氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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雪原の狼族2

「…っ、ほう」

どこからともなく注射を出し、自分にそれを投与しながらゴルダもまた様子を見る。
即効性の止血剤が入っていたのか、包帯代わりに撒いていた布から血が垂れなくなった。

「そっちが動かないなら、俺から動くぞ」

流れるような動きでリーダー格のリヴァルスウルフに近寄ったゴルダは、足払いを掛けた。
足払いを掛けられ、バランスを崩したリーダー格のリヴァルスウルフはそのままこける。
そのチャンスを見逃さなかったゴルダは、ナイフを抜くと前足を切りつけた。
常日頃から手入れされているそのナイフは切れ味が良く、前足にざっくりと深い傷を負わせる。

「ギャウン!」

傷がかなり効いたのか、リーダー格のリヴァルスウルフは少々きつそうな様子になるがまだまだやれるという顔をしている。
そして反撃に出た、同じようにこけさせるためにゴルダの足へと噛みついた。
無論、ゴルダは同様にこけたがそれにも冷静に対処する。
まずは頭部にかなり重い一撃と噛まれていない方の足で腹を蹴る。
だがリーダー格のリヴァルスウルフも今度は必死なのだろうか、中々離さない。

「これ以上出血するとまずいな、かくなる上は禁じ手を。イヤーッ!」

何を考えたのか、ゴルダはリーダー格のリヴァルスウルフのある部分に強烈なチョップを叩き込む。
実はゴルダがチョップを叩き込んだ場所は、打撃を与えると気絶するか最悪死に至る場所。
ゴルダはリーダー格のリヴァルスウルフを絶対に殺さないと決めていたので、気絶させて勝負を一気に決めようと考えたのだ。
キャインと悲痛な叫び声をあげ、リーダー格のリヴァルスウルフはそのままのびて動かなくなった。どうやら気絶したらしい。

「…貧血になって来たな」

気絶しているリーダ格のリヴァルスウルフを足から引き離し、一段落するゴルダ。
すると、今の今まで観戦していた一匹が開始の遠吠えとは違うパターンの遠吠えをした。
勝負の結果、挑戦者である自分が勝利したことを示すような遠吠え。
とりあえずはと、どこから消毒液と包帯を出して応急処置を済ませる。
次に、気絶しているリーダー格のリヴァルスウルフの切った前足の傷にも同様に応急処置をした。

「お前達の長は大丈夫だ、気絶しているだけさ」

荷物を持つと、ゴルダは明け方の日の光を受けながら小屋の方へと戻る。
途中、リヴァルスウルフ達が付いてくるかと思われた。
しかし、気絶している長が意識を取り戻すまでは動くまいとしているのか付いてこなかった。

「派手にやってくれやがる、どうやら狂犬病の心配は無いようだな」

消毒液ではない別の薬を傷にかけながらゴルダは言う。
この薬は、昨日瀕死だったあの狼に使ったものと同じ薬。

「やれやれ、少し寝るか」

夜中に起き、決闘と言う名の激しい動きをしたがために寝不足が堪えたゴルダは少し寝ることに。
小屋には簡素ながらベッドが備え付けられているので、床で寝るような真似はしなくて済んだ。
薬をかけた後に包帯を巻き、ウォッカを大量に飲んでベッドへ入る。

「ふう…」

ゴルダは床へ就いてものの数分で熟睡、そのまま昼まで起きなかった。
昼を少し過ぎたころ、どうにも外が騒がしいと感じてゴルダは起床。

「何なんだ全く」

とりあえず持ってきていた保存食にかじりつきながら、ゴルダが窓の外を見ると

「ああ、あいつらか。何しに来たんだ?」

外には、ゴルダが明け方ごろに決闘したリヴァルスウルフの群れと思わしき狼たちがたむろしていた。
特に自分に何をしようと言う気配もないので、食事を終えてゴルダは外へ。

