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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

アルカトラスと6人の王子

雨月がドランザニアへ行って数日後のある日の水竜宮。
他の5人を交えて一応報告までにと、国交を締結した証明する書類の控えを見せながら話をする雨月。

「…というわけで一応許可はもらったのだ」

雨月が話をしている間、他の5人はすごいやらよくやったやらと雨月をやたらと褒めていた。
そこへ

「ねえねえ、どんな世界だったの!?」

と無駄に高めのテンションで聞いてくるのは、金髪に夕焼けの瞳の輝星。
雨月は少し押されながらも

「むう、そうだな…」

現界の王都のような城が建っていたこと、城下町は華やかで自然も豊かであったことと、それが国竜宮に近かったこと。
そして最後に一応の国王であるアルカトラスがとてもいい人柄であったことを5人に話して聞かせた。
なお、それに対して褐色肌に燃えるような赤い髪を束ねているにもかかわらず、跳ね毛がある焦熱が

「そこ、寒くねーか?」

などとマゼンタの目をしぱしぱさせながら言ったのに対し、薄黄色に桃色のグラデーションの目にふわふわ癖っ毛の花吹が

「焦熱には寒いかもよ」

とさりげなく返す。
さらに花吹は続け、他の5人に

「そしたら次はお菓子でも作って皆で行かない?向こうの人達とお茶をしながらさ」

今度は6人全員で行ってお茶をしながら話でもしようと提案。
だがそれに対し、雨月は

「ああ、花吹殿…」

少し困ったような口調で花吹に話しかけるや

「アルカトラス様はとても大きくてな、66尺はあろうお方だ」

アルカトラスがとても大きいことを説明。
その大きさを聞いて、6人の中で一番大きい全身黒ずくめの髪が途中で翼に融合している昏黒を除く全員がえーっと叫ぶ。

「ではお土産はどうすると?」

花吹にそんなことを言われて、雨月はただうーんと考えるだけであった。

場所は変わってセイグリッド城のアルカトラス。
雨月が来て以来、新規で繋がった世界にやや敏感になっており、諜報員もどきを送ろうなどとも考え始めていた。

「爺さん?」

「…ん、ああ。汝か、少し考え事をしていてな」

バハムードの声で、アルカトラスは我に戻って仕事を続行。
しかし、どういうわけだがまた雨月から書簡が来るという気がしてならないので、仕事は中途半端にしか進まない。

「っと、爺さん。雨月から書簡だ」

ここで、本当に雨月から書簡が来たのでアルカトラスはやはりかという顔をしてバハムードから書簡を受け取ってすぐに読む。

「王子全員で6人で来るのか、まあよかろう」

書簡には、今度は自分以外の次期竜王達と会談ではなく、御忍び的な感じで遊びに来てもいいかという旨の文が綴られていた。
アルカトラスは、その返事に大いに歓迎するので是非来てくれという文を綴り、バハムードに渡す。

「御意」

返事が書かれた書簡を受け取ったバハムードはそのままシアの所へ向かった。

そして、場所はまた変わって水竜宮。
どうしようかと悩む5人に、アルカトラスからの返事が届く。
雨月は早いのだと呟きながらその返事を読む。

「構わないと言っておられるのだ」

雨月の一言に、輝星は

「じゃあ行こう、すぐ行こう。アルカトラス様の事だからお土産なくても大丈夫大丈夫!」

アルカトラスは器が大きいからそんなこと気にはしないからすぐ行こうと言い出す。
だがそれに対し、黒髪おかっぱぱっつんの頭に深緑の目の緑雲は

「さすがにそれは口に出さずとも、図々しいと思われても致し方なしではとボクは思うけど?それに輝星、真剣に考えごとをしている間は静かにできないのかい?気が散るんだが」

