいでアイスが岩みたいに固くなったか、どこまでもめんどくさい特異体質だ」

牙に微妙にアイスが触れ、岩のようにさらに固く凍ってしまった。
だがそれでもお構いなしにリヴァイドはアイスを無心で食す。
食べ終わる頃には、さらに凍って固くなったアイスのせいでやけに牙が痛くなっていたとか。

「どういうタイミングでこの氷牙の力が強まるか分からないんじゃな」

牙をいじりつつ、リヴァイドは外から入ってくる暑い風に悩まされながら今日の仕事を終えた。
そして夕食の時間。
暑さのせいでそこまで食欲がなかったリヴァイドは、野菜だけを食べていたのだが、夕食の時間になっても氷牙の力は弱まらず、牙に野菜が触れるだけでこれまた昼間のアイスのような固さになった。

「かってえ、食べれないことはないが」

なんだかんだ文句を言いつつも、夕食に出された野菜だけはしっかり食べきったリヴァイドであった。

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小説(一次) |

水面の葉の上での食事

猛暑が猛威を振るうのは、スリュムヴォルドとて同じである。
潮風が湿った風を運んで来て、湿度を上げるので猛暑日ともなれば湿度が80パーセント台に達する事もよくある。
そのため、スリュムヴォルドの猛暑日はいかにして湿気を追い出して涼しくするかが重要なのだ。

そんな猛暑日という名の熱中症警報が、スリュムヴォルドにもある気象観測所から出されたある昼のスリュムヴォルド城。
現在の城内の気温と湿度は高いところで35度と79パーセント。
もはやどうにかしないと中に居ても熱中症になってもおかしくない状態の中。
巨大な池を構える城の庭園では、皆が皆水場で涼しもうとしている。
そんな池の真ん中の普通では考えられないほどに成長した巨大な蓮の葉の上。
その上で、薄緑色のショートヘアに、儀礼正装をしている女性が従者と思わし者たちとその他もろもろと冷やしそうめんを食べていた。
ちなみにこの女性、エルフィサリドが人に変身したときの姿で途轍もないレアな姿らしい。

「あんたねえ、よくその姿でそんなこと出来るわねえ。あっでも冷やしそうめんはおいしい」

そんなエルフィサリドの右横で、ネルシェはなんだかんだ文句を言いながらも冷やしそうめんをすする。
今エルフィサリド達が座っているこの蓮の葉、イファルシアが気まぐれに出した蓮の種を池に投げ入れたらここまで成長し、毎年このサイズの蓮の葉ができるという。
だが、これだけの大人数が乗って大丈夫なのかと思われがちではあるが、この蓮。意外と重いものを乗せても葉が破けたり沈んだりしないという。

「もう少し静かに食え」

ほとんど音を立てずにそうめんをすすりながら、ゴルダは目の前で豪快な音を立ててそうめんをすするネルシェに言う。
一方、その横のウラヘムトとアルガントはまともにそうめんを口にしてない。
どうやら、そうめんそのものが2人の口には合わないようだ。
エルフィサリドの左横に座っているシスイは、やたらと薬味をめんつゆの中に入れて、ネルシェほどではないにしろ、音を立ててすすっている。
ゴルダから見て、左斜めに居るニフェルムはなぜかめんつゆだけをちびちび飲んでおり、これまたそうめんそのものには手をつけてない。

「あらあら、食べないの?」

一向にそうめんに手をつけないウラヘムトとアルガントを見かねたエルフィサリドが、2人に声をかける。
時折ゆらゆらと蓮の葉が揺れる度に、同じように揺られながら2人は

「口に合わない」

と同時に言った。
エルフィサリドはそれに困ったような顔をしてゴルダにどうするの?と聞く。
それにゴルダは知らんと即答し、ぬるくなっている緑茶をぐいと飲む。

「カツオと昆布のだし使ってるこのめんつゆおいしい」

ちびちびめんつゆだけを飲んでいたニフェルムの一言に、シスイは

「なぜそうめんではなくめんつゆなんだ?理解し難いわ」

ニフェルムに理解し難いと一蹴。
だがニフェルムはそれでもめんつゆだけを飲んでいた。

やがて、そうめんも全て食べ尽くし、空になった皿などが下げられ、今度は水ようかんが出された。
この水ようかん、エルフィサリドとシスイの手作りというから驚きである。
シスイはここへ移住して来て以来、他者との関わりの技術以外にも料理などの技術も数多く身につけている。
それもこれも、エルフィサリドがその都度従者などに言ってシスイに学ばせたからだという。

「まずいなんて言わせないから」

そう自信満々に言うシスイをよそに、ゴルダは水ようかんを口へ運ぶ。
普通の水ようかんよりねっとりしてはいたが、何も食べれないわけではない。

「悪くはないな」

とゴルダが言った横で、ウラヘムトは甘すぎと言いたげにそぐわない渋い顔をしていた。
一方アルガントは、何か変なものでも入ってるんじゃないかと訝しんでいる。
そのアルガントの態度を見たシスイはこう言う。

「変なもんなんか入ってないわよ、エルフィサリドと一緒に作ったんだし」

それを聞いたアルガントは、1つ取って食べてみた。
ウラヘムトが言ってたように、かなり甘ったるいが、それを除けば申し分ない出来だ。

「おいしー」

「でしょ?」

アルガントの一言に、シスイは調子に乗ったような感じでそう言う。
一方ニフェルムは何も言わずに緑茶と共に食している。
こうして、なんとも言えない蓮の葉の上での食事は終わったのだった。

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小説(一次) |

真夏の砂漠の中で

連日の猛暑で、大陸の各地で最高気温記録を更新し続けているさなかのアストライズ西部の砂漠地帯。
このアストライズの砂漠は少し特殊で、地表数メートルほどにしか砂がなく、それより下の地層は砂岩や普通の岩石で構成されている。
それでも腐っても砂漠というべきか、雨が降ることは全くない。
たまに降ることもあるが、それは水か風属性の魔法の使い手が無理やり雨を降らせているからだという。
そんな砂漠の中を、地球の中東諸国の男物の服装をした者が運転するジープに乗り、ゴルダは砂漠の中を移動していた。
ゴルダもまた同じような服装をしていたが、その下はいつもと変わらぬ装備をしている。

「あとどれくらいだ?」

「約10分といったところでしょうかねえ」

無慈悲に照りつける太陽を手で仰ぎながら、ゴルダは運転手にあとどれくらいだと聞く。
運転手は、約10分と答えて運転を続ける。
なぜゴルダがこんな場所に来ているのかというと、アストライズのこの砂漠ではいくつかの石油採掘所が存在する。
その石油採掘所で石油をくみ上げるための穴を掘っていた地竜が、次々と謎の体調不良を訴えて仕事ができない状況になっているという。
採掘所にいる幻想獣医師もとい竜医も匙を投げている状態なので、ゴルダがこうして呼ばれたのだ。

「これ以降はちょっと車で進むのが厳しいので歩いてもらえますか?ここから南西に3分ほど行った所に採掘所があります」

それから15分後。
ジープは採掘所まであと少しというところで停車、ここから先は車で進むのが厳しいので歩いてほしいとのことだ。
ゴルダはなんなら移動用にラクダとか用意しとけよと思いながらも、運転手にまた後でなと声をかけて採掘所へ。

「ここが例の採掘所か」

運転手の言った通り、南西に2分ほど歩いたところにその採掘所はあった。
だが、地球の採掘所や石油プラットホームように巨大な機械などが立ち並んではおらず、パイプや石油をためておくものであろうタンクがいくつか並んでいるだけである。

「やはり魔法によるくみ上げなんだろうな」

ゴルダはそう言うと、まっすぐ掘削所の医療室へと向かう。
医療室では、穴掘り用の4、5メートルの大きさの地竜数匹が横たわってうなされていた。
作業員らしき者たちが地竜の看病に当たっており、ゴルダはその横を通り過ぎて奥の部屋へ。
奥の部屋では、ここで唯一と思わしき竜医がカルテを見て頭を抱えていた。

「症状はいつからだ?まず熱中症ではないだろう」

ゴルダは挨拶もなしにその竜医に症状はいつからだと単刀直入に聞く。
すると、その竜医はビクッとした後にゴルダの方へ振り返えると

「ああ、どうも。来てたんですか…自分も熱中症ではないと確信はしてます。それと症状はおとといの穴掘り作業が終わった後からです」

症状はおとといの穴掘り作業が終わった後からだと答える。
ゴルダはおとといからの症状というのに、焦点を当てて考えてみたがいまひとつピンと来ないので

「急性石油中毒は疑ったか?」

急性石油中毒を疑ったかと聞く。
だが、竜医は首を横に振って

「急性石油中毒かと思ってすぐ検査しましたが、結果は陰性。急性石油中毒ではないです」

それを疑って、一応検査したが結果が陰性だったので違うと断言した。
熱中症でもなければ、急性石油中毒でもない。では何なのか?
ここでゴルダは再び、おとといの穴掘り作業終了後に症状が現れたという点に着目し

「カルテを見せろ。それからその掘った穴というのが見たい」

カルテを見せるように言った後、おととい掘ったという穴を見せるように言う。
竜医は分かりましたと頷き、ゴルダにカルテを渡し、担当に話をしに行った。
1人部屋に残されたゴルダは、カルテを注意深く確認。
すると、その中から気になる症状を発見した。

「若干の呼吸困難と発熱、目の焦点が合わない…やはり穴を調べるべきだな」

その症状とは、若干の呼吸困難と発熱に目の焦点が合わないというもの。
これらからゴルダは何を察したのだろうか?
やがて、竜医が戻ってきて担当の竜使いを連れてきた。

「こちらです」

ゴルダは竜使いの後を追い、その穴へと向かう。

医療室を出て10分。
その掘った穴と思わしき場所へゴルダは到着。

「何があるか分からないので、とりあえずこの近辺は立ち入り禁止にしています」

竜使いから説明を受け、ゴルダは突然手近なパイプにロープを結ぶと穴へ降りる準備を始めた。
そして、竜使いが止める間もなくゴルダは穴の中へ。
そのまま竜使いが待つこと30分。
ゴルダは何かを回収して穴から上がってきた。
それは、瓶に入った石油のようでそうではない紫っぽい液体。

