氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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親子の時間は程よく

ある朝、ゴルダは軽トラに乗って市街地へ行き、とあるスーパーの朝市に買い物をしていた。
大体週一かつ、朝市でのみ買い物をするのがゴルダのスタンスで、それ以外は急に必要にならなければ買い物には行かない。

「いつもの野菜ジュースが安いな」

などと独り言を言いながら、朝市には不釣り合いなBGMが流れている店内を回っていると、突然携帯が鳴る。
だが、発信相手はサフィなどの電話帳に登録されている相手ではなかった。
誰かが依頼の電話でもして来たのか?
そう決めつけておいて、ゴルダは電話へ出る。

「もしもし父さん?今どこにいるの?家に来てるんだけど?」

電話の主はエシュフィルトだった。
ゴルダはあいつは携帯なんか持ってたか?と思いながらも

「買い物中だ、何か用か?」

エシュフィルトに要件を聞く。
電話の向こうでは水を流すような音が聞こえたので、おそらくエシュフィルトはゴルダが朝食を終えて流しにほったらかしている食器を洗っているのだろう。
そして、水を流す音が止まると

「アルガントも連れてどこか行かない?」

エシュフィルトはどこか行かないかと言う。

「構わんが、お前はどこ行きたい?」

それにゴルダはどこに行きたいのかを聞くと、エシュフィルトは

「適当に南部の方で遊びたいかな」

という返事を返す。
ゴルダは、南部かと心の中で呟きながら

「分かった、あと1時間くらいでは帰る」

「はーい」

エシュフィルトにあと1時間くらいでは帰ると告げる。
それを聞いたエシュフィルトは、そのまま電話を切った。
結局、遊びに行こうというものだった。
ゴルダはその後、そそくさと買い物を終わらせ、軽トラを走らせて帰宅。

「お帰り」

「やー」

両手いっぱいに買い物の荷物を持ったゴルダを、エシュフィルトとアルガントが出迎えてくれた。
エシュフィルトは、なんとも似合わなさそうな作業服姿のゴルダに特に何も言わずにお帰りと言う。
ちなみに、ゴルダは畑仕事をしてそのまま買い物に行ったのでこのような姿なのだ。
買い物の荷物をさっさと片付け、ゴルダはエシュフィルトに携帯持ってたんだなと言う。
するとエシュフィルトはゴルダに自分の携帯を見せた。
女性が持つにしては、あまりにもシンプルすぎるデザインの携帯だが、エシュフィルト曰く今年の春モデルのフルスペック物だとか。
ゴルダは携帯については何も触れずに番号を登録し、そのまま風呂へ。

ゴルダの風呂中、エシュフィルトは食器洗いの続きと洗濯をしていた。
なお、特に溜まっているわけでもないので、すぐに終わったのだが。
そして風呂から上がったゴルダは自室へ行き、着替える。
仕込み武器を持って行こうか考えたが、エシュフィルトも自衛できないようなペーペーでもないし、ゴルダも大体の奴は素手でも倒せる。
なので、アルガントの万が一用の装備だけを持ち、それ以外は長ズボンとちょっとやそっとの刃物では切れないシャツに腕時計などをつけた。

「乗せて行くよ、乗った乗った」

出ようとすると、乗れと言うのでゴルダはエシュフィルトとアルガントを前に乗せ、自分は後ろに乗って南部を目指す。
なお、南部へは40分足らずで到着。
氷燐は3人を下ろすと、帰る時は読んでくれと言って何処かへ行ってしまった。

「そういえば今見たい映画が公開中だったな」

「映画かぁ」

「ホラーはダメ、ホラーはダメ…それ以外なら」

歩きながら、ゴルダは公開中で見たい映画があったのを思い出す。
エシュフィルトとアルガントは、それに対してはどうしようかと言いたげな一言を漏らす。

夏にもかかわらず、あっちもこっちも人でごった返しているドランザニア南部のこの都市は、この世界の人と経済の中心と呼ぶのにふさわしい。
そして気づけば、3人はとある映画館の前に来ていた。
どうする?とゴルダに聞かれた2人は

「父さんと同じの見る」

「同じく」

などと答え、結局3人で同じのを見ることにした。
映画を見終えた後、エシュフィルトがカラオケに行きたいなどと言い出したので、今度はそこへ行くことに。
案外近くにカラオケ店があったので、そこに入った。
入ったら入ったで、アルガントも想像がつかないほどに歌いまくったとか。
その後、フリータイムが終わるまで歌って店を出た3人。
夕飯時かとゴルダが思っていると、エシュフィルトが携帯片手に店探しをしてたかと思えば、ゴルダにいきなり画面を見せてここへ行こうと言う。
エシュフィルトから携帯を借り、詳しく調べるゴルダ。
そこまで悪い店ではないようだ。
その上、アルガントもここがいいと言っている。

「ここ行くか、多数決だ」

多数決だと言って、ゴルダは2人を連れてその店へ向かう。
店はバーのように落ち着いた雰囲気をしていて、客もそういったのがほとんどだ。
手近なテーブルに座り、メニューを見るゴルダ。
値段は高めだが、それはさほど気にならない。

最初に3人はそれぞれ酒を頼んだ。
エシュフィルトとアルガントはフルボディで辛口の赤ワインをボトルで、ゴルダはウィスキーのロックだ。
酒がテーブルに運ばれて来ると、特に乾杯もせずに3人は飲み始める。
そして飲み始めて10分、アルガントが口を開く。

「んー、エシュフィルトって月属性の適性高いかも?多分化けるよ」

2人のそんな会話をよそに、ゴルダは料理を注文し、酒を追加。

「月属性は使えると面白いよ、月の力で魔力回復もできるし」

「あらあら」

一方、エシュフィルトとアルガントは完全に2人の世界に入ってしまっていた。
それは、料理が来たことにすら気付かないほど。
しかし、ゴルダの一言で2人はこちら側へ戻ってきた。

それから5分後。
レアステーキにかぶり付くアルガントと、無心で粉チーズを入れ過ぎたパスタを食べるゴルダにサラダだけをフレンチドレッシングで食べるエシュフィルト。
互いに一言も話さずじまいだ。
ある程度食べ終えたところで、ゴルダはエシュフィルトに

「なんでまた今日は?」

などとゆさぶりをかける。
それにエシュフィルトは涼しい顔で

「気が向いたからだけど、ダメ?」

と答えた。
ゴルダはそれにダメではないと言って、グラスの中身を空にする。
また2人が昔のように戻るには時間が必要だろう。
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小説(一次) |

一次創作小説(交流系)一覧 その2

・輝星と緑雲と花吹とアルガティアと
1

・夢の告げを実行せよ
1

・レナとアルガティアと手芸
1

・封印という名の包帯下の真実
1

・名義変更で記憶復活
1

・輝星とアルガティア-料理を教えてもっらった
1

・4人で焼き肉
1

・アルカトラスの姓を授かったようです
1

・雨月とアルガティア達-イファルシアにイタズラされたようです
1

・心配事は急に
1

・出会いはいつも唐突
1

・ニ色女王と四色王子
1

・ナナちゃんの異界旅行
1

・アルカトラスと思ったら別竜だった
1

・見知らぬ地での出会い
望月由梨亜とエシュフィルト
1

・昏黒と輝星とシアと
1

・レナと七夕
1

・裂け目の先で
フォロワーの創作キャラのとアルガティア一行
1

・ルナリアクラフト
1

・転送先で一騒動
フォロワーのキャラの中から3人出演、キャラはこちら
1

・騒がせトリオと不思議系女王
上の後日談
1

・レナと花火
1

・オージェとアルガティア-滝打たれ
1

・ナロニィとアルガティア一行とゴルダ
1

・研修参加者は異界の者
ミリーとレヴィンにサフィ
1

・詩の姫とアルカトラス
フォロワーのキャラの詩姫とアルカトラス、大分前のを引っ張って来ただけ
1

・詩の姫とアルカトラスとその仲間たちのクリスマス
1

・相手するはキメラ
フォロワーのキャラのシタキリとゴルダ
1

・チェンジ・ザ・オージェ
やや注意表現あり
1
未分類 |

昏黒と輝星とシアと

ジリジリと焼くような夏の太陽の下、輝星は昏黒を引っ張ってセイグリッドに来ていた。
輝星は普通にアルカトラスの毛編みの帽子なのだが、昏黒は違った。
昏黒は輝星手作りのこれまたアルカトラスの毛編みのターバンのようなものを巻き、目は別途隠しているという不審者そのものの姿。
なお、昏黒がこうしているのは輝星からこれで直射日光を防ぐといいよと言われて渡されたものを身につけたらこうなったのだ。

「…もっとゆっくり歩かんか?」

「暑い所より涼しい所だよ、早く早く」

昏黒などお構いなしに走る輝星だが、ある店の前で急停止。
その際、昏黒は転びそうになったがなんとかバランスを正して事なきを得た。
そこで何かを買い、輝星はそれを昏黒の目隠しと交換。
それは何かというと、サングラスだ。
ただし、ただのサングラスではない。
店の方を見ると、同じようなサングラスが置かれている所に張り紙で

「太陽だって見れる 実際安全で紫外線9割カット」

などと信憑性を疑う売り文句が書いてある。
昏黒は、一度サングラスを外してまたつけ直してから

「さっきよりマシか」

さっきよりはいいかと呟く。
それに輝星は

「わーい」

と暑いにも関わらず盛大に飛んで喜んだ。
これで昏黒の不審者度が半減し、怖い人物度が数倍に跳ね上がった。

一方、こちらはセイグリッド城のアルカトラスの書斎。
そこにはシアが暑さで全くやる気がなさそうに書類にサインしていた。
なお、今日はエシュフィルトどころがアルカトラスすらも居ない。
この時の室温は、かなりのもので熱中症のリスクもとても高かった。

「まだ涼しくならないわ」

このままだとまずいと思ったシアは、冷房の魔法を使ったはいいのだが一向に涼しくならない。
効き始めるのに時間を要することは知っていたのだが、ここまでとなると急速の方が良かったとシアは思う。
そして、そんな時に

「こんにちは」

「失礼する…」

輝星とアルカトラスから聞いていた王子の1人の昏黒がやって来た。
暑さでぼーっとしていたシアは、2人を細目で見る。

「暑くないですシア様?」

「…溶ける暑さだ」

細目で見られた2人ははてと思っていたが、すぐに部屋の暑さに押されて思わずそんな一言が出てしまう。

「もうちょっと待ってて」

それに対して、シアはもう少し待つように2人に言う。
これには、2人ともぽかんとせざるを得なかったのだが、シアの言った意味を2人はすぐに理解することになる。
シアがカリカリと遅くペンを走らせる音を聞きながら、2人は汗を垂らしながら待っていると次第に冷えてきた。
だが、最初は涼しいくらいで済んでいたのにだんだん涼しいどころか寒くなって来たので昏黒はシアに

