氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

馬と思ったら麒麟だった

ある日、ゴルダはムサヅキから誕生日プレゼントという名目で、馬を譲ってもらった。
その馬は、所々に銀の毛を持っておりとても凛々しい。
そして何より、テレポートか歩きが主な移動手段のゴルダにとっては、良き移動手段でもあり、新たな相棒にもなり得る存在。
ゴルダはこれは二つの意でいいものを譲ってもらったと、まじまじと眺めている。
一方そんなゴルダをよそに、ムサヅキは何か隠している様子で時折ニヤニヤしている。

「この馬は名を銀月氷麟(ギンヅキノヒリン)と言うが、呼ぶ時は氷麟と呼ぶように」

馬を眺めていたゴルダに、ムサヅキは肝心なことを言い忘れていたと言わんばかりにこの馬の名をゴルダに教えた。
それにゴルダはずいぶん難しい名だなと思いながらも、どこからか道具を出すと畑の一部を潰して簡単な馬小屋を作った。

「なかなかいいではないか、簡単なのにしてはな。それでは儂は帰るぞ」

「…ちょっと待て、名前にどうにも違和感がある…帰りやがった」

帰ると言ったムサヅキに、ゴルダは氷麟の名前に違和感を感じ、ムサヅキを問いただそうとした。
しかしムサヅキは、ゴルダが呼び止めて問い質すよりも早く次元の穴を通って帰ってしまう。
ムサヅキに帰られたゴルダは、やれやれと呟きつつよろしくなと言いながら氷麟をそっと撫でる。
氷麟は人慣れしているのか、ゴルダに触られてもさほど嫌そうにもせずに普通に撫でさせてくれた。

「少し冷たいな、水か氷の属性なのかお前は?」

氷麟を撫でた途端、妙な冷たさを感じたゴルダは氷麟に聞いてみたが、答えてはくれなかった。
それどころか、さっきよりも撫でた時に感じる冷たさが増しているような気もする。
これは聞いてはいけなかったのか?と思いながらも、ゴルダは氷麟を自由にさせて家へ一旦戻った。
自由にされた氷麟は、ゴルダが作った小屋を見て

「ふむ、短時間でこんなものを作れるとは中々なものだね」

などと呟いて、畑に植えられている野菜をじっと眺める。
畑には季節野菜であろう夏野菜がぎっしりと植えられていて、夏には普通に収穫できそうだ。
若干もう実っているのもあるので、氷麟はゴルダに内緒でつまもうと思ったが何を言われるか分からないのでやめにした。

「この広さの土地と一軒家に一人暮らしなのか」

家の方へ向き直り、ゴルダ以外に誰か居ないかと探ったが誰も居なかったので氷麟はそんなことを言う。
この時はアルガントも居たのだが、氷麟には感知できなかったようだ。

「寂しき者よ」

氷麟は最後にそうぼそりと呟き、それ以降はゴルダが作った小屋に入っていた。

そしてその夜。
ゴルダがバルコニーで酒を片手にくつろいでいる時である。
グラスが空になったので、酒を継ぎ足そうとボトルを取った瞬間、雷と共に空から氷が降ってきた。

「雷雲なんてねえぞ?」

空を見上げたところで、雲などどこにもなくただ月夜が広がっているだけ。
おかしいなとゴルダが首を傾げていると、氷麟が小屋から出てきてゴルダにこんなことを言った。

「薄々気づいてはいたようだが、私が麒麟というのはご存知で?」

自分が麒麟だということを知って居たのかと言われ、ゴルダはまあなと返した後に

「ほう、本当に麒麟とはな。それと馬の姿は何故に?」

氷麟に馬の姿で居るのはどうしてかと聞く。
それに対して氷麟は

「私の位によるものもあるけど、基本的に自分の住む場所以外ではこの姿という鉄則が種族の中にあるんだ。それが大きな理由かな」

自分の位階によるものもあるが、種族間の中の鉄則が大きな理由だと答えた。
ゴルダはふむと呟き、氷麟に本来の姿は見せられないかと聞くと氷麟は

「まあ、ムサヅキは許可はしているし。今日からはゴルダ、君の世話になるから見せてもいいかな」

何かと余計なことを言いながらも、本来の己の姿をゴルダの前に見せた。
その姿は、氷水晶の角に凍てつくたてがみを出しただけながらも、凛々しさは通常の倍。
しかも冷気が半端ないが。

「夜の散歩でもいかがかな?」

氷麟の誘いに、ゴルダはすんなり頷いてどこからか鞍を出して背へ取り付けて乗る。
乗った瞬間、凍るかと思ったが氷麟が抑えているのか、若干ひんやりする程度で済んだ。

「よし、行くよ」

そのままゆっくり歩いて家の敷地外へ出た氷麟は、そのまま夜の農道を駆け出した。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ネルシェ

性別:♀…?(精霊とかそういう種族だから判然としない)
年齢:エルフィサリドより少し下
種族:風の精霊あるいはフェアリー
身長:140cmくらい
性格:たまに嫉妬深い
外見は緑髪を幾つかに分けて束ねているシアンの目のエルフの少女
一応これでもエルフィサリドの使い魔
風の精霊の名にそぐわず弓は不得意でトラップを多用するが、よく自分が引っかかるドジをやらかす

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

リヴァルス国紋章




それぞれの説明(上から順に)
・雪の結晶:氷属性紋章(リヴァイドの耳の形と同じ)
・氷柱:国政は氷が如く冷たく冷静に、時に鋭く厳しく
・氷結晶:リヴァルスを形作る物
創作関係全般 |

スリュムヴォルド国紋章




それぞれの説明(上から順に)
・水滴:水属性紋章とそのイメージ
・風の属性紋章とそのイメージ
・矢:エルフィサリドの使い魔のネルシェが放ったとされる矢
・クロス羽根:ケタルアワシの羽根
創作関係全般 |

リフィル国紋章




それぞれの説明(上から順に)
・魔力のイメージ
・二度と屈さないという意味
・一種族中心という意味、決して一種族独裁ではない
・国の安定のためなら改革などもするとかそういう意味
創作関係全般 |

聖の紋章・セイグリッド国紋章




それぞれの説明(上から順に)
・羽根:シアとアルカトラスという神を表す
・雷:世界創造のイメージ
・二重のひし形: シアとアルカトラスの2人がこの世界を管理し守っているという意
・?:生命創造のイメージ
創作関係全般 |

梅雨を明けさせる

今日のエルフィサリドは、アルカトラスから梅雨を明けさせるよう命じられ、水の神殿があるスリュムヴォルドの山岳地帯へとやって来ている。
やって来ているまではいいのだが、この神殿は前述したケタルアワシの居る山岳地帯の上空に隠してあるので、山を登った上で飛ぶ必要がある。

ちなみにケタルアワシとは、スリュムヴォルドのこの山岳地帯にしか生息しないワシで、最大で5メートルくらいになる。
そしてリヴァルスのリヴァルスウルフ同様に、独自の社会に高い知能を有し、すんなりとはいかないが人の言語は理解できるという。
だがしかし、このケタルアワシはエルフィサリドにはさしたる興味を示してないようである。

「…」

「…」

なお、今日はゴルダが居ないのでエルフィサリドは代わりに使い魔である風の精のネルシェを久々に呼び出して同行させている。
エルフィサリドの後ろからふわふわとついて来ている、いくつかに分けて束ねた緑髪とシアンの目をした見た目はエルフの少女がネルシェである。
しかし、かなり長い間すっぽかされていたためかネルシェは非常に機嫌が悪い。
どのくらいすっぽかされていたのかは不明だが、おそらく100年は経っているだろう。

「ねえ」

上空を飛んでいるケタルアワシを見ながら、未だにむすっとしているネルシェにエルフィサリドは話しかける。
しかし、それが引き金になったのだろうか、ネルシェはブチっと来て

「よくもまあ、100年以上すっぽかしておいて気安く話しかけて来れるわねえ。不思議でたまらないわ。それに現在は私の存在すら忘れて、側近を半ば無理矢理迎え入れたようね。私が分からないと思ってたの?」

などとエルフィサリドに不満などをぶつけ始めた。
エルフィサリドはまあまあとするが、ネルシェはそれを無視して

「その様子だと分からないみたいね。契約の時私言ったはずだけど?呼ばれてない時はどこかしらでずっと見ているってね。私のことを忘れて国政やってたのは百歩譲って許すにしても、側近のことはちょっと許せないわ。今度私にも会わせて、どんな奴か見たいから」

ようやく説教じみたことを言い終え、ネルシェは若干息を切らしながらエルフィサリドを期待の目で見た。
エルフィサリドはさてどうしたものかと思いつつも、とりあえずは頷いておいた。

なんだかんだはあったものの、2人は、とりあえず水の神殿へとたどり着いた。
神殿は浮き島の上に造られており、至る所から水が流れているがそれが地上へ落ちることはそんなにない。
そして何より、神殿は白魔水晶と呼ばれる変った水晶が建材だというのが特徴だろう。
この白魔水晶については、分かってないことが多いのでそのほとんどが謎に包まれている。

「じゃあ、待っててね」

梅雨の入り明けは、プログラムを少し書き換えるような感じで操作可能なのだが、少し間違えただけでとんでもないことになるのでその辺は注意が必要だ。

「うーん、暇」

エルフィサリドが作業をしている間、ネルシェは伸びをしたりして時間を潰した。

そして、エルフィサリドが梅雨明けの操作を終わらせて声をかけて来た際に

「また仲良くしましょうよ」

と言ってきたのでネルシェは

「今度私をすっぽかしたらお仕置き、いいね?」

今度すっぽかしたらお仕置きだと返した上で、エルフィサリドに

「アッハイ」

と言わせた。
このやり取りで何とか関係は持ち直し、その上うっすらと空には夏空が見えていた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

