氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 |

謎の買い物とルナリアの秘め事

ルナリアが来て、どれくらいが経っただろうか。
すっかりここでの生活にも馴染んだようで、最近はゴルダのパソコンでネットまでするようになっている。
一応ユーザアカウントにパスワードはかけているのだが、ルナリアと記憶が共有されているので全くもって筒抜けである。

そんなある日、ゴルダはカードの請求書を見て首を傾げていた。
それは何かと言うと、自分が使った覚えのない買い物の請求が来ているというもの。
収入も毎月は不安定ながら、年収単位で見ればそこそこ安定している上に預金もそれなりにあるので請求書の額はさして気にするものではなかった。
だが、問題はそこではない。
一体誰が自分のカードを使っているかというのが、気になって仕方ないのだ。

「カードの情報流出には敏感だからそれはない、酔っ払った勢いでもあり得ない。となると…あいつか」

ゴルダが考えた末に、導き出した答えはルナリアの仕業。
ルナリアならば自分と記憶は共有しているので、これくらいは朝飯前だろうと思ったのだ。
しかし、ルナリアは一体全体何を買っているのだろうか?
ちょうど今、ルナリアはパソコンを使っていないので調べきれるとゴルダは自室のパソコンに向かう。

「まずはブラウザの履歴だな」

ブラウザの閲覧履歴が残っていれば、調べることは可能だとゴルダはブラウザの閲覧を真っ先に調べたのだが

「完全に消されてやがる、やるじゃねえか」

ルナリアの手で完全に削除されており、見ることは出来なかった。
しかし、ゴルダはここでは引き下がらない。
今度は自分もちょくちょく使うネット通用サイトへアクセス。
そこから購入履歴を開いて、ルナリアが一体何を買っているのかを調べたところ、ゴルダはいつも以上に真顔になって

「ほう…」

としか言わざるを得なかった。
購入履歴には、最近ゴルダが買ったオカルト系のDVDの他に、あからさまにそういう趣味がないと買わないような品々がずらりと並んで居たのだ。
その中にはある意味でそういう時間のお供と言える品もあったが。
どれも、さして値段は高くはないもののゴルダが問題にしていたのはその品だ。

「まさかな、これを1人で使っているとは思えん」

ルナリアに見つかる前にと、ブラウザを閉じたゴルダは何事もなかったかのように部屋を出る。
一方のルナリアは、ゴルダが何をしていたのかも知らずにアルガント抱いたりして遊んでやっていた。

「これは少し調べがいがありそうだな」

アルガントと遊んでやっているルナリアを見て、ゴルダは鼻で笑いながらそう呟く。

それから数日後。
アルガントをシアへ預け、ゴルダはルナリアにあまり気にされない程度に行動を監視していた。
大体のルナリアの1日は、ゴルダと共に起床することから始まる。
その後は食事以外はほとんど自由な時間を過ごしているので、その間に何かするかも知れないのだ。

「おにーたん、ちょっとラトレナスの所行くね」

ようやくルナリアが動く時が来たようだ。
ルナリアがリフィルへ行った後、しばらくの時間差ののちにゴルダも向かった。

「やあ、ルナリア来てるだろ?どこ行ったか分かるか?」

「客室よ」

座標指定テレポートで飛んだ先にイファルシアが居たので、ルナリアはどこかと聞いたところ客室だと言われ、ゴルダはそこへ向かう。

「ここか」

忍者のような足取りで客室の前へとやって来たゴルダ。
見た感じでは、鍵はかかっていないようである。

「よし」

ここでゴルダは、紙のようにペラペラになる魔法を使い、扉の下の隙間から侵入。
客室へ入るとそのまま不可視魔法に切り替え、ベッドの方へ近付く。
するとそこには、購入履歴にあったようなものを広げて何かをしているルナリアとラトレナスの姿があった。
不可視魔法を使っているので、至近距離でもバレはしないだろうと鷹を括ったゴルダはベッドの間近まで忍び足で接近。

「これは一体何を…」

ルナリアとラトレナスがベッドの上でしていたことを間近で見たゴルダは、思わず絶句。
そのままルナリアに見つかってしまう前にそそくさと退散しようとしたのだが

「おにーたん?」

ルナリアの一言に、これはヤバいと思ったゴルダはその場で座標指定テレポートで逃げるように帰った。
ちなみにその後はどうなったのかというと、度々ゴルダはルナリアに言い寄られるようになったとか。
スポンサーサイト

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

シスイの移住計画

シスイの住む山にも程よく夏が訪れ始めた頃。
エルフィサリドの頼みでまた食料持って来たゴルダに、シスイはこんなことを言われた。

「場所は確保するから、スリュムヴォルドの方へ移り住まないかとエルフィサリドから話が出ているがどうだ?」

移り住む気など、今の今まで全くもってなかったシスイだが最近は移り住むのもどうかと考え始めていた。
ここへ来てまで、墓を荒らすような輩はそうそう居ない上にシスイ以外はここに住むのはほぼ無理。
その条件を考慮すれば、スリュムヴォルドへ移り住み、エルフィサリドとより親密な関係になれないこともなさそうだ。

「それで?エルフィサリドはそれ以外には何か?」

シスイは他に何か聞いてないかとゴルダに聞く。
ゴルダはそれに対しては

「一度ここを離れ、数日スリュムヴォルドで暮らしてみないかとの事だ。エルフィサリド曰くいきなり移住しては大変だろうとのこと」

一度ここを離れて、別の場所であるスリュムヴォルドで数日暮らしてみてはどうかという話をされていると返す。
シスイは、顎に手を当てて少し考えるような仕草をした後でゴルダに

「エルフィサリドに、近日中に出向きたいと話しておいてくれ。向こうも私の受け入れの準備もあるだろうし」

エルフィサリドに一応話しておくよう言った。
ゴルダはシスイの返事に頷き、その日は帰還。

「さて、特定少数としか関わってない私がどこまでいけるかね」

そしてゴルダが帰った後、シスイは口元に笑みを浮かべながらそう呟く。

その頃、ゴルダはエルフィサリドにシスイに伝えておくよう言われたことを報告していた。
エルフィサリドはそれを聞いて

「どこかしら引っかかるような物言いだけど、まあいいわ。とりあえずシスイの送り迎えは任せる、今日は引いて」

ゴルダにシスイのここまでへの送り迎えを任せ、今日は帰るように言う。
帰るように言われたゴルダは、エルフィサリドに一礼してから帰った。

それから数日後のこと。
ニフェルムからシスイを迎えに行くよう言われ、ゴルダはそのまま迎えに向かう。

「いつでもいいわ、ただし変なことしたらその時点で潰すわ」

「するはずが無い、行くぞ」

そしてゴルダはシスイを連れ、座標指定テレポートでスリュムヴォルドへ向かう。
ほんの1分ほどでスリュムヴォルドへは着いた。

「ふうん、ここが…」

ほぼ初めて見る光景にもかかわらず、シスイの反応はドライ。
ゴルダはそれを気にすることもなく城の方へ連れて行く。

「よく来たわね」

「向こうよりは低いけど、ここも程よい湿度だわ」

湿度が程よいとシスイに言われ、ニフェルムと共に出迎えたエルフィサリドはやや苦笑い。
それを見て、もういいかと下がろうとしたゴルダだが、エルフィサリドが今日は1日付き合えとアイコンタクトしてきた。
なので、ゴルダはしぶしぶ付き合うことに。

「まずはその服着替えた方がいい気がするけど、その前に風呂入りなさいな」

しかし付き合えと言われたそばから、エルフィサリドがシスイに風呂に入れと言ったのでゴルダは真っ先にはぶられた。
どうしようかと思っていると、ニフェルムに

「ちょっと」

と呼ばれてゴルダはニフェルムに着いて行く。
着いて行った先では、カトレアの部屋のクローゼット。
何する気だと、ゴルダが聞くとニフェルムは

「シスイに星の導きがあるような服を」

と返した。
どうやら、シスイに似合う服を一緒に探せということらしい。
ニフェルムの言動は、このように電波がよく混じる。
なので、ニフェルムのことをある程度理解している者を付き添わせないと大変なことになるのだ。

「あいつに似合うような服な…」

ゴルダは実際のところ、ファッションなどというものにはアルガティアやサフィに指摘されるほどに疎い。
最低限ドレスコードさえ弁えていれば問題ないと思っていた思考の成れの果てである。

「閃きが降りてこないのね」

「悪かったな」

ニフェルムにまで指摘されながらも、なんとかシスイの服を選らんだ2人。
選んだのはいつも着ているような動きやすいものではなく、ある程度動きやすさを殺した上で綺麗さを向上させた長めのスカート付きの服。
服を持って行くと、丁度シスイが風呂から上がったところだった。

「何この服?まあいいけど」

ニフェルムに服を渡され、シスイはなんでこんな服をという顔をしたが一応受け取って着けた。
いつもつけていたチョーカーも外し、山の中で特定少数とだけ関わり、それ以外は孤高に生きていたシスイの面影はもうない。

「ん、まあ。いいんじゃないか?」

ゴルダの一言をシスイは無視し、エルフィサリドにどう?と聞く。
エルフィサリドは、髪型がいまひとつだけどそれ以外はいいとシスイに言ってニフェルムに髪をセットしてやるように言った。

その後、髪のセットを終えたシスイは3人に引き連れられてなんだかんだやったりしたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

投げてゲット

リフィル城の裏山のとある場所。
そこでイファルシアとラトレナスとエゼラルドにルナリア、そしておまけ程度にゴルダが居た。
何をしているのかと言うと、それは目の前にある謎の蔦から下がっている木の実。
色はやや茶色ががっており、表皮はとても固そうだ。
大きさは、小岩ほどはあるだろうか。
それをなぜかイファルシアは欲しがっていいて、ルナリアとラトレナスに手裏剣を渡して取れと言い出した。

「にゅ、難しいと言うより無理」

「あんなの落ちたら危ないんじゃない?」

手裏剣をイファルシアに渡され、蔦とその木の実を見てラトレナスとルナリアは無理じゃ無いかと言って、一行にやろうとしない。
ゴルダとエゼラルドは、イファルシアがなんであんな木の実を欲しがっているのかが謎だと遠回しに傍観。
やがて

「こうするのよ」

いつまで経ってもやろうとしない2人にカチンと来たイファルシアは、自分の分の手裏剣を取り出して投擲。
しかし、カチンと来た勢いに任せて投げたので手裏剣は見当違いなところへ飛んで行き、何処かの木に刺さった。

「全然ダメじゃないー」

ここでようやく投げる気になったのか、ルナリアが手裏剣を投擲。
しかし、ルナリアが投げた手裏剣はなぜか大きくカーブしてゴルダの方へ。
当然ながら、ゴルダはその手裏剣を人差し指と中指で受け止めてルナリアへ返す。

「おかしいな」

と言いながら、ルナリアはまた手裏剣を投擲したが、またカーブしてゴルダの方へ。
今度はゴルダも掴んで受け止めるとそのまま握りつぶした。
それを見たルナリアは

「何するのよー」

とイファルシアに新しいのを出すように言うが、イファルシアは


「1個だけって言ったじゃない」

1個だけだという話だと言って、出すのを拒否。
そしてそのまま互いに睨み合いの状態に。

「私が投げる」

すると今度はラトレナスが手裏剣を投擲したが、投げた手裏剣はパッと突然消えて無くなった。
それを見たゴルダは

「何をどうしたらこうなるんだ?」

とラトレナスに聞く。
するとラトレナスは

「ふえぇ…」

と言うだけであった。

ここで、普通に蔦を引きちぎったりして取ればいいのではと思われがちだが、イファルシア曰く、この木の実にはそういう手が通用しないとのこと。
何でも、蔦を引きちぎろうとすると蔦から毒棘が生えたり、直接木の実を触って取ろうとしたらつるつる滑って取れないとか。

「第一、そこまでして取った木の実は何に使うやら」

ゴルダの一言に、エゼラルドは

「うーん、何だろうね。この手の木の実はあまり見たことないから分からないかな」

あまり見たことがないので分からないと答えた。
なお、イファルシアとラトレナスは、今だに睨み合っている。

「いつまでやってるんだあいつら」

ゴルダはそう呟くと、どこからかナイフを出してそれを木の実と蔦の境目辺りに投擲。
すると、木の実はゴルダが投げたナイフで蔦から切り離されて睨み合っているイファルシアとルナリアの頭上になぜか2つ落下。
イファルシアは気付いてすぐにキャッチしたが、ルナリアは気付かずに頭に命中。

「むー」

その仕業がゴルダだと分かるや、ルナリアはレールガンを放つ。
しかし、自然を壊すのを恐れて威力を相当抑えて放ったようで、ゴルダはあまりダメージは受けていなかった。

「おにーたんの意地悪」

その後、ゴルダはルナリアにポカポカと殴られたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

アルガントと風邪薬

「くしっ」

「ん?」

それは、アルガントがいつもとは違ったくしゃみをしたことが始まりだった。
ゴルダは何だと思い、とりあえずいつも通りに診察してみることに。
すると

「これは…風邪か」

アルガントはどうやら風邪をひいているようであった。
しかし、うつるタイプの風邪ではないようなのでゴルダはとりあえず風邪薬を調合するために隠し地下室へ向かう。
その際にアルガントはゴルダに側に居ろと要求するが、ゴルダは断固拒否。
そのまま隠し地下室へ行って材料を用意して、風邪薬の調合を開始。

「げっ、材料が足りねえな」

隠し地下室でアルガント用に風邪薬を調合していたゴルダだが、とある材料が足りないことに気付く。
その材料とは、アルカトラスやシアと言った聖竜の角の粉末。
無論、滅多に手に入るような代物ではないが風邪薬などに使えば1日で完治するようなもの。
だが一々もらいに行くわけにもいかないので、それなしで調合を続ける。

「闇竜な以上、調合法には注意だな」

ゴルダがそう呟いたように、闇竜に対しての薬調合は細心の注意が必要である。
なぜならば、闇竜は調合法によっては血中毒で薬の成分がかき消されてしまうこともあるからだ。
何気にゴルダはそういう事例を経験しているので、大丈夫ではあるようだが。

「これで出来上がりか」

調合し終えた薬を持ち、ゴルダはアルガントの所へ。
アルガントはやはりゴルダに抱きつこうとしたが、風邪だからダメだとゴルダは押しのけて無理矢理薬を飲ませようとする。

「むぐぐー」

「ほら飲め」

まるで子供のように薬を飲むことを拒否するアルガントに、医者として何としてでも飲ませようとするゴルダ。
それでもアルガントは、鍵をかけた門扉のように口を開けようとしない。
手段を間違えれば、アルガントに呪詛混じりで泣かれかねないのでその辺りは要注意である。

「治るもんも治らんぞ」

「やだー」

なおも飲むことを拒否するアルガントに、ゴルダはもう知らんと部屋を出て扉に外から鍵をかけた。
一方アルガントは、これで飲まなくて済むと胸を撫で下ろす。

「困ったもんだ」

アルガントをほったらかしにしたゴルダは、コーヒー片手に休憩中。
あと10分くらいほったらかしにした後で、またリベンジする気では居るようだが。
アルガントのような子供の竜を診た例はゴルダにはさほどなく、どちらかと言えば内科や外科系が多かった。

「子供ってのはなかなか扱いが難しい」

カップを空にしながらゴルダはそう呟き、リベンジのために自室の鍵を開けて中へ。
アルガントはベッドの中に潜り込んでいるのか、一見しただけでは姿は確認できない。
シーツを引っぺがすと、アルガントは無駄だよ?と言う顔をしながら丸まっていた。
だが、今度のゴルダはチャンスを逃さない。
アルガントが欠伸をした瞬間を見計らい、その口の中へ指を突っ込んで閉じれないようにしてから薬を流し込む。