それでは図々しいと内心思われても致し方なしではと言い、付け加えるように輝星に静かにしろと注意。
そこに、今まで沈黙を堅守していた昏黒が一言

「…全くだ、こういう…話は真剣に…やる…べきだ」

と緑雲に同意するように言う。
輝星は少しむすっとして

「黙ってればいいんでしょ黙ってれば」

とその場に座り込み、一言も喋らなくなる。
それから数分、皆が皆どうする?という顔をしていたがここでようやく花吹が

「雨月殿、アルカトラス様に一つ聞いてもらえる?」

「うむ、何を聞けばいいのだ?」

何か案を思いついたようで、雨月にアルカトラスに一つ聞いて欲しいと言ってそのまま耳打ち。
雨月はまた別途で書簡を書き、アルカトラスに送る。
ちなみに、花吹がアルカトラスに聞いて欲しいと耳打ちして伝えた内容は次のようなもの。

「お土産を持っていくことが難しいので、少しばかり城の厨房及び庭をお借りしてもよろしいですか?」

雨月が書簡を送って30分後。
アルカトラスから返事が帰ってきた。
もちろん、返事の内容は使ったら片付けることと変なことをしないという条件付きでの許可。
この返事を読んで、花吹はやったという顔をする。

「では皆の者、明後日ドランザニアへ行くので予定は開けておくように。今日は解散なのだ」

ようやく話がまとまったので、雨月は他の5人に明後日行くので予定を開けておくように言って解散させた。

そして、雨月達側の世界の時間でいよいよドランザニアへ行く日を迎えた朝。
皆雨月が指定した時間に集まり、予定通りに出発できた。
ドランザニアへやって来ると、すでに来たことのある雨月とさしたる興味を示さない昏黒以外は自分達の住む世界とは違う光景に興味津々である。

「とりあえずアルカトラス国王に接見しよう、こっちだ」

雨月は城下町に見とれている4人に声を掛けて、城の方へと向かう。
やはり雨月が最初に来た時同様、町の者達は6人を物珍しそうに見ることはなく、ただの通行人を見るような目をしていた。

「こんにちは、雨月とそのお仲間さん」

庭園を素通りし、本館の方へ行くとアルカトラスから話を聞いていたと思わしきサフィが出迎える。
雨月と昏黒以外は、サフィが雨月を呼び捨てしたことに若干首を傾げたものの、雨月が大して何も言わないので黙っていた。

「サフィ殿、一応紹介はしておくのだ」

ここで雨月は、とりあえず5人を紹介した。
そして、紹介し終えてからアルカトラスの所へ案内するように言う。

「こっちよ」

5人を雨月から紹介された後、サフィはとりあえず応接間の方へと案内。
そして、すぐにアルカトラスを呼んで来るので待っているように言って応接間を出る。

「最多で、どれだけの者がここに住めるのかな?」

遠くから見たセイグリッド城の大きさを思い出し、花吹が呟く。
それに緑雲は

「万以上、じゃないかな?この城。外見以上に規模が大きいと見受けた」

万以上じゃないのかと花吹に言う。
その言葉に反応したのか、輝星は

「万以上?じゃあ億?兆?それともそれ以上?それだけ住めたらすごいことになるね!ぼくの国の民も全員暮らせるかな?かな?」

などと言って1人でやたらはしゃぐ。
一方、焦熱は暖炉をちらちらと見て

「この部屋さみぃし、暖炉つけてもいいよな?」

暖炉つけてもいいよななどと言うので、緑雲は

「ダメに決まってるじゃないか、間違って火事にでもする気で?そうなればさすがにアルカトラス国王も黙ってはいないと思うけど」

火事にする気かと毒舌を披露。
しかし、緑雲が毒を吐くのは身内だけであってそれ以外には絶対に使わない。
とここで、ようやくアルカトラスが応接間へやって来た。
白毛の体に青い目と2本角は相変わらずで、国王と神たる雰囲気を醸し出している。

「どうも、こんにちは雨月とその一行よ」

一行は、アルカトラスから挨拶された後から返すような形で挨拶した。
輝星や花吹はアルカトラスの大きさに圧倒されていたが、他は特にその大きさに驚く様子は見られない。
そして、一通り挨拶を終えたところで花吹はアルカトラスに