「 強すぎて逆効果だ」

と一蹴。
それにシアはそうねと言って冷房の魔法を止めた。
だが、それでも寒いものは寒いので、昏黒はターバンのようなものを解いて首に巻き、輝星はシアの毛の中へ。
もふもふぬくぬくしている輝星を見て、昏黒は無礼に当たるのではと思っていたが

「別にいいのよ、あなたもどう?」

まるで心を読まれていたかのようなことを言われ、昏黒はサングラスを外してシアに素顔を見せて

「輝星が満足なら、それでいい」

などと言って拒否。
その十数秒後、サフィがアイスを持って部屋へ入って来たが、部屋の寒さを察したような顔をしたので昏黒は

「一足遅かったな」

と一言。
それにサフィは仕方ないわねと下がった。
この流れを遠目に見ていた輝星は、少しがっかりしていたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

リヴァルスウルフの1日

未だ謎の多い狼族、リヴァルスウルフ。
全く人目に触れることもないので、謎が明かされることはほとんどない。
だが今日は、シェリスの協力得てその1日を覗いてみることにしよう。

リヴァルスウルフ達の1日は、まだ夜も明けない時間から始まる。
夜明け前に、見張りがシェリスを起こして見張りを交代。
夜明け前から夜明けまでの時間の見張りは、基本的にその族の長が行うのが決まりだ。
なお、リヴァルスウルフの族は最小は50匹、最大で100匹という規模になっている。
ちなみに、シェリスが率いるこの族は、最大の100匹。
種族そのものをまとめる長が居るので、必然的に族を構成する数も多くなるのだ。

そして夜明け。
それと同時にシェリスは吠えて仲間を起こす。
この吠え声はとても特徴的で、聞けば誰でも飛び起きかねないとか。
シェリスはその後、起床した仲間を見回り、体調の悪そうな者が居ないかを確認した後に朝礼のようなものを行う。
これは族によってはやったりやらなかったりするらしい。

朝礼が終わると、朝の狩へ出かける。
リヴァルスウルフの食事は朝と夕方の2回で、昼はない。
狩は1チーム10から20匹の班に分かれて毎日交代で行う。
もちろん長であるシェリスも狩には出るが、今日はあいにく当番ではないようだ。
シェリスの率いる族は100匹居るので全員に行き渡る数を狩らなければならない。
狩は上手く行けば2時間くらいでは終わってしまうという。

狩の担当チームが戻ってきたところで、シェリスが獲物の数をチェック。
その後、獲物を分け与えて朝食となる。
だがシェリスは最初からは食べず、仲間が食べ残したものを頂くといった食事の仕方をしている。
その理由は、少食なのであまり食べなくてもいいかららしい。
朝食後は、これまた毎日変わる掃除の担当が骨などを片付け、後は何か無い限りは自由時間となる。

時間は朝から昼の時間帯へと移り変わる。
一見暇そうに見えるシェリスなのだが、実は違う。
朝食後はここの族長として、そしてリヴァルスウルフ全体を束ねる長としての仕事が待っている。
朝食の後は、子持ちの仲間などの所へ行って困ったことがないかを聞く。
族の仲間の1匹1匹の精神状態も含めた全ての健康状態を気遣い、把握するのも族の長としての役目なのだ。
それぞれに聞いて回っていると、シェリスはこんな相談をされる。

「他より体が小さいからって、からかってくる奴がいるんです」

これから察しが付くように、リヴァルスウルフの社会にも大人子供関わらずいじめというのは存在している。
おそらく、人間に近い知能を持った弊害だろうか。
もちろんいじめを極力無くすのもシェリスの役目だ。
当然シェリスはいじめている者へには厳しく対応、今度やったらお仕置きするのでもうやらないようにと釘を刺す。

その後、別の族の長がやって来た。
何をしに来たのかというと、相互情報交換である。
天気や獲物に関すること、自分と他の族の近状報告を行う。
これに夕方近くまでシェリスは時間を取られた。

そして夕方から夜に時間帯は切り替わる。
情報交換をしている間に、夕方の狩から担当のチームが戻ってきた。
ようやく情報交換をしていた他の族長も帰り、シェリスは息抜きが出来た。

「ふう」

夕食も残っているものを食べようとしていたが、狩担当の1匹がわざわざシェリスの分と分けて持ってきてくれたのでシェリスはそれにがっつく。
そして、夕食にありつきながらふと後継者のことを考えるシェリス。
リヴァルスウルフは普通の狼の倍以上の寿命があると言われている。
シェリスは人間換算で15足らずで全てを束ねる長となったので、世代交代はずっとずっと先の話だ。
それを思うとシェリスは馬鹿馬鹿しくなったのでそれ以上はそれについて考えるのをやめた。

夕食後、また自由時間となるのだがリヴァルスウルフの就寝は早い。
食べ終えて少しするともう寝る者が居るのだ。
そこから次々と就寝し、最後に起きているのは見張りくらいしか居ない。
こうしてまた1日は過ぎて行く。

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小説(一次) |

狩猟対決

氷燐に乗り、時折冷たく弱い風が吹くリヴァルスの雪原を駆け抜けるゴルダ。
その表情はとても険しいが、これはいまやっていることに真剣になっているからだ。
そして片手には、かなりのカスタマイズを行った弓が握られており、眼前にはリヴァルスウルフと鹿が4匹と4匹ほどの割合で直進中。
見ての通り、ゴルダはリヴァルスウルフと狩猟対決の最中なのである。
では、なぜゴルダとリヴァルスウルフがこんなことをしているのか?
それは1時間ほど前のこと。

「ここだここだ」

「申し分ない場所なのだな」

特に夢で呼ばれたわけではないが、遊びに来た感覚でシェリスの所へ来たゴルダ。
氷燐が居るので、いつもより楽にシェリスの居る森の住処へ行くことが出来たのだが

「おいおい、あいつただの馬じゃないよな。何だ?」

「だろうよ、と言うより馬の皮を被った何かだろ。おお怖い怖い」

「変なの連れて来るなよな、この間のカーバンクルの奴がマシだったぜ」

「あーあ、またかよ。困るねえ」

数匹は氷燐のことをあまり良くは思っていないというよりは露骨に煙たがるようなことをひそひそ話していた。
ゴルダはなんちゅう奴らだと一言言おうとしたが、氷燐は自分のような麒麟を見るのが初めてだからだと諭す。
諭されたゴルダは、しばらくその数匹を睨みつけるように見ていると、今までそこに潜んでいたかのようにシェリスが現れた。
シェリスはその数匹が氷燐に何かを言っているのを聞いたのか

「お前達、なんだその態度は。私が認めた者が変な奴を連れてくるはずがなかろう」

などと一喝した後にゴルダと氷燐に挨拶をした。
2人は一応の挨拶を返し、ゴルダはシェリスに氷燐を紹介する。
だがしかし、その間にもこの数匹はなんだかんだと言うのでついにはシェリスが

「全く、そんなに気に食わないならば勝負で白黒付けなさい。狩猟対決で」

その数匹とゴルダに氷燐を同時に見ながら言う。
納得が行かないなら勝負で白黒付ける、ぞれがリヴァルスウルフのやり方らしい。
一方的に狩猟対決を押し付けられたゴルダと氷燐は、やれやれと思いながらも付き合うことにした。
仕方ないなという顔をしているゴルダと氷燐を尻目に、シェリスはその数匹にこう忠告する。

「一応れっきとした勝負よ、ズルしたらこの一族から追放よ。それは肝に命じなさい」

ルールはターゲットは鹿で固定、制限時間はシェリスが吠える自主的に戻って来るまで、狩った数の多い方が勝ちという単純明快なもの。
なお、ゴルダと氷燐が負けたにしてもこの数匹からさらに煙たがられるだけ。
あまりにも安いリスクだ。

そして、シェリスの吠えと同時に勝負開始。
ゴルダは氷燐に乗り、普段はそこまで使わないアルガティアに独自に調整してもらった魔力矢を使える弓を持ち、雪原へと駆け出す。
これが1時間ほど前の話だ。

現在、ゴルダは散開して逃げた2匹を追跡中。魔力矢を弓に装填し、弦を引き絞って片方を射る。
矢は左後ろ足に命中はしたが、鹿は止まらない。
間髪入れずにゴルダは続けて2本目を装填、もう片方を射る。
こちらは右後ろ足に命中して雪の上に転倒。その転倒した鹿の急所である頭部へさらに1本。
これで片方は仕留められた。
だが、あと1匹残っている。
ゴルダは魔力矢から放出される魔力を頼りに、氷燐を走らせる。
なお、その1匹はそこから100メートルほど進んだところで簡単に見つかった。
どうやら後ろ足の神経を上手い具合に射抜いたようだ。
ゴルダは氷燐から降り、その鹿へ近付く。
見た目でもう風前の灯と分かる状態のその鹿に、ゴルダは無表情で止めを刺した。

「慈悲があるのかないのか、分らないものだ」

と、それを見て呟いた氷燐にゴルダはこう返す。

「慈悲ってのは、時と場所と場合を考えてかけるべきものであって、誰にでも所構わずかけていいものではない」

その後、氷燐を後ろからついて来させてゴルダは仕留めた鹿2匹を引きずってシェリスの所へ戻る。
シェリスは2人の成果を見てやるじゃないと感心した。
一方のあの数匹は成果はゼロ。
互いに文句をぶつけ合っているところから、勝つことばかり考えて肝心なことを忘れていたようだ。
そのため、この数匹は後でシェリスにこってり絞られたという。

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小説(一次) |

ドランザニア語まとめ

※現在構築途上中につき情報量は少ない
抑えたいポイント
・英語系統がベースの言語
・地方、国で発音やスペルが違ったりする。いわゆる方言みたいなもの
・「L」と「R」を区別しないなどと言ったことがとても多い(「C」と「S」なども区別しない)
(アクセントなどは現在構築中)