「うげぇ…」

相当苦かったのか、アルガントは嫌そうな顔でゴルダを見ていたが、水をもらうやいつもの表情へ戻る。
それを見たゴルダは、これでいいとアルガントを寝かせて部屋を出た。
無論、安静にして寝てろと言いつけて。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

3倍もふもふ

初夏がようやく訪れ始めたリヴァルス。
春の頃に比べて、吹雪が吹く頻度も落ち着いて観光するにはもってこいの季節になりつつある。
実際、リヴァルスには異界の暑い地域から避暑に来る者が一番多かったりする。

「寒い」

「そらそうだ」

そんなリヴァルスの雪原の中で、ゴルダはフィルスとアルガントを連れてシェリスの所へ向かっていた。
何故フィルスが着いて来ているのかというと、当の本人にリヴァルスウルフを見てみたいと言われたから。
アルガントはなぜか一緒に行きたいと言ってきたので、連れて来たまでである。
やがて、リヴァルスウルフが寝床にしているエリアまで来るとシェリスの配下らしき3匹が現れてアルガントとフィルスのにおいを嗅ぎ出す。

「何してるの?」

フィルスに聞かれ、ゴルダは敵意がないかを確認していると説明。
一方のアルガントは完全にビビっていたので、ゴルダは3匹にこいつを泣かせるなよと一応忠告。
3匹は、ゴルダを善処はするという目で見てから嗅ぎ終えた。

「行くぞ」

3匹がフィルスも嗅ぎ終わったのを見計らい、ゴルダはシェリスの所へ案内するよう言って、フィルスとアルガントにも行くぞと言う。
そしてやって来たのは、シェエリスが率いる群れが住んでいる森の中の少し開けた場所。
シェリスは、そこでゴルダを今日も遊んでくれるの?という目で見ていた。

「その2人は友達?」

シェリスに聞かれ、ゴルダは似たようなもんだと答えるついでにアルガントとフィルスをシェリスに紹介。
するとシェリスはアルガントの方へ近づき、イタズラ半分に唸って威嚇した。
アルガントはそれにかなり驚いたようだが、負けじと八重歯を見せて威嚇し返す。

「面白い子」

威嚇し返されたシェリスは、アルガントにそう言って今度はフィルスの方を見る。
しかし、シェリスは数秒フィルスを見ると思ったとおりと呟いてゴルダに向き直った。

「どうした?」

まるで知っているかのようなそぶりのシェリスに、ゴルダはどうしたと聞く。
シェリスはそれに

「だって、カーバンクル種は昔見たことあるもの」

と返す。
ゴルダとフィルスは同時にどういうことだと思い、顔を見合わす。
ここでシェリスは、遊んでよと言わんばかりにゴルダに飛びかかったかと思えば、そのまま押し倒した。
しかしゴルダは、押し倒されても動じずにされるがまま。
その後10分くらい一方的にシェリスにじゃれつかれたところで、フィルスはシェリスの頭に乗る。
シェリスはさほど気にする様子もなく、今度は他のリヴァルスウルフたちに注目されているアルガントのところへ行き、鼻先で転がす。
アルガントはそれに何するんだよという顔をし、若干機嫌を悪くしたようだ。

「かわいいじゃない」

「むー」

シェリスに鼻先で小突かれながらからかうように言われて、アルガントはさらに機嫌を悪くする。
それを見かねたフィルスはシェリスに

「機嫌悪くしてるから、これ以上はダメだよ」

と諭す。
しかしシェリスは聞く耳をもたずになおもアルガントをいじる。
やがて、流石にキレたアルガントがシェリスに噛み付いたところでゴルダが

「いい加減にしとけ」

と言ってシェリスはようやくアルガントをいじるのをやめた。

それから1時間後。
フィルスはリヴァルスウルフたちの様子をゴルダの頭に乗った状態で記録し、アルガントはゴルダから離れようとせず、シェリスはゴルダのそばで座ってくつろいでいた。
この状態は、まさにもふもふが3つでまさに3倍もふもふである。

「ねえ」

今さっきまで座っていたシェリスが、ゴルダに対して何やら意味深に誘うような仕草をしたのでゴルダは一言

「どういう意図かは分からんが、俺はやらんぞ」

と言い放つ。
するとシェリスは冗談よと言ってまた同じ場所に座る。
ゴルダはそれに何なんだと思いながらも、またもふもふに囲まれる。
しかし、先ほどのシェリスの誘うような仕草のせいか、他のリヴァルスウルフたちがゴルダ周りに集まってじっとこちらを見るようになった。
そのおかげか、余計にもふもふ度が増したのだが。

「うーむ」

異常なまでにもふもふに囲まれたゴルダは、物思いにふけるように呟く。
森の外からは強い風が吹く音がしており、早く帰らないと吹雪で帰れなくなりそうである。
リヴァルスでは初夏でもたまに吹雪くのだが、その吹雪は春のものよりも厄介。
それはなぜかと言うと、春の吹雪に比べて初夏から夏にかけて吹く吹雪は、とにかく止みにくい。
シェリス曰く、初夏から夏に吹雪が吹くと 最低3日は活動できないとか。

「帰ると言いにくいな」

シアに抱きつかれでもしない限り、ここまでもふもふに囲まれることもそうそうない上にフィルスはまだ記録を続けている。
なので、下手に動くことも帰るぞとも言えない。
これではまるで八方塞がりならぬ、もふもふ塞がりだ。

「ぬぅ、ついに吹雪いてしまったか。まあいい、座標指定テレポートで帰れないことはない」

そうこうしている間に、ついに吹雪く音が森の外から響いて来た。
一応、座標指定テレポートで帰れないことはないのだが。

「考えても無駄よ、今日は1日帰さないから」

シェリスに帰さない宣言をされ、ゴルダはただただむぅと言うだけだった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

輝星とアルガティアたち-思わぬ初対面

今日も輝星はセイグリッドへやって来ていた。
しかし、今日は特に何か用事があるわけでもなくただ遊びに来ただけのようだ。
いつものように城の本館の方へ行くが、今日は事前に来るとは言ってないのでサフィは居ない。

「ああそっか、今日は行くよとは伝えてなかったからかあ」

サフィが居なくてもまあいいやと、輝星は普通に本館から別の場所へ移る。
やましいことをしなければ、城のほとんどの場所への出入りは一般市民にも許可されているので、よっぽどのことがなければ警備兵に呼び止められたりすることはない。

「アルカトラス様、ここに居るかな?」

と言って、輝星はいつもの調子で書斎へと入った。
しかし、そこにアルカトラスの姿はなく、代わりに

「こんにちは、初めましてかな?僕はエゼラルド」

見慣れない緑毛の竜と同じ毛色の額に石を宿した謎の生物に同じく謎の青い毛の額に石を宿した生物が居た。
挨拶をして来たのは緑毛の竜の方で、名をエゼラルドと言うらしい。
なお、謎の2人の生物は輝星を誰?とじっと見ている。

「こんにちは、ぼくは輝星。アルカトラス様は?」

一応の礼儀として、輝星もエゼラルドに挨拶を返してからアルカトラスはどこかと聞く。
するとエゼラルドは首を横へ振って

「今はアルと話し中だよ」

誰かの名前らしき一言と共に、今は話し中だと返した。
輝星は、アルって誰?と試しにエゼラルドに聞く。
しかしエゼラルドは

「もうすぐ戻って来るだろうから、会ってみた方が早いと思うよ」

と言って誰とは教えてくれなかった。
輝星は変なのと思いつつも

「その2人の名前は?さっきからすっごーく気になったてたんだけど。ねえねえ教えて?」

今だに誰?と自分を見ている謎の2人の生物のことをエゼラルドに教えてと頼む。
エゼラルドはそれに頷くと

「いいよ、緑毛の方は草のカーバンクルのイファルシア、属性的には僕と同じだね。青い毛の方はアルカトラスの血が入ってるけどカーバンクルのフィルスだよ」

それぞれ2人を紹介した。
輝星は、イファルシアとフィルスにももう一度挨拶をしてからアルカトラスが来るのを待った。

それから30分後。
暇を持て余している輝星にイファルシアは

「あんた、前に会った緑雲と花吹ってのと匂いが似てるけど。知り合い?あるいは同じような世界出身?」

輝星から漂う匂いが、緑雲と花吹に似ているので知り合いか同じような世界出身かを聞く。
それに対して輝星はゆっくりと頷いて

「知り合いと言えばそうだよ、緑雲と花吹ともぼくは仲がいいんだ」

と答える。
イファルシアはそれに対してそうなのねと一言言って輝星の頭の上に乗る。

「わあ、すっごくいい香りする」

頭の上に乗られ、そこから漂う匂いで輝星は若干興奮気味だ。
しかし、匂いを出しているのはイファルシアだけではないらしく、エゼラルドの方も柑橘類の匂いを少なからず出している様子。
イファルシアが出している匂いは、どうやらハーブ系統の物らしい。

「落ち着くなあ」

2つの匂いのせいで、輝星が骨抜き気味になっていると書斎の扉が開く音が聞こえた。
その直後にアルカトラスの声と、それとは別のサフィではない女性の声もした。
誰だろうと、輝星はイファルシアを頭から落とさないようエゼラルドの横腹辺りに隠れて様子を見る。

「杞憂になることは無かろう、万が一には我というカード切ればいい話だ」

「それだと地球の大国と同じ、譲らないところは絶対に譲らないつもり」

「ふうむ、どうするかは汝次第だ。最適解を見つけるが良い」

輝星がエゼラルドの横腹からそっと顔を覗かせて見たところ、そこには王族の正装と思わしきローブを身に纏った黒髪で緑目の女性がアルカトラスと話をしていた。
それを見た輝星は、とても綺麗な人だなと思いながらも顔を引っ込める。
その女性は、まだ輝星には気づいていないようであったが、このままではいつかは気付かれる。

「よーし、こうなったら」

ここで何を考えたのか、輝星はエゼラルドの毛の奥深くへと隠れようとした。
だがしかし

「イファルシア、そこに居たの」

あの女性が輝星の頭に乗っていたイファルシアに声を掛けたのだ。
なぜか見つかることに動揺を隠しきれない輝星は、どうしようかとあたふたする。
そして、何者かに肩を叩かれて輝星がゆっくり振り向くとそこには

「こんにちは?」

あの女性がしゃがんで話しかけて来ていたのであった。
それに輝星は完全に混乱して支離滅裂なことを言うが

「大丈夫、アルカトラスの知り合いでしょ?とりあえずは落ち着いて」

落ち着くように言われ、数分かけてなんとか落ち着きを取り戻す。
そして輝星は、自分からせねばと

「ど、どうも初めまして。ぼく次光竜王の輝星です」

その女性に挨拶する。
女性は表情こそは無表情だが、穏やかな目で

「現、聖リフィル王国女王のアルガティアよ。こちらこそよろしく」

自らの名をアルガティアと名乗り、挨拶を返す。
そしてそれを見ていたアルカトラスは

「あまり感心せぬ行為ではあるが、大目に見よう。次からはなるべく事前の連絡無しに来たらサフィに言って置くように。我も困る」

今度から事前の連絡無しで着たらサフィに一言言うようにと言ってその場に座る。
とりあえず事なきを得た輝星はほっとしてエゼラルドの横腹へもたれ掛かった。
その衝撃で、イファルシアが飛ばされたが本人は浮遊していたので問題はなかった様子。

「どうやら今日は何かをもらいに来たなどの用事で来たわけではなさそうだな、遊びに来たのか?」

「うん、用事なく来てみたいなって思って」

アルカトラスに用事ではなく遊びに来たのか聞かれ、輝星はそうだと答えた。
その返事を聞いて、アルガティアはこんなことを言う。

「暇つぶしの相手には困らなさそうね」

それに対してアルカトラスは

「我とて年中暇ではないがな」

と返した。
そして、今の今まで沈黙を守っていたフィルスが輝星に

「輝星は心が純粋すぎて光の属性との相性が良すぎるってレベルじゃないね。ちなみに属性ってのは特性や性格なんかでも相性が変わってくるよ」

心が純粋すぎるので光との相性が良いというレベルではないと言う。
フィルスが言うように、属性には使う者の性格や特性などでも大分相性が変わってくるのだ。
たとえば、前述したように光は光が純粋なほど相性は良くなる傾向にある。
エゼラルドやイファルシアのような草の属性は、自然を大事にし、かつ自然の中で暮らしていた者ほど相性は良くなるのだ。

「アルガティアという例外もごく稀に居るけどね。あそこまで精神が混沌としているのにこの世界の属性全てとそこそこの相性があるよ」

フィルスの話を黙って聞いていた輝星は、聞き終わってすごいやという顔をする。

その後、輝星はアルガティア達と様々な話をして満足して帰ったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

むぎゅとルナリア

その日もアルガントはシアの所へ預けられていた。
アルガントの方がシアを気に入ったのかどうかは分からないが、とにかくシアの所へ行きたいと言うので、言われる度に連れて行っている。
そのため、数日に一度はゴルダとルナリアしか居ない日がよくあった。

「おにーたん」

「んあ?」

何をするわけでもなく、ソファに座っていたところをルナリアに話しかけられたゴルダ。
ちなみに、ルナリアがゴルダを名前で呼んだことは一度もない。
ルナリアがゴルダを呼ぶ時に、必ずおにーたんと呼ぶ理由は不明。
ゴルダは無意識下の平行世界での自分との記憶の影響だろうと思っているようだが。

「むに」

突然、ルナリアはテーブルの上に座ってゴルダの頬を揉み出す。
それに対してゴルダは、何も言わずにさせたいようにさせている。
ゴルダはルナリアには滅多に抱きつかせはしないのだが、こういったことだけはよくさせる。

「ここも揉むの」

やがて、頬を揉むのに飽きたルナリアは、今度はゴルダの首の辺りを揉み出した。
どうやら、普通に肩から首にかけてを揉んでいるだけらしい。

「おにーたんこりすぎ」

「そうか?」

ルナリアに肩と首がこりすぎだと言われても、ゴルダはぶっきらぼうな返事を返すだけ。
そのゴルダの態度に、ルナリアは滅多に文句を言うことはない。
流石に度が過ぎるようならば、ルナリアはレールガンを撃つなどと脅しをかけるが、大抵それで丸く収まる。
そもそも、ゴルダはルナリアと波風を立てることを好ましくは思っていないようで、何かあればゴルダの方が譲歩するパターンが多い。

「何だか今日のおにーたん冷たい気がする」

そんなことをルナリアに言われ、ゴルダはそうか?とルナリアの頭をわしゃわしゃした。
頭をわしゃわしゃされ、ルナリアは

「どうせなら抱いてー」

とねだる。
このやりとりは、いつもと何ら変わりない日常の一コマ。
ルナリアにねだられても、ゴルダは適当なことを言ってあしらう。
それもいつもと何ら変わりないのだ。
しかし、そのパターンに痺れを切らしたルナリアがついに

「おにーたんいつもそうやって逃げる、ダメだよ」

厳しい一言をゴルダに言い放つ。
だが、それにもゴルダは動じずに

「避けやすい面倒事は逃げるに限る」

と言って開き直った。

「それがダメ」

開き直ったゴルダに、ルナリアはゴルダにペチペチとビンタする。
しかし、本気ではやってないようでさしたるダメージはない様子。

「もうおにーたんなんか知らない」

流石にルナリアも呆れたようで、もう知らないとテレポートして何処かへ行ってしまった。
ゴルダはルナリアの行き先が分かるので、あえて放置。

「やれやれ」

煙草のようなものを吸いながら、ゴルダはルナリアの帰って来るのを待つ。
だが、数時間経ってもルナリアは帰って来ない。
よっぽど今日はすね具合がひどいようである。

そして、ルナリアがテレポートで出て行ってから5時間。
ゴルダは1人で飯の支度を始めていた。

「いつ帰って来るやら」

ルナリアの好きな料理の1つの20種野菜のテリーヌを作りながら、ゴルダはそんなことを呟く。
やがて料理が出来上がり、また煙草のようなものを吸いながらルナリアを待つゴルダ。
それでもルナリアは帰ってこない。

