FC2ブログ

氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

雨月とアルカトラスの会談

ドランザニアは、常に新規の世界と繋がる可能性を持って存在している。
しかし、その新規の世界と繋がったところで全ての世界及びその国と関わりを持つ訳ではない。
その都度、シアとアルカトラスが様々な手段を用いて調査し、問題なければ放置する。
だが、侵略して来ると思われる国がその世界に存在した場合にはすぐにその世界と繋がる道は二度と繋がらないように封鎖する。
こういう風にして、シアとアルカトラスはこの世界の安全をある程度守っている。
しかし、そうやっていても繋がった世界の国の方から使者や書簡が来たりして国交などを結ぼうとして来る事も稀ながらある。
今日も、そんな新規に繋がった世界の国から書簡がやって来たようだ。

「どこの世界から書簡が来ているのだ?」

「詳しいことはさっぱり、ただサフィの話では未知なる異界語で書かれた書簡が届いているとのこと」

春の午前中らしい日光が射し込むセイグリッド城の書斎。
そこでバハムードは、新たに繋がった世界のとある国から書簡が届いていることをアルカトラスに説明していた。
アルカトラスはそれにふむと頷いて、バハムードにその書簡を持ってくるように言う。

「御意」

バハムードはそれに了承するかのように一礼し、部屋を出て行った。
そして10分ほど経って、バハムードは書簡を持って戻って来た。

「どれ」

アルカトラスはバハムードから書簡を受け取り、それを頭の中で翻訳しながら読む。
その内容は、こんな感じであった。

---拝啓、アルカトラス様 私は水竜宮の次期竜王、雨月と申し上げます。この度、謎の世界と繋がったという報告を受け、その世界の神かつセイグリッドという国の国王であろうあなたがなぜか浮かび、この書簡を書きました。
我が国は、そちらの世界及び国を侵略する気は毛頭なく、出来ることならば関係を結びたいと思っています。
つきましては、一度実際にお会いしまして会談の場を設けたいのですがいかがでしょうか?
検討のほどをお願いすると共に、必ずご返事を下さい。 敬具 水竜宮次期竜王 雨月---

一通り書簡を読み終えたところで、アルカトラスは急に羽ペンと羊皮紙を取り出して

「承知いたした、先方の都合の良い時に出向いてくれれば応じよう。城の者には一通り話は通しておくので、来られた際には我との会談で来たということを説明頂きたい」

という返事を雨月へと書いてバハムードにシアのところへ持っていくように言う。
バハムードはそのままアルカトラスから書簡を受け取ってシアの所へ行った。

そのころ、水竜宮では。

「本当にお1人で?」

「うむ、行こうとしている国は治安が悪いわけではなさそうだからな」

アルカトラスに書簡を出した張本人、雨月が従者とセイグリッドへ行くスケジュールの調整を行っていた。
1人で行くという雨月に、従者は心配をしていたものの本人が大丈夫と言うのでそれ以上何も言うことはなかった。
と、ここで雨月が出した書簡への返事が届いた。
従者から書簡を受け取った雨月は、その返事の内容を読んでふむと頷いて

「3日後、会談のためにセイグリッドへ会談のために出向く。何ら問題は無いのだ」

こちらの世界で3日後にセイグリッドへ出向くと従者へ伝えてスケジュールをそのように調整するよう伝えた。

それから数日後。
ふわっとした髪に、金と紺の目をした何処と無く王の雰囲気を醸し出した男がセイグリッドへとやって来ていた。
その表情は真面目が故の無表情で、その上人見知りなのか人目を避けて城へと向けて歩いている。

「うむ、ここがドランザニアという世界の神にして国王がが住んでいるのか」

この王の雰囲気を醸し出している男こそが、水竜宮の次期竜王の雨月である。
この国は安全そうだからと、護衛を連れては来ていない。

「いい雰囲気の国なのだ」

城下町を歩いていても、自分を竜王だと思っている者は誰1人としておらず、見慣れないのが居るという目でも見られないし、ましてや襲ってくるような輩も居ない。
やがて雨月は、目的のセイグリッド城の前までやって来た。
自分の世界では本の中でしか見ないようなその城に、雨月はしばし見とれていたが

「いかんいかん、私は会談に来ているのだ」

ここで本来の目的を思い出した雨月は、城の衛兵などに見られないか心配しながら敷地内へ入った。
城の入り口を見張っている衛兵と思わしき2人は、雨月を一瞬だけ見たものの、怪しい者ではないと分かるとすぐに正面へ向き直る。
衛兵に呼び止められなくてよかったと、雨月はほっとして庭園の方へ進む。

「緑が一杯でとても素晴らしいのだ」

どこもかしこも、きちんと手入れが行き届いている庭園の植物を見て、雨月は少しほっこりした気分になった。
水竜宮にも植物はないことはないのだが、このような植物ではないので新鮮味があるのだ。
しかし、庭園内も少なからず人が居るので雨月は下手に話しかけられないよう注意しながら庭園を抜けて城の本館へ向かう。