エルトナとゴルダ

今日のエルトナは、サフィに言いつけられて屋外の廊下の掃除をしていた。
掃除とはいっても、特に汚れがひどい箇所を探してそこを掃除すればいいというものである。
そして、エルトナが柱についたカビをこすり落としているところへ、アルカトラスに呼ばれてここへ来ていたゴルダがたまたま通りかかった。
ゴルダは最初はエルトナの前を素通りしようとしたが、すぐに存在に気づくと

「よお、見慣れない顔かとおもたらお前はサフィの言ってたエルトナか」

まるで友人にでも声をかけたかのような態度でエルトナに挨拶した。
それに対して、エルトナも一応

「こんにちは」

と挨拶を返す。
しかし、この時エルトナは何も言わなかっただけで、実はそれなりにゴルダに惹かれていた。
その理由とは、話しかけられた時に伝わって来た、肝が据わっているという第一印象そのもの。
そして何よりエルトナは、そういった男がタイプの傾向にあるのだ。

「ああ。それはそうとせいぜい頑張りな」

ゴルダはエルトナにそんなことを言うと、そのままアルカトラスの所に行ってしまう。
そして去って行くゴルダの背を見ながら、エルトナは完全に心を射抜かれてはいたがすぐに仕事へ戻った。

「メイド長、ゴルダについて教えてくださいな。一応大学時代からの友人なんでしょ?」

「あんた、あいつに射抜かれでもしたの?」

「そりゃそうですよ、だから教えてくださいな」

そのまま掃除を終えてサフィの所へ戻ったエルトナは、ゴルダのことを聞き出そうとしたものの、あっさりゴルダにそういう意で気があることを見抜かれた。
だが、それにエルトナは開き直ってだからこそ教えて欲しいとせがむ。
それにサフィはやれやれと言わんばかりにため息をつくと

「断言しておくわ、あいつを攻略するなんて無理、不可能よ。友人以上の関係を持とうとはしないし、何よりそれ以上の関係なんてお断りしてるわ。生涯独身貴族だとかほざいてたくらいよ」

「むー、だから面白いんじゃないですか」

ゴルダを攻略することは不可能だと言い放つ。
それを聞いたエルトナは、だからこそ面白いんじゃないですかと全く聞く耳を持たなかった。
サフィは、なおも開き直るような態度を見せたエルトナの腕を掴んで

「さあ、バカなこと言ってないで仕事仕事。今から発注した食料が来るから一緒来なさい、数量チェックするわよ」

発注した食料が来るのでその数量チェックの仕事だと搬入場所へ引きずって行った。

「ふう、終わったわ」

「腕が筋肉痛よもう、血飲まないと」

それから2時間ほどして、ようやく搬入と数量チェックが終わってサフィに解放されたエルトナは、サフィから逃げるようにその場を離れる。
そしてそのまま城内を散歩していると、用事を終えたと思わしきゴルダと出くわすエルトナ。
ゴルダはエルトナを見て歩みを止め、どうしたと言わんばかりにじっと見つめる。
それに若干恥ずかしいと思いながらも、エルトナは脳内でスロットを回したりして解を出すためにあれこれ考え始めた。

「え、えーっと…」

そして1分半ほど考えてエルトナが出した解とは

「知り合いあるいは友達になりませんか?」

というもの。
エルトナの脳内プログラムでは、ゴルダはこれに対して断ってくるか了承するかのどちらかになっていたのだが、ゴルダが返した返事は

「そうか」

というあまりにも例外すぎる返事。
それにエルトナはぽかんとしたままその場に凍り付く。
ゴルダはそんなエルトナを気にも留めずに去るかと思いきや、エルトナとすれ違う直前に

「お前は面白い奴だな、気に入った」

面白い奴だなと一言言ってそのまま帰って行った。
ゴルダが帰った後、エルトナはただただ顔をわずかに赤らめるだけであったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

心配事は急に

皆が寝静まったある日の夜中、就寝中のゴルダの携帯が突然鳴った。
半分寝ては半分起きるを繰り返していたゴルダは、すぐに携帯に出る。

「もしもし、こちらは竜医のゴルダですが…はい、了解。15分ほどではそちらに着きます、安静にさせておいてください。では」

電話を切ったゴルダはベッドから飛び起き、竜医用の診察道具を準備し、その後5分で着替えを済ませて家を出た。

「おにーたん?」

ゴルダが突然起きたことで目を覚ましたのか、ルナリアは部屋の中を見渡したがゴルダの姿はどこにもなかったのでまた寝ることにした。

それからゴルダは明け方に帰宅した。
そこそこ疲れてはいたが、朝食を作らなければならないので冷蔵庫に常に何本かストックしているエナジードリンクを一気飲みし、朝食の準備を始める。
ゴルダが準備を始めて大体1時間。
ルナリア達3人は同時に起きてきて食卓テーブルの椅子にに座る。
それぞれの皿に朝食を盛りつけ終え、食べようとしたところでまたゴルダの携帯が鳴る。

「はいこちらゴルダ。…やれやれまたか、30分以内にはそっちに来れる」

そしてまた診察道具を持って、ゴルダは風のように家を飛び出していった。

「またおにーたん出て行った」

「にゅう…」

朝食すら食べずに出て行ったゴルダを、ルナリアとラトレナスは心配し、アルガントはそんなこと知るかと言わんばかりに朝食にがっついていた。
そして再びゴルダが帰ってきたのはちょうどお昼。
さすがに夜中から電話で呼び出されて寝不足なのだろうか、ゴルダは帰ってくると少し仮眠すると言って自室へ引っ込む。
それを見かねたラトレナスが

「今日は私がお昼作るね」

と言って昼食を準備してゴルダに食べさせた。
昼食を食べ終え、まだ寝不足な様子でソファでゴルダがうとうとしていると、また電話が鳴る。

「はい…何だとそれはいかん、今すぐ行く」

電話を切ったゴルダがまた出て行ったので、さすがのルナリアもどうしようかと考えた末に薬品棚からあれこれ材料を引っ張り出す。

「おねーたんなに作るの?」

「おにーたんには黙ってて」

ラトレナスに内を作るのかと聞かれ、ルナリアは黙っているように言って本を見ながら調合を開始。
ほんの1時間で調合し終えたのはいいのだが、出来上がったのは名状しがたい色をした謎の液体。
ルナリアはこれを強壮薬だと言うのだが、とてもそうは見えない。

「変な臭い」

アルガントにまでそんなことを言われたにもかかわらず、ルナリアは随分と自信気だった。

そしてその日の夕方。
煙草のようなものを吹かしながら随分と疲れた顔で帰ってきたゴルダにルナリアは

「おにーたん、これ飲んで」

とあの名状しがたい色の自称強壮薬を無理やり飲ませたのだ。
回避不可な不意打ちだったがために、ゴルダはそれを飲んでしまう。

「どう?おにーたん?」

感想を待つルナリアに、突如ゴルダのげんこつが振り下ろされた。
その直後にゴルダが言った一言とは

「この強壮薬、材料全然違うじゃねえか」

だったという。
それを聞いたルナリアは、たいそう不満な顔をして

「むー、せっかく作ったのに何よー」

と言ったとか。

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小説(交流) |

ゴルダとリヴァイド

梅雨時にもかかわらず雪が降り、その上寒いリヴァルスの王都。
そんな場所に、ゴルダはアルカトラスの用事で来ていた。
幾度となくリヴァルスへ来たことはあるのだが、それはシェリスを訪ねて来ただけであって王都へは全く行ったことがない。

「ここの寒さにも慣れちまったな」

などと言いつつ、ゴルダはアルカトラスから渡された書類を確認してから城の方へ行く。
リヴァルス城は、万年氷と呼ばれるとても溶けにくい氷と、氷結晶を建材として建てられており。外見は所々透き通っていて少々寒そう。
だが、このリヴァルスの中では一番温度が安定している唯一の場所らしい。

「アルカトラスの使いだ、国王のリヴァイドに用がある」

城の衛兵に入り口で呼び止められ、何用だと聞かれてゴルダはアルカトラスから預かっている書類を見せ、リヴァイドに用があることを話す。
衛兵はアルカトラスの使いなら問題ないだろうと、城の敷地内へ入れてくれた。

「植物もほとんどないし、殺風景だ」

敷地へ入ると、すぐに庭園が広がっているが植物はほとんどない。
なぜならば、この城だけではなく、リヴァルスの領土全域の土はほぼ全て永久凍土だからだ。
そのため、普通の植物は育たず永久凍土に自生できる植物だけが生えているが、それも数は少ないので庭園にはほぼ植物がないのだ。
一応普通の土もあるらしいが、それらは全て農業用かつ常に熱を送っておかないとその普通の土すらも永久凍土と化してしまうらしい。

「立ち止まってるとすぐ雪かぶっちまう」

いつの間にか頭に積もっていた雪を落とし、ゴルダは城の本館へと入った。
城の中も全て万年氷に氷結晶で構成されていて、氷竜国の名に相応しい城だ。
ちなみに、ゴルダは大分前になるが一応リヴァイドとの面識は持っている。
その時はたまたまアワパラゴンとリヴァイドが国王としての仕事ではなく、プライベートでセイグリッドに来ていた。

「相変わらずだろうな」

そう呟きながら、ゴルダは手ごろな従者を捕まえてリヴァイドに用があるので側近などに話を通してほしいと話す。
従者にそう言ってから3分もしないうちにリヴァイドの側近がやって来て応接間で待っているように言われた。
ゴルダは側近に教えられたルートを通って、応接間にたどり着く。

「ほう、これはまたいいな」

応接間に入ったゴルダを感心させたのは、このリヴァルスのみに存在するシャルフェの木のソファ。
シャルフェの木は永久凍土でしか育たず、切り出すにしても普通の木材加工用の木の数倍堅い。
そのため、そこそこ値が張るらしい。
そのソファにゴルダが座って待っていると、先ほどの側近がやって来て