「これがなんだか分かるか?」

ゴルダは竜使いに聞くが、竜使いはさあと首を横に振る。
するとゴルダはその瓶の蓋を開けて竜使いに嗅がせた。

「げほっ…まさこれ汚染液体マナですか?」

「その通り、事前によく調べなかったのか?」

そう、この紫っぽい液体は汚染された液体マナなのだ。
普通の液体マナはもっと透明度が高い液体で、時折白く光るのが特徴。
だが、汚染されるとこのような色に変色し、闇属性など汚染マナへの耐性がないものの肌に触れたり、気化したものを吸ったり、飲んだりすると体に様々な悪影響を及ぼすのだ。
この汚染マナによる身体への害などは昔からあるので、今ではちゃんとした治療法も多数存在する。

「あの竜医に言っておけ、地竜の体調不良の原因は汚染マナのせいだとな。あと今度からは汚染マナ溜りがないか調べてから掘るように。それから別途加算しておく」

一言で竜使いに伝言をまとめて言うと、ゴルダはそのまま帰ったという。

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小説(一次) |

その能力、走りのために

ウラヘムトが偶然首輪を外し、また能力を行使できるようになったものの、エシュフィルトの手でより強力な制御機能を持った首輪を付け直されてから早1週間。
さすがに観念したのか、ウラヘムトはあれ以来外すことは無くなったものの、アルガントとの険悪関係は相変わらずである。
ゴルダはこれには特に言及はせずに、様子を見ていたのだが、だんだんと放っては置けない状況になってきてた。
そんなある日、エシュフィルトからメールが入る。
メールには、シアがウラヘムトに用事があるので連れて来いと言っているという内容のもの。

「なんとなく察しが付くな」

そのメールを見て、ゴルダはそう呟くとウラヘムトにアルガントを引っ張ってシアの所へ。

「あらあら、来るのが早くて助かるわ」

エシュフィルトがメールを送ってからわずか30分足らずでやって来たゴルダに、シアは関心するように言う。
ゴルダはそれに何を返すわけでもなく、いつもと変わらぬ無表情な顔でシアを見ている。
その一方、アルガントはエシュフィルトに抱っこされていたがウラヘムトはゴルダの背後に隠れてシアを威嚇している。
シアはそんなウラヘムトにやれやれねと言いたげな顔をして

「私の手伝いしてくれるなら、その制限を一時的にでも解除できるようにしようと思ったけどその態度じゃ無理ね」

などと、さりげなく飴と鞭を繰り出す。
それを聞いて、ウラヘムトはピクリと耳を動かして反応した。
どうやら、シアのやり方はうまくいったらしい。

「…何すればいいんだよ、ヘルヘムスのところ戻って喧嘩売って来いとかは嫌だからな?」

何をすればいいと、あからさまに人に物を聞く態度ではない態度で聞くウラヘムトに、シアはこう答える。

「あなたも知ってるとは思うけど、私にも管理できる魂には限度があるのよ。だから管理から漏れてさまよう魂が必然的に出てくる。それは分かるでしょ?」

シアの返答に、ウラヘムトはそりゃそうだろうなと答えて耳を掻く。
アルガントはそのウラヘムトの態度に納得がいかないのか、手裏剣を投げつけようとしたがエシュフィルトに制された。

「要するに、管理漏れの魂をかき集めてここに連れてこいってか?その話乗った」

「理解が早いわね、そういうこと」

ウラヘムトが管理漏れの魂を集めてくればいいんだろ?と聞いたついでに話に乗ったという。
シアは理解が早いわねと言うと、ウラヘムトの首輪の制御を一時的にかつ能力の使用を制限して解除してやった。

「特に場所は指定しないから自由にやって。それから、今日1回限りじゃないってこと、解除するにはしたけど限定的かつ今日1日限定の解除ということは頭に入れておきなさい」

シアから注意を受け、ウラヘムトは急に人が変わったように敬礼し、さっさと行こうと言い出した。
これを見たゴルダはウラヘムトのことを七変化野郎と皮肉りながらも、アルガントとエシュフィルトとウラヘムトを負う。

一行がやって来たのは、ドランザニアとアストライズの国境を隔てている山のふもとの小さめの樹海。
特に霊が出るという噂はないのだが、ここは一応危険な野生動物が多く出没する場所である。

「地縛霊化した魂からかき集めるとはどういうことだ?」

ウラヘムトが集めようとしているのが、野生動物によって殺され地縛霊と化している魂だと気づき、ゴルダはなぞぜそれから集めるのかと聞く。
それにウラヘムトはこう答える。

「地縛霊になってからの期間が長いほどその場所に魂が縛り付けられて、引きはがすのが難しいからさ」

「浮遊霊とかの魂は簡単に集まるからね、片付けるなら厄介なところからって感じかな?」

片付けるなら厄介な所から?と聞いたエシュフィルトに、ウラヘムトはそういうことと返す。

それから30分後。
どれくらい歩いたのかは分からないが、突如としてウラヘムトがゴルダの頭の上でここで止まれと言ったので、ゴルダはその場で立ち止まってウラヘムトを頭から下ろす。
下ろされたウラヘムトは、犬が匂いでも嗅ぐように鼻を鳴らしながら忍び足で前へ前へ進む。
そして、ちょっとした木の根が作り出した縦穴の中を覗き込んだウラヘムトは、ゴルダに穴の中へ下ろせとハンドサインを出す。
ゴルダはそれに頷くと、どこからかロープを出して木の太い幹にすぐに解けるが頑丈に結んでそれを掴むと、ウラヘムトに頭に乗れと言う。
ウラヘムトは迷わずジャンプして頭に飛び乗り、そのまま穴の中へ。

「5、6体で固まってるのは珍しいなあ」

穴の中は普通なら暗くてよく分からないが、ゴルダとウラヘムトは暗視でもしてるかのようによく見えるので、その光景が明かりなしによく見えた。
その様子とは、そこそこの人数の骨と狩猟用の狙撃銃の残骸らしきもの。
死後何年なのかはわからないが、骨は風化が始まりかけていた。

「はいはい、こんな場所居ても何の得にもならんぞ」

そう言いながら、ウラヘムトは草でもむしるような動作をして、その場にとどまり続けている地縛霊と化した魂を無理やり引きはがしていく。
ゴルダはそれを結局は脳筋的やり方かと思いながらも、ウラヘムトが確実に回収し終えるのを待つ。
なかなかにしぶとかったのか、ウラヘムトがすべての魂を引きはがして藁のように束ね終えたのは、開始から10分少々経過した後。
その魂を持って先にウラヘムトを穴から上がらせたゴルダ。
だが、いざ自分が昇ろうとしたときにウラヘムトがロープを解いてしまい、ロープを使わずに自力で穴から這い上がる羽目になった。

「このアカポンタンが」

「いってー」

穴から這い上がり、エシュフィルトがウラヘムトから魂を受け取ってシアの所へ送り終えたのを見計らい、ゴルダはウラヘムトに1発だけげんこつを食らわせる。
かなり手加減したつもりだったが、ウラヘムトはやけに痛そうな顔をしていた。
その後も一行は樹海の中をさんざん歩き回り、少し暗くなる時間までずっとシアの管理から漏れている魂を探して回り、塔へ帰る直前までに集めた管理漏れの魂は3桁を達成。

「多すぎかな?」

集計をひそかに取っていたアルガントの一言に、ウラヘムトは仕方なかろうと返す。
それもそのはず、この世界に存在する魂はそれこそ天文学めいた数だ。
それをシアが1人で管理するなど、神であってもなかなかに難しいところである。

「なんで冥府に魂送りたくないんだ?管理しきれない分はヘルヘムスにくれてやってもいいとは思うんだが」

帰り際、ウラヘムトはふと疑問に思ったことをシアに聞く。
シアはそれに対しては

「冥府とて高次元世界よ、アルカトラスがアルシェリアと絶縁している以上はヘルヘムスとて例外じゃないわ」

と具体的な理由は濁して答えてはくれなかった。
ウラヘムトはふうんとそれ以上は問い詰めないといわんばかりに言うと、今度はシアから

「あなたこそ、なんでヘルヘムスの所戻りたくないの?」

と聞かれる。
ウラヘムトはこの問いへの返事に大いに困った。
ぶっちゃけた話では、ヘルヘムスの自分を含むしもべの扱いが荒いという点と、冥府に居ても退屈で浄化されそうというのが大きな理由である。
だが、本当の理由は自分以外の冥府竜を含むしもべが、シアの手で冥府の住人ではなくされたことへの始末書やら報告などがめんどくさいし、どんな罰を受けさせられるかも分からないからだ。
だが、ウラヘムトは最終的には

「戻ったらヘルヘムスに何されるか分からないから戻りたくはない。それでいいか?」

戻ればヘルヘムスに何をされるか分からないから戻りたくないと返した。
それに対してシアは、だったら冥印を消すかとからかうように言ってきたが、ウラヘムトはそれを拒否したとか

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小説(一次) |

ウラヘムトの恐るべき能力

ウラヘムトが突如として住み着くようなって2日。
特に何もやらかすことなく、ただマイペースに過ごしているのだがどうにも首輪が気になるようでしきりに外そうとしていた。
だが、その度に何らかのお仕置きが執行されるので、その度にやめてはまた外そうとするを繰り返している。
そして、今日はゴルダと氷燐が依頼で出かけていて家にはアルガントとウラヘムトしかいないという状況の中でのこと。

「ぐぬー」

「今度は何されるか分からないんだし、やめときなよ」

闇の魔法書を大人しく読んでいるアルガントの横で、ウラヘムトはどうにかしてこの首輪を外そうとしている。
アルガントはそれをやめておけと言うものの、ウラヘムトは聞く耳を持たずにカチャカチャと外そうと躍起になっていた。
そして、金具が外れかけた途端。
ウラヘムトの頭上に、小石ほどの鉄塊が落ちてきた。