「参ったな」

全く帰って来る様子がないルナリアに参りながらも、ゴルダはそれでも待つ。
やがて、ラトレナスがルナリアを連れてやって来た。

「おねーたんに何かした?」

「いや?」

「にゅう…」

ラトレナスにルナリアを引き渡され、ゴルダは飯ならできてるぞと言うとルナリアはむぎゅと抱きついて

「今度やったら本当にレールガンねー、ハッタリじゃないから」

今度は本当にレールガンを放つと忠告を返す。
それでもゴルダは鼻で笑うだけで、本気にはしていない様子。
一方ラトレナスはルナリアを送り届けるとそのまま帰った。

「さっさと家入って飯食え」

「もう少しむぎゅさせてよー」

ゴルダとルナリアは、いつもこのような感じである。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

ゴルダとエゼラルドとフィルスとイファルシアと

それは、ゴルダがいつものように持病である竜滅病の薬をもらった帰りがけのこと。
暇なのでアルガティアのところへ寄ったところ、同じく暇そうにして居たエゼラルドにフィルスとイファルシアが居たので

「なんだ、お前ら暇そうだな」

とりあえず声をかけた。
イファルシアはあら、という顔をするだけだったがフィルスとエゼラルドはよく来たねと言うとエゼラルドが

「せっかく来たんだし、ゆっくりしていけばいいよ」

ゆっくりしていけばいいと言うので、ゴルダはそうさせてもらうと言わんばかりにエゼラルドの横腹辺りにもたれるように座る。
ゴルダがエゼラルドにもたれた途端、ふわっとラベンダーのような匂いがした。

「大変だね」

エゼラルドの頭の上に乗ったフィルスに言われ、ゴルダはさほどでもないと返す。
そしてフィルスは羽をパタパタさせながら浮遊して移動し、いつの間にかゴルダの頭を揉んでいた。
揉まれている方のゴルダはやめろとも言わず、やらせたいようにやらせている。

「肩こってない?」

ここで、今まで黙っていたイファルシアがそんなことを聞いて来たがゴルダはいやと返す。
イファルシアはそうなのと言い、ゴルダが胡座をかいているその隙間へ入り込む。
やがてフィルスはゴルダの頭を揉み終え、エゼラルドの頭へ戻った。
とここで、ゴルダは気になっていたことをフィルスに聞く。

「仕事はいいのか?」

フィルスはその一言にビクッとしたが

「今日はアルガティアだけで十分らしいから外してるだけ」

とゴルダに返す。
イファルシアは、無表情なゴルダの顔を蔦で引っ張ったりして遊んでいたので何も言わなかったが、ゴルダに

「やめんか」

と言われてつまんないのといった顔で蔦を引っ込めた。

「ちょっと背に乗ってよ」

その直後、エゼラルドは立ち上がって3人に背に乗るよう促す。
何だとゴルダが聞くとエゼラルドは

「なんとなくさ」

としか答えなかった。
ゴルダはそうかと言うと、イファルシアとフィルスと共にエゼラルドの背へ。
背へ乗ると、ゴルダがもたれた時と同じようにまたもやラベンダーのような匂いがした。

「悪くはないね」

エゼラルドの頭の方に座ったフィルスにイファルシアは、ゴルダの頭の上であらとだけ言う。
3人が乗ったことを確認したエゼラルドは、突然その場から飛び立つ。
ゴルダらはそれに特に驚く様子もなく、エゼラルドの背で風を受けて30分くらい空中散歩をした後、地面へ降ろされる。

「ありがとな、なんだか気分がスッキリした」

地面へ降ろされた後、ゴルダはエゼラルドとフィルスの頭を撫でて上機嫌で帰って行った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

シアとアルカトラスと飲もう

ある日、ゴルダはシアからアルカトラスも交えて一杯やらないかと言われて塔の方へ来ていた。
当然、アルガントも一緒だったのだが酒の席に同席させるわけにはいかないとサフィが面倒を見てくれている。
梅雨の時期だというのに、からっと晴れて月も出ている夜空の下、ゴルダはアルカトラスとシアを目の前にして座っていた。
酒の量は、アルカトラスが底無しでシアは樽3つで吐くので樽3つよりも少ない量が用意された。
それでも万年桜のさくらんぼ酒が樽1つ置かれていたが。
その他には、ウォッカやウイスキーなどの小瓶がゴルダ用に数本、白と赤のワインがそれぞれ3本程度などなど、樽2つ分はある量が用意されている。
ちなみに、これ以上酒が出ることはない。
なぜならこの量も、サフィがきちっと管理して出した量だからだ。

「随分とまた、少ない量だ」

「あったらあったで、全部飲んじゃうでしょうに」

少ないとぼそりと呟いたアルカトラスに、シアはあったら全部飲むでしょと返す。
アルカトラスはそれが図星だったのか、何も言わずにさくらんぼ酒の樽を引き寄せた。
一方のゴルダは、ウォッカの小瓶を開けて口をつけようとしている。

「まあ、とりあえず飲むとしよう」

ゴルダが飲もうとしていたのを見て、アルカトラスはとりあえず飲もうと樽を開ける。
シアの方は大分小さくなって白ワインの瓶を取ってコルクを抜く。
こうして、乾杯も何もせずに3人は各々で飲み始める。

「そう言えば」

飲み始めて数分が計画した頃、突然シアが口を開く。
それにゴルダは何だとウォッカの小瓶を地面へ置いてシアの方を見る。
だがシアはゴルダの反応を見るや

「いいえ、何でもないわ」

と言いかけたことを引っ込めてしまう。
ゴルダはそれになんだよと言うと、ウォッカの小瓶を空にする。
一方、アルカトラスは無言で飲み続けていた。

「爺さんは何かないか?」

そこへ、ゴルダは話題はないかとアルカトラスに振る。
アルカトラスは話題を振られて酒を飲むのを一旦止めて

「少しだけ我が知っているアルガント及び闇竜に関しての事を話そう」

アルガント及び闇竜について自分が知りうる事を話すと言った。
そしてアルカトラスが話したアルガント及び闇竜に関する事は以下のようなものである。
アルガントこと泣竜ははかつてこの世界に存在した闇竜の国の珍しい闇竜の一族の一つに入る。
しかし、その闇竜の国はいつの間にか国そのものが煙のように消えてしまった。
その際にこの世界に居た闇竜の大部分もこの世界から消え、今では少数族となっているという。
ちなみに、アルカトラスですらも闇竜の国及び闇竜に関してそこまで知識は無く。賢者の竜の里に文献が残っていればいい方らしい。

「というように、我でも知らぬことはある」

そう話し終えたアルカトラスは、また酒を飲むの戻る。
そしてアルカトラスが話している間に酒が回って来たのか、シアはいつの間にかゴルダを引き寄せてもふっていた。

「ぬぅ」

ウィスキーを片手に、ゴルダはなんとも言えない顔をする。
こうなると、シアを無理矢理にでも引き離すことは不可能なのでさせたいようにさせるしかない。
酒が入っているせいなのかどうかは分からないが、いつもに増してシアから発せられる匂いが強いことにゴルダは気付く。

「かなり甘い匂いがする」

「ふふふ、でしょー?」

どうやら何時もに増して匂いが強いのは、シアがわざと出しているからのようだ。
しかも、わりかし落ち着くから驚きである。

「ふう」

「このまま今日は離さないわよ」

この後、アルカトラスは飲むだけ飲んでゴルダを撫でて城へ戻り、シアにゴルダを離せとも言わなかった。
そのため、ゴルダは翌朝までシアに抱れたままだったという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

初めての散歩は裏山

聖リフィルにも梅雨の兆しが現れ始めたある日。
何もすることがなく、アルガティアの書斎の一角でラトレナスはぼーっとしていた。
特にアルガティアからは仕事の手伝いを頼まれておらず、ただ暇を持て余すだけの時間。

「暇ー」

とラトレナスが言ったところ、イファルシアはそうとだけ返し、フィルスは

「魔法書読んでたら?」

と言って、アルガティアに至っては仕事に集中していて何も言わない。
時雨はオセロか何かでもしようか?と聞いて来たがラトレナスは

「にゅぅぅ」

不満そうに唸る。
それに時雨は、お気に召さないなら致し方なしとそれ以上何も言わなかった。
その後、ラトレナスは書斎を飛び出す。
外は雨が降っており、とても庭園へ出れる状況ではない。

「ふにゅう」

そんなラトレナスの前に、とても大きな里芋の葉の傘を差したエゼラルドがやって来て

「どうしたんだい?」

と穏やかな表情で聞く。
ラトレナスはそれに、暇なのと言うとエゼラルドはそうなんだと頷いて

「雨降りだけど、僕の背に乗って散歩するかい?」

散歩でもするかとラトレナスに聞く。
ラトレナスはそれに

「にゃ」

と頷き返してエゼラルドの背に乗った。
エゼラルドは器用に里芋の葉をラトレナスと自分の頭が隠れるように浮遊させ、そのままのんびり歩き出す。
歩くたびに、べちょべちょとぬかるんだ地面を踏みしめる音がするが、ラトレナスもエゼラルドも一切気に留めずに散歩を続ける。

「雨降り嫌い」

時折里芋の葉から垂れる水滴見ながら呟いたラトレナスの一言に、エゼラルドは

「僕は限度はあるけど好きだな、雨が降らないと植物も育たないし」

と限度はあるけど自分は好きだと返す。
ラトレナスはそれにそーなのと返し、エゼラルドの背の毛の中へ埋れた。

やがてエゼラルドは城の敷地を出て裏山の方へと歩みを進める。
ラトレナスはここに出現してから、一歩も城から出たことはなかった。
アルガティアは出てもいいと言っていたが、帰り道が分からなくなると困るので出なかったのだ。

「外出るのはここに来てからは初めてだよね?」

裏山への道中、雨が小雨になった辺りでエゼラルドはラトレナスにそう聞く。
しかしラトレナスは何も答えない。
エゼラルドは答えたくないならそれはそれでと言って、追求はしなかった。

その5分後。
雨が上がってどんよりした曇り空の下、エゼラルドはそのまま裏山の中へ。
しかし、エゼラルドはさほど中まで入るつもりはないようで、少しだけ山の中を歩いた後で来た道を引き返す。
一方、ラトレナスの方はエゼラルドの背の毛の中に埋れたままで動かない。
どうやら埋れている間に寝てしまったようだ。
なので、エゼラルドはそのまま寝床まで戻り、ラトレナスが起きるまで待っていたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

緑雲と花吹の奇妙な植物持ち帰り計画

それはある日の風竜宮。
花吹は呼んだ緑雲にこんなことを言う。

「ドランザニアにちょっと行かない?」

「なんでまた?アルカトラス様でもからかって遊んで来るのか?」

ドランザニアに行かないかという花吹に、緑雲はアルカトラスでもからかって遊んで来るのかと冗談で返す。
それに花吹は冗談にも限度があると言い放ち、緑雲に

「ドランザニア特有の植物がここでも育つか気になったのよ、だからちょっと貰ってこようかななんて」

ドランザニアの植物がここでも育つか気になるので貰いに行きたいと具体的な理由を話す。
緑雲はそりゃ育つだろと言いたげな顔をしながらも

「じゃあ行く?どのみち暇だしさ」

と花吹に言って、ドランザニアへ2人で行くことにした。

そのころ、ドランザニアのセイグリッドのアルカトラスはというと

「これはもうできた、次を」

何事もなく国務をこなしていた。
しかし、ある程度終わらせたところでサフィに

「エゼラルドとイファルシアをここに呼んではくれぬか?」

どうにも引っかかることがあるような口調でエゼラルドとイファルシアを呼ぶように言う。
サフィはそれに変なのと言った感じで了承し、その場を去る。
その1時間ほど後に、エゼラルドとイファルシアはやって来た。

「何か御用で?」

アルカトラスに小さい岩ほどもあるオレンジを生成して渡しながらエゼラルドは聞く。
しかしアルカトラスは何も言わずにそのオレンジを受け取り、食べるだけで何も言わない。
何なのよとむすっとしているイファルシアに、エゼラルドは

「無理に聞き出そうとしてもダメだよ」

と言って諭す。

そのころ、緑雲と花吹はというと

「やっと来れたよ」

「誰かさんの支度が早く終わってたらもっと早く来れたのに」

一応セイグリッドへ来てはいたのだが、どうやら緑雲の準備のせいで予定より遅くなったようである。
それでも目的があるので、城の方へと向かう。

「アルカトラスの察しの通りかしら?こっちよ」

案の定サフィが入ってすぐの所で待っていたので、緑雲と花吹はアルカトラスの所へ。
しかし、今日居たのはアルカトラスだけではなかった。
緑毛の竜の方はまだなんとなく分かるのだが、その頭の上に乗っている額にエメラルドっぽい石を持った謎の生物の方は、緑雲にも花吹にも何なのかが分からない。

「初めまして、かな?僕はエゼラルド、こっちはカーバンクルのイファルシア」

緑毛の竜の方が、自分の頭の上に乗っている生物の紹介ついでに名乗ってきたので、緑雲と花吹も同様に名乗り返して挨拶した。
アルカトラスは目的はこの者らだろうと、どこ吹く風で軽く会釈したきりだった。

「えーっと、そのイファルシアって子がカーバンクルっての?」

確認するように聞く花吹に、エゼラルドはそうだよと頷く。
なお、イファルシアというカーバンクルは、2人をさほど興味を持っていない目で見ていた。
それに緑雲は

「綺麗だねその額の石、本物のエメラルド?」

と言って、イファルシアの額に手を伸ばして触る。
額を触られたイファルシアは、何するのよと言って緑雲の手を蔦で横へ退けた。
それを見かねたのか、ずっと入り口で待機していたサフィは緑雲にこう言う。

「カーバンクルの額の石は触っちゃダメよ、一番敏感で他者からの干渉を受けやすい部分だから」

それを聞いた緑雲はそうなんですかと言って、イファルシアにこれは失礼と謝る。
イファルシアはもう触らないでよねと返し、緑雲と花吹に何かを渡す。
それは、一見するとさくらんぼのようにも見えるが、さくらんぼにしてはあまりにも黄色い。

「毒じゃないから大丈夫よ、お近づきの印に私からプレゼント。私の能力は植物関係全般の生成、エゼラルドも似たような感じ」

毒ではないと言われ、その黄色いさくらんぼを口に入れる緑雲と花吹。
数十秒後、2人から返ってきた反応はというと、緑雲が

「酸っぱい」

というので、花吹は

「さくらんぼとは思えないくらい甘いわ」

というものだった。
両者の反応がそれぞれ違ったのを見て、イファルシアはどういうわけかを説明。

「このさくらんぼはね、見た時の先入観によって味が違ってくるの。黄色いから酸っぱそうと思って食べればそうなるし、そうじゃなければそれ以外の味になるわ」

花吹は変なさくらんぼですねえと感心したのに対し、緑雲は相当酸っぱかったのか、口をすぼめている。

すると今度はエゼラルドがとても大きなみかんを出した。
大きさ的には、イファルシアと同じくらいはある。
ちなみにこのみかんは、現実世界の日本のある場所で栽培されているみかんを、異常なまでに大きくしたもののようだ。
それをエゼラルドは蔦で器用に皮をむいて食べないかと緑雲と花吹に差し出す。