「リヴァイド様は今手が離せないそうなので1時間ほど待って頂けますか?」

1時間ほど待ってくれないかと言ってきたので、ゴルダは仕方ないなと頷いて分かったと返す。
そしてそのまま1時間待っていると、リヴァイドがようやくやって来た。
その顔は大分疲れているようにも見え、何かあったのかとゴルダは思ったがとりあえず

「久しき」

いつもの調子で挨拶をすると、リヴァイドは首を傾げて

「うーん」

と唸る。
それにどうしたとゴルダが聞いたところ、リヴァイドは

「お前は俺かも知らんな」

と謎の一言を言い放つ。
それにゴルダは一瞬ぽかんとしたが、すぐにルライエッタから前に聞いたパラレルワールドでの記憶共有云々の話を思い出して1人で納得した。

「来た目的を忘れるところだった、これを。爺さんからだ」

そしてゴルダは本来の目的であるアルカトラスからの書類をリヴァイドへ渡す。
リヴァイドはその書類に一通り目を通してから、同委の意思を示すサインをしてゴルダに返す。

「ああ、これでいいな」

そう言って、ゴルダは書類をしまうとリヴァイドと世間話を少ししてから帰った。

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小説(一次) |

エルトナ=ラトルフォニア

性別:♀
年齢:たぶんサフィより若干下
種族:半吸血竜
身長:170cm台
性格:サフィのこと以外はテキパキ仕事をこなし、普段は真面目
サフィの身長を高くして、目と髪の色を逆に入れ替えたような感じのメイド。
セイグリッド城の副メイド長をしているが、サフィに気があるようで隙があれば何かやらかしている

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

エルトナとサフィ

毎朝恒例の、コックを含めた従者全体での朝礼の後、従者の執務室で食料の在庫を確認するサフィ。
この在庫の確認も重要な仕事であり、無い物は注文して取り寄せなければならない。

するとそこへ、サフィの髪と目の色を入れ替えた上に身長をサフィよりも高くしたメイドがサフィの背にちょっかいを出そうと手を伸ばす。
しかし、何度も同じことをされているのかサフィはすぐに見切ってその手を掴んで

「エルトナ、仕事は?」

「サマカンドラがやってるから暇よ」

サフィに仕事はと聞かれたエルトナというメイドはサマカンドラがやっているので暇だと言う。
それを聞いたサフィは、エルトナに今自分が確認している食料の在庫管理リストを半分押し付けて

「だったら、これ手伝って。ないのは昼までに注文かけなきゃいけないのよ」

「はいはい」

昼までに無い物は注文しないといけないので手伝えと言う。
エルトナは生返事だったが、一応リストを受け取って確認をし始めた。

そう、このエルトナこそがこのセイグリッド城の副メイド長なのだ。
しかし、エルトナはサフィに気があるのか、隙さえあらば何かとやってくる厄介者。
だがそれでも、サフィのこと以外は仕事はテキパキこなし、真面目なので首を切ることはできないのだ。
さらにサフィ自身も、エルトナに何かされてもストレスをさほど感じてないという。
それでもたまに度が過ぎることはあるらしく、サフィからエルトナはその都度お仕置きを食らっているが懲りる様子はない。

なお今までで最もひどかったのは、勝手にサフィの自室へ侵入してベッドに隠れて添い寝しようとしたというもの。
この時はさすがのサフィも怒って一本背負いを決めたという。
この他には、サフィの食べていた菓子に変な薬を仕込もうとしてバレたり、サフィをわざと転ばせて自分に抱きついたように見せかけようとしたなど様々である。
一応アルカトラスから直々に説教もされているため、今は昔ほどひどくはないらしい。

そして、昼食後の一通りの仕事が片付いて従者たちは夕方の夕食の準備の時間までほぼ暇となった。
急なアルカトラスへの来客などでも無い限りは、前述した通り暇なので、従者たちはこの間に休憩を取る。
無論それはサフィやエルトナですら例外ではない。

「もっといい糖分の摂り方ないかしら」

そう呟きながら、サフィは今日も甘いものを口にしている。
なぜかと言うとサフィは生活に支障はないが、それなりの低血糖症。
そのため、このような時間で糖分をかなり摂取しておかないといけない。
だがサフィは、何気に人間の方の医者の免許も有しているので最近自分が甘味依存性になりかけているような気がしてならなかった。
しかし糖分を摂らないと大変なことになるという、ジレンマめいた何かに苛まれながら他に糖分の摂り方はないかと考えるも、考えられるのはブドウ糖か何かを飲むか投与するかぐらいしか思いつかない。

「ルライエッタの奴に相談するか、魔法でどうにかするしかないのかしらね」

などと呟きながら、サフィが取った菓子は今さっきエルトナが置いた一見なんの変哲もない菓子。
しかし、中には血糖値を下げる薬が入っているのだがサフィは気づいていない。

「参ったわ」

そう言いながら、エルトナが置いた菓子を取って食べるサフィ。
一口目は何ともなかったのだが、二口目を食べた途端。

「血糖値下げる薬入れてんじゃないわよ!」

「アバーッ!」

突然立ち上がったサフィは、エルトナに駆け寄るとそのままアームロックをかけた。
どうやら、エルトナが菓子に血糖値を下げる薬を入れていたと確信したようだ。
アームロックをサフィに決められたエルトナは、そのまま5分近くそのままだったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

雨月とアルガティア達-イファルシアにイタズラされたようです

結構ジメジメとした梅雨のある日、雨月はアルカトラスと世間話をしにセイグリッドへやって来ていた。
水竜宮とは違う感じのジメジメに、雨月は

「なんという湿度だ」

と呟きながらも、城の方へマイペースに歩いて行く。
案の定サフィが出迎えてはくれたものの、どうにも微妙な表情をしていたので

「どうかしたのかサフィ殿?」

雨月はサフィにどうかしたのかと聞くとサフィは

「…まあ、大丈夫かもね」

と意味深なことを言いつつも雨月をアルカトラスの所へ案内する。
案内されたのはいつもの部屋で、中からアルカトラスとは別の話し声がした。
不思議に思いながらも、雨月が中へ入ると

「あら、こんにちは?」

「見慣れない顔だね」

「よく来た」

「なんだか面白そうなのが来たわ」

アルカトラス以外に、輝星や花吹に緑雲から話だけは聞いていたアルガティアとその仲間3人が居た。
フィルス思わしき青いカーバンクルだけは、今のところ雨月に興味を示さず目線をそらしている。
しかし、礼節は守らねばと雨月はフィルスを含めた4人に挨拶をした。
そして挨拶を返して来たのは、アルガティアに緑のカーバンクルのイファルシアにエゼラルドだけ。
フィルスはなおも雨月に興味を示さず、魔法書を読んでいる。

「困ったやつだ」

そんなフィルスの態度に、雨月はやれやれという顔をしてアルガティアとアルカトラスの間に座る。

「汝に今のところさしたる興味を示してないようだなフィルスは」

アルカトラスにそう言われ、雨月は興味がないならそれはそれで構わないが挨拶だけはしっかりして欲しいと返す。
その耳の痛い話を、フィルスは一応聞いているようだが右から左へ流しているようにしか見えない。

「梅雨の時期は厄介なのだ」

「実に同意せざるを得ない、毛が湿気で傷みやすい時期なのでな」

「手入れを怠らなければ、髪も毛も傷まないわ」

梅雨時の話を始めた3人の中で、雨月だけをじっと見つめているのはイファルシアだ。
その目つきは、何らかのイタズラを目論んでいるとしか思えない。
そして、イファルシアが取り出したのは謎の種。
実はこの種はヤドリギの種で、簡単に引っこ抜けるが成長は桁違いに早い種に部類される。
イファルシアはその種を雨月の頭にポイと投げつけた。
投げつけた種は、雨月の髪の中に物見事に紛れ込み、成長するまでは本人は分からないだろう。

「うふふ」

イファルシアは不敵にかつ微かに笑い、何事もなかったかのように振舞った。
無論、雨月はイファルシアにヤドリギの種を髪の中へ投げられたのには気づいてはない。

「ええ、輝星とは何度か」

「そうかそうか、輝星とは仲が良いのか。感心だ」

アルガティアと雨月が輝星に関しての話をしている時には、微かに雨月の頭から芽が出ているのをイファルシアは確認できた。
まだ違和感は感じないはずなので、このまま様子を見ていても大丈夫ではある。

「それはそうと、輝星にはあまり変なことを教えないようにして欲しいのだ。ああ見えて純粋だ」

「純粋なのはいいことだ」

「そうね、変なことは教えてないし教える気はないわ」

ここまで時間が経つと、成長の早いこのヤドリギはもはや雨月の髪を飛び出して立派な芽を覗かせている。
イファルシアはそれがとてもシュールで吹き出しそうになったが、ここで吹き出すと自分がやったのがバレるのでじっと堪えた。

だがしかし、しまいにはアルカトラスが

「雨月よ、なんだこれは?」

雨月の頭に生えていたヤドリギを抜いてしまった。
引き抜かれたヤドリギを見て、雨月は

「なんだこれは?」

とヤドリギを見てぽかんとする。
アルガティアはそれを見て

「誰がやったのかしら?」

誰に言うわけでもなくそう呟いた。
雨月にヤドリギの種を投げつけた当の本人のイファルシアは、知らん顔をしてその場を流したという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

(風)水神の話

セイグリッド城の一室で、スリュムヴォルドとドランザニア国境間の地下水脈および水源の地図を眺めているエルフィサリドとアルカトラス。
今日は今だにしぶとく狙われているスリュムヴォルド側の地下水源こと水資源のことで話をしているようだ。
この世界においても、水資源の確保はとても重要なことなのだ。
魔法でいくら海水を真水に変換できるとは言っても、それにも限度がある。
なので、いかに今ある水資源を効率良く活用するかが大事なのだ。