「アルカトラス国王、改めて聞きますが庭と厨房をお貸しいただけませんか?」

庭と厨房の使用許可を改めて求める。
それにアルカトラスは頷いて

「片付けはしっかりな、後は変なことはしないように」

条件を再度提示して許可する。
そして、再度サフィがやって来て

「厨房は案内するわ、庭はこの本館を出てすぐ」

花吹を厨房へ案内した。
庭園へは緑雲と焦熱が向かい、残った3人はそのままアルカトラスと話をする。
しかし、昏黒は相変わらず無言でソファに腰掛け、雨月と輝星がアルカトラスと話をしているのをじっと見ているだけであった。

「汝、話すのは好かぬか?」

じっと見ているだけの昏黒にアルカトラスは話しかけたが、昏黒は

「必要最低限…以外は…話さない…主義だ」

と答え、また見ているだけになってしまった。
それを見かねた雨月はアルカトラスに

「すまぬ、昏黒は生活と仕事をするのに必要になる以外は話そうとしないのだ」

とフォローを入れる。

一方、サフィに案内されて厨房へやって来た花吹はというと

「城の規模に見合う厨房ですね」

その厨房の広さに感心していた。
掃除は隅々まで行き届き、衛生状態は良好。
調理器具も綺麗に片付けられ、花吹の料理欲をかき立てる。

「片付けはちゃんとね、そうしてくれたら自由に使っていいから。食材庫は奥よ」

「分かりました」

サフィが出て行った後、花吹は早速準備を始めた。

そして、緑雲と焦熱はというと

「すっげー」

「小規模ながら果樹園まであるとは」

庭園の中にあった畑スペースにただ驚いていた。
畑だけではなく、緑雲が言うように小規模な果樹園も存在し、果物には困りそうにない。

「おー、うめぇ」

緑雲が果物を吟味している側で、焦熱は手頃な果物を取って火を通しては食べるを繰り返している。
それを見た緑雲は

「一応私有地の果樹園なんだから、自重はするように」

焦熱に自重するように言う。
自重するよう言われた焦熱は分かった分かったと言いながらもなお、取っては火を通して食べるを繰り返していたので、結果的に緑雲に灸を据えられた。

場面は戻り、雨月ら3人とアルカトラス。
輝星がやたらとはしゃぎながらアルカトラスを触っている以外は特に何もない。
雨月はアルカトラスが特に何も言わないので輝星を止めないし、昏黒は元より何処吹く風。

「見て見て、すっごいふわふわー。ぼくが乗ってもふわふわー」

アルカトラスのあちらこちらの毛を触っては、2人に見せるように引っ張る輝星。
そして、ある部分の毛をブチっと引き抜いてしまったのを見た雨月がついに

「輝星殿、その辺にしておくのだ。アルカトラス国王が禿げてしまう」

と苦言を漏らしてやめるように言う。
それに応ずるように、いままで何も言わなかったアルカトラスも

「少し勘弁願おうか、毛を元通り生やすのも一苦労でな」

輝星に苦言を漏らす。
こうして2人に苦言を漏らされた輝星は一応やめはしたが

「少し毛をもらっていい?変なことには使わないから」

などと言い出したが、アルカトラスは

「さすがにそれはできない相談だな」

と返して諦めさせた。

その頃、厨房を借りていた花吹はというと。

「とてもいいオーブン、焼き上がりが違う」

緑雲と焦熱が持ってきた材料でお菓子を作って居た。
なお、花吹が作っている間は2人とも使った調理器具洗いをさせられていた。

「うひょー冷え」

「いっそうのこと、冷却消火されたら?」

流しの水の冷たさに身震いする焦熱に、緑雲はお決まりの毒舌を発揮。
なお、これは身内に対しては日常茶飯事なので気にしてはいけない。

「いい匂い、そろそろ焼き上がりかな?」

と言って、花吹は一度オーブンを開いて焼き加減を確認。
オーブンのトレイの上には、2つのパイが置かれており、これ以上焼くと焦げてしまう焼き上がりになっていたので花吹はそれを取り出して火を止める。
それと同時に、隣のオーブンも開いてトレイを出して火を止める花吹。
こちらはマカロンのようで、程よく膨らんでいる。

「さて、頼んでいた分は終わったので?」

花吹は流しの前で椅子に座って燃え尽きている焦熱と、一通り洗い終えた調理器具を拭いている緑雲に話しかける。
緑雲は花吹にとっくの昔に終わったと、燃え尽きている焦熱を見ながら言う。