「いてー」

「ほら、言わんこっちゃないじゃないか」

アルガントはその小石ほどの鉄塊を、何らかの魔法により紫色の何かへ変化させた。
よく見るとそれは、柴水晶であることが分かる。
この程度の錬金魔法ならば、アルガントでもたやすくできるらしい。
アルガントはそれをウラヘムトに投げつけ、自分はゴルダの自室へと引っ込む。
正直な話、アルガントはウラヘムトとは馬が合わないと確信していた。
なぜならば、ウラヘムトはこのようにしょっちゅう首輪を外そうとしてお仕置きされてはアルガントの集中を削いでいる。
しかもそれだけではない、度々アルガントの邪魔をすることもあるのだ。

「ちぇっ、つまんねえ奴」

ウラヘムトはそう言いながら、居間の本棚から力の制御に関する本を探し始める。
どんな手を使ってでも外すという考えは、いまだ改まっていないらしい。
こうやって本を探し始めたはいいのだが、どうにもゴルダが隠したらしく、それらしい本は見当たらない。
だが、一冊だけ本の後ろの隠されていた『アクセサリによる力の制御』という本を発見。

「あ、この本怪しいな」

そう言って、ウラヘムトはその本を開いた。
偶然なのかどうかは分からないが、ウラヘムトが開いたページは丁度首輪による制御に関するページ。
ウラヘムトはそのページの一文一文を読んでいき、一つ気になる呪文を見つけた。
その呪文の意までは汲み取れなかったが、おそらくこれが安全に外せそうな呪文だろうと思ったウラヘムトはその呪文を詠唱。
するとどうだろうか、カチッという音とともに首輪が外れたのである。
しかも、お仕置きが執行されることもなくだ。
これは完璧にシアの設定ミスに他ならないが、ウラヘムトがそんなことを気にかけるはずもなく、すぐさま自分の能力の制限が本当に外れたのかを確認する。

「見える、見えるぞ…あのシアが管理しきれていない魂どもが」

今ウラヘムトの視界には、無数の浮遊する霊魂が見えていた。
そう、これはウラヘムトの能力の1つ、浮遊する魂を視ることができる能力だ。
冥府竜たちは、この能力によりシアの管理しきれていない魂を視ることができる。

「さーて、冥府に送る能力はもうどうでもいいとして。どいつから頂こうかな」

今、ウラヘムトが言った一言の中に、ウラヘムトの残る2つの能力が記されていた。
まず1つは、冥府にその魂を送る能力。
これはそのままの能力で、冥府へ輪廻に乗り切れていない魂を送るもの。
もう1つの能力、これはとても恐ろしい能力で、シアがウラヘムトら冥府竜を危険視している最大の理由。
その能力とは、浮遊しているか生者にまだ乗っかっているかどうかにかかわらず魂そのものを食べ、我が物にしてしまうという能力だ。
実際、この能力で冥府竜に魂を食べられてもぬけの殻になってしまい、新たにシアが魂を入れる羽目になった者は少なくはない。

「お前に決めた」

ウラヘムトはその中から今にも立ち消えそうな魂を手で掴む。
その感触は、魂のなどによって異なるものの、大体は新雪を片手で掴んだ感触に似ているという。
そして、アイスを口に頬張るような形でウラヘムトはその魂を口に入れ、そのまま食べてしまった。

「苦っ、やっぱ魂化してから時間が経ち過ぎて崩壊しかかったのはおいしくねえ」

ウラヘムトが今しかた言ったように、一応魂にも味はある。
ちなみに、崩壊しかかった魂はとても苦いらしい。

一方ウラヘムトが何をしているかなど知る由もないアルガントは、ゴルダの部屋で今度は漫画を読んでいた。
読んでいる漫画はゴルゴ13という漫画。
時折ゴルダが面白いからと単行本を買ってくるので、アルガントはゴルダが読み終わった後にこうして読み漁ることが多い。

「?、なんだろこの嫌な予感は」

次のを読もうと漫画の本棚の方へ歩いて行った時、アルガントは妙に嫌な予感がした。
それも、ただの嫌な予感ではない、闇の者だけが感じる特有の嫌な予感だ。
アルガントは、今居間にはウラヘムトしかいないというのを思い出して扉の陰から居間を覗く。
やはり居間にはウラヘムトしかいなかったが、どうにも様子がおかしい。
その様子がおかしいというのは、首輪が外れ、目がどこか獲物を狙う獣の目になっているということだ。

「…うわ、どうやって首輪外したんだろう?」

アルガントは部屋の中へ引っ込み、どうするかを考える。
ゴルダは日付が変わるまでは帰ってこないと言っていたので、連絡できても今すぐには帰ってこれない。
となると、シアしかいない。
だが、首輪が外れているならシアは関知しているはず。ならなぜ来ないのか?
こうなれば自分がどうにかしなければと、アルガントは部屋を出てウラヘムトの前に立つ。

「な、なんで首輪外れてんの?」

少しおどおどしながら、アルガントはウラヘムトに聞く。
一方のウラヘムトは、ソファに社長座りしながらゴルダが買ってきたそんなに高くないワインを片手に何かを食べている。
アルガントには、それが魂であることは分かっていたのだがあえて何も言わない。

「何でって、そういう制御の本読んでて見つけた呪文使ったら外れたまでだよ。それよりお前闇竜だよな?魂食うか?」

ウラヘムトはそういう本にあった呪文を使ったらこうなったと言い、お前も食うかとアルガントに今しかた掴んだ魂を差し出す。
だがアルガントは首を横に振って

「血がいいのこっちは、それより早く首輪戻しなよ。シアが分からないわけないと思うからさ?」

自分は血がいいと言い放ち、シアが外したのが分からないとは思えないので早く首輪を戻すように言う。
だがウラヘムトは断る、と言ったら?とアルガントに聞き、また魂を頬張る。
このウラヘムトの態度に、アルガントはカチンときたのか手裏剣をウラヘムトへ投げつけた。
だがウラヘムトはそれを難なく白羽取りして

「ふうん?まあいいか」

と言って何かを引き寄せる仕草をとる。
すると、アルガントがウラヘムトの方へ徐々に引き寄せられていった。

「えっ…?」

「安心しな、闇竜の魂は俺にとっちゃ猛毒だ。食いはしない。だけど…ちょっとお前口うるさいんだよなあ」

ぽかんとするアルガントに、ウラヘムトはそう言って手裏剣を返す。
そして、ウラヘムトがアルガントの口を手で塞ぐような動作をした瞬間

「あーっ、やっぱり」

「うげぇっ!」

どこからともなくエシュフィルトがやってきて後ろからウラヘムトを抱き上げた。
どうやらシアに言われて来たようだ。
また首輪をされると直感的に思ったウラヘムトは、エシュフィルトの腕の中でじたばたしている。
だが、エシュフィルトはその体型からは想像もつかない力でウラヘムトを抱いて離さない。

「アルガントちゃん、その首輪取って?」

エシュフィルトに言われるがまま、アルガントはその首輪を取る。
すると、エシュフィルトはウラヘムトを一旦降ろしてからその首輪を杖で叩くと

「これで簡単には外れないわ」

と言って観念した様子のウラヘムトに首輪を再度付けて、アルガントにバイバイしてそのまま帰ってしまった。
アルガントはふうと胸を撫で下ろし、ゴルダの自室に戻って漫画をまた読み始めた。
一方のウラヘムトは、以前に増して強化された首輪を見て表情を曇らせていたという。

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小説(一次) |

定期診察-アルガティア

そこそこにうだる暑さのある日のことだ。
自分で従者に用意させた天然水仕込みの氷をナイフで削ってかき氷を作っているアルガティアの所へ、ルライエッタとエルリスが唐突にやって来た。
アルガティア何用かとは一言も聞かず、どこからか自分のカルテを出してルライエッタに渡す。
ルライエッタはそれを受け取ると、ざっと目を通してから

「健康状態に注意すべき点はなし。エルリス、記録しとけ」

「はいはい師匠」

注意すべき点ないと言い、エルリスに記録して置くように言う。
ちなみに、エルリスはルライエッタの弟子に当たる関係である。
そんなエルリスとルライエッタが今日は何をしに来たのか?
それはアルガティアの裏の性格を制御しているとある『鍵』の定期的な診察。
特にペースは決まっていないが、年に数回はこうやって訪れる。

「エゼラルド呼んでこい」

「ほいさ」

診察を始める前に、ルライエッタはフィルスにエゼラルドを呼んでこいと言う。
エゼラルドもこの『鍵』に深く関わっているので、アルガティアを見る時は必ずエゼラルドも見る。
なおエゼラルドが来る間、アルガティアはひたすらに氷を削っていた。
その量は、あからさまにエルリスとルライエッタの分まである。

「食べるでしょ?」

「ああ」

「いただきます」

もう削ってんだしという意味合いで食べるかと聞かれ、ルライエッタとエルリスはそれぞれ頷く。
そこへ、フィルスがエゼラルドを連れて戻って来たのでルライエッタはエルリスに自前のアルガティア用のカルテを開かせていつもの診察を開始。
診察とは言っても内容は簡単なもので、『鍵』に異常がないかというのと、エゼラルドがしっかりアルガティアの裏の性格を制御できているかを見るくらい。
それ以外には、アルガティアにこれと言った持病もないので後は城の専属医が記録しているカルテを見るだけでいい。

「ん…?」

「ああ、分かっちゃったんだ」

だが、今日は何かが違った。
エゼラルドとアルガティアのリンク状態を調べていたルライエッタが、突如首を傾げたのだ。
どうしたのかとそれを察したエゼラルドを尻目に、エルリスがルライエッタに聞くと

「どうにも、制御のリンクが独自の変化を遂げているようでな。ある程度の圏内ならば互いに離れていても制御に差し支えがなくなっている」

エゼラルドとアルガティアの制御のリンクが、ある程度離れていても一定の圏内なら制御に差し支えない状態になっているという答えを返されたのだ。
しかも、ルライエッタはそうなった原因が分からんと言い切る。

「分からんなら、里へ戻って考査すればいいんじゃないんですか師匠?」

「ヌウゥーッ」

里へ戻ってから考査すればいいのではとエルリスが言ったのに対し、ルライエッタはここで解を出したいと言わんばかりに唸る。
その一方、どこ吹く風のアルガティアは氷を削り終えてエゼラルドから適当に果物を出してもらってそれを盛り付けていた。
診察されているにも関わらず、こんなことをしているのは流石としか言いようがない。
一方まだ唸っているルライエッタとエルリスは、そんなアルガティアを一切気にしていない。
互いが互いに、いちいちそんな細かいことを気にしても仕方ないと割り切っているからだろう。

