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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

ゴルダとシスイ

ドランザニア某所の、ドランザニアとアストライズの二国の国境を山中に有する山。
そう、ここはシスイが住む山である。
その湿度が異常に高い山の中を、ゴルダは荷物と共に無心に登っていた。
その理由は、数時間前に遡る。

「悪いわねえ、急に呼び出して」

数時間前、ゴルダはエルフィサリドに呼ばれてスリュムヴォルドに来ていた。
なお今日はアルガントはシアが面倒を見ているので、連れては来ていない。
少々機嫌が悪そうなゴルダは、煙草のようなものを吸いながらエルフィサリドに

「呼び出したからには理由があると見受けるが、何だ?」

とさっさと用件を教えろと言う。
すると、エルフィサリドはどこからか地図を出してドランザニアのとある山の中を尻尾で指して

「この辺りに、私の友達が住んでるの。その友達に食料とかを届けて欲しいの」

そこに住む自分の友達に食料を届けろと、ドンと食料を含めた荷物をゴルダの前に置く。
ゴルダはなぜか、エルフィサリドが自分にこの用事を押し付けたのが急に用ができたからだと察したので、あえて理由は聞かなかった。

「じゃあ、頼んだわよ」

いつものように尻尾で頭をぺちぺちされたついでにキスまでされ、ゴルダは煙草のようなものの火を握り消して目的地の座標を調べてから向かった。

「ぐっ、なんだこの湿度は」

目的地である山の中へ座標指定テレポートした瞬間、ゴルダはその湿度に驚く。
体感湿度は、70パーセントを軽く超えているだろう。
そのためか、露出している岩などには苔が生え、生い茂る木々の葉はずっと高い所の枝にしかない。
本当にこんな場所に住めるのだろうかと思いつつ、ゴルダは足元に普通の山を登る以上の注意を払いながら登って行く。
エルフィサリドの指した場所は、頂上近辺だったのでそれなりに登り必要がある。

「高湿度環境に適応するように進化でもしたのか…?」

テレポートして来た地点から1時間弱登った辺りで、ゴルダは苔と木々以外にも植物が生えていることに気付いた。
苔の上に、まるで芝生のように生えている草。
湿度にも日の辺りの悪さにも負けずに開いている花。
そして、それらの草を食べている鹿や兎などの動物。
ここに生きる植物や動物は、皆が皆この環境に適応して進化していることは間違いないようだ。

「やっとついたか」

登り始めて2時間半。
ゴルダはこじんまりとした小屋とその横に立てられた手作り墓石の墓がある開けた場所に出た。
見た感じ、誰も居ないようである。

「なんだよ、誰も居ないのか」

荷物を抱えたまま、小屋の中を覗くゴルダ。
しかし、中には誰も居ない。

「少し待つか」

そして、荷物を下ろしてそのエルフィサリドの友達とやらを待っていようと地面にしゃがんだ瞬間。
何者かの気配を感じ、ゴルダが振り向くとそこには青目に紫髪の女が構えを取って

「何者?そこから動かないで、動くと一発入れるわよ」

ゴルダに動くなと忠告して立っていた。
それにゴルダは別に驚くことも動じることもなく

「俺はエルフィサリドの使いで来ただけだ、食料とか届けろってな」

自分がエルフィサリドの使いで来ただけだということを説明。
すると紫髪の女は構えを解いて

「そう、エルフィサリドの知り合いなのね。それで全部?」

ゴルダに荷物はそれで全部かどうかを聞く。
それにゴルダはそうだと頷き、この後どうするかを考える。

「そういえばあんた…思い出したわ、エルフィサリドの側近とかそんな感じのポジションですって?名はゴルダで当たってる?私はシスイよ」

そんなゴルダを見て、紫髪の女はゴルダのことを知っていると言わんばかりのことを言い、自身の名をシスイと名乗る。
ゴルダは紫髪の女改めシスイを、あいつはいらん事まで話しやがってと思いながらも

「そうか、あいつから話は聞いていたのか」

と頷きながら納得したように言う。
一方シスイは、黙ってゴルダを眺めていた。
ゴルダは外界との関わりを復活させてからの、エルフィサリドに次ぐ2人目の遭遇者だ。

「話を聞いた時から気にはなったけど、いざ会ってみるとこれは知り合いにならないともったいないわ」

と、心の中でシスイが呟いたようにゴルダはシスイにとってなかなか頼りになる上に信用できるタイプだと思っていた。
自分が警戒して構えていたにも関わらず、一切動じる素振りを見せない肝の据わりよう。
それに、無表情ながらその目からはどことなく味方にすれば心強いと感じられたのだ。

「俺の顔に何か?」

じーっと顔を見ていたせいか、ゴルダに顔に何かついてるかと聞かれてシスイはなんでもないと答える。
なんでもないと言われ、ゴルダはそうかと言って近くの切り株に座った。

「ねえ」

このまま何もしないのはもったいと、シスイは思い切ったことを思いついてゴルダに話しかける。
それにゴルダはどうしたと言って立ち上がり、シスイを見る。
するとシスイは、いきなりエルフィサリドにすら見せたことがない竜の姿へ変身。
その容姿は、青い目に紫の鱗に覆われた西洋竜そのもの。

「本気の決闘じゃなくて、軽く力比べでもしない?」

シスイに力比べをしないかと言われ、ゴルダはそうかと言って

「来い」

と手招きして誘いをかける。
それに応じるように、シスイはゴルダを前足で踏みつけにかかった。
ゴルダはただ突っ立っているだけで、避けようともせずにもろに踏みつけを食らったかに見えたが

「大分手加減したな」

その前足を片手で受け止め、つばぜり合いに持ち出したのだ。
そして手加減したと言われて少しムッとしたシスイは、さっきより力を入れる。
だが、ゴルダは若干動いただけでまだ負けては居ない様子。

「そんな強さ持っていながら、独身貴族とはねえ」

エルフィサリドから聞いていたことを持ち出し、ゴルダを挑発しにかかるシスイ。
しかし、ゴルダはその挑発には乗らずにこう答える。

「1人が気楽だからさ、変に一定以上の関係を持てばそれだけ精神的に負担になる」

その答えを聞き、シスイは一旦前足を引いてから体重をかけて踏み潰しにかかった。
そう、本気で行ったのだ。

「やれやれ」

一方ゴルダは完全に手加減していたようで、シスイの前足に軽く潰されていた。
だが、地面にめり込んだせいでさほどダメージはない様子。

「あんた、冷静で肝が据わってるけどよく分からないわ」

ゴルダを解放し、人の姿に戻ったシスイはそんなことを言う。
一方のゴルダは全身が汚れているにも関わらず、気にして居ない様子。

「ありがと、色々楽しかったわ」

そして、ゴルダが帰るというのでシスイはそんな一言で見送る。
ゴルダはそれに後ろ手を振っただけだったが、シスイにはそれだけでも十分だった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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