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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

春の海岸で

それは、サフィがこんなメールを投げてきたのが始まりだ。

「シアが海行きたいとか何とか言ってるんだけど、この時期入れるところなんてある?」

ゴルダはそれに対し、こんな返事を返す。

「スリュムヴォルドの南端のとある国有地ならある、エルフィサリドには俺が話して許可はもらっておく」

ちなみに、スリュムヴォルドの南端から以南とリヴァルスとセイグリッド以北は、アルカトラスとシアぐらいしかどうなっているか分からないという未開の地だ。
未開の地というよりは、アルカトラスとシアがそれ以上行けないようにしているだけなのだが。
そして話はスリュムヴォルドの南端の話に戻る。
この南端の地は、エルフィサリドの計らいで国有地にして下手に入れないようにしてある。
それはなぜかというと、ここにしかないような特殊な生態系があるので、やれそれ入れないように形式上は国有地にして許可なく立ち入れなくしているのだ。
無論、海もその範囲に入っているのでその辺もエルフィサリドの許可がいる。

「あいつがすんなり許可くれればいいが」

メール来たのが朝だったので、ゴルダはアルガントを連れてスリュムヴォルドへ行く。
いつものように座標指定テレポートで向かった先で、エルフィサリドはすんなりと見つかった。
日課になっている散歩の途中のようだ。

「あらあら」

呼んでもいないのに来るなんてという顔をしながら、エルフィサリドはゴルダを見る。
手短に済ませたかったゴルダは、エルフィサリドにこう耳打ちした。

「南端の国有地に入りたいんだがいいか?」

すると、エルフィサリドは尻尾でゴルダの頭を軽くぺちぺちと叩いて同じように耳打ちして

「いいわよ」

と返す。
ゴルダはその返事をもらうとエルフィサリドにどうもと言って、その場でサフィに許可は取ったとメールを送る。
するとサフィからこんな返信が来た。

「シアと私とあんた以外にレナとアルガティアも来るから」

ゴルダはそれに、なんだいつもの面子かと思ってその日はエルフィサリドに引き留められることもなく帰った。

その翌日。
スリュムヴォルドの城下町の中心部でゴルダがアルガントと待っていると、アルガティアがイファルシアと時雨にエゼラルドを連れてやって来た。
フィルスはどうしたとゴルダが聞くと、アルガティアは代わりにイレーヌと国務をしていると返す。

「早いのねえ」

「お待たせ」

「待ったかな?」

その数分後、サフィ達がやって来た。
レナとシアは相変わらずで、サフィはいつものような仕事着ではなくジーンズに薄手そうに見える長袖と帽子に日傘という服装。

「いや、待ってはない」

待ったかなと言うレナに、ゴルダは待ってないと返すがそれを見てシアは

「あら、いいとこ見せちゃって」

とからかうように言ったが、それに対してゴルダは何も言わずに流した。
そして一行は、スリュムヴォルドの南端のとある海岸へ向けて出発。
アルガティアとイファルシアはエゼラルドに、ゴルダとアルガントとサフィとレナはシアに乗、飛んで向かう。
南端の海岸までは、飛んで1時間ほどで到着した。
着いた海岸は近くの川が海へ流れ込んでいて、海から30メートルほど砂浜が続き、その砂浜の向こうには樹海が佇むというなんとも言えない風景を作り出している。
しかも、城下町と比べて断然ここの方が真夏日のような暑さであった。
ゴルダは先行して樹海と砂浜の境目を歩いて行き、手頃な平坦な場所を見つけるとそこに荷物を下ろす。
すると、エゼラルドがそこにトンと前足置いて大きな日傘代わりの木を生やした。

「こんな場所があったんだ」

木の根の辺りに座っているサフィを見ながら、そうレナが呟く。
その一方でエゼラルドは樹海の方へ入って行ってしまい、アルガティアも薄手の服装で海に入っていつの間にか泳いでいる。
イファルシアはアルガントの頬を摘まんで遊んでいて、ゴルダは砂浜に穴を掘って火を起こしている。
ちなみにシアは砂を魔法で固めてあれこれ作っていた。