「これまた素晴らしい作りなのだ」

城の本館へと入った雨月は、外の作りだけではなく内部の作りにも感心した。
エントランスは石造と木造が丁度良い割合で共存しており、さりげなく高い位置に取り付けられたステンドグラスと石造には、アルカトラスと思わしき竜が象られている。

「あなたが雨月?私はここの従者全てを束ねているメイドのサフィよ。よろしく」

しばらくエントランスで周囲を見渡していると、紫髮のメイドが突如として現れて雨月は挨拶と同時に声を掛けられた。
雨月はそれに驚き、少し後ずさりして

「う、うむ…確かに私が雨月なのだ。よろしく、アルカトラス殿はおるのか?」

サフィに同じように挨拶し、雨月はアルカトラスがどこに居るのかを聞く。
ちなみに、雨月はサフィの呼び捨てるような呼び方には一応理解はしているので何も言っていない。

「こっち、着いて来てもらえれば案内するわ」

するとサフィは雨月について来るように言って背を向ける。
本当にいいのかと、雨月はそのままサフィについて行った。

「この部屋で待機しているわ、それでは」

とある部屋の前へ案内され、サフィはそこで仕事があると言わんばかりに一礼して去って行く。
1人残された雨月は、ひとまずの礼儀として入る前に扉をノック。

「入っても構わんぞ」

部屋の中からその声だけで紳士とも思える声がした。
雨月は生唾を飲み込むと扉に手を掛け、そして開けた。

「うむ、よくぞ来られた。我がこのセイグリッドの国王にしてこの世界の神のアルカトラスだ」

「お、大きいのだ…」

部屋へ入るや、雨月はまず待っていた竜の大きさに圧倒された。
白い毛に2本の角、青い目と言った容姿のこの竜こそがアルカトラス本人である。

「ど、どうも。私は水竜宮の次期竜王の雨月と申す」

雨月はやや驚きながらも、最低限の礼儀として挨拶を返す。
アルカトラスは顔色一つ変えず

「かけるがよい」

雨月の目の前にある椅子に座るように促す。
だが、雨月はまだアルカトラスの大きさに圧倒されていて座るのを忘れていた。

やがて、雨月は座るかと思わしきそぶりを見せたかと思えば

「ならば、私も変身して大きさを合わさねばならぬだろう!」

と強い口調で言うや、竜の姿へ変身した。
その姿は、竜というよりはタツノオトシゴそのものだったがアルカトラスは突っ込まない。
だがしかし、雨月は変身したまでは良かったのだが、その大きささはアルカトラスの前足首の半分より少し上程度しかない。

「…」

「…」

そして、しばしの静寂。
このままでは分が悪いと思った雨月は

「その、なんだ…すまない」

とりあえずアルカトラスに謝る。
いきなり謝ってきた雨月見て、アルカトラスはどうしたものかという顔をした後。

「問題はない」

やんわりした口調と穏やかな顔で問題はないと言った。
その後、雨月は竜の姿を維持したまま会談を始める。

「ふむ、水竜以外にもそちらの世界には竜族が居ると」

「この世界に存在する竜族の属性は存じ上げぬが、少なくはないようであるな?」

互いの世界の竜族の数についての話になった時、どちらの世界もそれなりには居ることが分かった。
やがて話は今後の国交関係へと移るが、これは特に話すことはなくアルカトラスが

「汝が送った書簡から読み取れるが、嘘をついているとは到底思えぬ、ついているならばすぐに分かっていた。国交は無論のこと、異界間貿易とこの世界へのフリーパスを汝らが国と世界に一応授けよう」

と言ったことで丸く収まった。
それと同時に、国交を結んだという証明になる書類への調印を互いに済ませた後に30分ほど雑談をして一応の会談は終わった。

「汝、今日はすぐ帰るのか?」

元の姿へ戻り、雨月が調印した書類の自分の控えをしまっているとアルカトラスから今日はもう帰るのかどうかを聞かれ、雨月はきょとんとした顔で

「はて、それはどういう意味でかの?」

どういう意味で聞いたのかをアルカトラスに問う。
アルカトラスは尻尾をパタパタさせながら

「夕食まで付き合わないかというのと、もう少しこの世界についてとこの国について話そうかと思ったのだが」

と答えた。
雨月は少し考えた後に

「申し訳ないが、従者には会談を終え次第帰ると伝えておっての。申し訳ない限りである」

従者にスケジュールでは会談が終わり次第帰ると言っていたことを話す。
それをきいたアルカトラスは、ならば仕方ないと言うと

「外まで送って行こう」

雨月をそのまま城の外まで送ると付け加えた。
それに雨月は

「かたじけないのだ」

と礼を言い、そのままアルカトラスに城の外まで送ってもらい、自分の世界へと帰った。

「それはとても紳士な神にして国王でしたね」

「だろう?アルカトラスは気に入った」

自分の世界へ帰った後、雨月は従者にずっとアルカトラスの話をしていたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |
| HOME |