「食べないの?」

やたら果物を盛っただけのかき氷を食べながら、アルガティアはエルリスとルライエッタに聞く。
フィルスはなんだかんだで、何も盛ってない上にシロップすらかかってない削り氷だけを無心で食べている。
エゼラルドも同様だが、時折果物を氷に乗せて食べていた。

「少し頭冷やしたらどうです師匠?」

「お前には言われたくない台詞だ」

頭を冷やしたらどうかと言われ、削り氷だけが盛られた器を取りながらルライエッタはエルリスにそう返す。
なお、ルライエッタはどこからか自前のシロップを出し、それをこれでもかと言わんばかりにかけて食べていた。
一方エルリスは一切手をつけず、黙々とカルテに記入していたという。
やがてかき氷を食べ終えたルライエッタは、アルガティアとエゼラルドにこれはもう少し調べてみないと原因が掴めないと言ってその日は帰ったとか。

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小説(一次) |

ルナリアクラフト

ある日、ゴルダが先月の出費をパソコンで計算している時だった。

「ん?電気代が先月の倍近いな、どういうことだ?」

そこまで使った覚えは無いのに、電気代は先月の倍近く。
おかしいと思い、先月分の電気代の明細を見たところ

「契約容量が引き上げられてるからこんなに上がってんのか、しかし誰…あいつしかいないな」

契約容量が大幅に引き上げられていたので、基本料金も上がって電気代が高くなっていたのだ。
そして、こんなことをするのはただ1人。
ゴルダはやれやれと自室を出て最近増築した軽トラ用の車庫へ。
車庫には、軽トラだけではなく様々な工具が置かれている。
その中には溶接機などもあり、自動車修理工場さながらの設備がそろっている。
無論、これはゴルダだけが使っているものではない。
奥の作業台では、ルナリアが工具をあちらこちらに散らかし、がらくたから使えそうな部品を取り出している。
ゴルダとの契約により、機械をいじったりする知識や技術も備わっているのでこんな芸当も出来るのだ。

「おい」

「あ、おにーたん。高圧コンデンサ注文してくれた?」

やや呆れ口調でルナリアに話しかけると、高圧コンデンサを注文したかどうかとルナリアに聞かれた。
ちなみに、ルナリアは現在魔法式ではない電気式のレールガンを作ろうとしている。
ゴルダはそれに一応なと答え、先月の電気代の明細をルナリアに押し付け

「困るのは俺だぞルナリア。確かに容量は上げようと思ってたが俺に断りもなしに上げるのはいただけんな」

「いいじゃないー、どうせ使うんだし」

勝手に契約容量を上げるなと言ったが、ルナリアはいいじゃないと開き直る。
ゴルダはルナリアに開き直られ、余計呆れた顔で

「…もういい、とにかく今後は俺に一度相談しろ。いいな?」

「うんー」

今後は自分に一度相談するよう言って車庫を離れた。

「全く、闞沢に財産あるとはいえだな」

ルナリアに聞こえないところで呟きながら、ゴルダはずっと台所で洗い物をしているラトレナスの所へ。
ラトレナスの方は、ルナリアほど使うことはないが、時折かなり高い食材を買うことはある。
だがそれも本当に時折で、しょっちゅうというわけではない。

「これ砥いで」

背後から気配を消して近寄ったゴルダに、ラトレナスは包丁を3本渡して来た。
ゴルダはそれを取り、どこからか砥石を出してそれを研ぎ始める。
この3本は、ラトレナスがゴルダのいつも使っている包丁が合わないと言ったので新たに購入したもの。
ラトレナス用にと買ったが、ゴルダも使いやすいので最近はもっぱらこっちを使っている。

「こんなものか」

砥いだ包丁をラトレナスに返し、ゴルダはまた自室へ。
先月の出費の計算を再開したのであった。

それから1時間くらいが経過した頃。
車庫の方から溶接機を使う音やそれ以外の工具を動かす音が頻繁に聞こえてくるようになった。
最初こそは何も気にしなかったが、アルガントがうるさくてゲームが出来ないと言って来たので、ゴルダは車庫の方へ。

「おにーたん、見て見て。小型テスラコイル作ったよ」

何をしているのかと思えば、ルナリアはテスラコイルと呼ばれるとんでもないコイルを作り出していたのだ。
だが、それだけでは無い様子。
ルナリアが次に出したのは、足が異様に太くなったゴルダの片手ほどはあるコンデンサ。

「なんだこれは?」

「知りたいー?小型高圧コンデンサ」

ゴルダはこれら二つの部品から、ルナリアが今から何を作ろうとしているのかを察した。
そう、小型のレールガンだ。

「お前は作ったレールガンをどこに装備するつもりだ?」

「あれー」

作ったレールガンをどこに装備するのかと聞いたところ、ルナリアはゴルダの軽トラを指す。
さすがのゴルダもこれには頭が痛くなったのか

「やめておけ、そんな危なっかしいもの装備しないといけない場所へはこれでは行かん」

やめておけの所を妙に強調し、それほどの装備をしないといけない場所へはこれでは行かないと言い切る。
だがルナリアは、備えあれば憂いなしと言って譲ろうとしない。
最終的には、簡単に着脱可能にしろというのを絶対条件にゴルダの方が妥協。

「あいつのクラフトは何を生み出すかが分からんのが恐ろしいところだ」

意気揚々とレールガンを作っているルナリアを見ながら、ゴルダはそう呟いた。

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小説(交流) |

ウラヘムト=ヘルヘムス

性別:-(与えられてない)
身長:80cm〜自在に伸ばせる
種族: 冥府竜(冥送り竜とも)
性格:しょっちゅう変わる
シアが全て能力を消し、ただの闇竜にしていたと思われていた冥府竜の最後の1人
ゴルダが依頼でもらった卵のようなものに擬態していた
地獄の業火めいて燃える炎のような目、短毛の生えたエメラルドグリーンの体、2本の角の先には常に緑と紫の炎が交互に燃えている
体型はアルガントに似ており、右手の甲には冥印と呼ばれる冥府の住人の証がある
シアいわく、冥府の女王ヘルヘムスが送り込んだしもべで、油断出来ない強さを持っているので危険とのこと
ゴルダの一言で家に置いてもらえることになったが、首輪による制御と監視という条件付き
だがそれによって、本来の能力を消されずにいる
その能力とは、まだ現世をふらついている魂を視る能力、その魂を冥府へ連れ込む能力(ぶっちゃけ魂を引き連れられる能力)、そしてもっとも恐ろしいと言われている魂を食べ、我が物にできるという能力の3つからなっている
以下右手の甲の冥印

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

冥府竜ウラヘムト

蚊の飛ぶ音がやかましいある日の夏の夜のこと。
その日ゴルダは、自室で原稿を描いていた。
原稿とはいっても、趣味で参加している合同誌のものだが。

「寝るう」

アルガントが寝ると部屋に入って来たが、ゴルダは原稿に集中していて聞く耳を貸さない。
そんなゴルダにアルガントはちぇっというような顔をして、例のエメラルドグリーンの卵のようなものを手に取る。
無論、これでもゴルダは原稿に集中しているので気づいていない。

「ちょっと熱い?それに重い」

その卵のようなものを取った途端、アルガントは違和感を覚えた。
それは、卵が熱を持っていて、さらにいつもより重くなっているのだ。
これはおかしいなと思い、アルガントがそれを叩くと

「わわっ!」

いきなりそれが宙に浮いたかと思えば、球体の形からアルガントに似た体型の何かへと変化する。
それをアルガントが黙って見ていると、最終的には地獄の業火めいて燃えるような色の目に、短毛が生えたエメラルドグリーンの体。
角の先には常に緑と紫の炎が交互に燃え、右手の甲に何かの印が刻まれている。

「ほうほう、泣竜か。懐かしいな」

エメラルドグリーンの毛の竜は、アルガントをまじまじと見てそう呟く。
アルガントは、どこからか手裏剣を取り出し、その竜に投げ付けようとした。
だがここでゴルダが気付いたのか、2人の方へ向き直り

「ああ、やっぱりか」

と言う。
やっぱりかってどういうこと?とアルガントが聞く前に、エメラルドグリーンの毛の竜は突然2人に両手を眼前で合わせてお辞儀すると

「どうも、ウラヘムト=ヘルヘムスです。種族は冥府竜、見知り置きを」

自らの名を名乗った。
それにゴルダも遅れてお辞儀を返し、名を名乗り返す。

「冥府竜?おいおい冗談だろ、シアが黙ってないぞ」

ゴルダはウラヘムトが名乗った種族の冥府竜に心当たりがあるのか、シアが黙ってないと話す。
ウラヘムトはそれにけらけらと笑いながら

「ああうん、懐かしいよ。他の冥府竜は皆シアに能力消されてただの闇竜にされちゃったんだよね。俺はその最後の1人」

同族は皆シアに能力を消されて普通の闇竜にされたと言い、自分がその最後の1人だと話した。
それを聞いたゴルダは、若干困った顔をして

「話聞いてるだけだとお前面白そうな奴だから家に置いと来たいが、シアが確実に黙ってない」

何とウラヘムトを面白そうな奴だから家に置いて置きたいと言うのだ。
無論、そんなことをすればシアが嗅ぎつけるのは必然的。
明け渡せと言ってくるのも間違いないだろう。

「んあー、まあそりゃそうだよな。でもなんとかしてくれないかい?俺も能力消されるの嫌だし」

能力を消されるのが嫌なので、どうにかして欲しいとゴルダに訴えるウラヘムト。
どのみち強制的に呼び出されるなら、先手を打ってしまおうかと考えたゴルダは

「よし、明日どうにかしてシアに取り合いに行く。それでいいか?」

明日シアに取り合いに行くと言う。
ウラヘムトは、それにうんと頷いてさっさとアルガントと寝てしまった。

翌朝、朝食までセイグリッドで食べてしまおうと、ゴルダはウラヘムトとアルガントを氷燐に乗せてセイグリッドへ。
塔ではエシュフィルトが空気を読んで席を外していたのか不在。
その代わり、シアが今までに見たことのない表情でゴルダ達を待っていた。