「まだ狙っているとな?」

「ええ、先日も地質調査とかほざいて地下水源を探るためにボーリング調査しようとしてたドランザニアの輩を懲らしめたばかりよ」

アルカトラスにまだ狙われているのかと聞かれ、エルフィサリドはええと答えると先日もそういう輩を懲らしめたばかりだと話す。
アルカトラスはそれに、前足を自分の顎あたりに当てて何かを考えるようなそぶりを見せると

「なぜ風水神の力で懲らしめぬ?」

なぜ風水神の力で懲らしめないのかと聞く。
それにエルフィサリドは、少しむっとした表情をして

「あの力は儀式以外では使わないと言ってるでしょうに、答えは嫌よ。それに私は風水神じゃないわ」

儀式以外では力は使わないし、自分は風水神じゃないと断言する。
アルカトラスはそれに目をしぱしぱとさせて

「まだ己の本来の姿を認められぬか、仇とならない内に早く認めた方が良いがな…今日はもう帰るがいい」

何やら意味ありげなことを言って今日はもう帰れと言った。
エルフィサリドはそうさせてもらうわと返し、アルカトラスに一礼して部屋を出た。

「ふうむ」

エルフィサリドが帰った後、アルカトラスはどうしたものかと言わんばかりの一言を漏らした。

そしてその一方、スリュムヴォルドへ戻ったエルフィサリドはというと

「その心は曇りがけの空、どうかしたの?」

城へ戻るや、ニフェルムに急に心配されたのでエルフィサリドはなんでもないと答えて自室へ。
片付けなければならない書類が書斎机の上に置かれているが、今はとてもやる気がしない。

「うーん」

とりあえずは椅子へ腰掛けたエルフィサリドは、そのまま物思いにふけ始め、自分の過去を思い返し始めたのであった。

エルフィサリドが生まれた、いや生命体として創造されたのはもう1000年ほど昔。
シアの手で水と風を司る者もとい神同然の存在として、エルフィサリドは妹のカトレアと共に創造されたのだ。
無論、創造された当初はエルフィサリド自身には風水神であるという事実はシアからは伝えられなかった。
そして創造された2人がシアから言い渡されたのは

「ここから大分南に行った所に開拓地があるんだけど、そこは今干ばつで大変なことになってるの。そこでエルフィサリド、あなたは妹のカトレアを補佐役としてそこを干ばつから救うと共に、風水を司る国を建国するのよ」

というものであった。
2人はそれに従ってその開拓地へ赴き、雨を降らせ、嵐を呼んで干ばつから救った。
突如として舞い降りて来た2人に、開拓地に居た者達はほぼ神同然に拝み、その地に2人を王とした国を建国。
ここまではシアから言われた通りだったが、それ以降は何も言われていなかったので2人は自由奔放に国を治め、現在までやってきている。
昔と違う点と言えば、カトレアに放浪癖がついてあまり帰ってこないことくらいだろう。

「なんだかんだあったけど、今までやってきているのよねえ」

そう呟いた後、エルフィサリドはやっぱり認めないとダメよねと思い、今後は自分が風水神であることを認めようと思ったのであった。

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小説(一次) |

ゴルダと時雨-団子を作ってやった

いたって普通のある日。
ゴルダはアルガントと2人ポーカーをして暇を潰していた。
ディーラーがゴルダで、プレイヤー側がアルガントの固定役だったが2人はそれなりに楽しくはやっている様子。

「捨てるカードはそれだけか?」

「交換するカードに賭ける」

アルガントが3枚カードを捨てる宣言をしたので、ゴルダはそれだけでいいのかとアルガントに聞く。
アルガントはいいと言ったので、ゴルダが捨てた分のカードを渡そうとした瞬間。

「ドーモ」

「ん?」

窓を破って何かが入って来たかと思えば、テーブルの上のトランプとチップコインを盛大に散らかして急停止。
その何かの正体を見破ったゴルダは、トランプとチップコインを片付けながら

「普通に入ってこい、時雨」

とその何かの名を呼んだ。
すると、その何かは頭を震わせてからゴルダとアルガントを見て

「片付ければいい話であろう?」

片付ければいいと言う。
何かの正体とは、アルガティアに使役されている管狐の時雨。
ただし、普通の管狐とはかなり違っており、本来入っている管から完全に出て限度はあれど自由に行動できるという点が大きく違う。
ではなぜ時雨はゴルダのところへ来たのだろうか、その理由を時雨は

「ちょっとばかし暇つぶしに来たのだが、構わぬか?」

暇つぶしに来たと答えた。
ゴルダはそれに対して

「何でそんな理由で来るのか、俺にはさっぱり分からんな」

その程度の理由で来るのが理解できないと言いながら緑茶を出す。
時雨は、ゴルダが出した緑茶の香りを少し嗅ぐとそのまま音を立てて飲み出した。
しかし、20分の1ほどを飲んだところで時雨はゴルダにこんな注文をつける。

「味噌団子が欲しいから、団子だけ作ってはくれないか?」

流石にゴルダも、これには時雨に無慈悲なチョップでも食らわせてやろうかと思ったものの、時雨の能力がよく分からないので、心の中でハァ?と言いながらも台所に立って準備した。

「悪いのう」

「お前味噌は好きじゃなかった…いやいい、それより黙って待ってろ」

餅粉を出し、時雨が食べると思われる分だけ餅生地を作るゴルダ。
その手は随分と手慣れており、料理を常日頃からやっているというのが伺える。
コンロには蒸し器がセットされていて、茹でるのではなく蒸すらしい。
ちなみに、餅は茹でると水っぽくなる欠点がある。
だが、その辺は好みにもよるだろう。

だいたい1時間後。
蒸し上がった餅を時雨の前にドンと置いて、ゴルダは蒸し器やらの片付けを始めた。
時雨は、置かれた餅を見てどこからか味噌を出すと皿の横へ山葵を添える感覚で盛る。
そして、団子をその盛った味噌にほんの少し付けて時雨は食べた。

「上々、餅の蒸し上がり具合も過不足なし」

まるで料理の批評でもするかのような口調で呟いた時雨に、ゴルダは今度こんな図々しいことを頼んだらチョップだからなと仕草で言った。
時雨はそれにニヤニヤするだけだったとか。

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小説(一次) |

アルカトラスの姓を授かったようです

セイグリッド城のとある一室で、ゴルダはルナリアとラトレナスの3人で何かの書類にサインをしていた。
何を隠そう、今日付けでルナリアとラトレナスは形式上ながらゴルダと結婚したのである。
とはいえ、形式上の結婚なのでゴルダの姓のアルカトラスを授かったに過ぎないのだが。

「これでひと段落?」

「知らんな」

ラトレナスにひと段落したのかと聞かれたのに対し、ゴルダは知らんと答える。
アルカトラスの姓を授かったことにより、2人の国籍は不明からセイグリッドになった。
なお、ゴルダの国籍はドランザニアやらリフィルやらセイグリッドやらでごちゃごちゃしているが、本来はこのセイグリッドが正しい国籍だ。

「本当に挙式しなくていいのか?」

アルカトラスにそう聞かれ、ゴルダはたとえ身内限定だろうが絶対にしないと言った。
何故ここまでしてゴルダが式を挙げることを拒否するのかの原因は、全くもって不明のままだ。

「もういい、今日は帰る」

「食事くらいはしていかんか、せっかくサフィが用意するつもりでいるというのに」

今日は帰ると言って、ラトレナスとルナリアを連れて帰ろうとしたゴルダにアルカトラスは食事くらいしていけと言うが、ここでもゴルダは譲らずにそそくさと帰った。
ぽつんと残されたアルカトラスは、少々首を傾げて

「ふうむ」

と不思議に思うばかりであった。

そして、家へと帰って来たゴルダは2人を食卓の椅子に座らせてから飲み物を入れて少し落ち着きを取り戻してから座る。
普段は全く動じないゴルダがここまで動じるのは、何か理由があるのだろうか?
これもまた、本人にしか分からないので不明である。

「さて、結婚してしまった以上もう後戻りは不可。というわけで」

「にゅ?」

「なにー?」

というわけでと、一旦話を区切ったゴルダにラトレナスとルナリアは何かとじっと見る。
するとゴルダは

「まずラトレナス、お前には俺が留守の時の家事をするように。アルガントの面倒も見てくれ、あいつはお前にそれなりには懐いている」

ラトレナスに自分が留守の際の家事とアルガントの面倒を見るように言った。
どうやら、役割を割り当てる話をしているようだ。

「それなら大丈夫」

ラトレナスはそれなら大丈夫と同意した。
そして、ゴルダは今度はルナリアに

「お前は…俺の竜医としての仕事の際の補佐をしろ、分からんことは教える」

自分の竜医としての仕事の際の補佐をするように言う。
ルナリアはそれに対しては、そこそこ喜んでいるそぶりを見せた。
ゴルダがなぜこのような割り当て方をしたのかというと、ラトレナスは元々の契約者はイファルシアとアルガティア。
そして後にゴルダに契約者を変更したものの、あらゆる共有はまだ健在。
それらから判断するに、アルガティアの能力をそのまま持っているならば家事をさせた方がいいと考えたのだ。

一方、ルナリアはというと、元々の契約者もへったくれもなくゴルダ自身とのみ契約している。
その点から見れば、ラトレナスと家事をさせていてもいいのだが、今のゴルダには自分の竜医としての顔で仕事をする際のサポート役。
いわば助手が居ないのである。
その点から考えれば、1人助手を雇うよりは自分の知識と技術を共有しているラトレナスを助手に付けた方がいろんな意で好都合だった。

