氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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制御とは何たるものなのか

それから1週間ほどが経っただろうか。
あれ以来、首輪なしでも変身することが無くなったゴルダは、むしろ装備していないことへの違和感を覚えながら生活していた。
正式な創造神アルカトラスの血筋であるがゆえに、覚醒した神と同等の力。
それにともない、今まで変身に関しては自己制御が出来なかったのだが、今ではすっかりできるようになっている。
むしろ、なぜ今まで自己制御が効かなかったのかという点に関しても謎は多い。

「はあ、落ち着かん」

一通り家事を終わらせ、だらけながらゴルダはそう呟く。
今まで自己制御できなかったと言う点に関する疑問と、これからの生活に関しての疑問の2つが頭の中に混在し、それらが頭の中の領域の大部分を支配しているのでさして何かをするやる気が出ないのだ。

「俺と同じような奴と言えばフィルスしかいないわけだが」

自分と同じような状態の知り合いを、頭の記憶の引き出しを探った結果、アルガティアの一応のペットのカーバンクルのフィルスだけが浮かんできた。
フィルスもゴルダと同様に、聖竜の血を半分だけ持っているのだが、これといつてどうということにはなってはいない。
なので、一応聞きに行くことにしたのだ。

場所は変わって、聖リフィル王国の城の敷地内。
アルガティアはやはり国務中で姿が見えなかったが、フィルスとイレーヌとエゼラルドの姿だけは確認できた。

「あら、久しいんじゃない?」

イレーヌの一言に軽く頷き、ゴルダはフィルスを突っつく。
突っつかれたフィルスは、何だよと言う顔をしてゴルダを見る。

「話しても?」

「イファルシア居ないからいいよ」

血の事について聞きたいので話してもいいかと、ゴルダが聞くとフィルスは少し辺りを見回すとイファルシアがいないのでいいと答えた。
ちなみにイファルシアとは、フィルスの義理ながら実質的な妹の草のカーバンクルである。

「お前も聖竜の血を持ってたな、実際のところどうだ?制御とか」

ここでゴルダはフィルスに魔力などの制御などについて聞く。
だが、フィルスは首を横に振って

「全然ダメだね、自己制御の限界値に対して元々の魔力が釣り合ってないからこれだよ」

自分の首輪を見せ、自己制御はできてないと言い放つ。
ゴルダはそれに対してだよなという顔をし、フィルスを撫でる。

「額は触らないでよ?」

フィルスに言われるまでもなく、カーバンクル族の額を触ってはならないことを把握しているゴルダは額に手が行かないよう注意していた。
しばらくして、これ以上はここに居ても仕方がないとゴルダはリフィルを離れて今度はセイグリッドへ。

「あら、また来たの。暇なのね」

城へ行くや、待っていたかのようにサフィと出くわして皮肉めいたことを言われたがゴルダはそんなんじゃねえよと返してアルカトラスの所へ。
普通ならアポなしでこんなことをすれば無礼と思われがちだが、アルカトラスはあまりそのようなことは気にしない。
度が過ぎればさすがに苦言は申すのだが。

「また来たのか、その様子だと力に関してだろう?我は忙しい。シアなら暇を持て余しているだろう。そっちに聞いてくれ」

部屋へ行くと、アルカトラスは国家予算の決算書の金額が当たっているかの計算をしており、シアに聞けと遠まわしに今は手が離せないほど忙しいと言った。
だと思ったと、ゴルダはそのままシアの所へ。

一方のシアは、ゴルダが来た時に何をしていたのかというと、魔法書を広げて瞑想の途中であった。
ゴルダが来たことに気づくと、瞑想をやめて魔法書を片付けると、今日はどうしたのと抱きつかずに聞いてきた。

「2つの疑問があってな、それが解決できん」

ゴルダはシアに、なぜ今までで自己制御が出来なかったのかという疑問、これからの日常に対する疑問の2つを投げつけた。
その投げつけられた疑問に対して、シアは最初の疑問にこう答える。

「能力の成熟の関係かしらね、完全に聖竜の血が入っているわけでもないし、半分なら数百年単位での時間が必要になるわ」

「やはり数十年単位じゃ成熟はしないと言うことか、あまりにも大きすぎる力が故に徐々にかつ長い年月をかけて馴染んでいくしかないと」

「という訳でもないわ、その辺は修行なりなんなりでどうとでもなるし」

ゴルダの十数年単位での成熟はあり得ないのかという一言に、シアは修行でもすればまた話は変わると返す。
どういう修行だと聞きかけたゴルダだが、自分で考えなさいと返されるのが目に見えていたので何も言わないでおくことにした。