「傷は大丈夫そうだな、良かった良かった」

たむろしていた中で一匹だけ座ってじっと座っていたリヴァルスウルフ、それはゴルダと明け方に決闘をした群れのリーダー格だった。

「こんだけ群れ引き連れて来たって事は、何かあるのか?」

そのリーダー格にゴルダは聞くが、どういう訳か一切動じない状態で座っている。

「おい、どうした?」

リーダー格にゴルダはどうしたと改めて聞くと、リーダー格は突如群れを率いてどこかへ移動を開始。

「ちょっと待て」

もう帰るつもりで居たゴルダは慌てて小屋の暖炉の火を消し、荷物を大急ぎでまとめて持ち出して後を追う。
後を追い始めたのはいいが、リヴァルスウルフたちはかなりの速さで移動するので荷物を持っているゴルダは追うのがやっとだ。
その上、膝のあたりまで積もっている所があり、転びそうにもなるので尚更。

「早すぎるぞ、おい」

それでもなんとか後を追い、たどり着いた場所は氷結晶と水晶岩が所々突き出している神秘的なようでそうではない場所。
若干この場所に染みついていると思わしき獣の臭いを嗅ぎ取り、ゴルダは恐らくここはリヴァルスウルフの集会場所だと思った。
ゴルダは急にメモを取り出し、これまでの出来事を箇条書きで書き連ねた。
あの本を補足する形で話をまとめる、ゴルダはそういう決心で書き連ねる。

「おやおや、でかい群れでのお出迎えか」

気が付くと、周りに先ほどの倍の数、大体数百匹クラスのリヴァルスウルフたちが集まって来ていた。
敵対心は持たれてはいないようだが、大部分からは警戒されている雰囲気が感じ取られた。
どうやら、まだ心底からは認められてはいないようだ。

「よし、お前ら。ちょっと動かないでくれよ、こんな絶景は他にはない」

じっとこちらを見つめて待機しているリヴァルスウルフたちにそう言い、またもやスケッチブックと鉛筆を取り出すゴルダ。
だが、今さっき取り出したスケッチブックはあの時のスケッチブックよりは二回りほど大きい。

「あの本に挿絵らしい挿絵なんてなかったからな」

と呟きながらスケッチしていると、突然今までスケッチしていたリヴァルスウルフたちが、彼らなりのお辞儀の伏せをした。

「ん、どうした?」

スケッチをする手を止めて、後ろを振り向くゴルダ。
そこには、明け方決闘したのとは違う、またさらに上の長の風格を持った普通より三回りは大きいリヴァルスウルフが雪をかぶった氷水晶の上に鎮座していた。
こいつがリヴァルスウルフという族を束ねている長かと思ったゴルダは、両手を前にして自分の名を名乗ると同時にお辞儀する。

「グルゥ…」

しなやかな動きで、族長と思わしきリヴァルスウルフはゴルダの前に降り立つ。
族長が何か言いたそうだと思ったゴルダは、こっそり翻訳魔法を使って族長の言っていることを理解できるようにする。

