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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

アルカトラスとリヴァイドとアワパラゴンと

いつもと変わらない、セイグリッドでのアルカトラスの日常。
そんなアルカトラスに、珍しいと言えば珍しい客が来た。
それは地竜王国アストライズの国王アワパラゴンと氷竜国リヴァルス国王のリヴァイド。
この2人は今日は特に国交関係、つまり仕事ではなく完全なプライベートでアルカトラスに会いに来ている。

「やっぱりここは暑い」

「まだ涼しいわ、年中寒い国には言われたくないのね」

南の方とずっと北の方の出身でよくあることだが、体感温度や温度耐性が極端に偏りがちなのでよくこんな言い合いが起きる。
それを、2人に茶を出したサフィは

「そんな言い合い、みっともないわ」

と一喝して応接間を出る。
サフィが出て行ったあと、リヴァイドは浮遊する雪結晶の形の角をかすかに震わせながら

「分かってないんだからあいつは」

と独り言を言ってアワパラゴンを無視し、出された茶をすするが

「あちい」

茶は淹れたてだったらしく、とても熱かったのでリヴァイドは一口飲んだだけで舌をやけどしかける。
それを見たアワパラゴンはリヴァイドを小馬鹿にするようにクスクス笑いながら、自分はその淹れたての熱い茶を難なく飲む。
これだけを見ると、アワパラゴンとリヴァイドは仲が悪いように見えるが実はそうでもない。
互いに理解した上でこんなことをしているのだ。

「すまぬな、すぐに片付けなければならぬ書類を片付けていた」

ここでアルカトラスが応接間に入って来て、アワパラゴンとリヴァイドに挨拶する。
2人もそれに応じるように挨拶を返し、さっきまでの仲が悪いと思われがちな雰囲気を一転させて最近どうかなどと言う他愛もない話を始めた。

「我か、つい最近までは地球へ飛びっぱなしだったが最近はようやく落ち着いてここで仕事をこなせるようにはなって来たな」

「私は鉱物資源の価格調整関係でゴタゴタしてるのね。向こうが譲歩すれば解決するけど」

「俺か?俺は…まあ、ぼちぼちだな。可もなく不可もなくな毎日だ」

アワパラゴンが少し悩みの種があるのに対して、アルカトラスとリヴァイドは全くもってその様子がない。
その後も、何かと日常に関する話を続けていると、どういう訳だがシアがやって来て

「珍しい、けど今日は国王としてじゃないようね」

リヴァイドとアワパラゴンを珍しそうな顔を見ると、リヴァイドに近寄って後ろから抱きつく。
シアに抱きつかれて、リヴァイドは小声でやめろと言ったがシアは5分ほどリヴァイドをもふもふして耳にふっと息を吹きかけて応接間を出て行く。
耳に息を吹きかけられたリヴァイドは、どういう訳だがしばらく顔を少し赤めて身震いしていた。
だが、アワパラゴンもアルカトラスもそれに対してはどうしたとは聞かずにそっとしていた。

「ああもう全く、シアの奴はこれだから…」

リヴァイドも、なぜだがシアの抱きつきリストのようなものに入れられているらしく、ここへきて会うたびにこの有様。
そしてゴルダほどではないにしても、リヴァイドは抱きつかれるのを極力避ける傾向がある。
なぜかと言うと、理由は簡単でリヴァイドは氷竜なので体温はほとんど氷点下2桁。
そのため、下手すればシアが抱きついた時に体に毛が張り付いてしまうかもしれないからだ。
事実、随分前だが冬にシアに抱きつかれた時はシアの毛がリヴァイドの体に張り付き、無理に剥がせない状態になって数日そのままになったという事例もある。

「いつだった?シアをの体の一部分を禿げさせたの?」

ここで、アワパラゴンがリヴァイドをど突くかのように昔の事を蒸し返してきた。
それに対してリヴァイドはそれはもう忘れろとだけ言って、軽く羽を動かしながら冷めた茶を飲む。
アワパラゴンはらしいのねとだけ言って、常に持ち歩いていると思わしき木刀を取り出してそれを錬金術でアダマンタイトの剣に変換する。
金竜と呼ばれる地竜からの派生竜のアワパラゴンは、こう言った錬金術に長けているのでこのようなことは朝飯前。
ただ、いくら錬金術に長けていると言えど人体錬成などはできない。
そもそもそう言ったのは錬金術の中ではタブーとされており、やろうものならシアが遠隔操作で止めに来る。

「いつ見てもお前の錬金術は素晴らしいなアワパラゴン」

「褒めても何も出ないのね」

お世辞を言ったリヴァイドに、アワパラゴンは褒めても何も出ないと言いながら座った状態でその剣をしばらく振っていたが、そのうち剣を木刀へ戻す。
そして何を思ったのか、アワパラゴンは怖いほどにニコニコしながらリヴァイドに抱きついた。
その途端

「いでででで、やめろやめろやめろ。お前の毛が刺さってる」

リヴァイドが妙に痛がりだしたのだ。
それはなぜかと言うと、アワパラゴンは自身の体毛の硬さを自由に変えることができる。
今のアワパラゴンの毛の硬さは剣山に匹敵する硬さなので、当然抱きつかれれば毛が刺さる。
本来はこの能力は防御用なのだが、使い方によってはこのように嫌がらせをしたり攻撃も可能。