「日常に関しては、特に支障が出るほどの物でもないとは思うけど?」

「そうか?」

2つ目の疑問に関し、そのような返事をされてゴルダは首をかしげる。
言われてみればそうでもないかもしれないが、どこか引っかかる何かがあるゴルダはさらに首をかしげ、首が45度辺りまで傾いたところでシアが

「元からあったものが表に出てきたくらいで、今までできなかったことが年月が経つにつれて出来るようになる。一種の成長と同じじやないの?」

それは一種の成長ではないのかと言った。
これに対しては、じゃあ制御はどうなるのかとゴルダは聞く。
シアは5分ほど考えた後に、こんな解を返す。

「それは決まってるじゃない、今という日常を持続させるためには必要不可欠なものよ、私の力も制御しなければ世界を歪めて日常を破壊し尽くす。そういうことよ」

やはり持続するためのものかと、無理やり自分を納得させたような顔のゴルダに、シアは最後にこう言い放つ。

「自分で線路を敷いて走るものよ、人生ってのは。他人が敷いた線路の上なんか走ってもつまらないわ」

言い放った後で、シアはゴルダの頭をわしゃわしゃしてあっさりと解放する。
今日はしないのかとゴルダが聞くと、シアは今日は瞑想していたいのと答えた。

「そうか、んじゃ」

ドライな返事を返し、そそくさとゴルダは帰った。
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小説(一次) |

切れし首輪

その日、ゴルダは庭で銃の手入れついでに射撃をしていた。
持っている銃に何ら問題はなく、撃ち具合も上々。
そして銃を片付け、バルコニーの自作竈で焼き芋を焼いている時である。
竈に木炭を投げ入れていると、パリンという音と共に首輪が切れたのだ。
しかもただ切れたわけではなく、封印石が粉々になっていることにも気づいたゴルダは

「おかしい、何でだ?この封印石は現在で最強のもののはずだが」

と切れた首輪を広い、おかしいぞと首をかしげる。
そして、ゴルダはさらに首輪を外した直後の体の違和感がない事にも気づいた。
普通ならば、セイグリッド以外で首輪を外せばまず制御が効かずに変身が始まるので体に違和感を感じる。
だが、今日はそれが全く感じられない。

「どうなってるんだ?」

まずセイグリッドで首輪を外しても変身しないのは、アルカトラスの結界による効果であるが、ここにそんなものはない。
それなのに変身しないのはおかしい。
この手の話をして通じるの者として頭に浮かぶのは、アルカトラスかシアかルライエッタの3人くらいである。
少し考えた後、ゴルダは携帯を取り出して、ルライエッタとサフィにメールを飛ばす。
ルライエッタの所へは、行っても忙しいと門前払いされる可能性があり、シアとアルカトラスも国務やらなんやらで手が離せないかもしれないのでまずはサフィにメールをして確認を取ったのだ。

「ルライエッタの野郎はダメ、爺さんは今大丈夫と」

数分でメールの返信が来て、ルライエッタは研究で手が離せないと言われ、サフィの方はアルカトラスなら今普通に仕事していると返事であった。
ちなみに、シアに関しては何も書いてはいない。

「焼き芋食ったら行くか」

竈から立ち上る煙に混ざって匂ってくる焼き芋の匂いに鼻で笑いつつ、ゴルダは焼き芋が焼き上がるのを待った。
その2時間ほど後に、ゴルダはセイグリッドへと向かった。

「首輪をつけてないと、いい感じじゃない。噛みつきやすい意味で」

「お前はそんなワイルドなの飲み方しないだろ」

城へたどり着くや、出迎えに現れたサフィに首輪をしてないと噛みつきやすそうだわと言われ、ゴルダはお前はそんなワイルドには飲まないだろと返す。
アルカトラスの部屋へ行くと、当の本人は忙しそうに書類の処理をしていた。
国の予算諸々の決算期が間近なので、いつも以上に書類の量は多いようだ。