「既に通達は存じている」

「ああそうかい」

ウォッカとは別に持っていた手のひらサイズのブランデーの瓶を開け、一気に飲み干しつつ族長の目を見ての会話。
ここで、ゴルダは族長の名を聞いていないことを思い出して

「ところで、そちらの名は?俺に名乗らせておいて自分は名乗らないというのは実際の所失礼だと思うが」

族長は一瞬名乗ったはずだがという顔をしたが、すぐに名乗っていないことを思い出して伏せると

「これは失礼、リヴァルスウルフ族長のシェリスと申す」

族長は自らの名をシェリスと名乗った。

「これまたどうも、ではこちらも改めて名乗ろう。ゴルダ=ルエル=アルカトラス」

ゴルダもまた、両手を合わせてお辞儀をする。
ここで、族長ことシェリスが雌っぽい名を持っているのに、その雰囲気が全くしないことに気付いたのでゴルダは

「明らかに性別間違ってる雰囲気だが、やはり族長としての威厳を持つためか?」

シェリスに性別の事を聞いてみた。

「当たり前だ、全部で数万近い同族を束ねるならば威厳は持たなくては」

シェリスは、同族を束ねるならば威厳は必要だと答える。
ゴルダはその返答にそうかと答え、先ほどのスケッチブックを取り出してシェリスに

「もう一回、氷水晶の上に立ってはくれないか?せっかくだから描きたいんでな」

もう一度氷水晶の上へ立つように頼んでみた。
シェリスはフンと軽く鼻を鳴らすと、他の同族に

「もういいお前達、今は下がっていろ」

と下がるよう命令。
すると、シェリスの命令で他のリヴァルスウルフたちはそれぞれの群れのリーダーに引き続いて散開して見えなくなった。

「これでいいか?後ろからずっと見られていては気が散るだろう?…ただし」

シェリスは一旦ここで言葉を区切る。
ゴルダは、シェリスが何が言いたいのかを大方理解したのか

「大丈夫だ、描かせてもらうからには丹精込めてやるから心配するな」

心配するなと言う、それに対してシェリスは

「もし私が満足いかなかったら、その時は分かるな?我々が認めたとはいえ、これとそれとは話が違う」

自分が満足いかなかった場合は覚悟しろと釘を刺す。
そんなプレッシャーにもゴルダは動じず、まあとりあえず氷水晶の上に立てよと言う。
シェリスは言われるがままに再び立ち、威厳のある体勢を取った。

「…」

シェリスがその体勢を取ったところで、ゴルダはスケッチブックに鉛筆を走らせる。
その手付きは手慣れたもので、細かい所まで綺麗に書上げられていく。
描きはじめてから一時間、ゴルダは鉛筆を動かす手を止めた。

「出来たぞ、シェリス」

「どれどれ、見せてみよ」

無表情でシェリスにスケッチブックに描いたその姿を見せるゴルダ。
一目見て満足したのか、シェリスはスケッチブックを前足でポンと叩いて

「いい出来だ、おっと…せっかくだから主に我々の狩りの姿でも見せよう。付いて来い」

いい出来だとゴルダが描いた自分の絵を褒め、狩りの様子を見せてやるから着いて来いと言ってどこかへ走り出す。
また走らされたゴルダはスケッチブックをどこかへ押し込み、その後を追う。

「全員隊を組め、狩りの時間だ!」

シェリスの声と共に、先ほどまで散開して姿を消していたリヴァルスウルフたちが全員合流。
その数は三百匹ほどだろうか、それでも十分に多い。
次の瞬間、シェリスは短く吠えた。すると、数匹のリヴァルスウルフがシェリスの所へ寄って来た。
ゴルダには何を言っているかは理解できなかったが、特定の仲間を呼び出したのだろうと認識。

「---、---、お前たちを中心に五匹ほどで班となって近辺に獲物が居ないか偵察して来い」

「承知しました」

「了解」

これまた、ゴルダには名前の部分は何と言っているか分からなかったがシェリスは仲間に獲物が居ないか偵察して来いと指示。
指示を受けた二匹は、適当に三匹を率いて群れから離脱。
リヴァルスウルフの狩りの状況を、逐一箇条書きで走りながらゴルダは記録。
例の本の補足事項を書くならば、このようなことは記録して後で文に起こさねばならないからだ。
速度を落とさず、走りながらメモをしているとすぐ近くで遠吠えが聞こえた。どうやら獲物を発見したらしい。

「四方向から挟み込むぞ、散開!」

シェリスの命令と共に、四つに分かれたリヴァルスウルフたち。
ゴルダにはすでにターゲットとなった獲物が遠くながら見えていたので分かっていた。
それはこのリヴァルスの雪原にしか生息していないユキシカの群れだ。
ユキシカ怒らせなければ手懐けやすく、野生のを飼い慣らして飼っている者も居る。
だが、怒らせれば相当な暴れん坊っぷりを発揮するので危険。
その群れを全部狩ろうと、シェリスは仲間を指揮しているのだ。一歩間違えれば大変なことになる危険な賭け。
それ故に、族長としての責任は大きい。やるからには慎重にだろう。

