FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

輝星の御使い

それは、ある日光竜宮で輝星が従者に言った一言が始まりだった。

「ちょっとぼく、ドランザニア行って来るよ。アルカトラス様の毛をもらいに行くのとまたメイドのサフィに会いにね」

「何故他世界の国の従者とお会いに?」

他世界の国の国王の毛をもらいに行くというのには突っ込まなかった従者だが、流石にその国の従者に会いに行くのは何事かと輝星に聞く。
輝星はそれに、あの日貰ったメイド服のスカートを触りながら

「知りたい?知りたい?でも教えない、ぼくだって秘密にしたいことあるもん」

知りたい?と前ぶりを振っておいて、直後に教えないと一気に落とし穴に落とす。
従者は、それにポカーンと口を半開きにして輝星を見ていたが、あまりにもみっともないのですぐに正すと

「そ、そうですか。輝星様が言いたくないのであれば追求はしません、ですが行く際は気をつけて」

行くなら気をつけてと言うと、それ以上は何も言わずじまい。
一方の輝星は、どこか嬉しそうに小躍りしながらアルカトラスとサフィの所へ行く準備をしていた。

その頃、セイグリッドのアルカトラスとサフィはというと。

「また誰かが来そうな気がするわ」

サフィの方は、また雨月達の中の誰か1人が来そうだと洗濯をしているさなかで察した。
そしてアルカトラスはというと

「くしっ!」

書類へのサイン中にくしゃみをして、あやうく書類をダメにするところだった。
誰かが噂をしているのだろうかと思いながら巨大なティッシュで鼻をかんでいると

「どうした爺さん?」

横で不備が無いかをチェックしていたバハムードにどうしたのかと聞かれて

「誰かが我の噂をしたようだ」

と返す。
バハムードはそうかと呟くとまたチェックに戻る。
そしてなぜかアルカトラスは、丁度換毛期で抜け替わった冬毛をサフィに集めて用意しておくように言おうと決めた。

そしてその頃、輝星はというとすでにセイグリッドへやって来ていたが

「わーすごい、こんな城下町なんて初めて」

雨月達と来た時には回ることができなかった城下町へと足を踏み入れ、店に片っ端から入っていた。
なお輝星が入る店は、本屋はもちろん菓子屋や服屋に、ひっそりと佇んでいた雑貨屋に見せかけたイタズラ道具が売っている店など様々。
そして、いかにもな魔道具屋に入った途端。

「あ、そうだ。ぼくはアルカトラス様とサフィに用事があって会うために来てるんだった」

本来のここへ来た目的を思い出し、城の方へと急いで向かう。

その頃、アルカトラスはというと

「それくらいでよかろう」

「下手に捨てるわけにもいかないから溜まる一方よ」

サフィに保管させていた自分の抜け毛を、大きい麻袋1つに詰められるだけ用意させていた。
なぜ保管させているのかというと、過去に城下町のとある生地加工職人への譲渡待ちで普通に置いていた抜け毛が全部盗まれたこともあるからである。
ちなみに、アルカトラスの毛はそのものが高い魔力が込められており、それは半永久的に持続する。
しかも、それは抜け毛でも直に抜いたものであっても変わらない。
なので、この毛を悪用しようとする輩は少なくはない。
抜け毛の用途は様々で、糸へ加工して普通の服にしたり、防具に織り込んだりして強度や機能性などを向上させるなどでよく使われる。
この他にも薬の素材になったり、特殊技術で剣などの武器を作る際にこの毛を混ぜると様々な恩恵があるという。
無論、このアルカトラスの毛を扱う技術を持者は、このセイグリッドにしか居ない。

「普通に使うなら、羽毛布団の羽毛の代わりに使うくらいね」

麻袋にぎゅうぎゅうに毛を詰め、袋口を縛りながらサフィは言う。
なおアルカトラスは書類の処理を続けており、何も言わない。

「あら、来たようね。輝星が」

輝星が来たと察したサフィは、アルカトラスに何も言わずに書斎を出た。

その頃、本館の方に来ていた輝星はというと

「やっぱすごいな、ところどころにアルカトラス様居るし。…本物じゃないけど」

この間来た時にはろくに鑑賞できなかった入ってすぐの場所にあるアルカトラスを象った彫刻や、ステンドグラスなどを眺めていた。
そして輝星が、ただ見るだけでは飽き足らず間近で見ようと壁を登ろうとした瞬間。