「何があったの?」

焦熱を見ながら、花吹は緑雲に聞く。
すると緑雲はこう答えた。

「冷たい冷たいって、文句ばかり言うので水を少しかけたらああなったよ」

花吹はそうですかとだけ答え、緑雲に焼き上がったお菓子を盛り付けるのを手伝うように言う。
その間も焦熱はずっと燃え尽きたままで動かなかった。

「さて、応接間の方へ持って行こうか」

「そうだね」

2人は焦熱を放置し、盛り付けたお菓子を持って応接間へと戻る。
それから数分後、ようやく立ち直った焦熱は2人が居ないことに気付き

「戻ったのかよ、ああちくしょう」

自分も応接間へ戻る。

そのころ応接間では、アルカトラスがサフィとバハムードを呼んで花吹達とお茶をしていた。
バハムードはアルカトラスの横にどっかりと座って、昏黒同様何も話さずにお茶を飲んでお菓子を食べているのに対し、サフィは花吹とやたらとお菓子のレシピなどの話をしている。

「バハムード殿」

それを見かねたのかどうかは不明だが、雨月はバハムードに話しかけた。
バハムードは話しかけれたことでようやく

「何か?」

と口を開いた。
雨月は、わいわいと話をしているサフィを見ながら茶一口飲むと

「バハムード殿は、アルカトラス国王とどのような関係なのだ?」

アルカトラスとどんな関係なのかと問う。
それにバハムードは、マカロンを1つ食べてから

「祖父と孫の関係さ、今は必要な時に護衛したりしてる」

アルカトラスが自分の祖父であるとほのめかし、必要な時は護衛もしていると言った。
雨月はそうなのかとアルカトラスに確認するかのように聞くと

「いかにも、しかしそこまで堅苦しくはない」

当たってはいるが、そこまで堅苦しくはないと返す。
雨月はふむと頷くとさらに2人にいろんな問いを投げかけたという。

「そうね、そこにワインを入れれば洒落た感じになるわ」

一方、サフィはかれこれ1時間近く花吹とお菓子に限らず普通の料理についての話もしていた。
互いにその手の知識も技術も長けていたので、話題に困っていない様子。
そしてその側では、輝星がじーっとサフィの服を見ていた。

「もしかして、興味あるの?」

花吹との会話を一旦中断し、輝星へ向き直ってサフィは聞く。
すると輝星は

「ねえねえ、その服どこで手に入るの?ぼくも着たい!」

なんと、サフィが着ている服。
いわゆるメイド服を着たいと言い出したのである。
花吹は思わず苦笑いするが、サフィは少し考えた後に

「ちょっと一緒に来なさい」

と言って応接間を出て自室へ行ってしまう。
花吹がどうしたのかなという顔をしていると、緑雲がやって来て

「変なこと起こらなければいいけど」

などと花吹に言った。

そして、緑雲と花吹に放置された焦熱はというと

「あー、あったけえ」

いつの間にか戻って来て、こっそりアルカトラスの脇腹辺りに潜り込んで暖を取っていた。
しかもアルカトラスにそれはバレているようで、潰さないように配慮されている。

それから30分後。
程よくお菓子が無くなり、お茶だけで会話を続けているとサフィと輝星が戻って来た。

「私の小さい時のがあってよかったわ。それと輝星、せっかくだからそれあげる」

「わーい」

なんと戻って来た輝星は、サフィのものと同じメイド服を着けていたのだ。
髪もちゃんとサフィの手でセットされ、それらしい着こなしをしている。
それを見た個々の反応はというと、バハムードは似合うなと一言言い、アルカトラスも似たようなことを言った。
雨月はノーコメント、焦熱は元より輝星の姿が見えておらず、緑雲は女装ですかとぼそっと呟き、花吹はいいですねと言う。
なお、昏黒は興味すら示さずにお茶を黙々と飲んでいた。

それから間もない頃にお開きとなり、雨月達6人はアルカトラス達に別れを告げて元の世界へ帰還。
結果としては、とりあえは上手く行ったという感じになった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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