「少し大きすぎますね、でもおいしそう」

花吹は、もらった1つをさらに半分にして一方を緑雲に渡す。
緑雲は今度は酸っぱくないだろうな?という顔で花吹を見てそのみかんを食べる。
噛むたびに口直しには十二分な甘さが口の中に広がり、緑雲はほんわかした気分になった。

「あっそうだ、本来の目的を忘れてた。あなた達この世界の植物が生成できるなら、この世界原産で他の世界でも育ちそうな植物ってない?」

もらったみかんを食べ終え、本来の目的を思い出した花吹はエゼラルドとイファルシアに他の世界でも育ちそうなこの世界産の植物はないかと聞く。
エゼラルドは少し考えた後にイファルシアと何かを話すと、どこからか一見普通の桜の苗を出す。

「何かな、この苗は?」

緑雲に聞かれ、イファルシアは

「この世界で一番巨大な樹木の万年桜の苗よ、相当な年月をかければとんでもない大きさになるわ」

この苗が万年桜のものであることを説明。
万年桜と聞いてピンと来たのか、花吹はイファルシアに

「この城から見える大きさな桜ですね、万年桜は?」

と聞く。
それにイファルシアはそうよと頷いた。
すると花吹は

「じゃあ、この世界よりも大きくしないとね。この万年桜」

と言うと緑雲にもう帰るとアルカトラスを含めた4人にさようならと挨拶して帰って行った。

そして、帰った後の風竜宮では

「よいしょ、よいしょ」

花吹がひたすら1人で万年桜の苗植え作業をしていたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

蒸し暑い夜の仕事

ある初夏の蒸し暑い夜、フィルスは書斎でアルガティアに頼まれていた仕事を終わらせようと自分が生成した氷の上に座ってひたすら書類を片付けていた。
ちなみに頼まれていた仕事とは、新た認可することになった竜牧場の許可証への署名。
フィルスは他人の書き方をそっくりそのまま真似できる魔法を覚えているので、アルガティアがサインなどをすべき書類も片付ける事が可能なのだ。

「暑いなあ」

氷に座っているので、いくらかはましだったがそれでも暑いものは暑い。
さっさと終わらせようとフィルスは羽ペンを動かす。
イファルシアはエゼラルドのところへ、アルガティアは風呂。時雨はいつもの散歩という名の徘徊をしているので書斎はフィルスただ1人。
1人なので大分気楽にできるのだが、ミスると後々アルガティアにチェックされた時に面倒なことになるのでその辺は注意しなければならないが。

「だけどこの竜牧場の許可証、見てたら新規と拡張の2種あるな」

何気なく署名していたフィルスは、許可証の部類が新規と拡張のに2種あることに気付く。
この聖リフィルで新たに牧場を開く者は、そうそう居ない。
なぜならば、ほとんどの牧場は一族代々継いでいるところが多いからだ。
その上、新規で牧場を開拓しようものならば相当数の書類を出して全てに許可をもらわないといけないのでとても面倒。
しかし、自然が他の国と比べてずば抜けて多いので魅力的と言えばそうである。

「おっと、早く終わらせないと」

ここでフィルスは本来の仕事を思い出し、再び羽ペンを動かす。
そしてようやく全ての許可証に署名を終え、氷を消そうとしたところにアルガティアが戻って来て

「悪いけどもう少し頼める?明日必要なの」

と追加でサインをする書類を追加。
フィルスはえーという顔をしたが、頼まれたからにはやらねばと頷いて了承。
アルガティアはお願いねと言うと書斎を出て行った。

「うーん」

書類を片付けるのは難しくはないのだが、追加された量が異常に多いのでフィルスは少々悩んでいた。
なぜなら、あと1時間ほどで寝る時間になってしまうからだ。
それまでに終わればいいのだが、とてもではないが終わりそうにない。

「やるしかないよね」

フィルスは羽ペンを握ってサインを続ける。

それから30分経っただろうか。
うとうとして来たフィルスはこれはいかんと羽ペンを動かす手を早める。
しかしそれでもこっくり来るので、どうしようかと考えた結果が

「この手があったや」

サインをそっくりそのままコピーするというやり方をしてとっとと終わらせた。
見た目は全く直筆サインと同じなので、アルガティアが目くじらを立てない限りは大丈夫である。

「寝よ」

そしてフィルスはそのままアルガティアの部屋へ行って寝たとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ゴルダとレナ

その日、ゴルダはアルガントをシアに預けて家でゆっくりしていた。
それはなぜかというと、ここ最近アルガントの面倒を見続けていたためか完全に発散し切れないストレスが溜まる一方。
それを察したのか、なぜかシアに今日1日は預かるので少しはその溜まっているストレスを発散しろと言われたのだ。
シアに言われたからには断れないと、ゴルダはそのままシアに今日だけアルガントを預けたのだ。

「やはりこういう時間は必要だ」

ソファに座り、炭酸水片手に買ってから全然見ていなかったオカルト系のDVDを見ながらゴルダは呟く。
アルガントが居ては、このようなDVDはそうそう見ることができないのだ。
そして心霊写真のDVDを見つつ、足を揺らしていると誰かが来た気配がしたのでゴルダはDVDを止めて玄関へ。
扉を開けると、そこには

「来ちゃった、あはは」

シアから住所でも聞いたのだろう、レナが立っていた。
ゴルダは内心せっかくのプライベートタイムが台無しじゃねえかとは思ったものの、それは絶対に口に出さず

「よく来たな、シアからここの住所でも聞いたか?まあ上がれ」

レナを家に上げる。
ちなみに、DVDの方は魔法でプレイヤーの電源を切ったので問題はない。
レナはお邪魔しますと言って家の中へ。
何気にレナがゴルダの家へ来るのは初めてだ。

「ここで1人暮らししているの?こんな広い家に」

ざっと家の中を見回したレナに聞かれ、ゴルダは

「…まあな、一応は」

と嘘をつく。
レナはアルガントのことを知らないので、初対面させるまでは黙ってていいだろうという考えからだ。

「ちょいとここで待ってろ」

ゴルダは居間にレナを待たせ、自分は台所の方へ。
何をするのかというと、レナに飲み物を出すのと流しの食器をさっさと洗って片付けるため。
レナと初めて会った時から女性だと分かって居たゴルダは、汚い流しを見せるわけにはいかないと思ったからこんなことをしているのだ。
慌てて洗い物を終わらせ、適当に飲み物を用意し終えたゴルダはレナのところへ戻る。

「結構片付いているんだね。ゴルダさん真面目そうだから、その辺もきっちりやる人だと思ってたけど間違いはないみたいだね」

ゴルダがソファに座ると同時に、レナはそんなことを言う。
それに対してゴルダはあまり散らかるのは好きじゃないとだけ返し、テーブルの上に飲み物を置いた。
ちなみに、ゴルダがレナに出したのはドランザニア南方が産地のパインで作った果汁100パーセントのジュース。
ゴルダはそれを炭酸水で割ったものだ。

「わざわざありがとう」

ちびちびとそれを飲みながら、レナはゴルダにいろいろと聞く。
1人っ子なのか、それとも弟や妹はいるのか。この家にはもうどれくらい住んでいるのか、仕事は何をしているのかなど様々である。

「そう言えばこの世界へ来て最初に会ったのがアルガティアだったな」

ここで、ゴルダはレナにこの世界へ来て初めて会った者の話を始めた。
ゴルダの言う通り、レナがこのドランザニアという世界へ来て初めて会ったのはアルガティア。
その次にアルカトラスやシア、そしてゴルダなどと言った具合だ。

「ところで、ゴルダさんってアルガティアさんのことはどう思っているの?」

レナにアルガティアのことをどう思っているかを聞かれ、ゴルダは

「本音を言うと、読めないから厄介な部分があるがそれでも従姉妹だし信用できないわけではない。むしろ信用してる」

と答えた。
レナはそれにへえと頷くと今度は

「シアさんはどう?」

シアをどう思っているかを聞く。
ゴルダは一瞬煙草のようなものを取り出して吸おうとするがレナがいるので手を引っ込めて

「関係上は曽祖母、ひい婆さんだがあの抱きつき癖がなんとかならんもんかと思っている。信用できない訳が無いな」

抱きつき癖に難ありだが、信用できない訳が無いと答えた。
レナはそれもそうだよねと返し、パインジュースを一口飲むとまた別の話を持ちかけた。

それから1時間後。
グラスも空になり、溶けた氷がカランと崩れる音がするだけの居間。
今話しているのは、特に大したことではない話。
最近ここも暑くなって来たという話や、いろんな世界へ行き来できるのは魅力的だという話などだ。
そして、ふと思い出したかのようにレナが

「そう言えばゴルダさんの家って畑もあったんだね、ちらっと見えたんだけど」

畑のことを持ち出して来たのでゴルダはまあなと返して

「大したものじゃないが、見るか?」

レナに見てみるかと聞く。
するとレナは頷いて

「帰り際にちょっとだけ見たいかな」

と言う。
なのでゴルダはレナに畑を見せたところ、ずいぶんいい畑だねと言ってレナは帰った。
レナが帰った後、ゴルダはこんな日も悪くはないと思ったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

王立諜報機関へようこそ

それは、サフィからメールではなくアルカトラス直々の手紙が始まりであった。
その手紙には

「汝にとても重要な話がある、すぐにセイグリッドへ来るように」

と書かれていて、一番下にアルカトラスのサインと前足の印が押されていた。
ゴルダは一体何なんだとは思いつつも、アルガントを連れてセイグリッドへ。

「アルカトラスなら書斎」

セイグリッドへ行くといつものようにサフィが出迎えたが、今日はなぜかいつまで待たせる気よという雰囲気を醸し出している。
ゴルダはアルガントをシアの所へ連れていくようサフィに頼み、自分は先に書斎へ。
書斎の前では警備兵が立っていたが、ゴルダを見ると中へ通した。
中へ入ると、アルカトラスはゴルダに

「閉めよ」

と言って扉を閉めさせ、自分の前へ座らせた。
その数分後にサフィとなぜかバハムードにアルガティアまでやって来て出されていた椅子に座る。
ここまで何が何だかさっぱり分からないゴルダはアルカトラスに

「爺さん、一体何がしたい?」

と痺れを切らして聞く。
するとアルカトラスは、4人に向かってこう言う。

「ここ最近、新たな世界と繋がる頻度が上昇しているというのは存知ているだろう。我はそれ問題視している」

それにアルガティアだけが頷き、ゴルダとバハムードとサフィはぽかんとする。
しかし、3人ともよくよく考えればそう言うことかと遅れて頷いた。

「何故問題視しているか?そう、繋がる世界によっては侵略しようと企てているなどろくな世界があることも無いとは言い切れぬ」

繋がる世界が増えるほど、被侵略のリスクは高まるというのを言われ、4人はなるほどと同時に頷く。
そしてアルカトラスは、1つの資料を出すと

「そこで我は、王立諜報機関。正式には大陸諜報機関を設立した。しかしこれは事前に危うい世界をシャットアウトすることが目的であり、こちらが侵略するために使うものではない」

王立諜報機関もとい大陸諜報機関を設立したと言い放つ。
ここまで来れば察しがつくだろうが、4人が呼ばれた理由、それは

「汝ら、4人が中心メンバーとなり。この諜報機関を動かしていくのだ」

諜報機関のメンバーに抜擢されたからであった。

「では、仕事がある時は呼ぶ。頼んだそ」

そう言ってアルカトラスは解散させたのだが、ゴルダだけは残ってアルカトラスを見据えている。
何を自ら聞くわけでもなく、ただアルカトラスが話しかけて来るのを待っていた。
そして、ようやく

「自分から聞いてこぬか、何を聞きたいのだ?」

とアルカトラスが聞いてきたのでゴルダはこう聞く。

「繋がる世界が増えたところでさほど気にしなかったのに、今さら気にするのが気にかかる。どうしたんだ爺さん?」

今さら気にするのが気にかかるのでどうしたのかと聞かれ、アルカトラスは尻尾をパタパタさせながら

「つい最近、新たに繋がった国の者が書簡送って来た上にこっちへ来てな。それでだ」

と返す。
ゴルダはそれに追求せず、分かったと言ってそそくさと帰って行った。
そしてゴルダが帰った後。
アルカトラスはややため息混じりにとある書類を出して

「全ての世界がこのように上手くいくとは限らぬのだ」

と1人呟いた。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

向日葵を植えよう

春が終わり、初夏の天気がちらほらと見えるようになってきたリフィル城の庭園。
その庭園の空っぽの花壇の前で、イファルシアとエゼラルドが何かの種袋を引っ張り出してきてどう植えようかと話していた。
その頭上では、時雨がその種袋の中身の種をよだれを垂らしながら見ている。
ちなみに、この種袋の中身は何かというと向日葵の種だ。
イファルシアが来る前から、エゼラルドは庭園に四季折々の花を植えたりするのを楽しみとしていた。

そして今日は、イファルシアと夏の花を植える日。
今までは、自分では痒い所に手が届かないところをイレーヌに手伝ってもらったりしていたエゼラルド。
しかし、イファルシアという自分と同じ属性かつ知識に技術を持つ者が来てからというもの、エゼラルドのこういった作業はとても楽になった。
無論、イレーヌを除け者にしたわけではない。
イファルシアが居ても手が足りないこともある上に、何よりイファルシアもイレーヌとこういった事をするのが好きだったりする。

「一面向日葵にしたら逆に見映えが悪そうねえ」

「昔はみっちり植えてたけど、どうということはなかったよ」

蔦で蝿を追い払うように時雨を追い払いながら、イファルシアはエゼラルドと話を続ける。
今話しているのは、この空いている花壇にみっちり植えるのか否かというもの。
イファルシアはみっちり植えると見映えが悪そうと言い、エゼラルドはそうでもないと言っている。

「とりあえず、みっちり植えてみましょ」

「そうだね」

と言って、2人は向日葵の種を植えるために花壇を耕して一応肥料を入れ始めたのだが、時雨が隙を伺って種を食べようとしているので気が気ではなかった。
だがしかし、そこへ畑仕事の服装のイレーヌがやって来て

「だーめ」

時雨が種を食べないように見張り始めてしまった。
イレーヌに種を見張られ、時雨はちぇっという顔でアルガティアの所へ戻って行った。

「こんなものかしらね」

開始から約1時間。
一通り耕して肥料も入れ終わり、ようやく種蒔きを開始。
時雨は居ないので、さっさと終わらせようとイレーヌも加わって3人で種蒔きをする。

「でも、向日葵の種っていいスナック菓子にでもなるのよね」

そんなイファルシアの一言に、エゼラルドは

「ダメだよ」

ときっぱりと言って聞かせる。
イファルシアはそれに分かってるわよと返して種蒔きを続けた。
花壇はそれほど広くなかったので、2時間くらいで種蒔きは終了。

「ちゃんと育つといいわね」

と言ったイレーヌにエゼラルドとイファルシアは

「そうだね」

「育つでしょ」

とそれぞれ返す。
しかしそこへ、蒔いて早々に種を狙う鳥が飛んできたのだ。
それを見て、エゼラルドは鳥達に

「ここの種はダメだよ、代わりにこれあげるから」

と言って別の種を生成して食べさせる。
鳥達は、エゼラルドの言っている事を理解したのか生成したその種をつつき始めた。
それを見てイファルシアは

「あいつもやり手ねえ」

と呟く。
一方イレーヌは、空になった種袋を片付けてそれを静観。
特に何も言わなかった。

そして最後に、イレーヌが

「向日葵」

と書かれた看板を立てて種蒔きはこれで完全に終了。
その様子を影で見ていた時雨は、植えた種をほじくり返そうとしたが

「あん、何してんのよ?」

イファルシアに見つかって失敗して諦めたという。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

輝星の御使い

それは、ある日光竜宮で輝星が従者に言った一言が始まりだった。

「ちょっとぼく、ドランザニア行って来るよ。アルカトラス様の毛をもらいに行くのとまたメイドのサフィに会いにね」

「何故他世界の国の従者とお会いに?」

他世界の国の国王の毛をもらいに行くというのには突っ込まなかった従者だが、流石にその国の従者に会いに行くのは何事かと輝星に聞く。
輝星はそれに、あの日貰ったメイド服のスカートを触りながら