「おにーたんのサポート?やるやるー」

随分とゴルダの助手ができることが嬉しそうなルナリアだが、その心の奥底の企みまではゴルダも分からなかった。
最も、ルナリアが竜医の知識と技術を変な意味で使うのはラトレナスしかいないだろうが。

「何はともあれ、お前ら頼んだぞ」

最後にゴルダがそう言って話は終わった。
はたして、この先どんな事が待っているのだろうか。

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小説(交流) |

害虫・害獣駆除は一苦労

今日のゴルダはイレーヌから呼び出されてリフィルに来ている。
なんでも、城の食料の内訳の野菜のほとんどを占めるイレーヌの管理する畑に、害虫やら害獣やらが湧いて自分だけでは駆除しきれないからだとか。
一応イファルシアやエゼラルドにも手を貸して貰っては居るがそれでも駆除しきれないというのだ。
そして、ゴルダがアルガントと行ってみると

「これはひどい」

畑の一角、とは言ってもトマトを植えている部分だけが異様に食い荒し尽くされ、収穫は出来ない状態になっていた。
他の野菜も、まだ収穫は出来そうだがあまりよろしくない状態だ。
ひとまずアルガントをエゼラルドに押し付け、ゴルダはどうするかと考える。
一応自分でも畑はやっている上、エゼラルドやイファルシアにイレーヌからもいろいろと農業に関しては教わっていたので、解決策を見出せないわけではない。

「ネズミまで居ると来たか」


考えている間に、土の上を歩くネズミを見かけたゴルダはそう呟く。
最初は害虫だけだと思っていたが、改めて見た感じでは根菜類もネズミを含めた害獣にやられていると察したゴルダは、どこからミミズとナメクジのような生き物を出す。

「イレーヌやイファルシアに渋い顔されるから使いたくはなかったがやむ負えん」

ちなみに、今先ほどゴルダが出したミミズとナメクジのような生き物は、害虫や害獣を駆除するのに生み出された一種の魔法生物。
農作物に害は及ばさず、害虫と害獣だけをきれいさっぱり駆除してくれるのだが、見た目の気持ち悪さから好んで使う者は少ない。
だが、賢者の竜が研究の末に生み出した代物なので効果はお墨付き。

「さあさあ、思いっきり駆除してくれ」

それぞれを畑に放ち、ゴルダはやられたトマトをどうにか魔法で修復出来ないかとイファルシアを呼ぶ。
イファルシアは、例のミミズとナメクジをゴルダが放ったのを察したようで

「あいつらたまにこっちに溶解液ぶっかけて来るから嫌いなのよねえ」

と言った後にゴルダと食い荒らし尽くされたトマトを確認するイファルシア。
結果として、全部引っこ抜いて新しく苗を植えた方がいいという結論になり、2人で今植えている物を抜いてから再度耕し、新たにイファルシアが生成した苗を植えるという作業を行った。

「次はこいつか」

一旦休憩すると言って離脱したイファルシアを後目に、ゴルダはサツマイモの区画へやって来た。
何故かは一切不明だが、リフィル城のこの畑では季節を問わずに野菜を植えることができ、しかも育つ。
なので、やろうと思えば1年中新物の野菜を収穫することも可能なのだ。
これに関しての原因は全くもって不明で、アルガティアやイレーヌにエゼラルドも首を傾げるばかりだという。

「あの魔法の出番か」

そう言って、ゴルダが使った魔法は木の棒を地面に刺し、その木の棒に魔力を注いで土の中を調べるというもの。
これはエゼラルド直伝の土を掘り起こさずに中の状態を調べられる魔法で、ゴルダは自宅の畑でも大いに活用している。

「…モグラなんかに食い荒らされまくりだなこれは」

調べたところ、サツマイモは土の中で害獣に食い荒らされていて大部分が食べかけの状態にされて腐っているような状態。
今地上にある蔓を切って適切に保管し、腐っている芋が埋まっている土をそのまま耕して再度切った蔓を土に植えることでまたサツマイモは実る。
ちなみに、ジャガイモやニンジンには害は及んでいなかった。

「よし、やるか」

そう言ってゴルダはサツマイモの蔓を苗として切り始めた。
最初は1つ1つ手で切っていたが、次第にめんどくさくなったゴルダは魔法で苗にちょうどいいぐらいに切り出し、いつの間にかイレーヌが用意していたバケツに入れる。
数はそう多くはなかったが、バケツが満杯になるくらいにはあった。

「いい断末魔が聞こえるこった」

ゴルダの言うように、あのミミズやナメクジに害虫や害獣は今まさに駆逐されていて、その中でも害獣の事切れた際の声がまさに断末魔の叫びになっていたのであった。
それを特に気にすることもなく、ゴルダは悠々とサツマイモがの区画を耕し直して行く。
そして、なんだかんだで耕し直し終えたのは1時間後だった。

さらに3時間後。

「もういい、戻ってこい」

食い荒らされた区画の修復を全て終え、ゴルダは放っていたミミズとナメクジを呼び戻すと

「1つ貸しとくぞ」

イレーヌに1つ貸しだと言って、アルガントとやや疲れ気味の顔で帰って行った。

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小説(一次) |

4人で焼き肉

ドランザニア中部の都市。
南部に次ぐ巨大な都市のとある場所にあるドランザニアではそこそこ大手の焼き肉チェーン店。
値段は少々張るが、それに見合うメニューや店員の接客態度の良さで人気を上げている。
そこへ、ゴルダはルナリアとラトレナスにアルガントを連れてやって来ていた。

「おにーたんなんでこんな場所に連れて来たの?」

「別にいいだろうが、外で飯食いに行こうが」

ルナリアにどうして連れて来たのかと聞かれ、ゴルダは別にいいだろうがとメニューを見ながら返す。
ラトレナスとアルガントは、メニューを見るのに没頭していて何も言わない。

「とりあえずなんか取るか、今日は何頼んでもいいからな」

まるで、ボーナスでも入って家族を食べに連れて来た父親のような台詞を言いながら、適当に牛と鶏に豚と飲み物も適当に頼む。
ちなみに、ここには食べ放題のシステムはなく普通の注文形式の店である。
なので割高になるが、ゴルダは出費は全く気にしていない。
なぜならば、3人に飯を食わせて行っても有り余る貯蓄に年収があるからだ。
それもこれも、ゴルダのやっている仕事が入ってくる収入の単価が高い何でも屋に竜医だからかも知れないが。

待つこと10分。
最初に飲み物がやって来る。
アルガントとラトレナスとルナリアはジュース、ゴルダは初っ端から酒を頼んでいた。

「ふう、そうそう酒も飲めんからな」

ゴルダは、自宅ではあまり酒を飲まない。
それはなぜかというと、以前スピリタスのオンザロックを飲みかけでほったらかしていたのをルナリアが飲んで大変なことになったからだ。
ちなみに、どんな風に大変なことになったのかは、想像に難くない。

そしてその数分後に肉が続々とテーブルへやって来た。
アルガントが生で食べようとしたのを、ゴルダが止めて網で焼き始める。
網の上にみっちと並べ置かれ、美味しそうな音を立てて焼けて行く肉達。
それをアルガントは生の方がいいのにと、ただただ眺めていた。

「牛は半焼けでもいいが、豚と鶏はしっかり焼かんとダメだぞ」

「にゅ」

牛以外はしっかり焼けと言うゴルダに、ラトレナスはかすかに頷く。
アルガントはまだ焼いてない、皿に残っている肉を狙ってはいるものの、ルナリアに見張られているので食べることが出来ない。

「これもういいぞ」

焼けた牛を次々と3人の皿に入れながら酒を飲むゴルダ。
その動作は、熟練の肉奉行そのもの。
自分は、3人がそこそこ満足してから食べるつもりらしい。

「さあさあ、どんどん食え」

次から次へ、ゴルダは焼けた肉を3人の皿に入れていく。
そして、ここで意外な事実が判明した。
それは何なのかというと

「おにーたんもっとー」

ルナリアの家では見せない食べっぷりだ。
牛、豚、鶏に白飯。もう10人分くらいは平らげて。
その一方でラトレナスは控えめでさほど食べず、アルガントもよく食べるものの、ルナリアほどではない。
それにゴルダはかなり驚いたような様子で

「ホルモンもらえるか?」

ホルモンを注文した。
ちなみにホルモンとは、牛の腸などのことで好き嫌いが極端に分かれる部位である。
ゴルダはそれを自分が食べるためだけに注文した。
しばらくして、ホルモンが来て店員が網を交換してくれた。
ゴルダは新しくなった網の上に頼んだホルモンを全て乗せて焼き始める。
なおラトレナスとアルガントは、新たに頼んだ飲み物を飲んでいた。

やがてホルモンがもう食べれるくらいに焼けた時。
ゴルダが焼けたホルモンを取ろうとした瞬間、ルナリアがとてつもない反射神経で全て取ってしまった。
あっけからんに取られるゴルダを気にせず、ルナリアは口一杯にホルモンを頬張る。
その頬張っている姿を見て、ゴルダは自分の分と取ってとっくの昔に冷めていた肉を食べつつ頼んでいたビールを飲む。
ラトレナスとアルガントはもう満足したらしく、ゴルダをじっと見ていた。

「いい加減満足したか?」

「したー」

ホルモンを食べ終えたルナリアに、ゴルダが満足したかと聞くと満足したと言ったので、ゴルダは最後にデザートを頼み、それも食べ終えるとそそくさと店を後にした。
ちなみに最終的にいくらかかったのかというと、2万は超えていたとか。

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小説(交流) |

輝星とアルガティア-料理を教えてもっらった

今日の輝星は、アルカトラスに教えてもらって聖リフィルへとやって来ていた。
わざわざアルカトラスに呼んでもらうのも図々しいと思い、アルガティアが住んでいる場所を教えてもらったのだ。