ドランザニア語一例集
()は別のスペルのパターン

L(R)ucel
意味:こんにちは
発音:ルシェル

Naby(bi)e
意味:分かった、了解した
発音:ナビエ

Wecaddrger
意味:援軍を(一般的ではない)、助けて
発音:ウィカドゥドルギア

Vlide
意味:出血
読み:ヴライデ

Nmal
意味:ノーマルと意味は同じ
読み:ヌマル

Poiz
意味:毒
読み:ポイズ

Etasle
意味:その他
読み:エタセル

Seiglid
意味:聖
読み:セイグリッド

Dnese
意味:闇、暗黒
読み:ドネス

Hmter
意味:火
読み:ヘムテル

Wotelia
意味:水
読み:ウォテリア

Widner
意味:風
読み:ウィドネル

Ishels
意味:氷
読み:アイシェルス

Muum
意味:月
読み:ムーム

Astrise
意味:地
読み:アストライズ

Grishal
意味:草
読み:グリシャル

Voderal
意味:無、虚無
読み:ヴォデラル

Mlute
意味:泣く
読み:マルーテ

Nghie
意味:夜
読み:ナイエ

Zomuve(Zmube)
意味:ゾンビ(に近い意味)
読み:ゾムヴィ(ゾムビ)
創作関係全般 |

潜って水中作業

ドランザニア西部、スリュムヴォルドとの国境をまたがって存在する湖。
この湖は、アヌシア湖と呼ばれるこの世界唯一と言うと語弊があるが、実際この世界の他の湖は南限の大地にしか存在しないので一応正しい。
大きさは日本の琵琶湖の3分の1ほどで、最深で80メートルほどの深さ。
そして、湖底に存在する洞窟はスリュムヴォルド城の地下洞窟に繋がっていると言われている。
しかもこの湖自体が水源としても有効なために、スリュムヴォルドとドランザニアの間では長年水面下の睨み合いが続いているのもまた事実である。

そんなアヌシア湖のスリュムヴォルド側で、ゴルダは氷燐に乗って歩き回っている。
何をしているのかというと、エルフィサリドが潜っているので変な輩が来ないよう見回っているのだ。
何故エルフィサリドが潜っているのかというと、湖底洞窟と城がちゃんと繋がっているのかの確認をしている。
ここの湖底洞窟は、非常時のスリュムヴォルド側の避難経路となっていて、何処かで崩れているとその役目を果たさなくなる。

「暇なもんだ」

「変なのはそうそう来るものじゃないしね」

などと言って、氷燐が湖面を駆けてみるか?と冗談を飛ばしているとエルフィサリドが水面から顔を出し、尻尾で手招いて来た。
何だと氷燐から降りて近寄ってみれば、一緒に来いと言うのだ。

「ナンデ?」

ゴルダが理由を聞くと、エルフィサリドは洞窟の途中で崩落が発生したのか、岩が道を塞いでいるのでそれの撤去を手伝って欲しいとのことである。
ちなみにゴルダは側近としての能力の1つに、息継ぎ無しで泳げるというというのがあるので何ら問題はない。
なので、少し準備運動をしてから氷燐には待機しているように伝え、湖に入ってエルフィサリドについて行く。
深さ80メートルともなれば、水圧などが心配だがエルフィサリドが近くに居れば加護が発動するのでその辺りは大丈夫だ。

そのまま15分ほど泳ぎ、2人は崩落箇所へ到着。
手始めにゴルダは岩の大きさと、他に崩落の恐れが無いかを調べ、それが無いと判断したところで、どこからか出した水中用工具で岩に穴を開ける。

「そんなんで大丈夫なの?」

エルフィサリドがゴルダにそう聞く。
水竜でもなければ、水中では普通の会話が不可能なので、互いに意思を飛ばしあって会話をするのが一般的である。
その他には、ハンドサインやアイコンタクトもあるが、こちらの方が最もよく使われている。

「とりあえず少し強力な水中仕様の爆弾で破壊する」

ゴルダはエルフィサリドにそう返し、尚も穴を空け続ける。
それから20分近く岩に穴を空け、ゴルダはその穴で固定するようにどこからか爆弾を取り出してセット。
エルフィサリドに合図するまでもなく、ゴルダは爆弾を起爆して距離を取る。
10秒ほどのカウントの後に、爆弾は爆発。
その際破壊された岩の欠片が飛んで来たが、そこまで気になるものでもなかった。
その後は再び崩落も起こらず、確認の意を込めて城の方まで泳いだところ、何事もなくたどり着いたという。

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小説(一次) |

ゴルダは車などに乗れるようです

まだ夜も明け切らぬ、午前5時ごろのドランザニア中部の市街地。
そのコンビニ以外開いてない市街地の中で、唯一例外で開いている農協に軽トラックを運転して野菜の出荷代行を行うゴルダの姿があった。
無論、これもれっきとした依頼の1つである。

「風邪引いたから代わりに収穫から箱詰めに出荷まで代行してくれってなあ…ま、その分は相応にぶん取るが」

などと呟きながらも、きちんと出荷の代行までを終わらせて、ゴルダは依頼主の家まで戻る。
ちなみに、ゴルダは運転の技術は無いかと思われがちだが、実際はそうでもない。
一応免許も持っていて、車だけではなくヘリなども乗れば操縦は可能とのこと。
なぜそんなことができるのかという理由は、封じられた記憶に真実が隠されているという。
そして、ゴルダは依頼主の家へ行き、出荷したと言う報告とトラックを返してから帰宅。
その後家へ帰って、氷燐とアルガントと朝食を食べてからゴルダはまた別の依頼へと行く。

向かった先は、またもや中部の市街地。
しかし今度は切羽詰まった解体工事の現場で、ゴルダは依頼主の現場総責任者と話をしてからヘルメットを被り、解体用の重機のユンボに乗る。
なぜゴルダに依頼が回って来たのかというと、このユンボを扱える作業員がこれまた風邪でで休んでいるので、その穴埋めである。
当然ながら、ゴルダはユンボのような重機も扱うことが可能なので、ときたまこんな依頼が来ることも珍しくは無い。

「しかしこのユンボ、メンテもいい加減だな。レバーの操作やペダルの踏み具合に違和感がある」

今しかた呟いたように、ゴルダはこういった物を動かせるだけではなく何気に整備や修理などの知識や技術まで頭と体に叩き込んでいる。
一体封じられた記憶に何があるのか、とても気になる所である。
その後夕方近くまで重機を動かし、ゴルダは現場から立ち去った。
依頼は今日1日だけなので、明日は行かなくてもいいのだ。
その帰り道、コンビニで立ち読みをしていると、ゴルダはある農業の雑誌でやたら軽トラックとトラクターを持つことを勧めるという、なんともわけのわからない記事を発見。

「どういう考えをしたらこんな記事が書けて、許可が降りるやら」

などと思いながら雑誌を棚へ戻したゴルダは、壊れた軽トラックを引き取って自分で修理して使ってやろうかと考える。
そして、1人思い当たる節があったので、ゴルダは今から行ってみるかとその者の家へ行くことに決めた。

その後、思い当たる1人の所へゴルダは向かう。
ちなみにその1人とは、ゴルダ家の近くに住む両者とも100歳超えなのにまだまだ元気な農家の夫婦の家。
子供は全員独立して南部で暮らしているらしく、会ったことはない。
そのためか、ゴルダに対して孫のように接し、いつも農業関係の依頼をしてくる。
だがしかし、ゴルダはそんな2人の名前を知らない。
以前教えてくれと言ったのだが、やんわり断られた。
噂では、悪魔の一族らしいが真実は謎のままだ。

「ああ、ゴルダかい。いいよ、壊れてていいならもらって行っても。この間の依頼の報酬代りにね。新しいのを買ってしまったからもう修理する必要もないんだ」

「じゃあ、もらって行くぞ」

この老夫婦が言うように、壊れた軽トラックの横には新車の軽トラックがドンと置かれていた。
壊れた方の軽トラックは、5速マニュアルのマナ燃料車で、いくつか部品がいかれて動かなくなったとのこと。
ちなみにマナ燃料車とは、液化魔力。すなわち液化マナで動くエンジンを搭載した車で、普通のガソリン車やディーゼル車と何ら変わらない。
しかし、ちゃんとした対策を施さないと汚染された気化マナを大気中に放出してしまうので、その辺りは厳しい基準が設けられている。
そしてゴルダはサイドブレーキを倒し、人力牽引でその軽トラックを持ち帰った。

「さて、どこが壊れてんだ?」

持ち帰った後、ゴルダは万能工具セットを持って来て魔法で壊れた箇所を調べる。
結果は簡単な修理で動くようにはなるものの、かなり分解する必要があった。
氷燐とアルガントの夕食の支度もせず、分解修理を始めるゴルダ。

「ほどほどに分解メンテはされてるな、おかげで分解しやすい」

1時間ほど油まみれになりながら修理をしていると、アルガントが

「飯ー」

と催促してきたので、一旦中断。
油汚れを落として夕食を作って食べさせた。
その後は日付が変わるまで修理を続けてなんとか終わらせたと言う。
なお、壊れていた部品はどう交換したのかは考えてはいけない。

翌朝、どこからか入手したマナ燃料を補給し、その軽トラックに乗り込んだゴルダはキーを回してエンジンをかける。
マナエンジン独特の音を出しながら、エンジンは奥ゆかしくかかった。
その後は何事もなく発車、早朝の農道をのんびり走らせたが、過不足ない走りを見せてくれた。

「そんなに乗ることはないだろうが」

備え付けのラジオのスイッチを入れて聞きながら、その後も同じ速さで農道を走らせていた。

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アルガントの留守番

アルガントが来てもうどれくらい経ったのか分からないある日。ゴルダはアルガントに留守番を任せた。
依頼で地球まで遠出しなければならず、しかも1人で来るように依頼人から言われて居るからだ。
だが、そんなに時間のかかる依頼ではなく、夜までには帰って来れそうなもの。
なのでシアに預けずに留守番をさせることにしたようである。
しかし、氷燐と留守番させて本当に大丈夫なのかと思われがちだが、それは問題ない。
なぜならば、ここで暮らし始めた当初よりもアルガントは成長しており、ぬいぐるみなしでほったらかされても泣くことがほとんどなくなったのだ。
その理由として、以前に増して感情の制御が出来るようになったからだと言われている。

話は戻り、留守番を任されたアルガントは自信満々に大丈夫だ問題ないとゴルダに言う。
それに何のフラグも感じず、ゴルダはその一言に安心したようにアルガントを撫でてそのまま出かける。
こうして、家にはアルガントと氷燐だけになった。
なお、アルガントと氷燐の関係は可もなく不可もなくなのだが、好んで遊んだりすることがない。
その理由も、さだかではないようである。

ゴルダが出かけて行って30分くらいはソファの上でごろごろしていたアルガントだが、30分も経つと、台所へ向かう。
台所はゴルダが出かける前に食器などは全部洗って干してある状態で、時折流しの蛇口から水が垂れる音がする。
アルガントは流しの下の戸棚を開け、何かを探る。
実はこの戸棚、ゴルダが酒のつまみの菓子を置いておく場所なのだ。
たまにアルガントもくすねて食べることもあるが、これまでゴルダにそのことで怒られたことはない。