「知りたい?知りたい?でも教えない、ぼくだって秘密にしたいことあるもん」

知りたい?と前ぶりを振っておいて、直後に教えないと一気に落とし穴に落とす。
従者は、それにポカーンと口を半開きにして輝星を見ていたが、あまりにもみっともないのですぐに正すと

「そ、そうですか。輝星様が言いたくないのであれば追求はしません、ですが行く際は気をつけて」

行くなら気をつけてと言うと、それ以上は何も言わずじまい。
一方の輝星は、どこか嬉しそうに小躍りしながらアルカトラスとサフィの所へ行く準備をしていた。

その頃、セイグリッドのアルカトラスとサフィはというと。

「また誰かが来そうな気がするわ」

サフィの方は、また雨月達の中の誰か1人が来そうだと洗濯をしているさなかで察した。
そしてアルカトラスはというと

「くしっ!」

書類へのサイン中にくしゃみをして、あやうく書類をダメにするところだった。
誰かが噂をしているのだろうかと思いながら巨大なティッシュで鼻をかんでいると

「どうした爺さん?」

横で不備が無いかをチェックしていたバハムードにどうしたのかと聞かれて

「誰かが我の噂をしたようだ」

と返す。
バハムードはそうかと呟くとまたチェックに戻る。
そしてなぜかアルカトラスは、丁度換毛期で抜け替わった冬毛をサフィに集めて用意しておくように言おうと決めた。

そしてその頃、輝星はというとすでにセイグリッドへやって来ていたが

「わーすごい、こんな城下町なんて初めて」

雨月達と来た時には回ることができなかった城下町へと足を踏み入れ、店に片っ端から入っていた。
なお輝星が入る店は、本屋はもちろん菓子屋や服屋に、ひっそりと佇んでいた雑貨屋に見せかけたイタズラ道具が売っている店など様々。
そして、いかにもな魔道具屋に入った途端。

「あ、そうだ。ぼくはアルカトラス様とサフィに用事があって会うために来てるんだった」

本来のここへ来た目的を思い出し、城の方へと急いで向かう。

その頃、アルカトラスはというと

「それくらいでよかろう」

「下手に捨てるわけにもいかないから溜まる一方よ」

サフィに保管させていた自分の抜け毛を、大きい麻袋1つに詰められるだけ用意させていた。
なぜ保管させているのかというと、過去に城下町のとある生地加工職人への譲渡待ちで普通に置いていた抜け毛が全部盗まれたこともあるからである。
ちなみに、アルカトラスの毛はそのものが高い魔力が込められており、それは半永久的に持続する。
しかも、それは抜け毛でも直に抜いたものであっても変わらない。
なので、この毛を悪用しようとする輩は少なくはない。
抜け毛の用途は様々で、糸へ加工して普通の服にしたり、防具に織り込んだりして強度や機能性などを向上させるなどでよく使われる。
この他にも薬の素材になったり、特殊技術で剣などの武器を作る際にこの毛を混ぜると様々な恩恵があるという。
無論、このアルカトラスの毛を扱う技術を持者は、このセイグリッドにしか居ない。

「普通に使うなら、羽毛布団の羽毛の代わりに使うくらいね」

麻袋にぎゅうぎゅうに毛を詰め、袋口を縛りながらサフィは言う。
なおアルカトラスは書類の処理を続けており、何も言わない。

「あら、来たようね。輝星が」

輝星が来たと察したサフィは、アルカトラスに何も言わずに書斎を出た。

その頃、本館の方に来ていた輝星はというと

「やっぱすごいな、ところどころにアルカトラス様居るし。…本物じゃないけど」

この間来た時にはろくに鑑賞できなかった入ってすぐの場所にあるアルカトラスを象った彫刻や、ステンドグラスなどを眺めていた。
そして輝星が、ただ見るだけでは飽き足らず間近で見ようと壁を登ろうとした瞬間。

「やっぱり、危ないから降りなさい」

タイミングよくやって来たサフィに降りるよう言われ、輝星は壁から降りて

「サフィこんにちは!この間はこの服ありがとう。すっごい気に入ったよ!ところでアルカトラス様はいる?」

アルカトラスは居ないかと聞く。
サフィはそれに頷くと、輝星にどうして来たのかを聞き返した。
すると輝星は

「アルカトラス様の毛をもらいに来たのと、サフィにもう少し教えてもらいたいことがあって来たんだ」

と答える。
サフィはそれにやっぱりと思いながら

「抜け毛でいい?直に抜いて渡すのは無理だから」

抜け毛でいいかと聞く。
輝星は、抜け毛と聞いてもえーなどとは言わずに

「それでもいいよ、貰えるなら欲しい!」

貰えるなら欲しいと言う。
サフィはなら一応来てと、アルカトラスの居る書斎に輝星を連れて行く。

「よく来た。まだ諦めていないと思って、抜け毛を用意した。持って行くがよい」

アルカトラスは入って来た輝星を見て、そんなことを言って持って行けと麻袋に詰め込まれた抜け毛を指す。
輝星はそれを嬉しそうに受け取ると

「アルカトラス様ありがとう!」

と礼をアルカトラスに言った。
アルカトラスは礼を言われるほどではないという顔をして仕事へ戻る。

「さて、こっちよ」

アルカトラスへの用事が終わった輝星を連れ、サフィは自室へ向かった。

そして場所は変わり、サフィの自室。
従者らしかぬ広さの部屋には、そこそこの容量のクローゼット以外はいたって普通の家具が置かれている。
そこでサフィは、輝星に

「何を教えてほしいの?」

何を教えて欲しいのかを聞く。
それに対して輝星は

「もっとメイド服の着こなし方とかそういうの!」

と語気を強めて言う。
サフィはそうと言うと、輝星を座らせて着こなし方以外にも色々教えた。

「へえ、そんなのもあるんだ」

それに対して輝星は1つ1つに頷いて感心し、吸収していく。
やがて、教えようと思ったことを全て教え終えたサフィはひと段落ついた顔で

「まだある?」

まだあるかと聞くが、輝星は首を横に振ってないと答えた上で

「もう大丈夫、ありがとう。今日は帰るね」

と一礼して麻袋を持ってそそくさと帰って行った。

その後、光竜宮へ帰った輝星はというと

「ふわふわー、ふわふわー」

従者に頼んで作らせたクッションで暇さえあればずっと遊んでいたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

聖竜布の話

聖竜布とは、アルカトラスとシアの抜け毛を特殊技術により糸へ加工したのち、布に織ったものである。
アルカトラスとシアほどではないにしろ、この抜け毛1本でも半永久的に相当な魔力を有する代物。
なので、この抜け毛を狙う輩も居ないわけではなく、アルカトラスが取り扱いに細心の注意を払わせるほどである。
しかもこの抜け毛、普通に加工しようとしてもまず無理で、前述した特殊技術での加工でなければ羽毛布団の羽毛の代わりにするか、クッションにでも入れるかしかない。
さらに、この特殊技術を有する職人はセイグリッドにしか居ない。
それはなぜかというと、アルカトラスが悪用対策として職人を手厚く保護しているからだとか。

聖竜布は、アルカトラスとシアの年3回ほどの換毛期で発生する抜け毛1回分で、ようやく1人分の衣服を作る布しかできないという大変貴重な物。
無論、抜け毛は聖竜布への加工のみに使われるわけではないが、内訳としては聖竜布への加工が9割5分となっている。
なので、聖竜布で作られた衣服を着れる者は王族か相当な富豪くらいである。

なお、聖竜布の特徴として、一度衣服に加工してしまえばフリーサイズになるというのがある。
これは、アルカトラスとシアの抜け毛に宿る魔力のせいであることはすでに解明済みである。
そして、着用者の潜在魔力を引き出す能力や、各種魔法属性への強い耐性。
さらに剣で切りつけても槍で突こうが、よっぽどのことがない限りそれら武器による攻撃を受け付けないなどがある。

ここで、この聖竜布を使った衣服の着用者が本当に居るのかという話になるが、ここではアルガティアとサフィの2人を出しておく。

最初の着用者はアルガティアであるが、これはいつも着けている正装ローブがそうである。
一応、国王即位の時に授けられたものらしい。

「いつも見てるけど、そにローブって洗っている?」

今日もいつものように国務をしていると、フィルスがそんなことを聞いて来たのでアルガティアは

「軽い手入れだけしかしてない、気付かないうちに綺麗になってるから」

いつの間にか綺麗になっているので軽い手入れしかしてないと返す。
そう、アルガティアのこの聖竜布を使ったローブは自浄化能力を持っているらしく、かつてアルガティアが従者に洗わせようとして渡したところ従者に

「アルガティア様、これ洗ったみたいに綺麗ですよ。汚れも臭いもないですし」

と言われたことでその能力に気付き、軽い手入れだけで事済ませるようになった。
しかも、このローブ特有の能力はこれだけではない。
それはアルガティアがエゼラルドに乗って少し城下町まで遠出をした時のこと。
町の中ではエゼラルドから降りて、自分で歩いているアルガティアにイファルシアが

「ねえ、ハーブ系の香水使った?」

と聞いて来たので、アルガティアは首を横に振る。
しかし、アルガティア自身もその匂いには気づいていた。
そう、これこそがこのローブの特有のもう一つの能力で、匂いを複製し、ローブ自身からその匂いを出すというもの。
ただし、臭いは複製して出さないのでその点は安心である。

次なる着用者はサフィ。
サフィの場合は、いつも着けているメイド服の3割が聖竜布で作られている。
なので、アルガティアのように全てが聖竜布で作られているわけではないが、それでも能力は高い。

「ふう」

セイグリッド城の従者執務室で、溶け切らないほどに砂糖が入ったコーヒーを片手に今週の衛生チェック表を眺めるサフィ。
衛生チェック表は、今日までは特に異常は見られない。

「…」

ここで何かを察したのか、急に座標指定テレポートを使うサフィ。
向かった先は、アルカトラスが仕事をしている書斎。

「うむ、ちょうど良かった。緑茶を淹れてきてもらえぬか?」

「分かったわ」

何故呼ばれてもいないのに、サフィはアルカトラスが緑茶が欲しいと分かったのか?
それは、聖竜布のせいである。
聖竜布は、元はアルカトラスとシアの体についていた毛から作られたもの。
そのために、聖竜布を使った衣服を着用している者は常にアルカトラスやシアとリンク状態となる。
なので、呼ばれる前に察して駆けつけるということが可能なのである。
ただし、このリンクは一方向性なリンクではなくアルカトラスやシアもまた着用者側とリンクしているのである。
なので、サフィやアルガティアはアルカトラスやシアの事で変な事を考えることはできない。
最も、それ以上の恩恵があるので誰もそんなことは考えないだろうが。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ゴルダとシスイ

ドランザニア某所の、ドランザニアとアストライズの二国の国境を山中に有する山。
そう、ここはシスイが住む山である。
その湿度が異常に高い山の中を、ゴルダは荷物と共に無心に登っていた。
その理由は、数時間前に遡る。

「悪いわねえ、急に呼び出して」

数時間前、ゴルダはエルフィサリドに呼ばれてスリュムヴォルドに来ていた。
なお今日はアルガントはシアが面倒を見ているので、連れては来ていない。
少々機嫌が悪そうなゴルダは、煙草のようなものを吸いながらエルフィサリドに

「呼び出したからには理由があると見受けるが、何だ?」

とさっさと用件を教えろと言う。
すると、エルフィサリドはどこからか地図を出してドランザニアのとある山の中を尻尾で指して

「この辺りに、私の友達が住んでるの。その友達に食料とかを届けて欲しいの」

そこに住む自分の友達に食料を届けろと、ドンと食料を含めた荷物をゴルダの前に置く。
ゴルダはなぜか、エルフィサリドが自分にこの用事を押し付けたのが急に用ができたからだと察したので、あえて理由は聞かなかった。

「じゃあ、頼んだわよ」

いつものように尻尾で頭をぺちぺちされたついでにキスまでされ、ゴルダは煙草のようなものの火を握り消して目的地の座標を調べてから向かった。

「ぐっ、なんだこの湿度は」

目的地である山の中へ座標指定テレポートした瞬間、ゴルダはその湿度に驚く。
体感湿度は、70パーセントを軽く超えているだろう。
そのためか、露出している岩などには苔が生え、生い茂る木々の葉はずっと高い所の枝にしかない。
本当にこんな場所に住めるのだろうかと思いつつ、ゴルダは足元に普通の山を登る以上の注意を払いながら登って行く。
エルフィサリドの指した場所は、頂上近辺だったのでそれなりに登り必要がある。

「高湿度環境に適応するように進化でもしたのか…?」

テレポートして来た地点から1時間弱登った辺りで、ゴルダは苔と木々以外にも植物が生えていることに気付いた。
苔の上に、まるで芝生のように生えている草。
湿度にも日の辺りの悪さにも負けずに開いている花。
そして、それらの草を食べている鹿や兎などの動物。
ここに生きる植物や動物は、皆が皆この環境に適応して進化していることは間違いないようだ。

「やっとついたか」

登り始めて2時間半。
ゴルダはこじんまりとした小屋とその横に立てられた手作り墓石の墓がある開けた場所に出た。
見た感じ、誰も居ないようである。

「なんだよ、誰も居ないのか」

荷物を抱えたまま、小屋の中を覗くゴルダ。
しかし、中には誰も居ない。

「少し待つか」

そして、荷物を下ろしてそのエルフィサリドの友達とやらを待っていようと地面にしゃがんだ瞬間。
何者かの気配を感じ、ゴルダが振り向くとそこには青目に紫髪の女が構えを取って

「何者?そこから動かないで、動くと一発入れるわよ」

ゴルダに動くなと忠告して立っていた。
それにゴルダは別に驚くことも動じることもなく

「俺はエルフィサリドの使いで来ただけだ、食料とか届けろってな」

自分がエルフィサリドの使いで来ただけだということを説明。
すると紫髪の女は構えを解いて

「そう、エルフィサリドの知り合いなのね。それで全部?」

ゴルダに荷物はそれで全部かどうかを聞く。
それにゴルダはそうだと頷き、この後どうするかを考える。

「そういえばあんた…思い出したわ、エルフィサリドの側近とかそんな感じのポジションですって?名はゴルダで当たってる?私はシスイよ」

そんなゴルダを見て、紫髪の女はゴルダのことを知っていると言わんばかりのことを言い、自身の名をシスイと名乗る。
ゴルダは紫髪の女改めシスイを、あいつはいらん事まで話しやがってと思いながらも

「そうか、あいつから話は聞いていたのか」

と頷きながら納得したように言う。
一方シスイは、黙ってゴルダを眺めていた。
ゴルダは外界との関わりを復活させてからの、エルフィサリドに次ぐ2人目の遭遇者だ。

「話を聞いた時から気にはなったけど、いざ会ってみるとこれは知り合いにならないともったいないわ」

と、心の中でシスイが呟いたようにゴルダはシスイにとってなかなか頼りになる上に信用できるタイプだと思っていた。
自分が警戒して構えていたにも関わらず、一切動じる素振りを見せない肝の据わりよう。
それに、無表情ながらその目からはどことなく味方にすれば心強いと感じられたのだ。