「爺さん」

「汝か、話とは?」

ドンと新たな書類が置かれたのを気にせず、アルカトラスはゴルダに目をやる。
尻尾が若干パタパタしている辺り、孫であるゴルダを見れて嬉しいようではある。

「実はな爺さん、首輪が封印石が砕けたと同時に切れちまってな」

ここでゴルダは、アルカトラスに数時間前の出来事を全て話す。
話を全て聞き終えた上で、アルカトラスはなぜかシアを呼ぶ。

「もふっ」

「ぶっ」

相変わらずではあるが、シアはやってくるやゴルダに抱きついてそのままアルカトラスと話をし出す。
2人が話をしている間、ゴルダはずっとシアの毛の中に埋められていた。
やがてある程度の話が終わったところでアルカトラスが

「考えられることとしてはただ一つ、汝に流れている我の血が本格的な覚醒を迎えているのかも知らん。それにより今までできなかった自己制御ができるようになった。それ以外に考えようが無いだろう」

とゴルダの聖竜として、神としての血が覚醒を迎えたからだとゴルダに説明した。
それを聞いて、あっさりと納得したゴルダだが

「しかし、俺の中の神の血が覚醒したってことは厄介ごとが発生しないか?爺さん?」

厄介毎が起きるのではとアルカトラスに一応聞く。
アルカトラスは軽くうなずいて

「確かに、この世界に3も4も神が存在するとなると非常にややこしいことが起きる。だがその点は我が何とかしよう、心配するでない」

確かにそうだがその点は対策は取るので心配するなと答えた。
ゴルダはそれが何なのかを聞こうとしたが、シアから構わせろオーラが出ていたので、あえて聞かずに黙った。

「それよりも、今日以降どうするかもまた問題なんだが」

と独り言をつぶやいたゴルダにシアは

「いつも通りでいいのよ、抑えてればいつもと変わりないわ」

抑えていればそう変わらないので、いつも通りにしていればいいと答える。
それにゴルダはそうだろうかとまた呟くが、よくよく考えてみればシアの言う通りであった。
自己制御ができるようになった今は、神の力など押さえていればそうそう分かるものではない。
そう、全くもって変わる必要など、ないのだ。

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小説(一次) |

マキュっと変身

それは、何気無くルライエッタがアルガティアの所へ来たのが始まりだった。
この日はなぜか、ルライエッタは携帯を持って来ており。何かのアプリを起動してアルガティアに見せびらかしていた。

「あら、かわいい」

晩秋の昼下がり。
ルライエッタに携帯の画面を見せびらかせられつつ、緑茶を啜っていたアルガティアはそう呟く。
見せびらかせられていたのは、いわゆるパズドラというゲームの画面で、水属性のカーバンクルであるマーキュライトカーバンクルが表示されている。
モンスターの実在もへったくれもないドランザニアで、このようなゲームを目につける者はよっぽどの物好きくらいだろう。
それを見てかわいいというアルガティアもたいそうな物好きだろうが。

「なんでまた見せたの?」

ズズズと緑茶を啜り、おやつの饅頭を手に取りながらアルガティアはルライエッタに聞く。
それを聞かれたルライエッタは何やら怪しいタブレットを取り出す。
そのタブレットは青々としていて、何なんだこれはと言いたくなるレベルだ。

「なんか色々試した末にできたマーキュライトカーバンクルになる薬だ」

「ふうん、それでどうしてそんなものを作ったの?」

「いや、それは」

どうやって作ったかを聞く前に、アルガティアはルライエッタにどうして作ったのかを聞く。
この問いにルライエッタはすぐには理由を言えず、黙り込む。
ルライエッタが考えている間に、アルガティアはそのタブレットをルライエッタから取り上げる。

「賢竜って、時々わけのわからないものを作るわよねえ」

そう言ったかと思えば、アルガティアは注ぎ足した緑茶と共にそのタブレットを一つ服用してしまう。
これには、考えていたルライエッタも目玉が飛び出しかねないほどに驚いた顔をして

「本当に飲んでしまったのか?」

とアルガティアに聞いた。
それにアルガティアは軽く頷き、また緑茶を啜りながら饅頭を食べ始める。
特に変化がないので、ルライエッタはなんだ失敗作かとほっとした。
だが実際は、効果が現れるのが遅かっただけで、失敗作ではなかったことにルライエッタは気づかずに帰ってしまった。