「セイグリッドよりは小さいけど、造りはしっかりしてるんだねえ」

リフィル城を見て、輝星はそんなことを呟く。
城門は開け放たれままなところは、セイグリッド城とは変わらないらしい。
しかし、城門前までの道から城門周辺、庭園内部に植えられている植物はそこそこ多く、下手をすればセイグリッド城より多い可能性もある。

「アルガティア様はどこだろう?」

城の敷地へ入り、庭園を歩き回ってアルガティアを探す輝星。
庭園の所々には花壇、隅の方には畑があってどちらもぎっしりとはしているもののバランス良く植えられている。
そしてそのまま歩き回っていると、イファルシアと出会った。

「あら、こんにちは。アルガティアならお茶中よ、何か用?」


アルガティアがお茶中であることを告げ、何か用かとイファルシアは輝星に聞く。
そこで輝星は、アルガティアに料理を教えてほしいからアルカトラスにここを教えてもらってやって来た旨を話す。
イファルシアはそれにふうんと呟き、ふわふわとどこかへ向かう。
どうやら輝星について来いと言っているようである。
それに応じるように、輝星はイファルシアについて行った。

輝星がイファルシアに連れて来られた場所は、書斎と思わしき一室。
魔法書としか思えない本がぎっしりと詰められた本棚に部屋の半分を囲まれ、その中央には椅子と大きめの机が置かれていて。その椅子にはアルガティアが、机の上ではフィルスが座ってそれぞれお茶中だった。

「輝星が来ているけど?」

少々疑問系の口調でイファルシアはアルガティアに言う。
アルガティアはそんなイファルシアに片手で待ってと制す。
輝星はそれにどうしようかと立ちつくしていたが、先手を打って

「こんにちはアルガティア様」

挨拶をした。
アルガティアは、イファルシアに待ってと制してから数十秒後に茶を飲み終えると椅子から立ち上がって輝星の前まで来ると

「こんにちは」

挨拶を返す。
そこで初めて輝星はアルガティアを訪ねて来た理由である

「ぼくに料理教えて欲しいんです」

料理を教えて欲しいということを伝える。
それにアルガティアは少し考えた後にこう答えた。

「丁度今からレアチーズのタルト作るところだったけど、いかが?」

輝星はアルガティアの問いかけに頷いて

「もちろんです、教えてください」

教えてくださいと答えた。
アルガティアは微かに笑うと、フィルスに作って来るまでは仕事を続けておくように言って輝星を連れて厨房の方へ向かう。

「ここがこの城の厨房よ」

「広いとは言えないけどバランス良く設備が置かれてるんですね」

セイグリッドの厨房のことは、花吹に聞いた程度なのでどれくらいかは分からないが、このリフィル城の厨房も少し狭いながら設備は十二分だった。
ほんの少し厨房の設備に見とれている間に、すでにアルガティアは材料の準備を終えて待っていた。

「まずは台のビスケットの部分を作るわ」

と言って、アルガティアが出したのはハチミツ入りのビスケット。
それを輝星に細かく砕くように指示。
輝星はただ砕いて台にしただけではすぐ崩れてタルトが作れないのでは?と思ったが、とりあえずは言われた通りにビスケットを砕く。
だいたい2分ほど砕いたところでアルガティアからOKのサインが出たので輝星はそこで砕くのを止めた。

「そして、これが簡単に崩れなくするには…」

この後、アルガティアはなんだかんだとやって本当にカチカチの台の部分を作り上げてしまう。
固さは輝星が強く押せば台が崩れる程度。
ちなみにアルガティアからは、後でこうする方法はレシピ書いて渡すと言われたので輝星はそれ以上何も聞かなかった。

「次は肝心なレアチーズの方、これは簡単よ」

と言って、アルガティアが輝星の前に持って来たのは生クリームにクリームチーズ、少しの砂糖にあらかじめ絞っておいたと思わしきレモン汁。
なお、生クリームとクリームチーズはこの城で飼われている牧用の草食竜から絞った乳で作ったものらしく、アルガティアの双子の妹のイレーヌの手作りとのこと。

「クリームチーズは砂糖と合わせて切るように混ぜるのよ」

アルガティアに言われた通り、輝星はボウルにクリームチーズを入れてから砂糖を入れ、切るように木へらで混ぜる。
しばらく混ぜていると、クリームチーズは砂糖と混ぜ合わさってペースト状になった。
そこへレモン汁を入れて、生クリームを少しずつ入れながら再度かき混ぜるとゆるくなったペーストのようになり、レモンのほどよい香りもするようになる。

「ここからは台にこれを注ぐけど、ボウルやへらでせっかく作った台を崩さないように注意ね」

輝星もそれに注意しながら台へ混ぜたそれを全て注ぎ、最後はへらで慎重に表面を平らにする。

「冷蔵庫で普通は冷やすけど」

最後は冷やして固めて完成なのだが、アルガティアはそれをせずに

「今日はこうする」

と言って、氷系の魔法で冷凍されない程度に冷やし固めてしまった。
それを見ていた輝星は、あっけからんにとられてしまう。

「どうしたの?これで完成よ?」

出来上がったレアチーズタルトをアルガティアに見せられ、輝星は我に戻る。
とりあえず完成したことは把握したので、書斎で待つフィルスの所へ戻った。

「やっぱこの濃厚さだよね」

ほぼ輝星が作ったことを伏せ、試しにフィルスに食べさせた所そんな感想が帰って来る。
本当かなと輝星も食べたところ、濃厚な味の中にレモンの風味を感じることができた。
その後はアルガティアとお茶をし、輝星は今日作ったレアチーズタルト以外のレシピも貰って帰ったとか。

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ゴルダの料理-チキンライス

今日はゴルダがアルガントが食べたいものを作るようだ。
一体何を作るのだろう?

用意されていたのは、冷凍物のミックスベジタブル、玉ねぎ、スリュムヴォルド産の米、ケチャップ、塩胡椒、鶏ガラ、竜乳のバター、鶏のもも肉だ。
どうやらチキンライスらしい。
分量は2人分でミックスベジタブルが約100g、玉ねぎは2分の1個から丸ごと1個、米は2合、ケチャップはお好み、塩胡椒と鶏ガラは適量、バターはフライパン全体に馴染むくらい、鶏もも肉は1枚。

「早くー」

「今から作るから待て」

早くと急かすアルガントに、ゴルダは今から作るから待てと言って下準備を始める。
既に米は洗って炊いていて、最初は鶏もも肉と玉ねぎをを切るようだ。
もも肉は、普通は食べやすい大きさに切ってしまえばいいのだが、ゴルダのやり方は少し違う。
食べやすい大きさよりもさらに小さく切り、肉のかさ増しをするのだ。
こうすることでより火の通りが早くなるらしい。
なお玉ねぎは、みじん切りくらいに細かく切っておく。

「ゴルダの料理おいしいから楽しみ」

「だろう?だから急かすな」

炊かれている米をよそに、ゴルダはフライパンを熱する。
火力は最初は強火で、バターをフライパンに溶かしてから中火に切り替える。
バターを溶かしたフライパンに、先ほど切ったもも肉を投入。
この際に塩胡椒も振り入れ、肉が焼けてくっ付かないように菜箸でほぐしながら炒めるのがポイントのようだ。

肉がほどよく焼けたところで、今度はミックスベジタブルに玉ねぎを投入。
水分が鉄板の熱で蒸発するのと同じ音を上げながらミックスベジタブルがフライパンで熱される。
ミックスベジタブルと玉ねぎの両方に熱が通ったと思ったところで、鶏ガラを入れて少しかき混ぜながら炒めてからケチャップを投入。
この時、ミックスベジタブルと玉ねぎと肉にケチャップで味をつける際に焦げないように注意も必要だ。
その際に、ゴルダはへらでかき混ぜつつフライパンを揺らす。

「いい匂い」

「まだ米が炊けてないから一旦ここで火を止める」

本来ならば、ここで米を入れて絡め合わせるのだがまだ炊けていないのでゴルダは一旦火を止めた。

その30分後。
炊き上がって蒸らし終えた米を出し、ゴルダは再びフライパンに火を入れて具を温め直す。
普通なら、ここで普通に米とケチャップで味付けした具を絡め合わせながら炒めて完成なのだが、ゴルダの作り方はそうではない。

「さらにケチャップ投入だ」

そう、具への味付けで使うケチャップの量を抑えて具と米を絡め合わせる際に多めに使うのだ。
こうすることで、米にほどよくケチャップが絡んでおいしくなるらしい。
米を投入し、ケチャップも追加した後はへらで全体をよくかき混ぜながら炒め、自分がいいと思ったところで火を止めて盛り付ける。
これで完成だ。

「どうする?オムライスにするか?」

「うーん…」

これだけで食べてもいいが、これに卵焼きを追加するとオムライスにする事が可能。
だが、今回はチキンライスなので割愛する。

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感情のある不思議なサボテン

ある日、ゴルダ宛てにイファルシアから飛竜便が届いた。
しかし、荷物のせいか飛竜便の飛竜がやけに痛がっていたので、荷物を受け取った後でゴルダは応急処置をして帰してやった。
よくよく見ると、荷物の包みにはイファルシアの字で「取扱い注意」やら「これは植物よ」などと書かれており、しかも包みから針らしき物が突き出ていた。
ゴルダは一体何を送り付けて来たんだと、とりあえず荷解きをする。

「サボテン?」

包みの下から出てきたのは、一見すると棘が伸びすぎただけのサボテンの鉢植えだった。
しかし、感知できる者ならばこのサボテンから魔力が出ていると分かる。
なんでこんなものをと思いながら、ゴルダが

「魔力を持ったただのサボテンか、珍しくもない。しょうもないもん送りやって」

と呟いた瞬間。
なんとサボテンの棘が一斉に発射されたのだ。
幸い、普段着の一つと化している鎧のおかがで刺さらずには済んだが、辺り一面にサボテンの棘が刺さってゴルダはその片付けに追われた。