「俺の顔に何か?」

じーっと顔を見ていたせいか、ゴルダに顔に何かついてるかと聞かれてシスイはなんでもないと答える。
なんでもないと言われ、ゴルダはそうかと言って近くの切り株に座った。

「ねえ」

このまま何もしないのはもったいと、シスイは思い切ったことを思いついてゴルダに話しかける。
それにゴルダはどうしたと言って立ち上がり、シスイを見る。
するとシスイは、いきなりエルフィサリドにすら見せたことがない竜の姿へ変身。
その容姿は、青い目に紫の鱗に覆われた西洋竜そのもの。

「本気の決闘じゃなくて、軽く力比べでもしない?」

シスイに力比べをしないかと言われ、ゴルダはそうかと言って

「来い」

と手招きして誘いをかける。
それに応じるように、シスイはゴルダを前足で踏みつけにかかった。
ゴルダはただ突っ立っているだけで、避けようともせずにもろに踏みつけを食らったかに見えたが

「大分手加減したな」

その前足を片手で受け止め、つばぜり合いに持ち出したのだ。
そして手加減したと言われて少しムッとしたシスイは、さっきより力を入れる。
だが、ゴルダは若干動いただけでまだ負けては居ない様子。

「そんな強さ持っていながら、独身貴族とはねえ」

エルフィサリドから聞いていたことを持ち出し、ゴルダを挑発しにかかるシスイ。
しかし、ゴルダはその挑発には乗らずにこう答える。

「1人が気楽だからさ、変に一定以上の関係を持てばそれだけ精神的に負担になる」

その答えを聞き、シスイは一旦前足を引いてから体重をかけて踏み潰しにかかった。
そう、本気で行ったのだ。

「やれやれ」

一方ゴルダは完全に手加減していたようで、シスイの前足に軽く潰されていた。
だが、地面にめり込んだせいでさほどダメージはない様子。

「あんた、冷静で肝が据わってるけどよく分からないわ」

ゴルダを解放し、人の姿に戻ったシスイはそんなことを言う。
一方のゴルダは全身が汚れているにも関わらず、気にして居ない様子。

「ありがと、色々楽しかったわ」

そして、ゴルダが帰るというのでシスイはそんな一言で見送る。
ゴルダはそれに後ろ手を振っただけだったが、シスイにはそれだけでも十分だった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

アルカトラスと6人の王子

雨月がドランザニアへ行って数日後のある日の水竜宮。
他の5人を交えて一応報告までにと、国交を締結した証明する書類の控えを見せながら話をする雨月。

「…というわけで一応許可はもらったのだ」

雨月が話をしている間、他の5人はすごいやらよくやったやらと雨月をやたらと褒めていた。
そこへ

「ねえねえ、どんな世界だったの!?」

と無駄に高めのテンションで聞いてくるのは、金髪に夕焼けの瞳の輝星。
雨月は少し押されながらも

「むう、そうだな…」

現界の王都のような城が建っていたこと、城下町は華やかで自然も豊かであったことと、それが国竜宮に近かったこと。
そして最後に一応の国王であるアルカトラスがとてもいい人柄であったことを5人に話して聞かせた。
なお、それに対して褐色肌に燃えるような赤い髪を束ねているにもかかわらず、跳ね毛がある焦熱が

「そこ、寒くねーか?」

などとマゼンタの目をしぱしぱさせながら言ったのに対し、薄黄色に桃色のグラデーションの目にふわふわ癖っ毛の花吹が

「焦熱には寒いかもよ」

とさりげなく返す。
さらに花吹は続け、他の5人に

「そしたら次はお菓子でも作って皆で行かない?向こうの人達とお茶をしながらさ」

今度は6人全員で行ってお茶をしながら話でもしようと提案。
だがそれに対し、雨月は

「ああ、花吹殿…」

少し困ったような口調で花吹に話しかけるや

「アルカトラス様はとても大きくてな、66尺はあろうお方だ」

アルカトラスがとても大きいことを説明。
その大きさを聞いて、6人の中で一番大きい全身黒ずくめの髪が途中で翼に融合している昏黒を除く全員がえーっと叫ぶ。

「ではお土産はどうすると?」

花吹にそんなことを言われて、雨月はただうーんと考えるだけであった。

場所は変わってセイグリッド城のアルカトラス。
雨月が来て以来、新規で繋がった世界にやや敏感になっており、諜報員もどきを送ろうなどとも考え始めていた。

「爺さん?」

「…ん、ああ。汝か、少し考え事をしていてな」

バハムードの声で、アルカトラスは我に戻って仕事を続行。
しかし、どういうわけだがまた雨月から書簡が来るという気がしてならないので、仕事は中途半端にしか進まない。

「っと、爺さん。雨月から書簡だ」

ここで、本当に雨月から書簡が来たのでアルカトラスはやはりかという顔をしてバハムードから書簡を受け取ってすぐに読む。

「王子全員で6人で来るのか、まあよかろう」

書簡には、今度は自分以外の次期竜王達と会談ではなく、御忍び的な感じで遊びに来てもいいかという旨の文が綴られていた。
アルカトラスは、その返事に大いに歓迎するので是非来てくれという文を綴り、バハムードに渡す。

「御意」

返事が書かれた書簡を受け取ったバハムードはそのままシアの所へ向かった。

そして、場所はまた変わって水竜宮。
どうしようかと悩む5人に、アルカトラスからの返事が届く。
雨月は早いのだと呟きながらその返事を読む。

「構わないと言っておられるのだ」

雨月の一言に、輝星は

「じゃあ行こう、すぐ行こう。アルカトラス様の事だからお土産なくても大丈夫大丈夫!」

アルカトラスは器が大きいからそんなこと気にはしないからすぐ行こうと言い出す。
だがそれに対し、黒髪おかっぱぱっつんの頭に深緑の目の緑雲は

「さすがにそれは口に出さずとも、図々しいと思われても致し方なしではとボクは思うけど?それに輝星、真剣に考えごとをしている間は静かにできないのかい?気が散るんだが」

それでは図々しいと内心思われても致し方なしではと言い、付け加えるように輝星に静かにしろと注意。
そこに、今まで沈黙を堅守していた昏黒が一言

「…全くだ、こういう…話は真剣に…やる…べきだ」

と緑雲に同意するように言う。
輝星は少しむすっとして

「黙ってればいいんでしょ黙ってれば」

とその場に座り込み、一言も喋らなくなる。
それから数分、皆が皆どうする?という顔をしていたがここでようやく花吹が

「雨月殿、アルカトラス様に一つ聞いてもらえる?」

「うむ、何を聞けばいいのだ?」

何か案を思いついたようで、雨月にアルカトラスに一つ聞いて欲しいと言ってそのまま耳打ち。
雨月はまた別途で書簡を書き、アルカトラスに送る。
ちなみに、花吹がアルカトラスに聞いて欲しいと耳打ちして伝えた内容は次のようなもの。

「お土産を持っていくことが難しいので、少しばかり城の厨房及び庭をお借りしてもよろしいですか?」

雨月が書簡を送って30分後。
アルカトラスから返事が帰ってきた。
もちろん、返事の内容は使ったら片付けることと変なことをしないという条件付きでの許可。
この返事を読んで、花吹はやったという顔をする。

「では皆の者、明後日ドランザニアへ行くので予定は開けておくように。今日は解散なのだ」

ようやく話がまとまったので、雨月は他の5人に明後日行くので予定を開けておくように言って解散させた。

そして、雨月達側の世界の時間でいよいよドランザニアへ行く日を迎えた朝。
皆雨月が指定した時間に集まり、予定通りに出発できた。
ドランザニアへやって来ると、すでに来たことのある雨月とさしたる興味を示さない昏黒以外は自分達の住む世界とは違う光景に興味津々である。

「とりあえずアルカトラス国王に接見しよう、こっちだ」

雨月は城下町に見とれている4人に声を掛けて、城の方へと向かう。
やはり雨月が最初に来た時同様、町の者達は6人を物珍しそうに見ることはなく、ただの通行人を見るような目をしていた。

「こんにちは、雨月とそのお仲間さん」

庭園を素通りし、本館の方へ行くとアルカトラスから話を聞いていたと思わしきサフィが出迎える。
雨月と昏黒以外は、サフィが雨月を呼び捨てしたことに若干首を傾げたものの、雨月が大して何も言わないので黙っていた。

「サフィ殿、一応紹介はしておくのだ」

ここで雨月は、とりあえず5人を紹介した。
そして、紹介し終えてからアルカトラスの所へ案内するように言う。

「こっちよ」

5人を雨月から紹介された後、サフィはとりあえず応接間の方へと案内。
そして、すぐにアルカトラスを呼んで来るので待っているように言って応接間を出る。

「最多で、どれだけの者がここに住めるのかな?」

遠くから見たセイグリッド城の大きさを思い出し、花吹が呟く。
それに緑雲は

「万以上、じゃないかな?この城。外見以上に規模が大きいと見受けた」

万以上じゃないのかと花吹に言う。
その言葉に反応したのか、輝星は

「万以上?じゃあ億?兆?それともそれ以上?それだけ住めたらすごいことになるね!ぼくの国の民も全員暮らせるかな?かな?」

などと言って1人でやたらはしゃぐ。
一方、焦熱は暖炉をちらちらと見て

「この部屋さみぃし、暖炉つけてもいいよな?」

暖炉つけてもいいよななどと言うので、緑雲は

「ダメに決まってるじゃないか、間違って火事にでもする気で?そうなればさすがにアルカトラス国王も黙ってはいないと思うけど」

火事にする気かと毒舌を披露。
しかし、緑雲が毒を吐くのは身内だけであってそれ以外には絶対に使わない。
とここで、ようやくアルカトラスが応接間へやって来た。
白毛の体に青い目と2本角は相変わらずで、国王と神たる雰囲気を醸し出している。

「どうも、こんにちは雨月とその一行よ」

一行は、アルカトラスから挨拶された後から返すような形で挨拶した。
輝星や花吹はアルカトラスの大きさに圧倒されていたが、他は特にその大きさに驚く様子は見られない。
そして、一通り挨拶を終えたところで花吹はアルカトラスに

「アルカトラス国王、改めて聞きますが庭と厨房をお貸しいただけませんか?」

庭と厨房の使用許可を改めて求める。
それにアルカトラスは頷いて

「片付けはしっかりな、後は変なことはしないように」

条件を再度提示して許可する。
そして、再度サフィがやって来て

「厨房は案内するわ、庭はこの本館を出てすぐ」

花吹を厨房へ案内した。
庭園へは緑雲と焦熱が向かい、残った3人はそのままアルカトラスと話をする。
しかし、昏黒は相変わらず無言でソファに腰掛け、雨月と輝星がアルカトラスと話をしているのをじっと見ているだけであった。

「汝、話すのは好かぬか?」

じっと見ているだけの昏黒にアルカトラスは話しかけたが、昏黒は

「必要最低限…以外は…話さない…主義だ」

と答え、また見ているだけになってしまった。
それを見かねた雨月はアルカトラスに

「すまぬ、昏黒は生活と仕事をするのに必要になる以外は話そうとしないのだ」

とフォローを入れる。

一方、サフィに案内されて厨房へやって来た花吹はというと

「城の規模に見合う厨房ですね」

その厨房の広さに感心していた。
掃除は隅々まで行き届き、衛生状態は良好。
調理器具も綺麗に片付けられ、花吹の料理欲をかき立てる。

「片付けはちゃんとね、そうしてくれたら自由に使っていいから。食材庫は奥よ」

「分かりました」

サフィが出て行った後、花吹は早速準備を始めた。

そして、緑雲と焦熱はというと

「すっげー」

「小規模ながら果樹園まであるとは」

庭園の中にあった畑スペースにただ驚いていた。
畑だけではなく、緑雲が言うように小規模な果樹園も存在し、果物には困りそうにない。

「おー、うめぇ」

緑雲が果物を吟味している側で、焦熱は手頃な果物を取って火を通しては食べるを繰り返している。
それを見た緑雲は

「一応私有地の果樹園なんだから、自重はするように」

焦熱に自重するように言う。
自重するよう言われた焦熱は分かった分かったと言いながらもなお、取っては火を通して食べるを繰り返していたので、結果的に緑雲に灸を据えられた。

場面は戻り、雨月ら3人とアルカトラス。
輝星がやたらとはしゃぎながらアルカトラスを触っている以外は特に何もない。
雨月はアルカトラスが特に何も言わないので輝星を止めないし、昏黒は元より何処吹く風。

「見て見て、すっごいふわふわー。ぼくが乗ってもふわふわー」

アルカトラスのあちらこちらの毛を触っては、2人に見せるように引っ張る輝星。
そして、ある部分の毛をブチっと引き抜いてしまったのを見た雨月がついに

「輝星殿、その辺にしておくのだ。アルカトラス国王が禿げてしまう」

と苦言を漏らしてやめるように言う。
それに応ずるように、いままで何も言わなかったアルカトラスも

「少し勘弁願おうか、毛を元通り生やすのも一苦労でな」

輝星に苦言を漏らす。
こうして2人に苦言を漏らされた輝星は一応やめはしたが

「少し毛をもらっていい?変なことには使わないから」

などと言い出したが、アルカトラスは

「さすがにそれはできない相談だな」

と返して諦めさせた。

その頃、厨房を借りていた花吹はというと。

「とてもいいオーブン、焼き上がりが違う」

緑雲と焦熱が持ってきた材料でお菓子を作って居た。
なお、花吹が作っている間は2人とも使った調理器具洗いをさせられていた。

「うひょー冷え」

「いっそうのこと、冷却消火されたら?」

流しの水の冷たさに身震いする焦熱に、緑雲はお決まりの毒舌を発揮。
なお、これは身内に対しては日常茶飯事なので気にしてはいけない。

「いい匂い、そろそろ焼き上がりかな?」

と言って、花吹は一度オーブンを開いて焼き加減を確認。
オーブンのトレイの上には、2つのパイが置かれており、これ以上焼くと焦げてしまう焼き上がりになっていたので花吹はそれを取り出して火を止める。
それと同時に、隣のオーブンも開いてトレイを出して火を止める花吹。
こちらはマカロンのようで、程よく膨らんでいる。

「さて、頼んでいた分は終わったので?」

花吹は流しの前で椅子に座って燃え尽きている焦熱と、一通り洗い終えた調理器具を拭いている緑雲に話しかける。
緑雲は花吹にとっくの昔に終わったと、燃え尽きている焦熱を見ながら言う。

「何があったの?」

焦熱を見ながら、花吹は緑雲に聞く。
すると緑雲はこう答えた。

「冷たい冷たいって、文句ばかり言うので水を少しかけたらああなったよ」

花吹はそうですかとだけ答え、緑雲に焼き上がったお菓子を盛り付けるのを手伝うように言う。
その間も焦熱はずっと燃え尽きたままで動かなかった。

「さて、応接間の方へ持って行こうか」

「そうだね」

2人は焦熱を放置し、盛り付けたお菓子を持って応接間へと戻る。
それから数分後、ようやく立ち直った焦熱は2人が居ないことに気付き

「戻ったのかよ、ああちくしょう」

自分も応接間へ戻る。

そのころ応接間では、アルカトラスがサフィとバハムードを呼んで花吹達とお茶をしていた。
バハムードはアルカトラスの横にどっかりと座って、昏黒同様何も話さずにお茶を飲んでお菓子を食べているのに対し、サフィは花吹とやたらとお菓子のレシピなどの話をしている。