「ラッキー、コーンチョコまだ残ってたや」

菓子を1つだけ出して戸棚を閉め、アルガントは今度は冷蔵庫へ。
元々1人暮らし用には大きすぎる代物だったが、アルガントや氷燐が来てからはそうでも無くなっている。
だがそれでも、十二分な大きさを誇る冷蔵庫であることに変わりはない。
そしてアルガントは一番上の扉を開けた。
冷蔵庫の中には昨日の晩飯のおかずの残りをはじめとして、大量の卵、チーズなどの乳製品や飲み物などが入れ過ぎない程度にぎっしりと入っている。
もちろん、飲み物の中にはゴルダの酒も含まれる。

「昨日でトマトジュースは飲んじゃったからなあ…どうしよ」

ゴルダの酒を無視して、アルガントは他に飲み物がないか調べる。
ミネラルウォーター、緑茶、炭酸水。色んな飲み物がある中でアルガントが目をつけたのはカシスの炭酸飲料だった。
それと先ほど取った菓子を持って、アルガントはまたソファへ戻る。
そして、ゴルダがちまちまと買っていたDVDの中からコマンドーというのと他に適当に1本出して見始めた。

「これがゴルダの言ってた蒸気抜きかあ」

菓子とジュース片手にそのまま最後までコマンドーを見続け、アルガントはまた別のDVDを見始めた。
今度は学校の怪談2という映画だったが、アルガントは途中で見るのをやめてしまった。
それもそのはず、アルガントはこの手の映画にはまったく耐性がないからだ。
以前もゴルダが心霊写真のDVDを見ている時も、ゴルダに引っ付いて見ていたほど。

「…慣れないや」

気付けば4時間近く経っていたので、アルガントは氷燐に昼飯を与えることにした。
なお、アルガント本人はまったく腹が減ってないようである。
アルガントが行ってみると、氷燐は自分の小屋から出て畑の周りを回っていた。
そして、アルガントに昼はどうするかと聞かれてもうそんな時間かと言う。

「何にする?」

「もう冷蔵庫に豆腐はなかった?」

アルガントが何にすると聞くと、氷燐は冷蔵庫に豆腐が無かったかと聞いて来たのでアルガントはさっき冷蔵庫を開けた時の記憶を引っ張り出す。
だが、豆腐が入っていたような記憶は無かったので、首を横へ振る。
氷燐はそうかいと少しがっかりしたように言って、適当に野菜持って来てよと言う。
アルガントはそれに頷き、冷蔵庫から野菜を持って来て氷燐に渡す。

「暑いね」

「まだそんなには暑くないよ」

「そうかい?」

暑いねと言った氷燐に、アルガントはまだまだと答えると氷燐はそうかいと返す。
実際のところ、今の気温は体感でも30度前後でその上セミまで鳴いている始末。
これで暑くないとはそんなに言えないだろう。
そしてそこへ氷燐が

「そうめんが食べたいなあ」

と言い出したので、アルガントはゴルダに頼めばいいじゃんと即答。
氷燐はそれもそうだねと言って、それ以上は何も言わずに黙々と野菜を食べていたのでアルガントは家の中へ戻る。

家の中へ戻ったアルガントは、ゴルダの部屋でパソコンでネットをやり始めた。
ゴルダが使っていたのを見ていたので、使い方に関しては問題はない。
そしてしばらくネットをやっていると、最近の依頼でゴルダが報酬にともらって来た、机の右隅に置かれている卵のような何かが目に入る。
色はエメラルドグリーンに近く、大きさはサッカーボールほど。
興味が完全にそっちへ行ったアルガントは、ネットを中断してその卵のような何かを手に取る。

「あれ、微弱に魔力が放出されてる?」

手に取った際の重さは、小石ほどでゴルダが言っていたよりも軽い。
試しに叩いてみたところ、中に空洞があるような音がした。
それを受けて、アルガントは魔力を注ぎ込んでみるが目立った変化はない。

「あれぇ?」

その後も、色々試したのだが全て無駄骨だった。
しまいにはカチンと来たアルガントは、床にその卵のような何かを置いて空手チョップで割ってやろうとした。

「帰ったぞ」

だがしかし、そこでゴルダの声がしたので慌ててアルガントはそれを元の場所へ戻す。
その後、アルガントはゴルダの所へ行き、ちゃんと留守番してただろうなと聞かれてうんと答えた。

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一次創作小説一覧 その4

・ご注文は爆弾で?
1

・アルガントの留守番
1

・ゴルダは車などに乗れるようです
1

・潜って水中作業
1

・狩猟対決
1

・リヴァルスウルフの1日
1

・親子の時間は程よく
1

・集中こそが成功のカギ
1

・マフェポ族を救え
1

・刀と氷悠と
1

・冥府竜ウラヘムト
1

・定期診察-アルガティア
1

・ウラヘムトの恐るべき能力
1

・その能力、走りのために
1

・真夏の砂漠の中で
1

・水面の葉の上での食事
1

・真夏の氷牙
1

・星を見る
1

・依頼の帰り道の出来事
1

・ゴルダと物言わぬ患者たち
1

・調髪と調毛
1

・風鈴の鳴る頃に
1

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ご注文は爆弾で?

ドランザニア南部の繁華街。
ここは治安が悪い地区と良い地区という両極端な都市。
そんな治安の最悪の地区のとある場所柄にポツリとある大きなバー。
ここはならず者達が唯一何もしてこない場所で、この治安の悪い地区の中では唯一安全な所。
バー店内には、メタル調の音楽が大音量で流され、柄の悪そうな者達が酒を煽ったり、何かの話をしていたりとしている。
そして、店の隅に追いやられるように置かれているダーツの筐体が置かれている側のテーブルで、ゴルダはジントニックを飲みながら誰かを待っていた。
なぜこのような場所にゴルダが居るのだろうか?
その理由は簡単で、依頼のためにここに来ているからだ。
しかも、待ち合わせはこのバーのこのテーブル。

「…」

ゴルダはグラスを空にし、もう1杯頼もうかとしている所へ依頼人と思わしきアサシンの服装をした人物がテーブル前へやって来る。
依頼人は、ゴルダの顔を確認すると謎の荷物を渡す。
大きさは横が50センチ、縦が20センチほどの長方形の梱包された箱で、少しずしっとくる重さがあった。

「届け先の住所はこのメモにある、必ず手渡しで『注文は爆弾で?』と言うように。報酬は駅のこの写真のコインロッカーに入れた。これが鍵だ」

届け先と報酬の事などを伝えた後、メモと写真と鍵を渡した依頼人は煙のように忽然と消えた。
ゴルダは一体なんだったんだと思いながらも、カウンターに5000ゴールド紙幣を叩きつけて釣りはいらんと付け加えてバーを出てメモの住所へと向かう。

向かった先の住所には、雑居ビルが佇んでいて、その最上階の部屋が届け先となっている。
当然ながら、この雑居ビルがあるのはならず者達がはびこる地区の中だ。
辺りには金目の物を奪おうと身を潜めているならず者が居るが、ゴルダがただ者ではないと確信しているのか襲って来る気配はない。
そしてゴルダは、正体を悟られないよう己に魔法で小細工をして、服装を日本のある大手宅配便の配達員の制服にしてから雑居ビルへと入った。

ビルの中は、特に監視カメラのようなものはなく、エレベーターもない。
あるのは、壁一面の落書きや切れて役目を果たしていない照明とガラクタくらい。
ビルそのものの保守はされているようだが、部屋のドアは錆食っていたりとボロボロだった。
ゴルダはそのまま無言で階段を上がり、目的の部屋の前へたどり着く。

「ここか、悪趣味な紋章だな」

目的の部屋のドアには、なんとも言い難い紋章が描かれていたがゴルダはそれを気にせずにドアをノック。
すると中から絵に描いたようなチンピラが出て来た。

「あぁ?なんじゃい?」

「お届け物です、ご注文は爆弾で?」

依頼人に言われたとおりに言ったところ、チンピラは何言ってんだこいつはという顔をしてそれ以上は何も言わずに荷物をぶん取り、ドアを乱暴に閉めた。
チンピラがゴルダから荷物をぶん取った時、カチカチという音がしていたがゴルダはそれに気づかずに階段を降りながら元の服装へ戻り、ビルを出る。

そして、ゴルダがビルから100メートルほど離れた時だった。

「やはり爆弾だったか、しばらくここには近寄らない方がいいな」

背後で爆発音が鳴り響き、何かの破片を背に受けながらゴルダはそう呟くとあらかじめ待機させていた氷燐を呼び出し、そのまま乗って駅へ向かう。
氷燐はゴルダに一体何をしたんだい?と聞くが、ゴルダはそれに答えず、駅へ向かうように言う。

「私の質問には答えて欲しいんだけど、まあいいか」

そう言って氷燐は治安の悪い地区を抜け、治安の良い地区にある駅を目指す。
ドランザニアの道は、アスファルトではない別の何かで舗装されており、車でも氷燐のような馬などの動物に乗って移動しても大丈夫なようになっている。
しかも水はけもそこそこ良く、普通に歩いてもアスファルトほど足に負担が来ないという。
そんな道を車などを尻目に走り抜け、氷燐はゴルダを駅まで送り届けた。

「そこでしばらく待っていてくれ」

「早めにね」

タクシーの列の中に紛れ込むようにして氷燐は立ち止まり、その場で待機することになった。
普通、こんなタクシーの列の中に馬が居たら邪魔だと思われたり珍しがられたりとされるはずだが、ドランザニアではこんな風景は日常茶飯事なのだ。
なので、時折氷燐を見る者は居ても退かそうとする者は居ない。

一方のゴルダは、写真のコインロッカーを見つけて鍵を開け、中身を確かめて居た。
中身はそれなりの額が書かれた小切手と、サッカーボールほどはある謎の卵らしき物。
なんでこんな物が入ってんだとは思いながらも、ゴルダはその卵のらしき物も回収し、氷燐の所へ戻ってそのまま家へ帰った。

後日、他人を使って様々な場所を爆破していた連続爆破魔が逮捕されたというニュースを見ていたゴルダは、こいつ見たことがあるぞとなったが、それ以上は何も思わなかったという。