それは、夕食後にアルガティアが風呂を浴びて部屋へ戻って来た時だった。
バスローブ姿から寝巻きへ着替えようとそれを脱ぐと

「毛?」

はらりとバスローブの中から水色の毛が落ちたので、アルガティアはそれを拾い上げてじっと見つめる。
それは、マーキュライトカーバンクルの水色の毛と酷似しているようにも思えるものであったが、アルガティアはさほど気にせずに寝巻きに着替え、机に腰掛けて読みかけの呪文書を開く。
だがそれも、妙な額の違和感で中断せざるを得なくなる。
なんだろうかと、手で触れてみれば何か硬いものがへばりついていた。
それは、引っ張って取れるようなものではなかったのでアルガティアはほったらかしてさっさと寝ようとベッドへ入る。
だが、体がムズムズする感覚がして寝ようにも寝れない。
どうしようと考えている間に、次第にアルガティアの体が白と水色の毛で覆われてきた。
普通、体にこのような変化が起きれば大抵の者は動揺するのだが、アルガティアは動揺するどころかむしろ受け入れているようにも見える。

「んー、今さら?」

アルガティアは薬の効果に若干不満を持ちながらも、自分がマーキュライトカーバンクルになりつつあることに何の動揺も葛藤も抱かず、事なかれでどうにでもなれ状態。
今や、アルガティアの体は八割方マーキュライトカーバンクルの体そのものへと変化してきている。
特徴的な尻尾も生え、耳も瓜二つなものへと変化し、原型が残っているのはその顔つきと手足に目くらいだろう。

「意外とかわいい、かも?」

九割方変化した辺りで、アルガティアは鏡でほぼ完全にマーキュライトカーバンクルとなった自分の姿を見て、多少ながらうっとりした気分になった。
もとより、記憶にある者へ変身できる能力と魔法を取得してはいるものの、滅多に使わない上にそのバリエーションは両手で数える程。
しかも、全て自分が望んでいるものではないのだ。
だが、今回は違う。
自分がかわいいと思い、内心なれるものならなりたいという姿になれたので文句はない。
その上、戻れなくともいいと思っているのもポイントであると同時に問題でもある。

「胸もいい感じ、少し大きいけど」

なんとも言えない事を言っている間に、手足と目も完全にマーキュライトカーバンクルそのものへと変化し、アルガティアはそのものとなった。

「もっふもっふ」

自分の耳を触りながらベッドへ入り、アルガティアはすやすやと寝息を立てて就寝した。

その翌朝、寝室がやけに騒がしいので何だろうと思いながら起きると従者がアルガティアの姿を見て

「アイエエエ!?陛下のお姿変わってるナンデ!?」

と絶叫していた。
アルガティアはその絶叫に目もくれず、いつものように着替えようとクローゼットの方へ歩いて行き、正装ローブを着る。
この姿になっても、元の姿と服のサイズは変わってはいなかった。

「でも、少し胸がきついわね」

変わっているといえば、バストのサイズくらいだ。
それでも、着れないことはない。
相変わらず従者たちはアルガティアの変わった姿に絶叫しているが、気にすら留めず大広間へ向かう。

「姉さんったらまた」

「今度のは気に入った」

妹のイレーヌとそんな会話を交わしつつ座るアルガティアだが、従者たちは目を点にしてじっと見ている。
無論、アルガティアは数ミリも気にかけていない。

「今回は簡単には戻らないから」

「むぅ」

従者にじっと見られたまま、朝食の時間は過ぎていった。
やがて国務の時間が訪れた。
マーキュライトカーバンクルの姿になっても物書きをするには支障はないようで、黙々とこなす姿が見られる。
従者もようやく落ち着いたのか、じっと見ることもなくなった。

「ああ、こんなことになってたか」

しばらく国務をしていると、ルライエッタがやって来てやっぱりかという顔をした。
アルガティアはこの姿には満足していると目線で言うと、また国務へ戻る。

「アルガティア、ちょいと重要な話がある。あの薬な、一度使うと普通には元に戻れないことが分かった」

アルガティアはそれで?という顔をし、額の宝石をポリポリと掻く。
普通には元の姿に戻れないと言われたにも関わらず、随分と悠長な様子だ。
それもそのはず、アルガティアはこの姿に満足しているからだ。

「あー、もういい」

アルガティアの態度にルライエッタは、もういいと呆れた様子で背を向けると去って行った。
それに対しアルガティアは鼻歌を歌いながらなおも黙々と書類の処理を続けていた。