「私も泳ごうかな」

レナはマントと首飾りを外し、それを海で泳ぐ気が毛頭ないサフィに預けてアルガティアを追うようにして海へ入る。
まだ春先なので冷たいかと思われた海は、程よい水温で冷たいと感じることはなかった。
それもこれも、一見メチャクチャに見えて均衡が取れているこのドランザニアという世界が成せる所業なのだ。
アルガティアは足が届かないほどの深さの場所で泳いでいて、時折素潜りしては何かを探している様子。

「あまり深いところは怖いなあ…」

アルガティアのところまで泳ぎたい気持ちはあったレナだが、本能的に深いところは危ないし怖いと思ったので断念。
だがこのまま1人で泳ぐのもどうかと思ったのでシアを呼ぶ。

「シアさんも一緒に泳ぎません?」

「うーん、そうねえ」

シアは少し考えた後、いいわよと答えて数メートルの大きさにまで体を縮小させてレナと海へ。
そして、いざ一緒に泳いでみると意外にもシアはレナが思った以上に泳ぐのが上手かった。
とても日頃は塔の上で生活しているような竜には見えない泳ぎを披露したり、レナを背に乗せてアルガティアが素潜りをしているところまで行ったりもした。

「何してるの?」

丁度素潜りから浮上したアルガティアにシアが聞くと、アルガティアは

「タコとシャコ」

と2人にそこそこの大きさのタコと何個かのシャコを見せる。
どういうわけだか、タコはすでに〆られているようで足が動いていなかった。
そして、もう戻るというのでシアはアルガティアを背に乗せて一旦ゴルダのところに戻る。

「タコはいいが、シャコとはまた…」

焚き火の火を弱めないようにしていたゴルダは、アルガティアの素潜りの成果物を見てそんなことを呟くも、やるなと言う。

「さて、俺もいっちょ川の方で泳ぐか」

焚き火の火をサフィに見ているよう頼んだゴルダは、これまた薄手の服装で川の方へ向かった。

「もう一泳ぎ」

「いいわよ」

「行こっか」

アルガティアがもう一泳ぎしようと言ったので、シアとレナはそれに賛同してまた海へ向かう。
それを見たサフィは、イファルシアとアルガントを撫でながら

「ああいうのがいいわね」

と呟いた直後、背後でガサガサと音がしたのでサフィがナイフ片手に振り向くと

「僕だよ」

エゼラルドが戻って来ただけだったのでナイフを片付けた。
特に何かを採って来たわけでもないらしく、エゼラルドはサフィを守るようにして座る。
ふわっとエゼラルドから香る匂いがサフィの鼻をくすぐったが、どうということはなかった。

「わあ、すごいや」

「あなたって本当に分からないわ、アルガティア」

一方でまた海で泳いで遊んでいたレナ達は、アルガティアの泳ぎに感心していた。
特にレナは、アルガティアの事は深く知らないのでシア以上に感心している。
そしてそれから10分ほど泳いでから3人は海から上がった。

「んー」

海から上がった後は、シアが出した小さい雨雲の雨で体についた潮を洗い流す。
その間にゴルダも戻って来て、アルガティアの素潜りの成果物であるタコとシャコを調理してくれた。
その後はシアの魔法で砂を固めて砦を作ったりして楽しみ、一行は夕方には帰路に着いたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

水竜の内を覗けば

じとじとした天気の中、ゴルダはエルフィサリドの健康診断をするためにスリュムヴォルドまでアルガントと来ていた。
ちなみに、持って来ているのはいつも使っている竜医用の道具くらいだ。
エルフィサリドのカルテなどはどこにあるのかというと、看護師という名目でエルフィサリドの日々の健康管理をしているニフェルムが持っている。
なので、こういう場合にはニフェルムからカルテなどを借りないといけない。

「姉さんの健康診断?その子の面倒見ててもいいわよ?」

城の前で少しぶらぶらしていると、カトレアがアルガントの面倒を見ててもいいと声をかけて来た。
ゴルダはそりゃ助かると、アルガントをカトレアに預けて城の中へ。
中ではニフェルムが既に健康診断の準備を済ませており、エルフィサリドは何事もなく待っていた。