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小説(一次) |

一次創作小説一覧 その3

・ゴルダとニフェルム
1

・賢竜の暇つぶし
1

・日課はそう簡単には抜けない
1

・白色に魅かれる理由、神聖視する理由
1

・やり返しは愚の極みか?
1

・ムサヅキの寝床掃除
1

・姿消して近づくはエルフィサリド
1

・アルカトラスとリヴァイドとアワパラゴンと
1

・再開-セレノアと
1

・晴れもほどほどに
1

・定義書き換えは慎重に
1

・命令入れりゃあとは自由
1

・潜って水草探し
1

・水分身のカトレアとゴルダ
1

・たまには寝過ごしたい
1

・エーヴィヒの1日の一部
1

・ゴルダとシェリス
1

・書簡渡し-アワパラゴンに
1

・苔竜探し
1

・その名はアルガント
1

・アルガントとシアと
1

・日常-ゴルダとアルガント
1

・シスイの日常-誰かと会うのも悪くない
1

・バハムードとアルカトラス-プライベートに付き合ってくれ
1
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一次創作小説一覧 その2



・アルガントとサフィ-同属性持ちとの関わり
1

・満月の食後には月光花を添えて
1

・水竜の内を覗けば
1

・月に手を伸ばせば
1

・霧を待てば
1

・創造神の悩み
1

・血を与えれば
1

・終わらない種蒔き
1

・ゴルダとシスイ
1

・サマカンドラとアルカトラス-書類処理の手伝い
1

・聖竜布の話
1

・向日葵を植えよう
1

・王立諜報機関へようこそ
1

・蒸し暑い夜の仕事
1

・シアとアルカトラスと飲もう
1

・ゴルダとエゼラルドとフィルスとイファルシアと
1

・3倍もふもふ
1

・アルガントと風邪薬
1

・シスイの移住計画
1

・シスイの移住
1

・サフィの休日
1

・南限の大地へ
1

・折り紙折りて切り絵をも作る
1

・つかの間の一緒の時間
1

・梅雨空の下で
1

・ゴルダとエーヴィヒと時の鍵
1

・ゴルダとエルフィサリド-舟釣りならぬ背上釣り
1

・感情のある不思議なサボテン
1

・ゴルダの料理-チキンライス
1

・害虫・害獣駆除は一苦労
1

・ゴルダと時雨-団子を作ってやった
1

・(風)水神の話
1

・エルトナとサフィ
1

・ゴルダとリヴァイド
1

・エルトナとゴルダ
1

・梅雨を明けさせる
1

・馬と思ったら麒麟だった
1

・側近としての覚悟、使い魔としての覚悟
1

・護衛対象は実娘?
1

・実娘と鍛錬
1

・聖以外の属性の医療魔法
1
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見知らぬ地での出会い

気が付いたら全く知らない地に居た時、あなたはどうするだろうか?自分の使っている言葉が通じるとも限らず、帰れるのかすら不明。
だがしかし、万が一にも自分の使える言語が通じ、帰れる可能性があるならばあなたはどうする?これはそんな話。

とある夜のセイグリッドの城下町の一角。
そんなに遅い時間ではないのだが、人通りが全くもってなく、聞こえるのは家々から漏れる話し声に時折吹く風の音、そして野良猫の鳴き声くらいだ。
その町中に、ある1人の女性がどこからともなく現れた。
女性の名は望月由梨亜。濃いめの青髪に眼鏡にネックレス、グレー系の服の姿の教師だ。
仕事が終わり、帰宅途中だった由梨亜だったのだが、その道中で違和感を感じてから今さっきまでの記憶だけが一切ない。
今一度、辺りを確認してみるが、明らかにここが日本でないことには違いない。なぜならば、建っている家の造りが日本とは全く違う上に、少し先には城まで見えるからだ。

「そうだ、繋がるかしら?」

と言って、由梨亜は試しに携帯を開いてはみたが、電波の表示は圏外。
これでは使うことは出来ない。

「どうしましょうか…」

これでは打つ手がないと、どうしようか途方に暮れる由梨亜。
そんな所へ、神が味方したのだろうか桃色の髪に黄色の目。そして桜色の本の中でしか見たことがないローブという服を着けた少女が通りかかり際に由梨亜に話しかけて来た。

「---?」

しかし、由梨亜には少女の言っていることが理解出来ない。
英語のようでそうではない、かと言ってドイツ語などでもなさそうである。
そこで由梨亜は、試しに英語で少女に

「ちょっといい?英語か日本語は話せる?」

と話しかけた。
なお、こんな時間に少女が1人で町中を歩いているのは、最初はおかしいと思った由梨亜だが、この少女が『普通』ではないというのに感付いてそれを聞くことはしなかった。
すると、少女は今度は日本語で

「この辺りでは見かけない方ですけど、どうかしましたか?」

どうかしたのかと聞いてきた。
由梨亜はとりあえず言葉が通じたのに安心し、ここがどこなのかを聞く。

「あなた見た感じ日本人ですよね?ここはドランザニアという世界の光竜王国セイグリッドですよ」

少女は、ここがドランザニアという世界のセイグリッドというくるであることを説明。
それを聞いた由梨亜は、ここが地球のどこ国でもないということに混乱の色を隠せなかった。
しかし、混乱していても仕方ないので少女に自分がどうしてここに居るのかを説明した上で、何が原因なのかを問う。
すると少女は、言って分かるかな?という顔をしながら

「うーん、もしかしたら神隠しに近いものの被害にあったのかも」

神隠しに近いものの被害にあったからだと言う。
そう原因を説明され、由梨亜は頭の中で無理矢理理解した。

この時点で、ここへ来てからどれくらいの時間が経ったのだろうか、少し冷たい風が吹いて由梨亜は身震いする。
日本は夏なので薄手の服で問題はなかったが、このセイグリッドという国はそうでもないらしい。

「寒そうですけど大丈夫ですか?とりあえず帰る手段はあるのでその辺りは心配しなくていいですよ」

「そう、それが聞きたかったの。安心したわ。それよりあなたの名前は?私は望月由梨亜です」

「エシュフィルト=ララトスシェです」

寒そうにしていた由梨亜に、少女は大丈夫かと聞いた上で帰る手段はあると話す。
気付けば近辺の民家のほとんどはすでに明かりが消えていて、聞こえるのは風の音か野良猫の鳴き声くらいだ。
そして、ほっとしてから少女名を聞く。もちろん自分から名乗った上でだ。
少女は名をエシュフィルトと名乗った。

「それより、さっき言ってた神隠しに近いものの被害ってどういうことなのかしら?」

由梨亜は、ここで少女ことエシュフィルトに聞いていた中で引っ掛かった事を聞く。
それにエシュフィルトは

「魔法を信じるかそうでないかで、かなり違うんだけど?」

魔法を信じるか否かで違うと返す。
由梨亜は、それに帰れるならばいいと思って頷いた。

「流石にこれ以上ここで話すのも何だから、着いて来て下さい」

ここでこれ以上話すのもと言ったエシュフィルトは、由梨亜に着いて来るよう言う。
由梨亜はエシュフィルトを信用していたので、迷わず着いて行く。
そして、着いて行った先に見えたのは、ここに来た時に見えていたあの城。
えっ?と思った由梨亜だが、ただでさえここに居ること自体がおかしいのだから、もう何が起きてもおかしくはないと割り切ったので何も言わなかった。
城へ入ったエシュフィルトは、10分ほど城内を移動。その間に由梨亜は城の内装に見とれていた。
城そのものはシンプルな造りだったが、所々の彫刻などの装飾が城であるとアピールする。まさに職人技だ。

エシュフィルトに由梨亜が最終的に通された部屋は、客室そのもの。
部屋の広さは、ありがちなビジネスホテルのシングルの部屋が少し広くなった程度ながら、それでも十分に広かった。

「今日はもう遅いから泊まって行って、帰す時の時間のつじつま合わせは大丈夫だから」

「ありがとうございます、それより話の続きを」

話の続きをしてくれないかと由梨亜に言われ、エシュフィルトは分かったわと言ってかれこれ1時間近く話し、由梨亜はその後就寝。
その翌朝、エシュフィルトがまたやって来て、すぐにあの時間より少し経ったあの場所へと送り帰してもらい、由梨亜また何事もない日常へ戻った。
そう、これらの出来事を誰にも言うこともなくだ。

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小説(交流) |

聖以外の属性の医療魔法

常に一定の環境に保たれ、梅雨でも蒸し暑くないシアの塔。
そこで今日も真面目にエシュフィルトは鍛錬中。
だが、つい最近からはセイグリッド王立大学の魔法学部医療魔導学科へ行くことを目指し、そういう勉強も欠かしてはいない。
そんな中、シアがどこからか入手してきた王立大学の医療魔導学科の入試の過去問に挑戦していると、エシュフィルトはこんな問題で詰んだ。

「聖属性以外で、主に医療目的で使われる属性魔法を書け」

古くより、聖属性の魔法しかやってこなかったエシュフィルトにとって、この問題は解けないに等しかった。
しかし、エシュフィルトもただ出来ないで済ませるような精神の持ち主ではない。

「あれれ?ないなあ」

シアに読んでいいと許可されている本棚を探り、その系統の本がないかを調べるも、それらしい本はない。
シアに聞こうにも、今日はアルカトラスの代理で留守にしており、アルカトラスもそこまで暇ではない。
ではどうするか?エシュフィルトは何かを思いついたかのようにある者の家へ向かう。

場所は変わって、ドランザニア中部のゴルダの家。
今日も相変わらず暇そうにしつつも、畑仕事をしている所へ

「へえ、ここが父さんの家かあ」

「…さてはシアにここを教えてもらったな?まあいい、上がれ」

エシュフィルトがやって来た。
ゴルダはそんなエシュフィルトを見て、どうせシアから教えてもらったのだろうと家へ上げる。
家に上げてもらったエシュフィルトは、ゴルダに例の問題を見せてこれが分かるような本はないかと聞く。
だが、ゴルダは知らんと即答した。
これにエシュフィルトは少しがっかりしたような顔をしたが、ゴルダにアルガティアの所へ行けば何かしら教えてもらえるだろうと言う。
ちなみに、エシュフィルトはアルガティアのことはゴルダから話を聞いたぐらいで、実際に会ったことはない。
その聞いた話とは、アルガティアはゴルダの従姉妹であること、聖リフィルという島国と呼ぶには領土が広い国の女王だということぐらいだ。
父さんが知らないならと、エシュフィルトは今度はアルガティアの所へ向かった。

リフィルまでは、座標指定テレポートを使用して向かったエシュフィルト。
着いた先は、城下町でも城にほどよく近い位置で、すぐ目の前には城門も見える。
しかし、さほど規模が大きくないことに気付いたエシュフィルトは