やがて国務もひと段落したので、ふわふわと浮遊しながら城の中を徘徊していると、イレーヌとエゼラルドに遭遇。
姿は変われど中身は変わらずとでも言うのだろうか、マーキュライトカーバンクルの姿のアルガティアを見ても、エゼラルドは

「また?」

と一言だけ聞いて同属性ならよかったのにと付け足す。
アルガティアはそれに頷き、エゼラルドの頭を軽く撫でて池の方へ向かう。

「うん、やっぱりかわいい」

池の水面に映る自分の姿にまたもやうっとりするアルガティア。
アルガティアがこんな一面を見せるのは、そうそうないことだ。

時間は過ぎて、夕方。
晩秋ということもあり、夕方は多少ながら肌寒い。
いつの間にかうとうとして寝ていたのか、アルガティアがハッと目を覚ますとそばでエゼラルドとイレーヌもぐっすりと寝ていた。
それを見たアルガティアはなぜかクスッと笑って二人を起こす。

「ん、おはようアル」

「寝ちゃってたわ」

二人を起こしたアルガティアは、どこからともなく箒を取り出し、地球でよくイメージされる魔女のようにそれに跨ると、イレーヌをその後ろに乗せる。

「まさか箒で飛ぶつもり?」

「そうよ」

箒で飛ぶのかとイレーヌに聞かれたアルガティアはそうよと即答。
これには、アルガティアをよく知っているイレーヌですらもぽかんとせざるを得なかった。
だが、乗せられたからには拒否するつもりもなく、イレーヌは黙ってアルガティアの後ろに乗ったままだ。

アルガティアは軽くイレーヌにウィンクし、そのまま箒で空へ飛び立つ。
秋の夕方の少し冷たい空気が、二人の肌を叩く。
エゼラルドは、その後ろから少し間をあけてついてきている。
受ける風の量などは、エゼラルドに乗って飛んでいるときとさほど変わらないが、安全面ではそうでもなかった。
なぜなら、箒から落ちれば地面へ一直線だからだ。
だが、その危険性を拭い去るかのように、アルガティアの箒さばきは上々であった。
絶妙なバランスを取り、イレーヌが落ちることがないようにしている。
数分ほど飛んだところで、アルガティアは静止の状態を取って、奥ゆかしく何も語らずに空の向こうを指差す。

「あ、日の入り」

「近くで見るともっときれい」

「でも眩しいよ」

アルガティアたちは、そんな会話をしながら日の入りの鑑賞を愉しんだ。

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小説(二次) |

出会い-サフィとアルカトラス

光竜王国セイグリッド、そしてその城の従者すべてを束ねるはサフィ=アルヴォールド。
なぜサフィが今の地位に就いたのだろうか、それはサフィがこのセイグリッドへやって来た辺りまで時間は遡る。

サフィがセイグリッドへやって来たのは、現在を大陸歴3014年とした場合、大体50から30年くらい前の話だ。
当時、セイグリッド城にはすべての従者を束ねている者が存在していたが、その者は年齢に伴い引退。
従者全体を束ねる者が居なくなった城では、ほかの従者たちが日替わりで長を務めたりして何とかやり過ごしていたが、それにも限界がある。
それを気にかけたアルカトラスは、新たな従者を束ねる者の募集をかけたが、そう簡単に名乗りを上げる者がいるはずがなかった。
しかも、いざ名乗りを上げた者と面談をしても、しっくり来るはずもなく、結局決まらないまま1年が過ぎた。

「本当に変わってないのね、それはそれでいいけど」

そんなある日、1人のメイド服姿の女が大荷物を抱えてセイグリッドへとやって来た。
この女こそが、サフィ=アルヴォールド本人である。
ドランザニア共和大学の幻想獣医学部竜医学科を卒業後は、異界へ姿をくらましており、この方ドランザニアへ戻って来たのだ。
異界で何をしていたのかは定かではないが、さらに別の大学へ進み、人間の医師免許を取得していることは確かである。

「いつぶりかしら、ここを訪れるのも」

大荷物を苦も無く担ぎながら、サフィはセイグリッドの国土へと足を踏み入れる。
ドランザニアには国境らしい国境がないので、変なことをしなければフリーパスで国境を越えることが可能。
そして、町の中をしばらく歩いていると、サフィの目に政府広報が貼られている掲示板が目に留まった。