「感情を持つサボテンの仲間…か、めんどくさいものを送り付けやがって」

刺さった棘を片付け、ゴルダは記憶にあるサボテンの種の中から1つだけ該当しそうなサボテンを思い出した。
それは、正式名称は不詳だが人間に近いサボテンとされている種の仲間。

人が言っていることを理解し、感情すらもあると言われているこのサボテンは貶したり馬鹿にすれば怒り、逆に親しくすれば棘が次第に無くなるらしい。
このドランザニアには、どこに生えているかすら分からない珍しいサボテンだが、土でも砂でも育つと言われているそうだ。
鉢植えにしておくのもどうかと思ったゴルダは

「畑の一角に植え替えるか」

サボテンに言うかのように呟く。
しかしサボテンは何の反応も示さない。
これは植え替えても大丈夫だなと判断したゴルダは、畑へと行く。

「この辺でいいか」

スコップで手頃な穴を掘り、手袋もせずにサボテンを掴んでサボテンを植え替え終えた。
植え替えられた瞬間だけ、サボテンは棘を長くしたもののすぐに引っ込める。

「大きくなれよ」

と言いながらサボテンに水をかけたところ、ほんの少しだけ伸びたような気がしたゴルダだが気にせずに家の中へ引っ込む。
その直後、入れ替わりでアルガントが畑へ出てきてゴルダが植え替えたサボテンを見る。

「んー?」

なおもそのサボテンをまじまじと見ていたアルガントは、触ってみたいと思ってそっと触る。
少しちくっとはしたものの、棘は刺さらなかった。

「これがサボテンかあ」

今度は引っこ抜いてみたくなったアルガント。
しかし、ゴルダが植え替えたのを引っこ抜けば何を言われるか分からない。
そもそも、アルガントが自ら畑へ出るのは初めてであった。
いつもはゴルダに連れられてからしか出ないからだ。

「ねえ、砂じゃなくて平気?」

サボテンに関しては植物の本で読んだ程度の知識しかなく、砂漠にしか生えないものだと思っていたアルガントはサボテンにそう聞く。
するとサボテンは、横に微かに揺れた。

「うん?分かんないけど?」

そんなこんなで、アルガントはただひたすらサボテンに質問攻めをしていたという。

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ゴルダとエルフィサリド-舟釣りならぬ背上釣り

ジメジメした梅雨時には珍しい晴れたある日のこと。
なんとなく釣りをしたいと思ったゴルダは、アルガントをシアに押し付けてスリュムヴォルドの漁港へやって来ていた。
だが、釣りはするつもりだったがどういう釣りをするかは考えていなかったようで、漁港の護岸から釣るか、それとも舟でも借りて舟釣りをしようかで迷っていた。

「せっかく晴れてんだ、少し沖合に出たいところだが。しかし戻ってくる手間を考えれば護岸から釣るのがいい…」

などと決めかねている所に、背後から知っている者の気配を感じたのでゴルダは

「尻尾で頭ペチペチはするなよ?」

と背後の気配に向かって言う。
するとその気配は正面へ回って来て姿を現す。

「つーまんない」

現れたのは他でもないエルフィサリドだった。
ところが、今日はシスイは同伴ではないようである。

「なぜか知らんが、お前に頭をペチペチされた後は頭がぬるぬるするからな」

「失礼しちゃうわね、そのぬるぬるが髪にいいのよ」

本当か?という顔をするゴルダに、エルフィサリドは信じるか否かはあなた次第よと返した後、釣竿を見て

「釣りを?」

釣りをするのかと聞く。
ゴルダはまあなと答え、護岸から釣るか舟釣りをするか決めかねていると話す。
それにエルフィサリドは、私にいい考えがあると言わんばかりの顔をして

「私に乗って沖合で釣りをしない?餌ならいくらでも用意できるけど」

自分の背に乗って沖合で釣らないかとゴルダに聞く。
それを聞いたゴルダは、その手もあったかと呟き

「いいのか?」

本当にいいのかどうかを確認する。
それに対してエルフィサリドは当たり前よと返して護岸から控え目に飛び込む。
飛び込んだ際の水飛沫でゴルダは潮をかぶりかけたが、すんでんで回避した。

「ささ、乗って乗って」

エルフィサリドにせかされる感じでその背に乗り、2人はそのまま沖合へと向かう。
魚群探知機など使わずとも、風水竜の勘でこの辺がいいだろうと30分ほど沖へ泳いだところでエルフィサリドは静止した。
そこでゴルダは、どこからか沖釣り用の釣り竿と仕掛けに餌を出して釣りを始める。
今やっている釣りはさびき釣りと呼ばれる釣り方で、上手い具合に仕掛けの先端から撒いた餌を使って枝分かれした針に魚を掛からせるという釣り方。

「あらあら、近くに群れが居るはずなんだけどねえ」

釣りを始めて30分。
仕掛けを巻き上げて餌をセットし直し、また海中へ垂らしたゴルダにエルフィサリドが冷やかし半分にそう言った。
ゴルダはそれを無視し、これまたどこからか偏光サングラスに帽子を出してそれらを装備。
なおも魚は釣れる気配ゼロだ。

始めて1時間半。
もう3回は垂らし直しているが、一向に釣れないのでゴルダはエルフィサリドの背をコツコツと叩く。
すると、ずっと水中に顔を入れていたエルフィサリドが顔を上げてどうしたのと聞いてきた。

「場所をずらしてくれないか?」

場所をずらしてくれとゴルダに言われ、エルフィサリドはえーという顔をしたものの、一応場所はずらしてくれた。
エルフィサリドがずらした先の場所は、やけに岩が多く、注意しないと仕掛けが岩に引っかかりかねない場所。
水深は、50メートル前後で潮流はとてもではないがそれなりに早い場所で、エルフィサリドが何もしないとじわじわと流されて行った。

「釣り方を変えるか」

と言って、ゴルダが変更した釣り方は流し釣りと呼ばれるもの。
仕掛けは垂らしたままで舟を潮の流れに任せて流して釣るやり方だ。
しかし、この辺りは岩が多いので仕掛けが引っかからないよう注意しなければならない。

「生き餌はないが、限りなく似せたこの魔法の仕掛けを使えば問題なかろう」

そこでゴルダが出したのは、見た目も質感も生き餌に使う魚と瓜二つの、生きているようにピチピチと動く何かだ。
これも一応魔道具の一種で、生きた疑似餌と呼ばれているらしい。
ゴルダはそれを仕掛けにセットしてから海中へ垂らし、エルフィサリドに潮の流れに乗るよう頼んだ。

「ここ、海洋系の水竜いるから間違えても釣らないようにね?」

このエルフィサリドの忠告を、ゴルダは1ミリも聞かずに仕掛けを流し続ける。
仕掛けが岩に引っかかりそうになれば、引っかからないように動かし、魚が掛かるのを待つ。

流し釣り開始から1時間。
2人はそれなりに沖の方まで流されて来た。
しかし、エルフィサリドに乗っているのでゴルダはさほど気にはしてない様子。
エルフィサリドの方も泳げるし大丈夫だと確信してるので、似たような感じだ。
ゴルダの予想では、後30分では今の場所の2倍は流れが早くなることもある場所に出るのでそこまでに釣れなければ引き上げようと考えていたその時。

「なんだこの引きは?」

いきなり竿が海中へ引きずり込まれかねない程に引っ張られたので、ゴルダは冷静に竿を掴んで針をしっかり掛からせる。
その後、タイミングを見ながらリールを巻いて引き寄せるのだが、なかなかの大物なのだろう。抵抗は激しかった。
なお、エルフィサリドは潮の流れに逆らってその場で止まっている。

「やるじゃないか」

その後、1時間ほど格闘した後に糸が切れてそこで終了なった。
それにゴルダはまあいいかと割り切り、片付けをしてエルフィサリドに岸へ戻るよう言ってその日はそのまま帰ったという。

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時の鍵ゴルダとエーヴィヒと

今日のゴルダは時竜国クロノスへとやって来ていた。
無論、アルカトラスも同伴でだが。
それはなぜかというと、アルカトラスがゴルダに対していずれ付き合いがあるだろうからエーヴィヒに挨拶しに行くぞと言われたから。

「しかし、耐性ないと正気度がだだ下がりする世界だなここは」

「外部からの侵入者を排除するためだ」

クロノスの空を見て、ゴルダが気がおかしくなりそうだと言うと、アルカトラスは外部からの侵入者対策だと返した。
ゴルダはここまでしねえとならんのかと思いながらもアルカトラスについて行き、エーヴィヒの家へと到着。

「相手は国王でもなんでもないが、一応礼節はしっかりとな」

「言われずとも」

入る前にアルカトラスに礼節はしっかりするように念を押され、ゴルダはそれに言うまでもないだろと返し、家の中へ。
家の中は、壁という壁時計や本棚で埋め尽くされていて、これまたある意味異形の空間だ。
その真ん中には、エルフィサリドのようだがそうではない鱗も毛もない白い不思議な体で、左目を包帯で隠した竜が本を読んでいた。

「エーヴィヒ」

「えっ、ああ。いらっしゃい、そっちが言ってたゴルダ?」

アルカトラスに話しかけられ、エーヴィヒと呼ばれた竜は顔を上げてゴルダを見る。
エーヴィヒにじっと見られたゴルダは、いつものように顔の前で両手を合わせてお辞儀した後に