「あー、いてえ」

ようやくアワパラゴンが離れたので、リヴァイドはアワパラゴンの毛が刺さったところを確認する。
血が出るほどではないが、刺さったところ全てが赤みを帯びていた。

「汝らは我が居ないところでもこのような感じなのか?」

ふとアルカトラスから投げられた問いに、アワパラゴンは首を横に振って否定。
一方リヴァイドはどうだかと答え、また角を揺らす。

「ふうむ」

2人の答えに、アルカトラスはどこか納得いかないような顔をした。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

姿消して近づくはエルフィサリド

春にもかかわらず針で刺すような寒さの中、エゼラルドとアルガティアにフィルスとイファルシアはリフィルを離れてスリュムヴォルドへ来ていた。
目的はエルフィサリドに会うという訳でもなく、ただなんとなく来たようにしか見えない。
アルガティア達が居るのは、スリュムヴォルドのずっと西方の方、ドランザニアとの国境付近の田舎の山の中。
エゼラルドが足元がごつごつしていて危ないから背に乗ってと言っているにもかかわらず、アルガティアは自分の足で黙々と山の中を歩いている。

「本当にこんな場所に珍しい苔なんてあるの?」

エゼラルドの背で、魔法書ではなく魔法薬の本を読みながらフィルスがふと呟く。
そう、アルガティア達がここに来た理由とは、フィルスが言う普通にある苔とは違うある苔を探すためである。
そのためだけにこんな山奥にまで入って来ているのはどうかと思われがちだが、それだけの価値はその苔にはあるようだ。

「これじゃない?」

朽ちて地面に横たわる木にびっしりと付いた苔を指して、イファルシアがアルガティアに聞く。
アルガティアはその苔を見ると、どこからか取り出したナイフで少し削り取ってそれを調べた。
その苔は、よくよく見ると普通の苔よりも緑っ気が強くほのかに発光している。
この苔こそが、アルガティアとイファルシアが探していた苔であった。
アルガティアはその苔を両手に乗るくらいの量採取してどこかへそれをしまう。

「もういいのか?」

やっと帰れるのかと、寒さで身震いしながらフィルスはアルガティアに聞く。
アルガティアはそれに軽く頷き、一行は来た道を引き返し、1時間ほど時間をかけて城下町まで下りてきた。
城下町は、海から吹いてくる風のせいか余計に寒く、しかも小雨まで降っている始末。

「おお寒い寒い」

丸まって震えながら、フィルスは遠まわしに早く帰ろうと言うがアルガティアはまだ帰る気配はない。
エゼラルドもフィルス同様に少し寒そうにしてはいたが、なんとか耐えてはいるようである。

「今年はとてつもない冷夏になりそうね」

海から吹いてくる風、降る小雨、そして春とは思えないような刺すような寒さ。
それらから何を感じ取ったのかは分からないが、ぼそりと今年は冷夏になると呟くアルガティア。
それに反応したエゼラルドは、アルガティアを頭で小突いて

「どうしてそう思うのかな?」

と一応聞いてみる。
それに対して、アルガティアは傍から聞いていると何の事だかさっぱりわからない何かをエゼラルドに説明し始めた。
イファルシアは少しは理解出来ているようだが、フィルスはそもそも理解する以前にアルガティアの話を聞かずに魔法で暖を取っている。

「誰?」

エゼラルドが小雨除けにサトイモの葉を差した時だった、フィルスは自分たち以外の何者かの気配を感じて索敵状態に入る。
その気配は、フィルスの背後数十メートルからでそれが誰かを悟った途端にフィルスは索敵気状態を解除。

「山に居た時からついて来てたよね?エルフィサリド」

気配の主に、山に居た時からついて来ていたことを分かっていると言ったフィルス。
すると、気配がスッと自分にすぐ後ろに来たかと思えば

「暇だもの、少しくらい行動観察してても構わないでしょうに」

気配の主であるエルフィサリドがフィルスの耳元でそんなことを言う。
それにフィルスは少しも驚く様子を見せずに向き直ると

「その能力使ってニンジャでも目指したら?」

ニンジャにでもなったらと冗談を飛ばす。
それを聞いたエルフィサリドは、表情一つ変えずに水球を一つ作りだしたかと思えば

「そんな気はまんざらないわ」

と言って水球をフィルス飛ばす。
その水球は、そっと接近して来てフィルスを取り込んだかと思えばすぐに破裂した。

「何するんだよ」

一瞬ではあったが、水球に閉じ込められたがために咳き込むフィルス。
それを見たエルフィサリドは、クスクスと笑ってずっとエゼラルドと話をしているアルガティアを見てそっと尻尾を近づけてその肩を叩く。
だが、アルガティアは全くこちら側に気付かない。
エルフィサリドはやれやれねという顔をしつつ、今度は突然の突風を吹かした。
この突風で、アルガティアはすっ転び、イファルシアは数メートル飛ばされてやっとアルガティアはエルフィサリドに気付く。

「やり過ぎ」

転んだ際に汚れたローブを気にしながら、アルガティアはエルフィサリドの鼻の辺りを指でぐいと押す。
それに対してエルフィサリドは肩叩いても気付かなかったでしょうにと返した。
一方蚊帳の外にされていたイファルシアは、泥で体が汚れて嫌な顔をしている。
それを見かねたフィルスは、イファルシアの体の汚れを魔法で落してやった。

「ま、いいわ。じゃあ私はこの辺で」

ここでやることを思い出したのか、エルフィサリドはこの辺でと言うや煙のようにその場で姿を消して去った。
アルガティア達もそれに続いて帰ったものの、イファルシアはしばらくエルフィサリドに対して何かしら言っていたという。

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