「バハムード殿」

それを見かねたのかどうかは不明だが、雨月はバハムードに話しかけた。
バハムードは話しかけれたことでようやく

「何か?」

と口を開いた。
雨月は、わいわいと話をしているサフィを見ながら茶一口飲むと

「バハムード殿は、アルカトラス国王とどのような関係なのだ?」

アルカトラスとどんな関係なのかと問う。
それにバハムードは、マカロンを1つ食べてから

「祖父と孫の関係さ、今は必要な時に護衛したりしてる」

アルカトラスが自分の祖父であるとほのめかし、必要な時は護衛もしていると言った。
雨月はそうなのかとアルカトラスに確認するかのように聞くと

「いかにも、しかしそこまで堅苦しくはない」

当たってはいるが、そこまで堅苦しくはないと返す。
雨月はふむと頷くとさらに2人にいろんな問いを投げかけたという。

「そうね、そこにワインを入れれば洒落た感じになるわ」

一方、サフィはかれこれ1時間近く花吹とお菓子に限らず普通の料理についての話もしていた。
互いにその手の知識も技術も長けていたので、話題に困っていない様子。
そしてその側では、輝星がじーっとサフィの服を見ていた。

「もしかして、興味あるの?」

花吹との会話を一旦中断し、輝星へ向き直ってサフィは聞く。
すると輝星は

「ねえねえ、その服どこで手に入るの?ぼくも着たい!」

なんと、サフィが着ている服。
いわゆるメイド服を着たいと言い出したのである。
花吹は思わず苦笑いするが、サフィは少し考えた後に

「ちょっと一緒に来なさい」

と言って応接間を出て自室へ行ってしまう。
花吹がどうしたのかなという顔をしていると、緑雲がやって来て

「変なこと起こらなければいいけど」

などと花吹に言った。

そして、緑雲と花吹に放置された焦熱はというと

「あー、あったけえ」

いつの間にか戻って来て、こっそりアルカトラスの脇腹辺りに潜り込んで暖を取っていた。
しかもアルカトラスにそれはバレているようで、潰さないように配慮されている。

それから30分後。
程よくお菓子が無くなり、お茶だけで会話を続けているとサフィと輝星が戻って来た。

「私の小さい時のがあってよかったわ。それと輝星、せっかくだからそれあげる」

「わーい」

なんと戻って来た輝星は、サフィのものと同じメイド服を着けていたのだ。
髪もちゃんとサフィの手でセットされ、それらしい着こなしをしている。
それを見た個々の反応はというと、バハムードは似合うなと一言言い、アルカトラスも似たようなことを言った。
雨月はノーコメント、焦熱は元より輝星の姿が見えておらず、緑雲は女装ですかとぼそっと呟き、花吹はいいですねと言う。
なお、昏黒は興味すら示さずにお茶を黙々と飲んでいた。

それから間もない頃にお開きとなり、雨月達6人はアルカトラス達に別れを告げて元の世界へ帰還。
結果としては、とりあえは上手く行ったという感じになった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

終わらない種蒔き

程よく晴れた昼下がりのリフィル城の庭園の片隅にある畑。
そこでイファルシアは歯ぎしりをしながら目の前に広がるほじくり返された畑を見ていた。
一体何がどういうことなのか。
それは、イファルシアが蒔いた各種作物の種が鳩ほどの大きさしかない草食の飛竜たちによってほじくり返されて食べられていたのだ。

「むぅ、今回で10回目よ」

殻を取手いないクルミを牙で噛み砕いて食べながら、イファルシアは腹立った口調で言う。
一度はカカシの設置も試したが、飛竜たちはお構いなしにカカシを壊して種をほじくり返して食べて行った。
一応エゼラルドにも相談し、少し見張ってるように頼んだのだがやはりエゼラルドの隙をついてほじくり返しされてしまった。

「他に手段はないのかしら」

3つ目のクルミを噛み砕きながら、イファルシアは残った種を確認しながら言う。
種はもうあと1回蒔けるかどうかの量しか残っておらず、これでまた食べられてしまったら錬成なりするしかない。
苦虫でも噛んだかのような顔をしながら考えていたイファルシアは、ふとここでフィルスに相談するという案が浮かんだのでフィルスの所へ。

「フィルス、私の畑を荒らす飛竜をどうにかしたいんだけど?」

丁度アルガティアが席を外していて、代わりに書斎で書類の処理をしていたフィルスは、イファルシアにそんなことを言われて顔を上げる。
顔を上げるや、どうなのよとイファルシアの顔が目と鼻の先まで接近していたので、ややびっくりしながらフィルスは

「あの飛竜たちでしょ?無理無理、今が繁殖期だし」

遠回しに、自然の沙汰だから仕方ないとイファルシアに言う。
当然、イファルシアは食い下がって

「そんなの関係ないわ、方法はないの?」

と今度はゼロ距離まで顔を近付けながら問う。
フィルスはぐぬぬという顔をすると

「ないわけじゃない、でもアルガティアには使ってはいけないし教えるな言われてるものだからダメ」

ないわけではないが、アルガティアから教えてはならないと釘を刺されているのでダメだと言う。
それを聞いたイファルシアは、ならもういいわと書斎を出た。

そして、また畑に戻って最後の種で種蒔きをし終えたイファルシアは、  どこからか手裏剣を大量に出して襲来に備える。

「最終的に物を言うのは力、ならば実力行使あるのみ」

イファルシアは、手裏剣を投擲して例の飛竜を追い払おうと考えたのであった。
待つこと20分、種蒔きを察したのか例の飛竜たちが十数の群れなして飛んで来る。
手裏剣を投擲するのにはオーバーな構えを取り、イファルシアはその時を待つ。

その10秒後。

「イヤーッ!」

謎のシャウトと共に、ものすごい速さでイファルシアは宙へ向けて手裏剣を連続投擲。
雨がごとく向かって来る手裏剣を、飛竜たちは右へ左へ飛んで避ける。
イファルシアは、無表情に手裏剣を投擲し続けて1匹たりとも畑には近付けさせていない。
やがて、飛竜たちはダメだこりゃと思ったのか逃げるように飛び去って行った。

「見なさい、これが力の差という奴よ!」

飛び去って行った飛竜たちに、イファルシアはあかんべーをし、またやって来ないように今度はネットで畑を覆って対策を施す。
だがしかし、それ以上例の飛竜たちが襲来することはなく、結局ネットで畑を覆ったのは骨折り損だったとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

血を与えれば

アルガントがやって来て1ヶ月半。
ようやく制御する術を見つけ、あまり長い時間でなければ1人にしておいても問題なくなったのでゴルダは度々アルガントを留守番させて出掛けるようになった。
そして今日もまた、アルガントを留守番させておいてゴルダは出かけていたのだが…。

「ただいま」

アルガントが居てはろくにできない買い物を済ませて帰って来たゴルダ。
出かけていたのは、ほんの1時間程度。
だが家の中へ入った途端に、ゴルダは妙な血の臭いを嗅ぎ取った。

「なんだこの臭いは?少し魚臭いな」

ここでゴルダは、冷蔵庫に昨日なんとなく買ってきた魚の血合いが置いてあったのを思い出して台所へ。
するとそこにはその血合いを一心不乱に貪るアルガントの姿があった。
これを見たゴルダはやれやれとアルガントに近寄り、散らかった冷蔵庫の周りを片付けると

「どうした?闇竜特有のアレか?」

闇竜特有のアレというワードを発した。
すると、アルガントは軽く頷いて

「まだ足りない」

とゴルダにこれだけでは足りないとさらに血を要求してきた。

さて、ここで感づく者も居るだろう。
闇竜は大抵、吸血鬼同様に血を欲することが普通である。
しかし、それは個人差があり毎日飲まなければ発作を起こす者から時折気が向いた時に飲むだけで十分な者までピンキリ。
やって来てから今まで、アルガントが一切血をくれと言わなかったことから、ゴルダはアルガントが時折気が向いた時にだけ血を飲むタイプだと察する。

「悪いが、俺の生き血はダメだ。竜滅病に感染してるからな」

じーっとアルガントに見つめられ、ゴルダはきっぱりと自分の血は病で汚れているのでダメだと言う。
ダメだと言われたアルガントは、少ししょんぼりした顔をして流しで口の周りを洗ったりした。

「参ったな」

そして、何を思ったのだろうか。
ゴルダは物置へ行き、床のある部分に不自然についている取っ手に手をかけてそれを持ち上げる。
すると、そこには地下に降りるハシゴがあったのだ。
アルガントが見ていないことを確認し、ゴルダはハシゴを降りる。

「…」

無言かつ無表情でハシゴを降り切った先に広がっていたのは、ゴルダが竜医の関係で使う部屋であった。
様々なサンプルを保管しておく魔動力の内部時間停止式低温ケースや各種計測機器類。
そして、なぜか手術も解剖も行えるような台が2つ設置されている。

「確かここに…ああこれだ」

低温ケースの中を探り、ゴルダが出したのはラベルの日付が1年ちょっと前の謎の血が入ったパック。
内部時間停止式低温ケースのおかげで、どんなに古くても動力源が生きている限りは内部に保管されている物はその時のままを保つのだ。

「これで満足するだろ」

ケースの扉を閉め、ゴルダはまたハシゴを登ってアルガントのところへ戻る。
ゴルダが戻った時、アルガントはソファに深々と腰掛けてゴルダが最近買った新耳袋なる怪談物のDVDを見ていた。

「おい、あったぞ」

アルガントは後ろから声をかけられ、やや涙目になりながらゴルダの方を振り向く。
怪談物のDVDを見ていたので、後ろから声をかけられたくなかったようである。

「直飲みは嫌だ」

「あー、何か飲む時はコップなり何なりに注いで飲めと教えられたんだなお前。ちょっと待ってろ」

血の入ったパックをそのまま渡したところ、直飲みは嫌だと言われてゴルダはどこからかそこそこ大きいビーカーを取り出して

「これでいいか?」

と聞く。
アルガントは微妙な顔をしながらも頷き、そのビーカーに血を注いでもらう。
ビーカーに血を注ぎ終えると、ゴルダは残ったパックをしかるべきゴミ箱へ投げ入れると食事の支度を始めた。
時刻は午後7時過ぎ、日も大分落ちて辺りは暗い。

「うーん、草食竜の血かな?」

血を飲みながらアルガントが呟いた一言に、ゴルダはん?とアルガントの方を振り向く。
するとアルガントもそれに気づいて振り向くと

「わりと健康体の草食竜から採取した?味がしっかりしてる」

ゴルダが半分忘れていたことを言ったのだ。
ちなみにアルガントの言う通りで、この血はゴルダが去年、近くの牧場のとても健康な竜から採取した血である。
ミスってあまりにも大量に採取してしまい、処分もしきれずにあの低温ケースに放置していた。

「お前、血からそいつの健康状態なんかを察せる能力でもあるのか?」

アルガントはその問いに

「100パーセントは無理だけど、一応は」

とやんわり答える。
そして、ゴルダはこのアルガントの返事からますます自分のヘルプをさせようと思ったのであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

創造神の悩み

今日もいつものように、城の書斎でアルカトラスは国務をこなしていたが、今日はどうにも様子がいつもと違っていた。
時々考え事をしているような顔をしたり、紙片に落書きをしていたりと普段は見受けられない行動が目立つ。

「どうかした?」

茶を持って書斎へ入って来たサフィに聞かれ、アルカトラスはうむと頷き

「ゴルダの事で少しばかりな」

孫であるゴルダの事を考えていたと話す。
サフィはそれを聞いて、何なのかを察した顔で

「神の力が覚醒し始めた事ね」

アルカトラスがゴルダの何に悩んでいるかを具体的に当てた。
それにアルカトラスはまた頷いてそうだと答える。

「あいつなら大丈夫よ、神の力を悪用するようなぼんくらじゃないわ」

ゴルダは神の力を悪用するような奴ではないとサフィに言われ、アルカトラスは少し思慮に耽るとこんな事を言う。

「それは問題ないにして、ゴルダは神の力が覚醒することをあまり好ましくないと思っている筋がある。その思いがある以上、神の力を昔のように制限、あるいは完全除去しろと言われた場合のことを考えるとな」

なぜアルカトラスがこのようなことを言うのかと言うと、理由は3つある。
1つ目は、神の力の除去は定義を書き換えなければ不可能であるということ。
2つ目は、仮にそうなればこの世界に住まう者全てから神の力が消えるということ。
3つ目は、対象をゴルダだけに絞ってシアにそれをやらせた場合、ゴルダはこの世界にとってイレギュラーな存在となるということ。
それが何を意味するか、それは本当の意でゴルダをこの世界から抹消しなければならなくなる可能性が極めて高いということだ。

「シアとゴルダを交えて、また話したら?」

サフィの一言で、アルカトラスは何かを閃いた顔をして

「いい考えが思いついた、感謝するサフィ」

サフィに礼を言うと、アルカトラスはそそくさと残っていた国務を片付けるや、シアの所へ。
アルカトラスが来た時、シアは途轍もない規模のクロスワードをやっているところだった。

「あなたからここに来るなんて、珍しいわね」

アルカトラスが来たのに気付き、シアはクロスワードを一旦片付けてまばたきしながらアルカトラスを見る。
そして、何の話をしに来たのかが既に分かっていたように

「ゴルダの事でしょ?よっぽど神の力が覚醒し始めたことが気にかかってるのね」

ゴルダの事ねと言い放った。
アルカトラスはそうだと言うと

「何故神の力が覚醒し始めたことを気にかけているのか、という一点に尽きる」

ゴルダがなぜ神の力が覚醒し始めたことを気にかけるのかが気になるとシアに話す。
シアはそれに対しては

「ゴルダとて、完全に神の力が覚醒したら私たちと同じ存在になることは分かってるわよね?つまり、神と同等の存在になることで、『自分が負うことになる責任』に耐えきれないんじゃないかって心配しているのよ」

神の力が完全覚醒した時、ゴルダは自分がそれにともなって負わなければならない責任に耐えられないのではと心配していると答える。

「そうか、神の力という強大なる力を得たことにより生じる『責任』に耐えられるかどうか、か…」

アルカトラスは、主神アルシェリアの手で創造されてから今まで一度たりともその責任についてそこまで深くは考えたことはなく、今日までを過ごして来た。
一方のシアは、その力と責任についてをこの世界を創造して以来。ずっと考えて来た。
自分の力があるからこそ、この世界に生命は存続できる。
その生命を生かすも殺すも、自分の思いのままであるがそれは責任を持ってしなければならない。
生命のサイクルを見守り、その最後を見とるのも生命の創造神たる自分の役目であり責任。
そしてアルカトラスは、改めて自分の力と責任について考える必要があることをシアから自家させられた。

「…分かった、数日時間をくれないか?その後ゴルダを交えて話をしよう」

アルカトラスはシアにそう言って、城の方へ戻った。

力を持つ者には、その力を行使する際に責任を生じる。
しかし、責任を生じるのは何も力を持つ者だけではない。
生あるものが誰しも、その行為の1つ1つに責任があるのだ。
そして誰しも、責任を負うという重り引きを避けて通る事は不可能なのである。
小説(一次) |

霧を待てば

その日、シスイの住んでいる山は異常気象かという位に晴れ渡り、湿度も例年より低かった。
朝起きた時からそのような天気だったため、最近は専ら闇属性を使うことが無くなり、水属性の方へ比率が大きく傾いているシスイにはとてもつらい状態。
ある程度水の属性を極めたものは、一定の湿度がある環境下に居なければ体調を崩すなどの症状を引き起こす。
しかし、これは水属性に限った話ではない。
他の属性においても、ある程度極めた場合において、必ずではないにしろ似たような症状が起きると魔法医学のとある論文に書かれている。
例えば、草の属性をある程度極めた場合。ある確率で常に植物に囲まれかつ光合成が行なえる環境下に居ないと致命的な呼吸障害を引き起こすなどのケースもある。