「アストライズは屋敷だったから、まだこっちの方がいいのかもね」

などと、自分の生まれ育った国の国王が住む場所をリフィルの城と比較して皮肉るように呟く。
そして城へ入り、アルガティアを探していると庭でのほほんとしている姿を発見出来た。

「こんにちは」

「エシュフィルト、だったかしら?」

声をかけるや、アルガティアから名の確認をされたのでエシュフィルトはそうですけどと答える。
アルガティアはその返事には何も答えず、不思議そうにエシュフィルトを見つめる。
しかも、見つめているのはアルガティアだけではなく、その頭の上に乗っている緑のカーバンクルまでこっちを見ているのだ。

「ゴルダに本当に娘が居るとはね」

その緑のカーバンクルは、唐突にそんなことを呟く。
これまた、エシュフィルトはこのカーバンクルがゴルダに聞いていたイファルシアだというのを思い出して

「本当よ、イファルシアちゃん?」

少しからかうように緑のカーバンクルことイファルシアをちゃん付けで呼ぶ。
それにイファルシアは、特に機嫌を悪くするわけでも何か言い返すわけでもなくじっと見ていた。

「そうそう、私に何か用?」

ここで、アルガティアはエシュフィルトに自分に何か用があって来たんでしょと、何か用かと聞いてきた。
それにエシュフィルトは、ゴルダにも見せた問題を見せる。
アルガティアはそれを3秒ほど見てから、どこからか「医療魔法全集」という本を出して、エシュフィルトに貸すと言う。

「えっ?いいの?ありがとう」

礼を言って、エシュフィルトはその場で読んでみることに。
内容はそれこそ全ての診療科を網羅し、さらにそれが各属性ごとにもまとめられているというものだった。
その後エシュフィルトは帰宅し、その本を穴が空くほどに読んだ。

「あら?なんだろうこの魔法?」

そんな中、エシュフィルトの目に1つ魔法が目に留まった。
それは、脳神経外科の項目のある風属性の魔法。
内容は

「脳神経へ非常に弱い電流をある信号として流し、記憶の復活を行う魔法」

というもの。
エシュフィルトは一瞬これを使えばとは思ったが、すぐにその考えを改めた。
なぜかというと、現実はそう簡単に行くはずもないから。
だがしかし、エシュフィルトはいずれはゴルダの記憶を全て復活させるつもりでは居た。
そう、医療魔導師となり、本当の意での癒術師となって。
そのためにも、今は医療魔導学科へ行こう。
エシュフィルトは改めてそう決心したのだった。

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アルカトラスと思ったら別竜だった

どういう理由かは判然としないが、雨月と輝星という珍しいコンビがセイグリッドへ遊びに来ていた。
ちなみに、今日はアルカトラスは異界での会談で留守にしているのだが、そんなことは2人とも知る由もない。
とりあえず城の本館までやって来たのだが、いつもは出迎えてくれるはずのサフィが今日は姿を見せなかった。
どうやら今日のサフィは忙しいらしい。

「…長居は出来そうにないのだ」

「えー?」

長居は出来そうにないと呟いた雨月に、輝星はえーと言って、アルカトラスがいつも仕事をしている書斎の方へ行ってしまう。
無論、雨月も輝星の後を追いかけたが、輝星の走る速さに追いつけず歩いて後を追うことにした。

一方アルカトラスの書斎では、シアとエシュフィルトがアルカトラスがすっぽかして行った今日中に処理しなければならない書類を片付けていた。

「全くもう、少しくらいやってから行けばいいものを」

「ほぼ全て申請書に対する返答ね」

「あなたが今持ってるの全部却下の返答だから、そこに置いてあるそれぞれの封筒に入れて封して」

「はーい」

こんな感じで、エシュフィルトとシアが書類の整理をしていると、誰かが書斎の扉をノックした。
お茶などは頼んでないので、サフィが来るはずもない以前に今日は忙しいから必要以上に呼び出すなと言われていたので違うとシアは確信して

「エシュフィルト、悪いけど出てくれる?」

エシュフィルトに出させた。

そして場面は変わって、輝星。
アルカトラスの書斎の前にたどりついて、扉をノックする。
すると、出て来たのは桃色の髪に黄色い目をした桜色の不思議なローブ姿の少女。

「中へどうぞ」

「えっ?うん」

少女に入っていいと言われて入った輝星に次いで、息を切らしながら走ってきた雨月も書斎へと入った。
書斎へ入ると、パッと見た感じではアルカトラスと同じ姿の竜が少し不機嫌な様子で仕事をしていたので、雨月は

「忙しい所に来て申しわけないのだ、アルカトラス殿」

と何時もの調子で言う。
するとその竜は、ちょっと待てと右前足を出す。
一方の輝星は、本当に微妙な魔力の違いを感じ取って

「アルカトラス様じゃない?じゃあ誰?」

アルカトラスではないと見切り、では誰なのかと聞く。
ここで、改めてこの竜を見てみるとアルカトラスと違う点が2つある。
1つは角が4本という点、もう1つは目が青ではなく赤いという点だ。
はたして、この竜は一体何者なのだろうか?

「誰と聞かれたら答えるのが礼儀ってものよね、私は実質上のアルカトラスの妹のシアよ。アルカトラスは全くの他人同士で突き通してるけど。あとあなた方2人とそのお仲間の話はアルカトラスから聞いてるわ」

ここで、アルカトラスではないと輝星に見切られた竜は、シアと名乗り、アルカトラスの妹であると話す。
雨月と輝星は、なるほどと納得し、それはそうとそちらの方は?と雨月はシアの横にいる少女のことを聞く。

「シア様の弟子のエシュフィルトです」

すると、少女自らシアの弟子のエシュフィルトであると名乗った。
エシュフィルトに名乗られたところで、挨拶を忘れていた雨月と輝星はシアとエシュフィルトに挨拶する。
その後、今日はどうしたのかとシアに聞かれてただ遊びに来たことを話すと、アルカトラスが今日は居ないことを2人は聞かされた。

「そうそう、私はこの世界の生命の創造神で管理者なのよ。知ってるとは思うけど、アルカトラスはこの世界そのものの管理者で創造神ね」

「なるほどなのだ」

「わーすごーい」

あくまでも純粋さを見せるためなのかなんなのかは不明だが、輝星はシアが生命の創造神にして管理者と聞いて目をキラキラさせていた。
さらに輝星は

「ねえねえ、エシュフィルトって何しているの?」

エシュフィルトに何をしているのかを聞く。
なお、輝星がエシュフィルトを呼び捨てで呼んでいるのは、本人がさん付けはやめてほしいと言ったからである。
その問いに対するエシュフィルトの返答は

「癒術師、って言って分かるかな?」

というものだった。
当然輝星は癒術師という職は聞いたことがないので、首を傾げた。
エシュフィルトはそんな輝星にそんなことも分からないのかなどという態度は取らずに

「白魔導師って言ったら分かるかな?要するに魔法による医療行為を行う職のことよ」

丁寧に説明。
すると輝星はそういうことかと納得した素振りを見せてくれた。

その一方で雨月はというと、すでに今日中に処理しなければならない書類を全て片付け終えたシアにもふられていたというよりは、前両足の間に座らされて抱かれていると言った方がいい状態であった。
そんな雨月は、やめぬかとも言えず照れている様子。

「わあ、肌触り良さそう」

「シア様の機嫌次第だけど、いつもは肌触りは最高よ」

などと、遠回しにいいなと言っているエシュフィルトと輝星。
するとシアは、そんな2人を引き寄せて3人まとめて抱いたのだ。

シアの毛の肌触りは、こういう経験など皆無の雨月も、経験があるエシュフィルトに輝星ですらも骨抜きにするほどのものであった。
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ナナちゃんの異界旅行

近年、地球からドランザニアへ旅行に来る者は少なくはなく、ルート次第では海外へ行くよりも異界旅行の方がずっと安いことが多い。
さて、そんなことは置いておいて、今日はスリュムヴォルドに友人数人と旅行に来ているある女子高生を見てみよう。
その女子高生の名は、深海ナナ。
自身も亜人で、同じく亜人の友人とこの世界の水に関わるこの国に旅行に来ている。

なお、スリュムヴォルドの季節は初夏でナナが日本で通っている高校のある地域とさほど変わらないので、ナナは楽しく観光中。
治安もそこまで悪いわけではなく、変なことをしなければ何の問題もない。

「潮風が気持ちいいな」


潮風に着ているパーカーのフードをなびかせながら、ナナは1人城下町を歩く。
城の前から直進し、5分も歩けば海という環境なので城下町のいたるところで潮風を感じることができるのだ。
城下町の造りは石造と木造で、ほとんどが石で建てられているが、ところどころに木が使われているのも確認できた。

「日本の家の作りとはまた違ってるのが面白いわ」

異界かつ異国の家の作りに感心しながら、ナナは無意識のうちに海の方へと向かっていた。
それはなぜなのか、何を隠そうナナは亜人は亜人でも人魚なので水あるところへ行ってしまうのは仕方のないこと。
そしてナナは、漁港から少し離れた場所の砂浜までやって来た。
もう泳げるくらいの暑さはあるのに、砂浜には人っ子一人見当たらず貸し切り状態。
ナナは、濡れないように波打ち際に座って海を眺め始めた。

そしてそれからどれくらいの時間が経過しただろう。
ふと横に誰かの気配を感じてナナが横を見ると、とても大きな緑の生物が同じように海を眺めていた。
その大きさにナナは圧倒されたが、そんなに驚くことはなくこの生物の種族が何だったかを思い出す。

「あっ、もしかして竜とかドラゴンとかそういう種族の方なのかな?」

ナナがその姿から導き出した種族は、竜あるいドラゴンという種族。
本では読んだことはあるのだが、実際に見るのは初めてだ。
すると、緑の生物改め緑の竜が

「あなた、1人?」

と話しかけてきた。
この時、ナナは日本語を話していたのだが、その竜も日本語で話しかけてきたのでこれには少しナナも驚く。

「えっ?ええそうです。海を見ると落ち着くんです、とても。それより日本語話せるんですね」

「通訳とか翻訳の魔法を使えば簡単な話よ、覚えていて損はないかもよ?」

日本語を話せるんですねとナナが言ったところ、緑の竜は通訳や翻訳の魔法を使っているからだと返す。
ナナはそんな便利なものもあるんだと、1人納得しているとまた緑の竜が