「ああ…久しいわね、今の今までどこに隠れてたの?」

シアは目線であなたとアルガントにこんな顔してるんじゃないのとゴルダに言い、ウラヘムトへ即座に向き直る。
ウラヘムトはシアの険しい表情に一切動じず、耳を掻きながら

「どこだっていいんじゃないかな?自分から出て来ただけマシと思うよ?」

上から目線とも受け取れる台詞を吐く。
それにシアは少し灸を据えようと魔法を使おうとしたが、ゴルダがそれを制す。

「なあシア。こいつ面白そうだから俺の所に置いて置きたいんだが、ダメか?」

ゴルダの予想外の一言に、シアはまばたきしながら3人を見る。
はっきり言って、野放しにしておくとアルガントよりも危険なこの竜をゴルダが自分の所に置いて置きたいというのもかなりの大問題だ。
シアは少し考えた後に次のような条件を化す。

「一つは何かあった時は責任取れる範囲で取ること、もう一つは首輪で悪いけど制限かけて監視させてもらうわね、そのままで野放しは危険だわ。腐っても冥府の力だから」

首輪で能力を制限された挙句監視するという条件に、ウラヘムトはうげぇっという顔をしたが、ゴルダは致し方なしと返事を返す。

「そこまで縛りつけなくても何もしないっての。もう冥府にゃ帰りたくもないし」

「じゃあ能力消してもいいんじゃないの?」

「いや、それは勘弁」

そこまでしなくても何もしないし、冥府には戻りたくないと言ったウラヘムト。
それにシアはじゃあその能力は消しても構わないでしょ?と言うと、それは勘弁とウラヘムトは返す。

「コントしてる場合か」

その様子を見て、ゴルダはそう一蹴した。
結局どうなったのかと言うと、ウラヘムトの方が折れてシアの提示した条件に同意。
首輪をされてからは終始無言だったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

裂け目の先で

空間の裂け目というものは、いつどこで、どんな原因で発生するのかはその都度変わる。
だが、その裂け目の先が不安定な空間に繋がっているのか、はたまた別の場所や世界に繋がっているのか、それはくぐるまでは分からない。
そして今日もまた1人、その裂け目をくぐった者が居るようだ。

「うーん、ここはどこなんでしょうか?」

今まで見たこともない木などが生えている森の中で、晴という名の薄い茶髪に白衣っぽい服装に変わった帽子姿の少年は首を傾げて佇んでいた。
新しく作った薬の入った瓶を間違って落としてしまい、その瞬間に発生した煙に包まれたかと思えばこんな見知らぬ森の中に居たのだ。
森はそこまで暗いというわけでもなく、程よく日の光が射し込む居心地のいい場所だった。

「あっ、でも煙はまだ残ってますね、もう一度煙に入ればおそらく帰れるかな?」

晴がふと後ろを振り返ると、もやもやとあの煙が消えずにその場にとどまっているのを確認。
これなら少し周辺を調べても大丈夫だろうと思った晴は、あまり遠くへ行かないよう注意しながら周辺を調べる。

「おや、これ薬の材料になりそうかな?」

周辺を調べて居ると、直感的に薬の材料になりそうな植物がそれなりにあったので、それぞれ少量を採取する晴。
その背後で、誰かが来ているとも知らずに。

「そろそろ帰りますか」

それから30分あまり、晴の持ち物は採取したものでほぼ満杯。
これ以上は採取しても持ち帰れそうにないので、あの煙に入って帰ろうかと来た道を引き返そうとした瞬間。

「えっ、何ですか!?」

前方から来た緑の竜と、緑と青のよく分からない生き物に、おそらくエルフであろう女性の3人組のエルフであろう女性が表情一つ変えずに晴にどこからか出した弓を向けて来たので、晴は腰を抜かしてその場の草の上へ座り込んだ。
だが、青い方のよく分からない生き物の方が、そのエルフの女性と晴の間に割り入り、何かを話し始める。
だが、晴にはそれが何語なのかが分からなかった。
それもそのはず、この世界は晴が住んでいる世界とは別物だからだ。
そのまま数分ほど青い方の生き物は、エルフの女性と話をしてどうにか弓を下ろさせてくれたらしい。
その間、緑の竜と緑の方の生き物は微動だにせず晴をじっと見ていた。

「えーっと、その。僕の言ってること、理解出来ますか?」

ここでなんとか立ち上がった晴は、弓を下ろしたエルフの女性に話しかけてみたが、理解しているのかどうなのか、その表情からは判然としなかった。
すると、青い方の生き物が晴にちょっと待ってと手で制し、またエルフの女性と何かを話し始める。
一体何を話しているんだろうと、耳をすませる晴。
そしてここで晴は、この青い方の生き物が意思を飛ばすことによる会話をしていることにようやく気付いた。
いわゆるテレパシーというものだろう。

「今度は多分大丈夫、相互翻訳魔法だから」

それに気付いた十数秒後、晴はようやくエルフの女性が言っていることが理解できるようになった。
だが、相互翻訳魔法というものにピンと来なかった晴は

「あの、何ですか?その相互翻訳魔法というのは?」

エルフの女性に相互翻訳魔法とは何かと聞く。
そう聞いた後、晴は名乗っておけばよかったと後悔したが後の祭りである。
エルフの女性は少し考えた後に

「本来、翻訳魔法は一方向性。それを双方向性にしたものと言えば分かる?」

一方向性である翻訳魔法の双方向性版であると説明。
それを聞いた晴は、その説明をどうにか頭の中で噛み砕いて自己解釈した上で

「なるほど、ちょっと分かりにくかったですが理解は出来ました。それはそれとして申し遅れてましたが、僕は晴といいます」

理解は出来たと返事を返した上で自らの名を名乗る。
するとエルフの女性の方も

「私はアルガティアよ。最近この森で変なことするのが居るから警戒してたの。ごめんなさいね」

名をアルガティアと名乗り、先ほど武器を向けたことを詫びた。
晴はすぐに下ろしてくれたのでそこまで気にはしてないと言いながら、緑と青のよく分らない生き物と緑の竜を指して

「それと、よろしければその子達の名前も教えてくれませんか?」

名前を教えてくれないかとアルガティアに言う。
するとアルガティアは、軽く頷いて

「まずこっちがエゼラルド」

最初に緑の竜の名前を教えてくれた。
晴は、おそらく草系統の属性の竜なのかなと内心思って居たが、アルガティアに

「ちなみにエゼラルドは草竜の一種よ」

と付け加えられて確信。
次にアルガティアは、あの緑と青のよく分からない生き物の名前を言おうとした。
だが、晴がそれを遮る形で

「あの、この子達の種族って何ですか?見たことないもので」

その2匹の種族を聞く。
アルガティアは見たことないのかしらと言いたげに

「どっちもカーバンクルという種族よ、緑の方がイファルシア、青い方はフィルスよ」

種族はカーバンクルだと教えた後に、2匹の名前を教えてくれた。
その後フィルスの方は、晴にあまり興味を示さなくなったがイファルシアの方は興味深げに晴と拳2つ分ほどの距離まで近寄って来たので晴は少々びっくりする。

「こんにちは、僕は晴って名です」

とりあえずイファルシアに挨拶をしてみるが、イファルシアはなにも返事を返さない。
それどころか、しきりに晴の匂いを嗅ぐような仕草を見せた。
それに対して、何かされるのでは?と内心心配していた晴。
だが、イファルシアは晴に染み付いた薬の匂いを感じ取ったのか

「ちょっと待ってなさいな」

と晴に待つように言うと、アルガティアとエゼラルドのところへ行って何かを話し出す。
時折薬や材料という言葉が聞こえて来たので、どうやら何か薬の材料になるものを分けてくれる雰囲気のようだ。

「いつもあんな感じなのかな?」

「時々ね、あと触ってもいいけど額の石だけは触らないでね。カーバンクルにとって重要なものだから」

そっとフィルスを触りながらいつもあんな感じなのかと聞く晴。
フィルスはそれに時々と答えた後、額の石だけは触らないでと注意した。
それを聞いた晴は、ついうっかりフィルスの額に触れかけていた指をそっと退かす。

「イファルシアがそういう匂いするって言ってるから聞きたいんだけど?何か薬を作ったりしてる?」

ここでようやく話終えたアルガティアに、薬を作ったりしているのかと聞かれた晴は、はいと答えた。

「まだまだ習得中ですが、それなりには作れます。あと実は僕、この世界の者じゃないんです。新しく作った薬を入れた瓶を落とした際に出てきた煙に包まれてここへ来たんです」

そして、自分がこの世界の者ではないことを告げ、薬によって出来た煙に包まれてここへ来たことも説明。
それを聞いたフィルスとアルガティアは、どういうことなの?と言いたげな顔をする。

「薬の成分が、偶然ぞこに出来てた見えない空間の歪みに反応しちゃったのかもね。偶然だったにしろ、薬でそこまで出来るってのはすごいね」

フィルスにそこまで出来るのはすごいねと褒められ、晴はそれほどでもないですと返す。
さらに今まで一言も晴に話しかけて来なかったエゼラルドがこう言う。

「以外と知られていないけど、空間や時間に作用する植物は多いんだ。それを引き出すのがとても難しいだけであって」

「そうなんですか?」

エゼラルドの言ったことに、晴はそうなんですか?と聞く。
するとエゼラルドは、よく見ると時計にも見えなくない白と赤の花を出す。

「これはトキワタリギクっていう菊の一種だよ。薬にすると忘れて居た過去記憶や前世の記憶を引き出せるんだ」

晴がふむふむとどこからか出した紙にメモをしている間、今度はイファルシアがカチカチと時計のような音を出す木の実を出した。

「これはトケイクルミっていうクルミ。中から時計が時を刻むような音がするでしょ?それから名付けられたの。食べるとたまに体の時間が逆行するの。つまり大人が食べると稀に子供に戻ることもあるってこと」

この後も、晴はイファルシアとエゼラルドに空間や時間に作用する植物の説明をさんざん聞かされ、気づけば4時間近く経っていた。

「もう大丈夫だよ、ありがとう。興味深い話が聞けてよかったよ」

まだ説明しようとするイファルシアに晴はもう大丈夫と制し、あの煙の所へ戻ろうとする。
すると、アルガティアから呼び止められたので、何事かと思って居ると晴はアルガティアからお守りのようなものを渡された。