「あー、じゃあさっそく始めようか」

「そうして?」

エルフィサリドは、ゴルダ頭を尻尾でぺちぺち叩きながら言う。
このようにエルフィサリドが尻尾で頭をぺちぺち叩くのは、特に親しい者への挨拶代わりの行為だとか。
なお、竜に対する健康診断は人間のそれとほとんど変わらない。
ただやり方が異なるだけなのだ。

「とりあえず血液検査からだ」

と言って、ゴルダはニフェルムから注射器を受け取り、エルフィサリドから血液を採取。
採取した血液は、ニフェルムが魔動式の検査機にかけて直ぐに結果が表示され、直ちに記録する。

「血液検査は異常なし、次は触診による検査に移るが…では、失礼する」

次は、触診で体に異常が無いかどうかを魔法も併用して調べるのだが。いかんせんゴルダは種族が違えど、異性にこのようなことをするのには抵抗があるらしい。
これで頭から尻尾の先までを調べ、何か違和感を感じた箇所があればそこを重点的に検査する。
なお、この触診による検査は個体差はあれどとても時間がかかるものだ。

「頭部及び脳に特に異常は無い、続いて首」

ゴルダが触診による検査をし、ニフェルムが結果を記録。
やがて首が終わり、1番時間がかかる胴体へ。
鱗も毛もない不思議な感触のする体をふにふにと触るゴルダ、顔色一つ変えないエルフィサリド、そして無表情に結果を記録するニフェルム。
なんとも言えない空気が支配する中、後ろ足の方まで来たゴルダ。
だがここで退屈していたのか、急にエルフィサリドは尻尾でゴルダを捕まえてみた。
それにゴルダはエルフィサリドに何をしているんだお前はという顔をして、目線で下ろすように言う。

「つまんないの」

エルフィサリドは少しがっかりしたような様子でゴルダを下ろして検査を続行させる。
そして最後の尻尾へ来た途端。
エルフィサリドは、ゴルダを尻尾でやたら突ついたりぺちぺちと叩いたりして検査の邪魔をして来始めた。
それでもゴルダは何も言わずに検査を終わらせ、エルフィサリドに

「お前って奴は」

と言って眼球検査と視力検査を始める。
眼球検査は、単純に眼を見て瞳孔はどうかなどを調べるだけで視力検査は言うまでもない。
検査の結果は、全て目立った異常は見られなかった。

「さて、骨の検査だ」

当然、竜に対しても骨の検査は行う。
竜とて骨粗しょう症などの骨の病にかかることも珍しくないのだ。
検査は特殊な魔法カメラを用いて被検査者を撮影し、その写真の写り方で異常の有無を調べる。
所要時間は撮影に30分、写真の現像に5分ほど、判定に40分の計1時間半弱を要する。
結果的にエルフィサリドの骨の状態は、水竜にしては骨密度も問題ないものだった。

「歯と顎の検査からの胃と腸の検査か、俺はこれが1番嫌な検査だ」

なぜゴルダがこれらの検査を嫌うのか。
それはゴルダが無理やり専属医にされた後の最初の健康診断の時のこと。
何事もなく、エルフィサリドに対してこれらの検査をしていたところ、何を思ったのか尻尾で喉の奥に押し込まれてそのまま胃へドボン。
その後そのまま検査をさせられたという記憶があるのだ。

「あの時のような真似はするなよ?」

「しないわ」

エルフィサリドに尻尾で口まで持ち上げてもらい、検査に移る前にゴルダは釘を刺してから検査へ移る。
歯の検査自体は虫歯がないかどうかを、顎の検査は関節がおかしくなってないかを調べ、胃と腸の検査は特殊な魔道具を投げ入れ、様子を記録してもらうのだ。
これで一応の健康診断は終わりである。

「歯は異常なし、顎も異常なし…」

最終的には何ら異常は認められず、エルフィサリドの健康診断は終わった。

全ての検査を終え、ゴルダは煙草のようなものを吹かしながらこう呟いたという。

「2人じゃ厳しいわ」

何よりも人手不足に悩むような一言であった。

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