「そういえば挨拶がまだだったわね、エルフィサリド=スリュムヴォルドよ。ここで会ったのも何かの縁かしらね、よろしく」

今度は挨拶してきたので、ナナの方も

「深海ナナです。こちらこそよろしくお願いします。ところでエルフィサリドさんって姓が国名なんですね」

挨拶を返した。
しかし、その挨拶の中に紛れていた勘付いたナナの質問に緑の竜ことエルフィサリドは

「それはね、私はこの国の女王だからよ」

自分がこの国の女王だからだとさらっと答えた。
それを聞いたナナは、とても驚いた様子で

「ええっ!?エルフィサリドさんって…王様だったんですか!?」

と確認するように聞きながらあたふたする。
だがそれに対してエルフィサリドはまんざらでもない様子で

「この世界で一般人が国王と出会うのはそこまで珍しくなくてよ?皆礼節弁えてればブランクな付き合いを好むわ」

珍しくなくてよ?とナナに言った。

それから10分くらいあたふたするナナを、エルフィサリドは落ち着くまで穏やかな様子で待ち、ナナが落ち着いたところで

「あなた、人魚なのね」

人魚なのねと単刀直入に言うが、ナナはそれに対しては特にこれといった反応は見せずに

「分かるんですか?」

分かるのかと聞き返したところ、エルフィサリドは

「匂いでね」

匂いで分かると答えた。

その後数分話した後に、エルフィサリドはナナに

「ちょっと沖の方で泳いでみる?そんなに汚れてるわけでもないし、せっかくだからと思ってね」

沖の方で泳がないかと聞いたところ、ナナははいと即答した。
すると、エルフィサリドはナナに背に乗るように言い出す。
ナナはよりによって一国の国王の背に乗るなど恐れ多いとは思いながらも、せっかく許可されたのでととりあえずはその背へ乗った。

「そんなに揺れないとは思うけど、注意はしてね」

なんとも言えない感触を感じながら座っているナナに、エルフィサリドはそう言って砂浜からそのまま海へ入って行き、沖へと泳ぎ出す。
ナナは沖へ向かうエルフィサリドの背で、微動だにもせず石のように固まったまま動かなかった。
それでもエルフィサリドは沖へ沖へと泳いでいたが、あまり沖へ行き過ぎると潮の流れが速い場所にぶち当たってしまうので危険。
なので、エルフィサリドは泳いで5分くらいのところで止まった。
なおこの場所の深さは、大体20から30メートル前後だ。

「あの、服とかは…」

「私の背に置いてていいのよ」

「わざわざすみません」

泳ぐにしても服をどうすればいいのかと聞いたところ、エルフィサリドから背に置いてていいと言われ、ナナはエルフィサリドの背の上で服を脱いでからそこに置いて海に入る。
ワイン瓶1本分より少し少ない水を浴びただけで人魚に戻るナナにとって、海は十二分すぎる量の水を提供している。

「こんな海がある環境で住めたらどんなにいいんだろう」

透明度がとても高く、魚の種類も豊富な海中を見てナナは将来的にはこの国に住みたいとすら思うようになってきていた。
実際、この国の城下町は海が目と鼻の先で毎日海で泳ごうと思えば泳げるのである。
だがしかし、毎日海で泳げるというのもまた考え物ではないだろうかとナナは思う。
頻度が低いからこそありがたみが分かる、逆に頻度が高いとありがたみが分からなくなる。
すなわち、バランスが大切なのだ。

それからエルフィサリドにもう引き上げようと言われるまでナナは泳ぎ、再び背に乗って人の姿に戻ってから砂浜へと戻った。
そして宿を決めてないと話したところ、城の客室を一室貸してくれたと同時にディナーまでナナ達一行は用意してもらい、とても思い出しに残る旅行になったという。

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竜滅病に関するまとめ

竜滅病の歴史
大陸歴2000年代後半(具体的にすると大陸歴2700年の終わりごろ)に媒体となるウイルスと共にこの病は発見された。第一号の患者は、この病が発見された時には末期だったがために、発見から1年5ヶ月後に心疾患で死亡。
その患者の死後、ウイルスサンプルは大陸の様々な竜医や幻想獣医の手に渡り「個」での研究が始まった。
2800年の終わり〜2900年の前半、大陸幻想獣医師会が竜滅病に関する研究プロジェクトを発足。
これまで個で行われた研究を一括管理しようとした。
研究助成金などで研究がやりやすくなった反面、手続きなどが面倒になった部分もある。
2950年頃に、進行を遅れさせる薬の他に竜滅病の検査方法を確立し、駒を一気に進めた。
そして現在(3014年)、根本的治療薬の研究が続いている。

竜滅病概要
竜滅病は竜滅病ウイルスを媒体として感染する病。
潜伏期間はとても長く、100年以上というケースも報告されている。
発症すると、足の神経から蝕まれるので初期症状として足のしびれがある。
発症してからの症状の進行には個人差はあるものの、上へ上へと徐々に神経が蝕まれて行く。
末期症状は、まったくの寝たきりとなり、こうなると心臓の神経が蝕まれて心疾患で死亡するのも時間の問題となる。
発症すると死亡率は100%。

感染経路
エイズとほぼ同じ経路での感染と研究で明らかにされている。

治療法
根本的な治療薬はまだないが、発症を遅れさせたり抑える薬はすでに研究により開発されている。
なお、昔はこの薬の副作用が強烈過ぎて、「何か」を失う者も少なくはなかった。

患者数
10万に1の割合だという
創作関係全般 |

ニ色女王と四色王子

水竜宮の雨月の自室。
今日はエルフィサリドのことを花吹に話そうと呼んだところ、緑雲も来たのでついでだからと2人に話す雨月。
さらに、花吹にエルフィサリドが会いたいと言っていたと伝えたのだが、どうにも今回は乗り気ではないらしい。

「何か理由があるのだ?花吹殿?」

何かが引っかかるなと、雨月が理由を問いただしたところ花吹から帰ってきた返事は意外なものであった。
その理由とは

「ちょっと異世界に行くのに疲れたんだ、すぐにってわけでもなさそうだし。そう言う感じで手紙を出してくれないかな雨月君」

異世界へ行くのが疲れたというもの。
雨月はそれを聞いて仕方ないのだと呟き、その旨を手紙に書こうとすると緑雲が

「国交はないにせよ、直々にそのエルフィサリド様に指名されてるんだ。会わないというのははたしてどうだか」

などと言ったせいで、花吹と緑雲はあっという間に険悪ムードへ突入。
当然、雨月がどうにかできるような状態ではなく

「困ったのだ…」

と呟いてどうすればいいのかと悩む。
するとそこへ、助っ人とも言える輝星がやって来た。
輝星はあからさまな険悪ムードの花吹と緑雲を見て、雨月にどうしたのかと聞く。
雨月はそれに対して、ため息をつきながらエルフィサリドの話を輝星にもし、さらに花吹と緑雲がこうなっている原因も話した。

「うーんとじゃあ、ぼくに任せてよ。2人を説得するから」

と言って、輝星はまずは2人の険悪ムードを解消させるために説得したのちに、花吹をさらに説得。
その結果、花吹も一応考えを改めて

「じゃあ行きましょうか?」

と言ってくれた。

そしてそれから数日後。
雨月の手紙がアルカトラス経由でエルフィサリドの元へ渡った。
当初は、雨月が花吹だけを連れてくるものだと思っていたが、他にも2人が来ると書いてあるのを見て、面白いことになりそうだわと思いながらも、予定を調整してセイグリッドへ行く日を決めた。

それからさらに数日後。
雨月一行はセイグリッドへとやって来ていた。
そしていつものようにアルカトラスの部屋に真っ直ぐ行くとアルカトラスは普通に出迎えてくれたのだが、エルフィサリドは一旦姿を消していたらしく、4人がアルカトラスに挨拶を終えた辺りでスッと現れた。
これには雨月と緑雲と花吹は普通に出てくればいいのにと思い、輝星はやたらとすごいすごいと褒めていた。

「エルフィサリド殿、こちらが花吹殿なのだ」

一応、会いたいと言っていたのは花吹なので、雨月はエルフィサリドに花吹を紹介。
残る緑雲と輝星もエルフィサリドに挨拶をした。
すると、エルフィサリドは花吹以外に輝星に興味を強く示したようで

「その子、とても純粋そうね。アルカトラスと同じ属性?」

などと言ったところ、アルカトラスの方が輝星が光竜であると説明。
それを聞いたエルフィサリドは

「あらあら、将来が楽しみねえ」

などと言って、かなり力を加減した上で尻尾で輝星の頭を撫でた。
その様子を見ていた緑雲は

「年下ほど大人や年配に可愛がられるって奴か」

などと呟いた。
これは兄弟が居る者ならば、誰しも経験したことはあるだろう。
祖父母の家に遊びに行けば、孫だから皆可愛がられはするのだが、その比重は末っ子に大抵は偏るという事実を。
エルフィサリドが輝星に強く興味を示したのは、まさにそれなのだ。

それから4人はアルカトラスを交えてエルフィサリドと色々話をしていたが、雨月が初めて会った時のように、尻尾でぺちぺちしようとする素振りすら見せなかった。
よっぽどアルカトラスにきつく言われたのだろう。
ここで、エルフィサリド長い尻尾に興味を示したのは花吹と輝星。
花吹が

「その尻尾、長いと何かと便利そうですね。長いからネックになることはあってもそれを補正できるくらいには」

長いと便利そうだと言ったところ、エルフィサリドは機嫌を良くた。
さらに輝星の方は撫でられた時の感触がよっぽど気に入ったのか、アイコンタクトで触っていいかと聞いてからひたすら触って来たので

「ふふふ、面白い子達ね。気に入ったわ。今度私の国に遊びに来なさいな、雨月も緑雲もね」

どういう理由でそうなったのかは知らないが、自分の国に遊びに来いと言ったのだ。
流石にこれには4人とも礼を言わざるを得なかった。

その後、帰り際に花吹と輝星はエルフィサリドに呼び止められ、花吹は持って行きなさいとどこから出したのか分からない高そうな魚をもらった。
なお、輝星は

「純粋なのはいいことなのよ、」

と言った後にエルフィサリドからキスをされたという。
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雨月とエルフィサリド

ある日、雨月にアルカトラスからこんな手紙が届いた。

「汝に会わせたい他国の王が居る、その者は風水竜と言い汝と花吹を掛け合わせたような竜王だ」

わざわざ会わせたいと手紙を送ってくるからには、何かあるのだろうと思い、雨月はセイグリッドへとやって来た。
季節は梅雨から初夏へと変わっており、日傘すら持ってない雨月には厳しい直射日光が降り注いでいた。
熱中症には気をつけなければと、雨月は影から影へと歩きながら城へと向かう。