「どう使うかはあなた次第だけど、使えばまたこの世界へ来れる」

どうやら、またこの世界へ来れる鍵のようなものらしい。
晴は改めてアルガティアに礼を言い、フィルス達にも別れを告げてあの煙の元へ戻り、帰った。

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小説(交流) |

刀と氷悠と

数分外にいるだけで熱中症になりそうな暑さの夏空の下、陰陽師のような服装に面を被った水色の狐耳の青年がゴルダの家の前に立っていた。

「ああ、ここかあ。ずいぶん無駄な広さの家に住んでるようだね」

この青年の名は、宮城氷悠。
紫月家の遠縁の親戚に当たる、半狐獣人半妖狐だ。
幼少時代よりこの感情などで変化する面を被り、完全な妖狐に変身した時以外は素顔を見せたことが無い。
そんな氷悠が何故ゴルダの家に来ているのか?
それはムサヅキから御使いを頼まれてのことである。
ここで時は昨日へ遡る。

「これはこれはムサヅキ様、またつまらないことに付き合わさせるつもりで?」

「ぬぅ、その小馬鹿にするような余計な一言は慎めと言っているだろうに。それに挨拶はせぬか」

その日、気まぐれで紫月神社へ遊びに来た氷悠。
藍などへの挨拶もそこそこに、裏山の川を上流へと登っている途中で、氷悠はムサヅキと出くわした。
面の表情をげっというような表情に変化させ、つまらないことに付き合わさせるのかと言う氷悠に、ムサヅキは余計な一言を慎めと言う。

「あー、はいはい。でも今日は嫌だよ?ただ遊びに来てるだけなんだから」

「…お前はゴルダという者を知っているか?」

今日は遊びに来ただけなので、付き合いたく無いと言う氷悠にムサヅキはゴルダを知っているかと聞く。
氷悠はその名を聞いて、あああの人ねと言いたげに頷くと

「藍達の親戚だっけ?ドランザニアに1人で住んでる」

藍達の親戚かとムサヅキに確認する。
ムサヅキはそうだと返事を返すと、どこからともなく氷悠に刀を差し出す。
その刀の鞘には、紫月神社の神紋が入っていて、ただの刀ではなさそうである。
氷悠はそれを受け取った瞬間、若干妖力を感じたがそれほど強いものではないと確信。

「なんですこれ?」

なんじゃこりゃという表情を面に表しながら、氷悠はムサヅキに聞く。
するとムサヅキは

「儀礼用の刀だ、だがされど刀。儂が名のある刀鍛冶に作らせた代物だ、切れ味や強度は保証できる。…ああ、話がそれたな。この刀をゴルダのところへ届けて欲しい」

儀礼用の刀であることを説明し、この刀をゴルダの所へ届けて欲しいと氷悠に頼む。
氷悠はそれになんでだよという面の表情を表し

「いやいや、場所分からないって」

などと遠回しに迷子になるから行きたくないと言う。
だが、ムサヅキは顔色一つ変えずにこう返す。

「場所なら教える、それでも断るか?」

それに対して、氷悠はそれならいいかなと納得した表情を出し、また頷いて了承した。
その後、氷悠はムサヅキにゴルダの家の場所を教えてもらい、その日は帰ったという。
これが昨日の話だ。

そして今現在。
近くの木の日影に入り、どうしたものかと氷悠は考えていた。
ムサヅキから絶対に余計な一言を言うなと釘を刺されていたため、どう挨拶しようか迷っているのだ。

「うーん、どうしたもんかなあ。どう会ってどう挨拶しようかねえ」

木の物陰からゴルダの家の方を覗きながら、氷悠は首を傾げる。
妖力で少し探りを入れたところ、ゴルダは家に居ることは間違いないことは分かっていた。
だが、これまた親戚とはいえ、今まで一度も会ったこともなく名しか聞いたことがない。
耳をぴこぴこと動かしながら考えた末、氷悠は玄関の扉をノック。

「えーっと、お前は確か…」

「お初お目にかかりまする、宮城氷悠です」

「ああ、思い出した。藍から前に聞いたことがあったのを思い出したよ、入りな」

すぐにゴルダが出て来たので、氷悠はひとまず名を名乗って挨拶。
するとゴルダの方も氷悠の名を聞いて思い出したらしく、すぐに家へ上げてくれた。

「1人暮らしにしてはずいぶん小綺麗な家、綺麗好きなんだろうか?」

「散らかってる時もある」

氷悠が心の中で小奇麗だなと呟いていると、ゴルダがその心の呟きを読んだかのようなことを言う。
それに氷悠は読心術でも使えるのか?と若干身構える。
居間へ通された氷悠は、床に座禅するような姿勢で座り、ムサヅキから預かっていた刀を出す。
するとゴルダも同じような姿勢で座り、氷悠と向き合う。

「またムサヅキの奴、余計なものを押しつけて来やがって」

ムサヅキが押しつけたのかと言ったゴルダに、氷悠はビクッとしながらもその通りだけどと返しておいた。
何故ムサヅキから渡せと預かっていたという前に分かったのか?
氷悠はおそらくムサヅキの残留思念かなんかを感じ取ったのだろうと決めつけた。
ゴルダはその刀を鞘から抜き、刀身を調べる。

「これはずいぶんまともな物だな、だが何かを斬った形跡なし。儀式などに使う物か?」

ゴルダの一言に、氷悠は一体どう言うことなんだと開いた口が塞がらない表情になる。
なお、今の今までゴルダは氷悠の表情が変わる面についてはなにも言及していない。
おそらく、気付いているがあえて気付かないふりをしているだけなのだろう。

「麒麟っぽい気配するけど、もしかして居る?」

「氷燐のことか?裏に居るぞ」

少し話題を切り替えようと、さっきからチクチクと感じていた麒麟の気配のことをゴルダに聞く氷悠。
すると、ゴルダの口から氷燐という名が出て来た。
どうやらムサヅキが前に間違って召喚した麒麟がここに住んでいるらしい。

「氷悠か、久しいね」

「その姿だとよっぽどのことが無い限りは麒麟って分からないな」

氷悠と氷燐の顔見知りとしか思えない会話から、ゴルダはなるほどと呟く。
その後、結局夕方まで遊びほうけて氷悠は帰って行った。

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小説(一次) |

宮城氷悠

性別:♂
年齢:推定150代(外見は青年)
身長:175cm
性格:たまに人を小馬鹿にする、自由気まま
種族:半獣人半妖狐
名の読みは「ミヤシロノヒサハル」
感情などによって変化する面を幼少時代より被っており、素顔を見せない。
紫月家の遠縁の親戚に当たる半獣人(狐)半妖狐。
陰陽師の正装に似た服装に、面という容姿で、尻尾は常に隠している。
尻尾を出すと薄灰色の三尾が出る。
なお、耳と目は水色というおかしな色の組み合わせ。
面はムサヅキが作らせたものらしく、本人も気に入っている。
さらに真名(まことのな)をムサヅキから授かっており、その真名は「三尾紫月氷狐(サンビノシヅキヒコ)」
真名により面を外し、三尾の完全な妖狐になることが可能。
妖狐の姿は、耳と両足の先に目が水色、他は全て薄灰色。
妖術・妖力は三尾相応。

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創作関係全般 |

マフェポ族を救え

スリュムヴォルド南部のマングローブ地帯。
ここに生えているマングローブは、地球に存在するものよりも大きく育ち、中には10メートルを超えるものもある。
さらに、ここは万年桜と並ぶ大陸百景の1つにもなっている場所。
そのマングローブがあることで築かれる独自の生態系も存在する。
このマングローブ地帯の具体的な広さは調査されていないために、どれくらいあるのかは分からないが相当広いとされている。
またここは潮の干満が大陸の中でも激しい部類に入り、干潮と満潮の時では見られる景色が全く違う。
干潮時には、何処か不気味さの中に神秘的な雰囲気をも漂わせるほどにマングローブの根が伸び。満潮時には水没林に居るかのような感覚に陥る。

そんなマングローブ地帯を、満潮時に手漕ぎボートで移動するゴルダとシスイの姿が見られた。
ボートには銛が積まれていて、明らかに何かを狩る目的で来ているとしか思えない。

「ねえ、マフェポ族どこに居るのかしら?」

ゆっくりボートを漕ぎながら辺りを注意して見ているゴルダにシスイが話しかける。
それに対してゴルダは一旦漕ぐのを止めて双眼鏡でマングローブの木の上を見ながら

「俺に聞くな、マングローブ木の上を探してるがそれらしい姿が見当たらん」

と答えた。
シスイはそうよねえと言い返すと、自分もまた2人以外の気が感知できないかと集中する。
なぜゴルダとシスイがこんなことをしているのか?
それは数時間前に遡る。

「南部のマングローブ地帯に?なんでまた?」

「急を要する仕事よ、私は今別の仕事で忙しいから呼んだの」

数時間前、ゴルダはニフェルムから呼び出されてエルフィサリドのところへ来ていた。
呼び出された理由は、急を要する仕事ができたからだという。

「そこに住むマフェポ族という精霊あるいは妖精に近い種の民族が最近大量発生している水蛇のせいで絶滅しそうなの。それを防ぐために水蛇退治をして来て欲しいの」

水蛇とは、主に川や湖などの水中を主な住処とする蛇で全長は2、3メートルほど。
主な主食は魚だが、どういうわけだがこの南部のマングローブ地帯に大量発生した水蛇はマフェポ族を食べているというのだ。

なお、マフェポ族とはエルフィサリドが言ったようにこのマングローブ地帯に住む精霊あるいは妖精に近い種の民族である。
固定した住処を持っていない遊牧民のような生活をしており、マングローブの上に居たり干潮時に根元を歩いて居たりと自由気まま。
身長は最大でも50センチ程度と、それなりに小さい。
独自の文化として、マングローブの加工技術を持っており、染め物から薬まで、ある程度の物はなんでも作れるという。

「なるほどな、水蛇か…分かった。俺がやろう」

「ああ、だけどシスイも連れて行って」

これは拒否できないと思い、エルフィサリドに引き受けると返事を返したゴルダ。
すると、エルフィサリドはシスイも連れて行くように指示を出した。
ゴルダはこれになんでまたとは思ったが、深くは考えずに頷いて返事を返す。
そしてエルフィサリドに行ってくると言って城を出た後、ゴルダはまっすぐシスイの家へ。