「爺さんから話は行ってたと思うが、俺がゴルダだ。よろしく頼む」

と相手する。
エーヴィヒはこちらこそと言った後に

「そうかしこまらずともいいのよ、エーヴィヒよ」

片前足をゴルダに突き出す。
どうやら、握手をしようということらしい。
ゴルダは、エーヴィヒのその前足を両手で握ってとりあえず握手を交わした。

「とても神の力が覚醒しかけには見えないけど、本当なの?」

エーヴィヒの一言に、ゴルダはどういうこっちゃやと言いかけたがアルカトラスが

「本当だ、我が証明する」

自分が証明すると言ったので、言わずに終わった。
アルカトラスの言ったことに対し、エーヴィヒはふーんという顔をして

「あなたもこっちの世界へ自在に来れる術が必要よね、アルカトラスみたいにはいかないだろうから…この鍵あげる」

ゴルダもこっちの世界へ来る術が必要だが、アルカトラスのようにはいかないだろうと言って謎の鍵を渡して来た。
その鍵は、鎖付き懐中時計に繋がれており。鍵の柄にはエーヴィヒの体にもある模様が掘られている。
なお、この模様が時の紋章であるということはゴルダは昔読んだ時竜に関する書物で分かっていた。

「その懐中時計は時間が狂わない上に、時を自在に止められる能力があるけど悪用したら絶対に許さないから」

懐中時計に関しても説明を受け、時を自在に止められる能力を悪用するなと言われたゴルダはするかと言い放つ。
なんだかんだあったが、こうしてゴルダは時の鍵をエーヴィヒから授かったのであった。

「では、我とゴルダは帰る」

「ええ、またね」

鍵を授けられてすぐ、ゴルダはアルカトラスと帰ることにした。
なんでも、仕事が残っているので帰ってやらねばならないとのこと。
エーヴィヒはもう少し居ればいいのにという顔をしていたが、帰るというならば仕方ないと見送ってくれた。

「あまり来たいとは思わない場所だ」

セイグリッドへ戻ってから、ゴルダはそう言ったとか。

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梅雨空の下で

スリュムヴォルドの梅雨は、ただでさえ湿度が高めの気候にもかかわらず、さらに湿度が上がるので水竜が多く住むこの国でもあまり好かれない季節だ。
無論、エルフィサリドもジメジメしすぎるので好かないどころか嫌いだという。

そんな梅雨空の下、ドランザニアとの国境に近い山間部をエルフィサリドとシスイが歩いていた。
今日は何をしているのかというと、梅雨の時期に植えるという何ともおかしな小麦農家の視察。
だが視察とはいっても、ブランクに世間話をするだけなのだが。

「普通小麦は程よく乾燥した場所で育てるものじゃないの?」

シスイの一言に、エルフィサリドは品種改良の末に生まれた産物だと返す。
しかし、今ここで育てられている小麦は魔法であれこれいじられた末に出来た偶然の産物。
なので品種改良とは違うのだが、どういうわけか品種改良の末に生まれた産物だと言われている。

「変なの」

エルフィサリドの周りの湿度を時折調整しながら、シスイはそう呟く。
一方のエルフィサリドは、小麦農家と世間話に夢中であった。

「いやはや、今年は例年より梅雨入りが早いですな」

「去年より1週間早い梅雨入りらしいわねえ、それだけずれるとタイミングも狂うものよ」

「ははは、長年の感は強いですよ案外」

こんな世間話を1時間近く続け、エルフィサリドはシスイに次の場所へ行くわよと言って歩き出す。
次にエルフィサリドとシスイがやって来たのは、等間隔でみっちり稲が植え付けられた水田。
スリュムヴォルドでは、小麦だけではなく米も作られているのだ。
品種としては、とても粘り気が強かったりと癖の強いものなどが多く、それを好む者もこの世界や異世界にそこそこいるのでそれなりに安定した生産量を誇っている。

「あら、カエル」

しゃがみ込んで水田の中を覗いた際に、カエルを見つけたシスイがそう呟いた。
それにエルフィサリドは、魔法でカエルを捕まえてシスイへ差し出す。
田舎者かそこまで慣れていない女性ならば、カエルを見ただけで逃げ出すがシスイは違った。

「結構大きいのねえ」

差し出されたカエルを手に乗せ、シスイは間近で観察する。
色的には地球でもよく見る種のカエルだが、その大きさはシスイの片手には収まらないほど。

「行きな」

数分観察した後、シスイはカエルを水田の中へ逃がす。
逃がされたカエルは、グエェと鳴くとそのまま泥の中へ消えた。

「今日は仕事してないのかしら」

水田の持ち主の姿がどこにも見えないので、エルフィサリドはどうしたのだろうかと辺りを見回すが、今目の前にある水田の持ち主の姿は見えない。
そこで、シスイが私も一応と水田に目をやったところ

「何あの竹筒?」

水田の上右端に、水面から不自然に突き出している竹筒があったのでシスイが近付いて確認すると

「どうですかエルフィサリド様、これが水遁の術ってやつ…あれま」

その竹筒の下からこの水田の持ち主と思わしき者が出てきたのだ。
エルフィサリドはその出てきた者にこう言う。

「ニンジャごっこは結構よ、それよりちゃんと管理はしているの?」

どうやらこの者がこの水田の持ち主で米農家で間違いはないようだ。
米農家はエルフィサリドに管理に抜かりはないこと、稲の成長も順調であることを伝えた。

「そう、じゃあ頑張ってね」

エルフィサリドは米農家にそう告げ、またシスイと共に場所を移動する。
梅雨の時期ではあるものの、曇ってジメジメしているだけで雨は降っていないので川は増水していないので、増水している時よりかは安全だ。

「こんにちは」

今度は、スリュムヴォルド唯一の川の岸で投網漁をしている老水竜人と出会った。
エルフィサリドいわく、かれこれ100年以上ここで投網漁をしているベテランで最近は弟子も居ると言う。

「おおう、エルフィサリド様」

老水竜人は、エルフィサリドを見て網を投げるのを中断して挨拶し返す。
シスイにも一応挨拶はしてきたが、ずいぶんとぶっきらぼうなものだった。

「今日はどうですか?」

「ああ、今日は今一つだな」

漁果はどうかと聞いたエルフィサリドに、老水竜人は今一つだと答えつつ籠に入った今日の漁果を見せる。
一見すると本当に食用なのか疑わしい魚も入っているが、一応全部食用らしい。

「1匹もらって行きますかい?」

「いえ、結構よ」

魚を1匹もらって行くかと聞かれ、エルフィサリドは結構と言って断ってそのまま老水竜人に見送られてシスイと共に城へと帰った。

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名義変更で記憶復活

あれから数日が経った。
アルガティアに呼ばれ、ゴルダはリフィルへと来ていた。

「契約をアルガティアから俺へ?」

「…って本人は言っているわ」

「にゅうぅ」

突然アルガティアからラトレナスが自分へ契約者を変更したいと言っていると言われ、ゴルダははてと首を傾げた。
別にラトレナスが来たところでどうともないのだが、なぜ契約を自分に変更したいのかの理由が今一つ分からないのだ。
思い当たる理由といえば、結婚しようとしているので自分の近くに居たいからだろうとゴルダは思ったが、ラトレナスにどういう思惑があるのかは分からない。

「分かった、俺は許可する」

ラトレナスの思惑など知るかと言わんばかりに、ゴルダは許可すると一言言う。
アルガティアはそうと言わんばかりに、後は頼んだわとラトレナスをゴルダに任せて仕事へ戻った。
そしてぽつんと残されたゴルダとラトレナスにルナリアは3人でそれぞれ向かい合って顔を見合わせる。

「さて、どうする?」

ゴルダの一言で、ルナリアは

「どうするって、おにーたんのアレをどうにかしないとどうしようもないよ?」

と言う。
ここでルナリアの言うゴルダのアレとは、種族問わず異性に対してときたま殺意を持つ能力のこと。
これをどうにかしない限り、ルナリアとラトレナスが結婚してただで済むとはおもえない。
この間はゴルダは直前で我に返ったのでどうにかなったが、これが我に返らなかったと考えるととんでもないことになっていただろう。

「確かに、だがそれを消すための協力は俺は必ずする」

「してくれないと困るよ?」

「にゅう…」

ゴルダがその能力を消す協力は必ずすると言うと、ルナリアはしてくれないと困ると返す。
ラトレナスは直接は口にしなかったが、ルナリアに同意しているようではあった。

「そういえば、契約者の変更はどうすればいいんだ?」

ゴルダは本来ラトレナスの契約者を自分に変更しに来たことを思い出し、ラトレナスに契約者変更はどうすればいいかを聞く。
ラトレナスはそれに対して、何かを羊皮紙に書いた。
羊皮紙には

「ここに名前書いた後、私をむぎゅして。それで変更できるの」

と書いてあった。
ゴルダはなんで口で言わないんだと突っ込みかけたが、押さえ込んでその羊皮紙に自分の名を書く。
ラトレナスはそれを確認してから何かを書き足し、むぎゅしてと言いたげな仕草をする。

「こうか?」

「むぎゅぅ…」

無表情でむぎゅと抱きつくゴルダに、何故か少し顔を赤らめるラトレナス。
ルナリアはいいなという顔をしていたが、今ここで自分も抱きついたら台無しになるので我慢しているようである。
やがて、ゴルダとラトレナス両方がいきなり無言で離れて互いに背を向けたので

「どーしたのー?」

とルナリアが聞くが

「…」

「あぅ…」

ゴルダもラトレナスも、何一つとして答えようとしない。
そこでルナリアは、魔法で2人の頭の中を覗く。
すると、どうして答えないのかの理由を見出したルナリアは

「ふふふ…記憶戻ったんだー…」

やたらニヤニヤしていた。
その理由とは、ラトレナスとゴルダにとても他人に言えないような記憶が蘇ったからだったようだ。
ある意味で2人の弱みを握ったルナリアは、2人に帰るよと言う。

「何を知ったかは分からんが、絶対に俺とラトレナスの前で話すな。分かったな?」

「ふえぇ…」

その帰り際、ゴルダはルナリアに絶対に自分達の前以外で話すなと釘を刺してから帰路についた。

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