「従者長募集?この国はメイドの長も居ないの?」

それは、アルカトラスが募集をかけている城の従者のリーダーを募集する旨の広報の張り紙であった。
最初の一文を読んだ瞬間、サフィの頭には疑問というよりも、呆れが真っ先に浮かんだ。

「しかも、張り出されたのは去年。まだ決まってないの?おかしいわこんなの」

さらにサフィを呆れさせたのは、その広報の張出日の日付が去年となっていた所ところである。
これ以上この広報を見ていると、呆れ果てて実家へそのまま戻ってしまうだろうと思ったサフィはまっすぐ城の方へと向かった。

「うぅむ、やはり禁じ手を使ってでも引き止めるべきだっただろうか」

そのころ、城ではアルカトラスが自室で仕事をこなしながら独り言をつぶやいていた。
かれこれ1年近く従者長が決まらず、気を使ってメイドに余計な仕事を与えないようにしているのだが、こちら側としてもはやり限界はある。
アルカトラスもその限界が近づいていた。

「失礼します、国王陛下。来客です」

「通すがよい」

ここで、メイドがいつの間にか部屋へ入ってきていて、来客があると言った。
アルカトラスは書類を片付ける手を止め、その来客を通すように指示。
ここでアルカトラスは、その来客が従者長募集の張り紙を見て来たのだろうとは確信していた。

「サフィ=アルヴォールドです、ここで従者長を募集していると聞いて来たわ」

一応の挨拶をされ、アルカトラスもそれに対して挨拶を返し、やりかけの仕事をそっちのけで面談をすることに。
面談自体は何事もなく進んで、アルカトラスもこれなら任せても問題はなかろうと思いながら、最後に

「明らかにメイドの知識と技術だけを有しているわけでは無かろう、他には何があるのか?」

とサフィに聞いた。
それに対してサフィはアルカトラスに対してこう答えた。

「竜医と人間の医者の資格は有しているわ」

それを聞いたアルカトラスは、これはという顔をしてふと自分の主治医もとい専属医が居ないことに気づいた。
今まで、アルカトラスの健康管理はセイグリッドに住む竜医をランダムに引き抜いて選出していたが、それだと探すのにも手間がかかる上にそれにかかるコストも安くはない。
ならば、専属で雇い入れてしまった方がいいのではとアルカトラスは思ったのだ。
しかも、従者長希望なのでこれは一石二鳥。

「分かった、汝を従者の束ね役、並びにわれの専属医として雇い入れよう。それでよいか?」

アルカトラスは、ここでサフィに雇い入れることを決めたと言う旨を話し、それでいいかと確認を取る。
サフィは余計な仕事まで労働条件に入れられたなと思いながらも、それでいいわと二つ返事を返した。

「では一応の証明としてこれにサインはしてもらおうか。一応目を通してな」

と言って、アルカトラスが出したのは雇用の取り決めの書類。
書類にはこの城で働く取り決めとして、衣食住は完備、給与は必要に応じての申請してからの支払い制。
その他もろもろ、様々なことが書いてあったが、サフィは何の躊躇もなしにさらっとサインをしてアルカトラスに返した。
そして、その書類にアルカトラスがサインをして、この城で働いている者たちのサインがされた書類が綴じられているファイルにそれを同じく綴じた。

そしてその日から、サフィはセイグリッド城のメイドを含めたすべての従者を束ねる存在となったのだが、真っ先にサフィが行った改革は、従者の組織図の見直しだった。
サフィから見れば、あまりにも効率が悪い組織図だったがために、一度壊して新たに作り直したと言う。
その後も、ちまちまと改革したりして、今のセイグリッド城の従者たちが居るのである。
この他にも、アルカトラスの専属医となったサフィは毎日の健康チェックを欠かさず行い、アルカトラスのアルコール耐性が底なしであると分かった途端に、摂取量の制限を設けたりもした。
そして、働き始めて半年ほどしたのち、サフィはアルカトラスだけではなくシアの専属医も務めるようになり、さらには同期卒のゴルダがアルカトラスの孫であるとも知ったと言う。

そして現在。

「ま、あのころからなんだかんだあってもやっていけるものね」

「これでも大分助かってはいるぞ、とくに健康面ではな」

「あらそう」

サフィはマイペースな従者長として生活している。

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