「おい、出かけるぞ。おそらくエルフィーから話は聞いてるだろ?」

「はいはい、ちょっと待って」

バルコニーの柵に外側からぶら下がって懸垂をしていたシスイは、ゴルダが来たことに気付いてスッとバルコニーに飛び戻って準備をして出てきた。
ゴルダはシスイの一連の行動には何も言わず、そのまま一緒に南部を目指して移動を開始した。
これが数時間前の話だ。

そして現在。
もう1時間はマフェポ族を探しているが、一向に見つからない。
どこからか水を出して飲みつつ、双眼鏡で探すゴルダだが、手がかりすら無い状態だ。
まさかなと嫌な予想をしながらもなお双眼鏡で探し続けていると

「ゴルダ、ここから7時方向に進んで」

「あ?オーケー」

突然シスイに7時方向に進めと言われ、ゴルダは言われるがままにその方向へボートを進める。
するとそこには、一際目立つ大きさのマングローブが生えていた。
大きさは10メートルは軽く超えているだろう。

「ここからそれっぽい反応が」

「簡単には登れそうに無いぞこれ」

錨の魔法でボートをその場に留め、ゴルダはそのマングローブの上の方を双眼鏡で見る。
すると、若干茶色がかった肌の何かが居るのが見えた。
どうやらビンゴのようだ。

「私が行ってくるわ」

「気をつけろよ」

シスイが行くと言い出したので、ゴルダは気をつけるように言って何故か水面に銛を向けて待機。
シスイはその間にいともたやすくマングローブを登って上の方へ到達。
やはりマングローブの木の上にはゴルダが見つけた茶色がかった肌で、黄色い目に独特の模様の服装の40から50センチほどの者たちが下の方を不安げに見ていた。
どうやらこれがマフェポ族らしい。

「あの」

「---?---!!」

シスイが試しに1人に声をかけたところ、驚きながらも何かを言われたが、シスイにはそれが何語なのか分からない。
だが、すぐにこれだというのを頭の引き出しから出して

「大丈夫、とって食べたりしないわ」

と同じ言語で返した。
するとその1人は

「ああ、失礼。人間なんてこの100年あまり見たことなかったもので。私はマフェポ族の族長です」

と非礼を詫びる。
どうやらマフェポ族の族長らしい。
続けてシスイは族長に、エルフィサリドから聞いていた話をして合っているかを確認。

「大丈夫大丈夫、間違いないよ。とにかく水蛇を極力減らしてもらえないか?ついさっきも2人がやられてしまってね」

族長はとにかく数を減らして欲しいとシスイに頭を下げた。
シスイはそれに分かったと言い、木の上から飛び降りる。
飛び降りた先はボートから数十センチ離れた場所。
ドボンとはいかず、シスイは水の魔法で水面に着地するとゴルダに水蛇を見つけ次第捕まえて〆るように言って自身は水中へ潜る。

「水蛇の〆方は確か頭を刺すか砕くかすればよかったな」

などと言いながら、ゴルダは再び水面に銛を向ける。
すると、水中を泳ぐ蛇の姿が見て取れた。
ゴルダは一点に意識を集中させ、その時を待つ。
そして銛の先と蛇が重なった瞬間、銛を突く。
するとどうだろうか、銛には水蛇が刺さっていたのだ。
ゴルダは手際よく水蛇を銛から外し、人間離れした握力でその頭を握りつぶして〆た。

「逃がさん、見つけ次第始末だ」

若干そういう目になりながら、ゴルダは見つけ次第水蛇を銛で突いて行った。

そして、日が暮れる頃にはボートの上は〆た水蛇で満載状態。
そのほとんどは、シスイが徒ったものであったが。
なお、この〆た水蛇は全部シスイがもらうとの事。

「いやはや、ありがとうございます。これでまた平穏に暮らせます」

「いいのよ」

ゴルダがは話ができないので、シスイが族長と話をしている。
初めてマフェポ族の姿を見て、ゴルダはなんでこんなに恥ずかしがり屋なんだ?という第一印象を持った。
それもそのはず、族長以外は皆物陰からそっとこちらを見ていたからだ。

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小説(一次) |

設定のあれこれ(種族など)

・賢者の竜
あらゆる竜族の中で最も知力と魔力が高い種族。プライドが高かったり、体力はあまりないものが多い。
ドランザニアに居る賢者の竜は賢者の竜の里に9割方が在住。
里に居るのが全部が全部ではなく、光竜王国セイグリッドで研究に携わっていたり。人間の姿で地球へ行って研究や世界各国の大学で教授をしているものなども居る。
ただしプライドが高いのは、ほとんど高年齢層の賢者の竜で。若年層の賢者の竜は気さくだったりと様々。

・風癒竜
羽根から骨まで余すことなく薬となる不思議な竜、司る属性は風と聖(光)。
現在では薬の素材として多くが狩られ、そんなに数が残っていない。
光竜王国セイグリッドで保護されているので30ほど。
医学知識が豊富で、セイグリッドに居る風癒竜は全員医師免許を持っている。
その裏では、毒に関する知識なども豊富なので敵に回したり怒らせたりするのはまず愚かな行為だろう。

・ハーブの竜
エゼラルド以外には一切確認されていない(南限大陸にしか似た種が居ないためとか)植物の力を司る竜、ハーブを含めた植物の知識と栽培技術に長けているという。
近くにいるとすごくいい匂いがするらしい。

・雪の民
氷竜国リヴァルスのどこかにの村に住む先住民、大陸歴前より存在し独自に進化及び発展をしてきた模様。
誰も会ったことがなく、居ると言う文献だけが存在するだけで詳細不明。

・リヴァルスウルフ
氷竜国リヴァルスの雪原に生息する、他の狼に比べて全体的に知性が高い謎多き狼族。
その社会構造も複雑なようだ。

・聖子(ひじりのこ)
何らかの要因で、アルカトラスまたはシアの力を強く受けて生まれた者たちの事を指す。
潜在魔力が高く、ドランザニアに存在する全ての属性に耐性と適性を持つ上に切れ者が多い。
詳しいことは研究も調査もされてはいないが、毎年1万人に1人の割合で生まれているという。
さらにその聖子の10万人に1人の割合で、魔力制御が上手くいかない特性を持つ者が居て、病弱になりがちである。

・ケタルアワシ
スリュムヴォルド建国前からその土地の山岳地帯に生息するワシ。大きさは最大5mくらい。
リヴァルスウルフ同様に独自の社会と高い知能を持ち、すんなりはいかないが人の言語を理解できる。
こちらから手を出さない限りは、縄張りに入っても見守るだけで襲っては来ない。
ちなみにケタルアとはドランザニア語で「山の主」を意する

・マフェポ族
スリュムヴォルド南部のマングローブ地帯に住んでいる妖精あるいは精霊に近い種の民族。
身長は最大でも50センチ程度と小さく、茶色がかった肌の色に黄色い目が特徴。
固定的な家を持たず、マングローブの上に居たり、干潮時に根元を歩いていたりと自由気まま。
主食らしい主食もなく、ほんの少しマングローブの生命力をもらって生きている。
性格は恥ずかしがり屋が多く、滅多に姿は見られない。
独自文化として、マングローブを余すことなく使う秘伝の加工技術を持ち、染め物や薬を作る。
下記はマフェポ族の服


・冥府竜
冥府の女王ヘルヘムスのしもべの竜である以外は詳細不明。
シアが管理し損ねている魂を冥府へ連れて行くのが仕事のようだ。
地獄の炎めいて燃えるような目の色以外は個体ごとに容姿が違う。

・氷花竜
狼竜の一種で、幼竜とメスは左耳の辺りに氷花と呼ばれる花を咲かせる竜。
その色は個体によって様々で、全て同じではない。
リヴァルスの雪原に3〜4の月の間だけ現れ、それ以降は姿を見せなくなる。
なお、オスの方は氷花を自分が歩いた後に咲かせたりする能力を持つ。

・カーバンクル族
言わずと知れたフィルスやイファルシアのような幻獣族のことを指す。
核石という石を額に宿し(ごくまれに額以外に核石を宿す者もいる)、この世界に存在するすべての属性のカーバンクルが存在する。

・氷狐
読んで字のごとく、氷属性および水属性を扱う魔狐の一種。
生態系などは全く情報がなく、不明。
だが、雪の中に潜んでいた氷狐を踏んづけたある者がその怒りを買って氷付にされてしまったという逸話が残っていることから、全く人前に姿を現さないわけではないらしい。

・魔狐
種族定義上、妖狐とは親戚にあたる狐の一種。
この世界に存在するすべての属性の魔狐が存在するとされているが、闇狐に至っては居ると言われているくらいで文献にも目撃例がない。

・幻竜族
もふもふな個体しかいない幻獣の里に住む有毛竜種。
物理よりも魔法特化な種族なので物理で当たれば弱いと思われがちだが、日常生活ではまず困らない力を持っている。

・古代エルフ族
幻獣の里にしかいない、世界創造当初のエルフの血を引く種族。
使用言語が古代エルフ語なので、それを理解し話せるか高レベルの翻訳魔法がないとコミュニケーションをとるのはまず無理だろう。
実はライラ家もこの古代エルフ族に当たるらしい。

・海月竜
海月がシアの気まぐれで竜の血を引き、突然変異を起こして生まれた種族。
身体の透明度が50%以下から90%以上までピンキリで全ての個体がこれまた毒性がピンキリな毒手を持つ。
性格はのんびり屋や不思議ちゃんが多め

・妄想竜
水あるいは氷と闇の複合属性の竜族。
相手を自分の妄想世界へと引きずり込み、満足するまで解放させないという能力を持っており危険。
闇竜の血が入っているためか、やたらめったに姿を現さずにひっそり暮らしている。

・雲竜
風竜族の一種で、雲の上に村を作り暮らしている。
体長は♂:2〜3m、♀:4m〜で羽毛または有毛種。
体重は雲程度とないに等しく、その理由は不明。
幻獣族もといカーバンクル族とは仲がよく、エーテルへの耐性も非常に高い。
また、純粋な風属性が少なく。ほとんどが複合属性持ち。
創作関係全般 |