「あの者にはここまで見せてはいない、いや…認めた相手に此処まで見せるのは初めてだ。とくと見ていけ、そして記録しろ」

シェリスはそれ以降、口を閉ざして狩りへと全神経を集中させた。
ゴルダもまた、口を閉ざしてメモを取り、狩りの様子を目に焼き付けることに集中する。
それから数分後、シェリスらの群れは一旦足を止めた。
目の前にはユキシカの群れ、その奥にはシェリスらとは別の群れが待機している。
どうやらタイミングを狙って、一気に挟み込む気らしい。

「これぞ野生のハンターと言ったところか」

ゴルダは頭の中でそう呟きながらメモを取る、それでも目の前への集中は途切れさせない。
沈黙が始まって十分ほど、まだ動きはないのかと思っていた矢先。シェリスらが動き出した。

「ようやくか」

遅れを取るまいと、ゴルダも後を追う。
ユキシカ達はシェリスらに気付いていなかったのか、突如として現れたリヴァルスウルフたちに驚いて逃げ出す。
だが、シェリスらは四方から追い込んで逃げ場を塞いで逃げられなくしている。
逃げ場を塞がれ、パニック状態になって半狂乱で走り回るユキシカ。
ある程度追い詰めたところで、シェリスらはユキシカに一斉に飛びかかった。
一斉に飛びかかられ、暴れる余裕すら与えられずにあっという間に仕留められていくユキシカ達。
もちろん、ゴルダはその様子を箇条書きでメモしていくのを忘れない。
無心でユキシカを仕留めていくその姿は、まさに野生の獣そのもの。
知性は高いとはいえ、やはり野生に生きる者。知性的な面ばかりではないのだ。

「これはすごいな」

ようやく口を開いたゴルダは、まだ仕留めている途中のシェリスらへ近寄って状況を記録。
飛びかかって十分ほどで、シェリスらは全てのユキシカを仕留め終えた。

「どうだ、これが我々の狩りだ」

シェリスはゴルダに近寄って来て言う。
ゴルダはああそうだなと言って

「んじゃあ、俺はこれで。また機会があれば会おう」

またお辞儀をしてシェリスに別れを告げる。
シェリスも同様に伏せてお辞儀を返して

「いつでも待っている」

いつでも待っていると言って背を向ける。

「何だかな、やれやれ」

シェリスらと別れて歩くこと三十分、背後から遠吠えが聞こえた。

「あばよ、また来るぜ」

ゴルダはそう呟き、リヴァルスを後にする。
それから数日後、ゴルダはあの本の補足について纏めたが公表することはなかった。
あくまでも、自分のデーターベースとしてであり。それ以上でもそれ以下でもないというのがゴルダの考えだった。
だが、戻って来て一週間ほどしたある日。ゴルダはスケッチブックに描いたシェリスを元に、シェリス自身を木から彫ったという。
リヴァルスウルフと言う存在がどのように映ったのかは、本人にしか分からない。
結局、リヴァルスウルフはあの本に書かれたとおりの存在で平行線を辿る事になるだろう。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

雪原の狼族1

事の始まりは、ある夢だった。
吹雪く雪原のど真ん中で、他の狼どもが固唾を飲んで観戦する中。リーダー格と思わしき奴と対峙する自分。
武器は片方が素手、片方は軍用に作られたものと言われてるが軍用で使うには刃渡りが長すぎるナイフ。
そして、戦いの火蓋はリーダー格の狼の方が動いたことで切って落とされる。
一方の自分は身構え、出方を伺っていた所で目が覚めた。

「…っ、変な夢だ」

竜医関係の本や雑誌、何かの工具と武器で少し散らかっている部屋の中で一人の男が目を覚ます。
男の名はゴルダ、なんの変哲もない竜医と何でも屋を兼業し、少し余裕がある生活をしている。
起きた時間は、いつも起きる時間より早めの午前五時前。

「夢で居た雪原は覚えがある、あれはリヴァルスの領地内で、あそこに生息する狼は…リヴァルスウルフだな」

煙草のようなものに火を付け、ゴルダは机の上に置かれていた「リヴァルスの幻の狼族を追え!」という本を掴む。
この本は、実際にリヴァルスウルフに遭遇した著者の体験談を綴った本。
ふと気になって買った本だが、半分ほど読んだだけで積んでしまっている。