「やっぱり、危ないから降りなさい」

タイミングよくやって来たサフィに降りるよう言われ、輝星は壁から降りて

「サフィこんにちは!この間はこの服ありがとう。すっごい気に入ったよ!ところでアルカトラス様はいる?」

アルカトラスは居ないかと聞く。
サフィはそれに頷くと、輝星にどうして来たのかを聞き返した。
すると輝星は

「アルカトラス様の毛をもらいに来たのと、サフィにもう少し教えてもらいたいことがあって来たんだ」

と答える。
サフィはそれにやっぱりと思いながら

「抜け毛でいい?直に抜いて渡すのは無理だから」

抜け毛でいいかと聞く。
輝星は、抜け毛と聞いてもえーなどとは言わずに

「それでもいいよ、貰えるなら欲しい!」

貰えるなら欲しいと言う。
サフィはなら一応来てと、アルカトラスの居る書斎に輝星を連れて行く。

「よく来た。まだ諦めていないと思って、抜け毛を用意した。持って行くがよい」

アルカトラスは入って来た輝星を見て、そんなことを言って持って行けと麻袋に詰め込まれた抜け毛を指す。
輝星はそれを嬉しそうに受け取ると

「アルカトラス様ありがとう!」

と礼をアルカトラスに言った。
アルカトラスは礼を言われるほどではないという顔をして仕事へ戻る。

「さて、こっちよ」

アルカトラスへの用事が終わった輝星を連れ、サフィは自室へ向かった。

そして場所は変わり、サフィの自室。
従者らしかぬ広さの部屋には、そこそこの容量のクローゼット以外はいたって普通の家具が置かれている。
そこでサフィは、輝星に

「何を教えてほしいの?」

何を教えて欲しいのかを聞く。
それに対して輝星は

「もっとメイド服の着こなし方とかそういうの!」

と語気を強めて言う。
サフィはそうと言うと、輝星を座らせて着こなし方以外にも色々教えた。

「へえ、そんなのもあるんだ」

それに対して輝星は1つ1つに頷いて感心し、吸収していく。
やがて、教えようと思ったことを全て教え終えたサフィはひと段落ついた顔で

「まだある?」

まだあるかと聞くが、輝星は首を横に振ってないと答えた上で

「もう大丈夫、ありがとう。今日は帰るね」

と一礼して麻袋を持ってそそくさと帰って行った。

その後、光竜宮へ帰った輝星はというと

「ふわふわー、ふわふわー」

従者に頼んで作らせたクッションで暇さえあればずっと遊んでいたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

聖竜布の話

聖竜布とは、アルカトラスとシアの抜け毛を特殊技術により糸へ加工したのち、布に織ったものである。
アルカトラスとシアほどではないにしろ、この抜け毛1本でも半永久的に相当な魔力を有する代物。
なので、この抜け毛を狙う輩も居ないわけではなく、アルカトラスが取り扱いに細心の注意を払わせるほどである。
しかもこの抜け毛、普通に加工しようとしてもまず無理で、前述した特殊技術での加工でなければ羽毛布団の羽毛の代わりにするか、クッションにでも入れるかしかない。
さらに、この特殊技術を有する職人はセイグリッドにしか居ない。
それはなぜかというと、アルカトラスが悪用対策として職人を手厚く保護しているからだとか。

聖竜布は、アルカトラスとシアの年3回ほどの換毛期で発生する抜け毛1回分で、ようやく1人分の衣服を作る布しかできないという大変貴重な物。
無論、抜け毛は聖竜布への加工のみに使われるわけではないが、内訳としては聖竜布への加工が9割5分となっている。
なので、聖竜布で作られた衣服を着れる者は王族か相当な富豪くらいである。

なお、聖竜布の特徴として、一度衣服に加工してしまえばフリーサイズになるというのがある。
これは、アルカトラスとシアの抜け毛に宿る魔力のせいであることはすでに解明済みである。
そして、着用者の潜在魔力を引き出す能力や、各種魔法属性への強い耐性。
さらに剣で切りつけても槍で突こうが、よっぽどのことがない限りそれら武器による攻撃を受け付けないなどがある。

ここで、この聖竜布を使った衣服の着用者が本当に居るのかという話になるが、ここではアルガティアとサフィの2人を出しておく。

最初の着用者はアルガティアであるが、これはいつも着けている正装ローブがそうである。
一応、国王即位の時に授けられたものらしい。

「いつも見てるけど、そにローブって洗っている?」

今日もいつものように国務をしていると、フィルスがそんなことを聞いて来たのでアルガティアは

「軽い手入れだけしかしてない、気付かないうちに綺麗になってるから」

いつの間にか綺麗になっているので軽い手入れしかしてないと返す。
そう、アルガティアのこの聖竜布を使ったローブは自浄化能力を持っているらしく、かつてアルガティアが従者に洗わせようとして渡したところ従者に

「アルガティア様、これ洗ったみたいに綺麗ですよ。汚れも臭いもないですし」

と言われたことでその能力に気付き、軽い手入れだけで事済ませるようになった。
しかも、このローブ特有の能力はこれだけではない。
それはアルガティアがエゼラルドに乗って少し城下町まで遠出をした時のこと。
町の中ではエゼラルドから降りて、自分で歩いているアルガティアにイファルシアが

「ねえ、ハーブ系の香水使った?」

と聞いて来たので、アルガティアは首を横に振る。
しかし、アルガティア自身もその匂いには気づいていた。
そう、これこそがこのローブの特有のもう一つの能力で、匂いを複製し、ローブ自身からその匂いを出すというもの。
ただし、臭いは複製して出さないのでその点は安心である。

次なる着用者はサフィ。
サフィの場合は、いつも着けているメイド服の3割が聖竜布で作られている。
なので、アルガティアのように全てが聖竜布で作られているわけではないが、それでも能力は高い。

「ふう」

セイグリッド城の従者執務室で、溶け切らないほどに砂糖が入ったコーヒーを片手に今週の衛生チェック表を眺めるサフィ。
衛生チェック表は、今日までは特に異常は見られない。

「…」

ここで何かを察したのか、急に座標指定テレポートを使うサフィ。
向かった先は、アルカトラスが仕事をしている書斎。

「うむ、ちょうど良かった。緑茶を淹れてきてもらえぬか?」

「分かったわ」

何故呼ばれてもいないのに、サフィはアルカトラスが緑茶が欲しいと分かったのか?
それは、聖竜布のせいである。
聖竜布は、元はアルカトラスとシアの体についていた毛から作られたもの。
そのために、聖竜布を使った衣服を着用している者は常にアルカトラスやシアとリンク状態となる。
なので、呼ばれる前に察して駆けつけるということが可能なのである。
ただし、このリンクは一方向性なリンクではなくアルカトラスやシアもまた着用者側とリンクしているのである。
なので、サフィやアルガティアはアルカトラスやシアの事で変な事を考えることはできない。
最も、それ以上の恩恵があるので誰もそんなことは考えないだろうが。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |
| HOME |