アムテプス=アルヴォールド

性別:♂
種族:吸血竜
享年:不詳
身長:3m
性格:マイペース
変身したサフィと瓜二つの姿の吸血竜。
どうやってナーチェニアと出会ったかなどの生前情報は一切なく、サフィ自身も思い出せない。
賞金首に退魔の矢で射抜かれて死去したという。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

ナーチェニア=アルヴォールド

性格:♀
種族:吸血鬼(純粋)
享年:不詳
身長:170cm
性格:時折読めない、礼節を重んじる
紫の目にルビーのような髪の吸血鬼。
サフィの母親でもあり、親子揃ってメイド服を普段着としていた。
結婚前はある富豪の屋敷で従者をしていたという。
賞金首に特殊な聖水で痛手を負わされた挙句聖属性魔法でとどめを刺されて死去。
先祖にペルコプト=アルヴォールドという強大な吸血鬼の1人が居た。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

イリアス=ライラ

性別:♀
種族:エルフ
享年:500前後
身長:168cm
性格:物事はすぐ実行、民を重んじる
黒髪(ショート)、青時々緑に変わる目を持つ初代リフィル王国国王。
ドランザニアの自治区からの独立を成し遂げたまでは良かったが、当時の親ドランザニア派の暴徒に刺され、手当てが遅れたために死去。
現在は城から少し離れた王族所有墓地(一般市民も埋葬されている)に埋葬。
墓石には「リフィル独立の母」というようなことが記されている。
目の色が変わるのは、感情が高ぶった時だけ。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

集中こそが成功のカギ

セミがうるさく鳴くある朝のリフィル城裏山の川の滝。
若干の魔力を含んだ湧き水により作り出されたこの川は多少の汚染なら自浄作用で元通りになるという。
その滝の真下で、道着のような服装のアルガティアが滝打たれをしていた。
毎日ではないらしいが、精神的に乱れが生じた時はこういうことをして精神を正すと言う。

「ここ、夏場でもほぼ0度に近い水温なのによく平気だなあ」

とても大きな蓮の葉を帽子にして静観しているエゼラルドの横で、フィルスがそんなことを呟く。
先ほどフィルスが言ったように、この川の水温は夏だろうが冬だろうが常に0度ギリギリ。
そのため、この川は氷牙川と呼ばれることもある。
氷牙川の名の由来は諸説あるものの、かつて生半可な心構えでこの川に入った者が、何かに噛まれたような感触を感じた瞬間氷付けになったからだと言われている。
そんな川の滝で、アルガティアは薄手の服装をして打たれているが、特に凍る気配はない。

やがてアルガティアは、一旦滝打たれを止めて静観していたエゼラルドに的を用意させた。
的はそこまで大きくはないサトイモの葉を5枚くらい重ねたもの。
そしてアルガティアはまた滝に入り、どこからか弓を出して滝の水流にも負けない構えを取る。
フィルスはなんでこんなことをするのかと考えてみた。

「ああそうか、そういう鍛錬か」

フィルスが編み出した解は、劣悪な環境下でいかに精神を集中させてターゲットを射抜くかという鍛錬だと気付く。
滝から流れ落ちる水で表情は分かりにくかったが、アルガティアの目は真剣そのものだった。

「えっ…?もう射抜いてる?」

刹那、フィルスがよそ見をしていたほんのわずかな間にアルガティアは的を射抜き、新しい的を用意させていた。
しかも、今度は不規則に動く的だ。
これがまさに油断大敵と言ったところか。

その後、計10回は滝に打たれながら的を射抜いたアルガティア。
10回目を終えてようやく滝から上がり、城へと戻る途中でアルガティアはフィルスにこう言う。

「あとで付き合って」

「?」

フィルスは最初はこの意味が理解できなかったが、すぐに理解することになる。

城へと戻り、着替えていつもの服装に戻ったアルガティアはフィルスと庭の外れへ。
畑が所狭しとあるこの場所で、何をするかと思いきやアルガティアはフィルスに槍を持たせた。

「槍術なんてやったことないんだけど?」

「いいから構える」

槍なんか持ったことがないフィルスは、困った顔でアルガティアに言うもアルガティアは問答無用で構えろと言う。
そして仕方なく構えるフィルス。
そもそも素人同然のフィルスがあからさまに上手のアルガティアに勝てるはずもない。
どうしようとあたふたしていると、矛先が眼前にあったのでフィルスはビクッとした。

「何事も集中、守るも攻めるも。これがインストラクション1」

「それはそうだけどさ」

「もう一度」

さり気なく教えを言ったアルガティアにもう一度と言われ、フィルスは槍を構え直す。
今度は視界内にアルガティアを捉えていた…はずだった。
だが今度は後ろと左右を分身に取られていたのだ。

「うぐぐ…」

「インストラクション2。100が最大の集中を一方向に100全てを使ってはいけない。あらゆる方向に優先度をつけて使うこと」

唸るフィルスに、アルガティアは2つ目の教えを言う。
そしてアルガティアは槍を片付けると

「インストラクション3。優先度をつけ難い、あるいはつけられないなら全てに均等に割り当てを」

3つ目の教えを、これで最後と言わんばかりの口調で言い、アルガティアはフィルスを撫でた。

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小説(一次) |

レナと七夕

7の月のある日のセイグリッドの夕方、こんな変な時間にやって来たレナは城の方へ。
城に近付くにつれてレナが思ったのは、城の方がいつにも増してにぎやかだということ。
それもそのはず、今日はレナが知らないだけでセイグリッドでは聖星祭(ひじりぼしまつり)という七夕の祭りなのだから。
城の庭には、あちこちに見慣れない装飾が施され、ぽつぽつと屋台が並び、多くの人々が行き交っている。
何も知らないレナは、単なる祭りなのだろうかと思って歩いていると、エシュフィルトと狐面姿の誰かと出会った。

「今日はセイグリッドの七夕」

「アルガティアさんだったんだ、お面着けてるから分からなかったや」

「ここの七夕は短冊を万年桜の頂上に置くの」

「へえー」

狐面姿の誰かは、声だけですぐにアルガティアだとレナは分かった。
そして2人はレナに今日は七夕であることを教える。
なお、先ほどエシュフィルトが言ったように、セイグリッドの七夕は短冊を万年桜の頂上に置く。
こうすることで、願いが欲張ってなければ8割くらいは叶うという。

「あなたも書いたら?」

「どこで書けるのかな?」

「大広間で書けるよ」

アルガティアに書いたらとそそのかされ、レナな書いてみようかなとどこで書けるのかを聞く。
その問いには、エシュフィルトが大広間だと答えたので3人は大広間へ向かう。

「人がとても多い」

「誰しも短冊は書きたいと思うから仕方ないんじゃない?」

いつもは食事を取る大広間は、右も左も人でごった返していた。
奥の方には2~3メートルの笹が10本以上並べられ、それらの笹にはびっしりと短冊が下げられている。
これではすぐに書けそうにはない。

「あら、来てたの?」

「わわっ…!」

そこへ、まるで忍者のように背後に忍び寄って来たサフィにレナは気付き、思わず飛び上がった。
一方のアルガティアは面の位置を正した以外は全く動じず、エシュフィルトはまたなのねという顔をしている。

「はい、3人分。さっさと書いちゃいなさい」

サフィは特にレナに謝る素振りも見せず、エシュフィルトに3人分の短冊を渡して何処かへ行ってしまう。
そして3人はそれぞれ、次のようなことを短冊に書く。
アルガティアは

「何もない1年を」

レナは

「もっと友情が深まりますように」

エシュフィルトは

「大器晩成」

というのをそれぞれ書いた。
そして、その短冊を笹に下げて大広間を去る。
その後は、アルガティアにエシュフィルトとぶらぶらしていたレナだが、シアに

「笹持っていくのを手伝ってもらえる?」

と言われて手伝いに移る。
再び大広間へ戻った時にはもう片付けが始まっていて、短冊を書いている者は誰も居ない。
びっしりと短冊が下げられている笹が10本以上。
それをどうやって運ぶのかと思えば、3人は魔法を使って運び始めた。
さすがにレナには持てないので、落ちた短冊を拾う側へ回る。
その万年桜までの道のりの間、大広間いた時には面を外していたアルガティアだが、移動中は一切外そうとしなかったので、レナは不思議に思っていた。
だが、その読めないところというのがアルガティアの個性なので、レナはあまり気にせず短冊拾いに集中。

「やっぱ見られるわ」

「仕方ないんじゃないかな?」

一言二言交わしている間に、4人は万年桜の前に着いた。
ここから1本ずつ頂上に置いてくるという。
そして全てを置き終え、シアがあることをすると何かが起こるとか。
ちなみに、レナの拾った短冊は最後に置くとのこと。

そしてだいたい10分後。
多くの見物人に目線の中、4人は最後の笹と共に頂上へ。
葉と枝の織り成して作られた頂上は、そこまで足元は悪くはなかった。
目の前には既に置かれている笹たちが並び、時折風に揺れている。
その笹が風に揺られる様は、どこか神秘的な雰囲気さえ感じさせてくれている。

「レナ、拾った短冊をこっちに」

シアはレナに拾った短冊をいつに間にか用意されていた祭壇に置くよう指示。
レナは軽く頷き、祭壇にその短冊を置く。
そしてシアは、これまたどこからか経文のようなものを開き、レナの聞いたことの無い言語の詩を詠み始める。
それをちんぷんかんぷんになりながらも聞いて居ると、アルガティアがそれをさり気なく訳してくれた。
それは、以下のようなもの。

「一年(いっとし)訪れ7の月の今宵、短冊綴りし個々の言葉。笹に下げしそれらをば、我ら委ねんその星々に。その言葉叶わんとするならば、我らは星々に感謝示す。そして明くる年の同じきこの夜空に、再び言葉委ねんと、かしこみかしこみ願い申す」

これを詠み上げ終えた瞬間、笹が、短冊がほんのりとした光の粒となって夜空に舞い上がり、地球でしか見られないはずの天の川を夜空に作り出す。

「わあ、きれいだなあ」

「今年も上手く行ったわ」

いい七夕になったようです。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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