「うぅ、頭痛い」

起きた瞬間から生じている鈍い頭痛で思うように動けないシスイは、とりあえずはと水桶の中に頭を突っ込む。
すると、若干ながら頭痛は改善された。
しかし、完全には頭痛が治まったわけではないので下手に動くことはできない。

「いつもはこんなに日の光が射さないのに、どうなってるのかしら…」

さらにシスイは、いつも我流調合の薬を置いている棚から魔力を増幅させる薬と頭痛の薬を取る。
これらの薬は、エルフィサリドがなんだかんだで素材と一緒に調合法まで教えてくれたもの。
朝飯も食べずに水と一緒に薬を流し込み、シスイは家の中の湿度を魔法でカビやらキノコやらコケやらが生えて来るような湿度まで上げた。
日の光のせいもあってか、たちまち室内は蒸し暑くなったがシスイはお構いなし。

「ああ、やっと落ち着いた」

などと、全快した様子で呟きながらシスイは朝飯の用意をする。

「いただきます」

今日の朝食は、干し肉とニンジンなどの根菜に水だけ。
こんな食事で本当に大丈夫なのかと思われがちだが、シスイは空気中の湿気を水の魔力に変換し、それをまた無の魔力に変換する術をエルフィサリドから伝授してもらっている。
これはつまりどういうことなのかと言うと、足りない栄養をこの変換した無の魔力で補っているのだ。
この他にも、シスイは魔力とは別の概念の気を使って断食をすることも可能だが、こちらは気が集められないので使っていない。
これらは、自然から集める以外にもまた別の方法で集められるが、ここでは伏せておく。

「天気が変わるまで外には出られないわ、これ」

窓に遮光魔法を使い、家の中へ射し込む日の光を抑えた上で窓の外を眺めながらシスイは呟く。
完全な引きこもりに思えるが、家の外はいつもより湿度が極端に低いので仕方のないことなのである。
数分窓の外を眺めていたシスイは、寝床でごろごろするわけでもなくその場で正拳突きをしたり、回し蹴りをしたりと謎の動きを取る。
しかし

「イヤー…あだっー!」

空中で大回転蹴りをしたところ、バランスを崩して落下。
その際、足の小指が思わぬところにぶつかり、シスイは絶叫。
5分ほどそのまま床でのたうち回っていた。

「うぐぐ」

やがてシスイは起き上がり、寝床の近くにあった半分苔むした魔法書を手に取る。
一応これもエルフィサリドからプレゼントされたものなのだが、ご覧のような有様。
プレゼントされた当初はさほど苔むしてはいなかったのだが、放置している間にこうなったようだ。

「うんうん、まだ読める」

どういう定義で読めると判断しているのかが不明だが、とにかくシスイはその魔法書を読み始めた。
しかしそれも30分くらいで読み終え、次はどうしようかと考えていると家の外に霧が戻ってきているのを確認。

「やっとだわ」

シスイはそのまま家から出て、霧と高湿度にまみれた外で背伸びした。

「やっぱりこうじゃないとね」

そのシスイの姿は、どこか嬉しそうであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

雨月とアルカトラスの会談

ドランザニアは、常に新規の世界と繋がる可能性を持って存在している。
しかし、その新規の世界と繋がったところで全ての世界及びその国と関わりを持つ訳ではない。
その都度、シアとアルカトラスが様々な手段を用いて調査し、問題なければ放置する。
だが、侵略して来ると思われる国がその世界に存在した場合にはすぐにその世界と繋がる道は二度と繋がらないように封鎖する。
こういう風にして、シアとアルカトラスはこの世界の安全をある程度守っている。
しかし、そうやっていても繋がった世界の国の方から使者や書簡が来たりして国交などを結ぼうとして来る事も稀ながらある。
今日も、そんな新規に繋がった世界の国から書簡がやって来たようだ。

「どこの世界から書簡が来ているのだ?」

「詳しいことはさっぱり、ただサフィの話では未知なる異界語で書かれた書簡が届いているとのこと」

春の午前中らしい日光が射し込むセイグリッド城の書斎。
そこでバハムードは、新たに繋がった世界のとある国から書簡が届いていることをアルカトラスに説明していた。
アルカトラスはそれにふむと頷いて、バハムードにその書簡を持ってくるように言う。

「御意」

バハムードはそれに了承するかのように一礼し、部屋を出て行った。
そして10分ほど経って、バハムードは書簡を持って戻って来た。

「どれ」

アルカトラスはバハムードから書簡を受け取り、それを頭の中で翻訳しながら読む。
その内容は、こんな感じであった。

---拝啓、アルカトラス様 私は水竜宮の次期竜王、雨月と申し上げます。この度、謎の世界と繋がったという報告を受け、その世界の神かつセイグリッドという国の国王であろうあなたがなぜか浮かび、この書簡を書きました。
我が国は、そちらの世界及び国を侵略する気は毛頭なく、出来ることならば関係を結びたいと思っています。
つきましては、一度実際にお会いしまして会談の場を設けたいのですがいかがでしょうか?
検討のほどをお願いすると共に、必ずご返事を下さい。 敬具 水竜宮次期竜王 雨月---

一通り書簡を読み終えたところで、アルカトラスは急に羽ペンと羊皮紙を取り出して

「承知いたした、先方の都合の良い時に出向いてくれれば応じよう。城の者には一通り話は通しておくので、来られた際には我との会談で来たということを説明頂きたい」

という返事を雨月へと書いてバハムードにシアのところへ持っていくように言う。
バハムードはそのままアルカトラスから書簡を受け取ってシアの所へ行った。

そのころ、水竜宮では。

「本当にお1人で?」

「うむ、行こうとしている国は治安が悪いわけではなさそうだからな」

アルカトラスに書簡を出した張本人、雨月が従者とセイグリッドへ行くスケジュールの調整を行っていた。
1人で行くという雨月に、従者は心配をしていたものの本人が大丈夫と言うのでそれ以上何も言うことはなかった。
と、ここで雨月が出した書簡への返事が届いた。
従者から書簡を受け取った雨月は、その返事の内容を読んでふむと頷いて

「3日後、会談のためにセイグリッドへ会談のために出向く。何ら問題は無いのだ」

こちらの世界で3日後にセイグリッドへ出向くと従者へ伝えてスケジュールをそのように調整するよう伝えた。

それから数日後。
ふわっとした髪に、金と紺の目をした何処と無く王の雰囲気を醸し出した男がセイグリッドへとやって来ていた。
その表情は真面目が故の無表情で、その上人見知りなのか人目を避けて城へと向けて歩いている。

「うむ、ここがドランザニアという世界の神にして国王がが住んでいるのか」

この王の雰囲気を醸し出している男こそが、水竜宮の次期竜王の雨月である。
この国は安全そうだからと、護衛を連れては来ていない。

「いい雰囲気の国なのだ」

城下町を歩いていても、自分を竜王だと思っている者は誰1人としておらず、見慣れないのが居るという目でも見られないし、ましてや襲ってくるような輩も居ない。
やがて雨月は、目的のセイグリッド城の前までやって来た。
自分の世界では本の中でしか見ないようなその城に、雨月はしばし見とれていたが

「いかんいかん、私は会談に来ているのだ」

ここで本来の目的を思い出した雨月は、城の衛兵などに見られないか心配しながら敷地内へ入った。
城の入り口を見張っている衛兵と思わしき2人は、雨月を一瞬だけ見たものの、怪しい者ではないと分かるとすぐに正面へ向き直る。
衛兵に呼び止められなくてよかったと、雨月はほっとして庭園の方へ進む。

「緑が一杯でとても素晴らしいのだ」

どこもかしこも、きちんと手入れが行き届いている庭園の植物を見て、雨月は少しほっこりした気分になった。
水竜宮にも植物はないことはないのだが、このような植物ではないので新鮮味があるのだ。
しかし、庭園内も少なからず人が居るので雨月は下手に話しかけられないよう注意しながら庭園を抜けて城の本館へ向かう。

「これまた素晴らしい作りなのだ」

城の本館へと入った雨月は、外の作りだけではなく内部の作りにも感心した。
エントランスは石造と木造が丁度良い割合で共存しており、さりげなく高い位置に取り付けられたステンドグラスと石造には、アルカトラスと思わしき竜が象られている。

「あなたが雨月?私はここの従者全てを束ねているメイドのサフィよ。よろしく」

しばらくエントランスで周囲を見渡していると、紫髮のメイドが突如として現れて雨月は挨拶と同時に声を掛けられた。
雨月はそれに驚き、少し後ずさりして

「う、うむ…確かに私が雨月なのだ。よろしく、アルカトラス殿はおるのか?」

サフィに同じように挨拶し、雨月はアルカトラスがどこに居るのかを聞く。
ちなみに、雨月はサフィの呼び捨てるような呼び方には一応理解はしているので何も言っていない。

「こっち、着いて来てもらえれば案内するわ」

するとサフィは雨月について来るように言って背を向ける。
本当にいいのかと、雨月はそのままサフィについて行った。

「この部屋で待機しているわ、それでは」

とある部屋の前へ案内され、サフィはそこで仕事があると言わんばかりに一礼して去って行く。
1人残された雨月は、ひとまずの礼儀として入る前に扉をノック。

「入っても構わんぞ」

部屋の中からその声だけで紳士とも思える声がした。
雨月は生唾を飲み込むと扉に手を掛け、そして開けた。

「うむ、よくぞ来られた。我がこのセイグリッドの国王にしてこの世界の神のアルカトラスだ」

「お、大きいのだ…」

部屋へ入るや、雨月はまず待っていた竜の大きさに圧倒された。
白い毛に2本の角、青い目と言った容姿のこの竜こそがアルカトラス本人である。

「ど、どうも。私は水竜宮の次期竜王の雨月と申す」

雨月はやや驚きながらも、最低限の礼儀として挨拶を返す。
アルカトラスは顔色一つ変えず

「かけるがよい」

雨月の目の前にある椅子に座るように促す。
だが、雨月はまだアルカトラスの大きさに圧倒されていて座るのを忘れていた。

やがて、雨月は座るかと思わしきそぶりを見せたかと思えば

「ならば、私も変身して大きさを合わさねばならぬだろう!」

と強い口調で言うや、竜の姿へ変身した。
その姿は、竜というよりはタツノオトシゴそのものだったがアルカトラスは突っ込まない。
だがしかし、雨月は変身したまでは良かったのだが、その大きささはアルカトラスの前足首の半分より少し上程度しかない。

「…」

「…」

そして、しばしの静寂。
このままでは分が悪いと思った雨月は

「その、なんだ…すまない」

とりあえずアルカトラスに謝る。
いきなり謝ってきた雨月見て、アルカトラスはどうしたものかという顔をした後。

「問題はない」

やんわりした口調と穏やかな顔で問題はないと言った。
その後、雨月は竜の姿を維持したまま会談を始める。

「ふむ、水竜以外にもそちらの世界には竜族が居ると」

「この世界に存在する竜族の属性は存じ上げぬが、少なくはないようであるな?」

互いの世界の竜族の数についての話になった時、どちらの世界もそれなりには居ることが分かった。
やがて話は今後の国交関係へと移るが、これは特に話すことはなくアルカトラスが

「汝が送った書簡から読み取れるが、嘘をついているとは到底思えぬ、ついているならばすぐに分かっていた。国交は無論のこと、異界間貿易とこの世界へのフリーパスを汝らが国と世界に一応授けよう」

と言ったことで丸く収まった。
それと同時に、国交を結んだという証明になる書類への調印を互いに済ませた後に30分ほど雑談をして一応の会談は終わった。

「汝、今日はすぐ帰るのか?」

元の姿へ戻り、雨月が調印した書類の自分の控えをしまっているとアルカトラスから今日はもう帰るのかどうかを聞かれ、雨月はきょとんとした顔で

「はて、それはどういう意味でかの?」

どういう意味で聞いたのかをアルカトラスに問う。
アルカトラスは尻尾をパタパタさせながら

「夕食まで付き合わないかというのと、もう少しこの世界についてとこの国について話そうかと思ったのだが」

と答えた。
雨月は少し考えた後に

「申し訳ないが、従者には会談を終え次第帰ると伝えておっての。申し訳ない限りである」

従者にスケジュールでは会談が終わり次第帰ると言っていたことを話す。
それをきいたアルカトラスは、ならば仕方ないと言うと

「外まで送って行こう」

雨月をそのまま城の外まで送ると付け加えた。
それに雨月は

「かたじけないのだ」

と礼を言い、そのままアルカトラスに城の外まで送ってもらい、自分の世界へと帰った。

「それはとても紳士な神にして国王でしたね」

「だろう?アルカトラスは気に入った」

自分の世界へ帰った後、雨月は従者にずっとアルカトラスの話をしていたとか。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

悠とシアと

必要になるとその都度出現する、様々な世界を繋ぐ「交流場」なる謎の部屋。
広さや部屋に置かれている物はその都度変わり、時には何もない空き部屋にポンポンと様々な世界へ繋がる扉が幾つか設置されているだけということもある。
どうやら今日もまた、違う世界から2人。この部屋へやって来たようだ。

「あら、こんばんは?」

「こんばんは」

先客として、耳だけしか特徴がない悠という名の妖狐が居るこの部屋へ白毛の竜が入って来た。
この竜の名はシア、悠とはそこそこの知り合いだがそんなに会話をしたことは無い。
それはなぜかというと、悠の方があまり話そうとしないからである。
しかしそれでは、関係がいまいちなのではと思われがちだがさほどでもない様子。
その理由も、また謎である。

「誰も来ないわね」

「そうね」

シアがやって来て10分ぐらい経過したころ。
ようやく2人は会話をしたが、シアの誰も来ないという話に、悠は一言返しただけでそれ以上は何も言わない。
ちなみに今の2人の位置関係的なものは、シアが床に座って悠がソファで横を向いて寝そべっている。

「んー」

さらに5分後。
暇そうに悠が耳を動かしたが、シアはそれをじっと見て居るだけで何も言わずに尻尾をパタパタさせる。
無論、この間にはまだ2人以外は誰も来て居ない。
だがこれは、2人にとってはよくあることのようで誰か来ないのなどという言葉は両者の口から出ることはなく、ただ静寂の時間だけが流れる。

「甘いもの欲しいわ」

「そう、だけど私は持ってないわね。今から魔法で取り寄せるのも面倒だし」

甘いものが欲しいと言い出した悠に、シアは持ってないし取り寄せも面倒と返した。
悠はシアの返事を聞いて、あらそうという表情をするだけでなんでよとは言わない。
それは、お互いにその程度で言い合いをしてもどうしようもないという自覚があるからだろうか。

やがてシアがやって来て30分が経った。
時折一言二言の会話をする以外は特に何をするわけでもなく、ただそこに座って居るだけ。
そしてこれ以上居ても仕方ないと思ったのか、悠の方からシアに

「解散する?今日はもう誰も来ないでしょ」

と今日は解散しようと持ちかける。
それにシアは

「ええ、いいわよ」

すんなり了承。
すると悠はスッと起き上がってシアにじゃあねと言って帰って行った。
悠が帰ったのに次いで、シアも自分が入って来た扉から帰った。
それと同時に、部屋は無へと帰す。
この交流場ろ呼ばれる部屋は、必要に応じて無数に生成されては消滅するを繰り返している。
それはさながら、輪廻のサイクルのようであった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |
| HOME | NEXT
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。