「日陰でも暑いのだ、しかしアルカトラス殿の言う風水竜も気になるのだ…」

なんとか城へとたどり着き、一息ついた雨月はそう呟いてアルカトラスの所へ。

「アルカトラス殿、来たのだ」

「…」

いつもの調子でアルカトラスの部屋に来た雨月だが、アルカトラスの少し困ったような顔を見て、一体どうしたのかと思った。
とりあえずは挨拶をせねばと、アルカトラスに近寄り、いつものように挨拶をしたがアルカトラスから返事がない。
表情からして、無視されてないことは明らかなのだが、アルカトラスは依然として困ったような顔で黙り込んだままである。
これでは何があったのかが全く分からないと、雨月も困りかけたその時。

「後ろを取ろうとしているのは分かっているのだ」

背後に何者かの気配を感じた雨月は、後ろを取ろうとしているのは分かっているから姿を見せるよう促してから自身も振り返る。
するとそこには先ほどまでは全く姿も気配もなかった薄めの緑の体に毛も鱗もない不思議な体に数メートルはあるような尻尾を持つ竜が居た。

「うふふ」

「あれほど礼節を弁えて普通に待っていろと言ったはずだぞ、エルフィサリドよ」

「この者が風水竜なのか、ずいぶんなお茶目さんなのだ…」

アルカトラスに苦言を言われた竜を見て、雨月は1人で納得する。
エルフィサリドと呼ばれた竜は、そんな苦言をさほど気にする様子もなく雨月を興味深く見ていた。

「おっと、紹介を忘れていた。この者が風水竜王国スリュムヴォルド国王のエルフィサリドだ」

ここで、アルカトラスは雨月にエルフィサリドを紹介。
雨月もエルフィサリドに挨拶をしたが、その際にエルフィサリドが尻尾で雨月の頭をぺちぺちと叩こうとしたのでアルカトラスが

「止めよ、他世界の国の王に何をする気だ汝は」

止めよと止めてくれたので叩かれずには済んだものの

「これが私なりの挨拶なのよ」

「場と相手に立場を弁えぬか」

それにエルフィサリドが屁理屈を返したので、アルカトラスは場と相手に立場を弁えるように言った。
エルフィサリドの尻尾で相手の頭を叩くという行為イコール挨拶と聞いた雨月は、どういうことなのかと改めて聞く。

「我にもたまにぺちぺちと叩かれることもある」

「私の国の竜たちの間ではこれは一応れっきとした挨拶なのよ、目上には控えめにするんだけど」

「なるほど…」

エルフィサリドの話を聞いて、こんな挨拶の仕方もあるのかと雨月はそれに再び納得した。
そして、雨月のエルフィサリド第一印象はというと

「水竜にしてはそれらしくない、かと言って花吹のような風竜かと思えるかと言われたらそうでもない。なんとも微妙なのだ」

というものだった。

それからしばらくアルカトラスも交えてエルフィサリドと話をしていると、エルフィサリドの方から

「あなたの世界にも風竜は居るの?」

と聞かれたので、雨月は花吹の事を話す。
すると、エルフィサリドは興味津々な顔で

「今度会わせてはもらえないかしら?」

「分かったのだ」

今度会わせてくれないかと頼まれたので、雨月は花吹と相談してから決めるという意味合いを込めて分かったと返す。
そしてその後雨月は、そのまま引き上げて帰ったという。

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一次創作小説一覧 その1

・聖竜とエルフと半竜半吸血鬼と
1

・双子-姉妹で違うところ
1

・ドランザニア-世界の誕生
1 2 3 4

・孤独は、他者不信の者のために


・風癒竜との日常
1

・大狼神の暇つぶし
1

・花見のようです
1

・雪原の狼族
1 2

・初夏の墓参り
1

・真夏の暇つぶし
1

・もふ日和
1

・氷竜国国王の一日
1

・出会い-サフィとアルカトラス
1

・切れし首輪
1

・制御とは何たるものなのか
1

・血を飲むのは計画的に
1

・使役しよう管狐
1

・代わりを務めるための泊まり
1

・日常から非日常、非日常から日常へ
1

・戻りし妹弟
1

・アルカトラスとエーヴィヒ
1
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うちの連中プロフリンク

※リンク先の絵は描いてもらったものに関しては全て許可を得た物のみを使ってます

ゴルダ=R(ルエル(リヴァイド))=アルカトラス
バハムード=R(ルエル(リヴァイド))=アルカトラス
サマカンドラ=R(ルエル(リヴァイド))=アルカトラス
聖竜アルカトラス(本名:アルカトラス=アルシェリア)
始祖竜シア(本名:シア=アルシェリア)
アルガティア=ライラ
イレーヌ=ライラ
サフィ=アルヴォールド
イルフェス=カルトベール
紫月三姉妹
セレノア=アルカトラス
エルリス=ルクセリオ
ムサヅキ
シスイ=アルディリス
エルフィサリド=スリュムヴォルド
カトレア=スリュムヴォルド
エゼラルド
リヴァイド=リヴァルス
エーヴィヒ=クロノス
アワパラゴン=アストライズ
ルライエッタ=シュメール
セシルティア=リヴァルス
ルナシリア=シュメール
シェリス
アルシェリア
ロドルフォ=R(ルエル)=アルカトラス
エルナ=R(ルエル)=アルカトラス
キルファ=アルシェリア
ニフェルム=クレースティア
フィルス
イファルシア
桜雪時雨
アルガント
エルトナ=ラトルフォニア
ネルシェ
銀月氷麟
エシュフィルト=ララトスシェ
イリアス=ライラ
ナーチェニア=アルヴォールド
アムテプス=アルヴォールド
宮城氷悠
ウラヘムト=ヘルヘムス
キーリアス=ブルファーシュネト

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一次創作小説(交流系)一覧 その1

余所様の創作子が出ていたりする系はこっちに

・もふサンド
1

・もふっとしたら何かが覚醒した
1

・来客-アルガティアにレナ
1

・来客-アルカトラスにレナ
1

・4人で花見
アルカトラスとシアとレナとアルガティアと、来客-アルカトラスにレナの続き
1

・赤毛の竜がやって来た
1

・5人でババ抜き
1

・辻とシア
1

・アルガティアとラトレナス-共有だけではどうにもならない
1

・ゴルダと黄色い子もといルナリア
1

・レナとサフィとサマカンドラ-手入れはお任せ
1

・ルナリアとラトレナスと-蘇るは姉妹の記憶
1

・春の海岸で
1

・悠とシアと
1

・雨月とアルカトラスの会談
フォロワーの雨月とアルカトラスの話、会談は穏やかに進む
1

・アルカトラスと6人の王子
1

・輝星の御使い
1

・ゴルダとレナ
1

・緑雲と花吹の奇妙な植物持ち帰り計画
1

・初めての散歩は裏山
1

・むぎゅとルナリア
1

・輝星とアルガティアたち-思わぬ初対面
1

・投げてゲット
1

・謎の買い物とルナリアの秘め事
1

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出会いはいつも唐突

今日も何気なく、レナはセイグリッドへやって来てシアと遊ぼうと思い、塔の方へ向かう。
しかし、塔へ行ったところシアの姿はなく、代わりに見慣れない桜色のローブ姿の少女がシアの物と思わしき魔法書を読んでいるのが確認できた。

「あれ?見慣れない顔だな、シアさんの知り合いかな?」

少し不思議に思いながらも、レナはその少女に近付く。
特に警戒心などは感じず、魔法書を読むのに没頭していてこちらには気付いてないらしい。

「あの…」

とりあえず話し掛けてみようと、レナはその少女に声をかける。
すると、少女はこちらへ振り返ったかと思いきやいきなりもふっとレナにダイレクトアタックをしてきたのだ。

「わわっ…!」

「わー、すごいもふもふでかわいい」

驚くレナをよそに、少女はひたすらにレナをもふっていた。
ゴルダやシアですらこんな急に触ってくることはないので、少々戸惑い気味である。

「あら、来てたの」

そこへ、来たのか戻ったのかのどっちなのかは判然としないものの、シアが現れた。
少女はシアを見てレナから一旦離れ、その横に立つ。
すると、シアはその少女を前足で撫でつつ

「レナ、この子はエシュフィルトよ。つい最近から私に弟子入りしてここに住んでるの」

最近自分に弟子入りしたエシュフィルトであるとレナに紹介した。
少女改めエシュフィルトは、さっきはごめんなさいねと言って頭を下げる。

「エシュフィルトさんだね…よろしく」

紹介を受けたレナは、一応は礼儀だとこちらからも挨拶をした。
そして、シアと自分が友人関係なのはもう知っているだろうし、雰囲気的にエシュフィルトはゴルダを知ってそうなので、ゴルダとの関係も言おうとしたが

「エシュフィルト、レナはゴルダとも友達なのよ」

シアの方が先に言ってしまった。
それを聞いたエシュフィルトは、そうなのねと納得した上で

「父さんにこんな友人が居たんだ」

と呟く。
そのエシュフィルトの呟いた父さんという言葉に強く反応したレナはどういうことなのかを2人に聞く。
するとシアは、レナにこう言った。

「ゴルダとエシュフィルトは血の繋がった親子よ、まだ判然としないけど」

このシアの一言の後にエシュフィルトが

「最初に言えばよかったわね」

と付け足す。
レナはシアの話を聞いて一応は納得したものの、頭の中には?マークが若干ながら浮かんでいた。
なので、レナはなんでゴルダが今までそんなことを言わなかったのかとシアとエシュフィルトに再度聞いたところ

「父さんね、記憶が抜けてる所が多いのよ。そのせい」

「エシュフィルトが生まれたのは大分昔の話、ゴルダの記憶の空白期間内に生まれたから無理もないのよ」

ゴルダの記憶が抜けているのが原因だと返してくれた。
さらに、レナはエシュフィルトが生まれたのが大分昔だというのに引っかかる。
大分昔に生まれたにならば、15歳前後の今の見た目はおかしい。
もしかしてと思っているとこれまたシアが

「エシュフィルトは呪いのせいでこうなっちゃってるのよ。多分もう300歳くらいじゃないかしら、ねえ?」

「うん、300は超えてるよ」

呪いのせいでこうなってると言いながら、エシュフィルトに年齢を確認すると間違いないと答えた。

「あはは…そうなんだ、大変だね」

結構複雑な理由があったということを知り、レナは変なことを言わせてしまったのかなと思う。
しかし、エシュフィルトがそうでもないよという表情をしていたのでほっとした。

「とりあえず、これからはよろしくねレナ」

「うん、こちらこそ」

こうして紆余曲折あったものの、エシュフィルトとレナは仲良くなった。

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聖の紋章・セイグリッド国紋章

リフィル国紋章

スリュムヴォルド国紋章

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