「リヴァルスウルフ、氷竜王国リヴァルスの雪原ほぼ全域を縄張りとし、集結すれば数万規模の群れとなる狼」

ゴルダは最初のページの一文を読むと本を閉じ、机の上へ本を戻す。
本にも書いてあるように、リヴァルスウルフは氷竜王国リヴァルスにしか生息せず、雪原の六割を縄張りとする狼。
非常に知性が発達しており、人に値するものの言語を理解できる他、独自の言語や文字を使うとも言われているが詳細は不明である。
リヴァルスの雪原の六割を縄張りとしているにも関わらず、その姿を見た者はごく一部に限られているのだ。

「一説では、リヴァルスウルフが出てくる夢は奴からの来いと言うお告げとも言われているらしいが。真偽のほどは分からんな」

ゴルダが独り言で言ったように、氷竜王国リヴァルスではリヴァルスウルフが夢に出てきた場合。
それは彼らに呼ばれているという事になるという言い伝えが古くからある。
リヴァルスウルフは、腹を満たす以外では不用意な殺生は極力控えるとされており。獲物以外が縄張りに入った程度では襲われない。
数度の警告の後に、それでも立ち去らない場合は正当防衛で襲うと言われている。
その警告がどのようなものなのかは、先ほどの本にも書かれてはいない。
さらには、普通の狼とは群れとその社会の構成も違っているとされているが、これも詳しいことは分からない。

「行くしかないか、リヴァルスへ。本当に奴らからの来いというお告げならば実際に行って確かめる他ない」

ゴルダは煙草のようなものを吸い終わり、灰皿へ吸い殻を捨てると家へ入って雪原を移動するための準備を始めた。
防寒具を始めとして、数日分の食料と体を温めるためにウォッカなどの強い酒に灼熱石と呼ばれる魔法石の永久カイロ。
その他に狩猟用散弾銃と狙撃銃を荷物に入れるが、ゴルダはこれを使うつもりはなかった。持って行くのは念のためにらしい。
メインとなる武器は、夢で自分が持っていたものと同じ軍用にしては扱いづらいかなり刃渡りが長いナイフ。
それを腰に差し、リヴァルスへ行く準備を終わらせた。

「座標指定テレポートで行くか」

荷物を背負い、朝食に保存食を食べながらゴルダは座標指定テレポートでリヴァルスへ向かった。
氷竜国リヴァルスは、年中雪が降り。この日は若干雪が吹雪いている天候。
見渡す限り白しか見えない雪原の中へワープして来たゴルダは、行く当てもなく移動を開始。
慣れた足取りながらも、積もった雪に足を取られながら雪原の中を移動していくゴルダ。
着いてからしばらく移動した時、ゴルダは何かを発見。

「これは、血と足跡か。まだ新しいな、足跡の形から獣と見て間違いない。鹿だな」

発見したのは、一メートルほどの半径に飛散した血と獣の足跡。
獣の足跡ではあったが、狼のものではなく鹿の足跡とゴルダは判断。
このリヴァルスの雪原にはリヴァルスウルフ以外に雪兎や狐、今さっき発見した足の主である鹿などが生息している。
だがそれだけではない、このリヴァルスには雪の民と呼ばれる大陸歴数百年代の頃から独自の文明で生活している民族が居るという。
もちろん、その雪の民も居ると書かれた文献が存在するだけで誰もその姿を見たことはない。

「防寒具を纏っていても冷えるな」

灼熱石の永久カイロで冷えてきた指先を温めつつ、ゴルダはその足跡を追う。
それからしばらく足跡を追ったところで、足跡は途絶え。代わりに雪に埋もれはじめた血だまりがぽつんとあった。

「…」

その血だまりを無言で調べ、ゴルダはその場を後にした。
いくら灼熱石の永久カイロを持って居ても、こんな雪原のど真ん中でテントも張らずに寝るのはもはや自殺行為。
村か雪原を移動する者の為に作られた無人の小屋か、村と宿を探さないといけない。

「こんなところに無人小屋が、まあいいここを一時的な拠点にしよう」

探し始めて数分もしないうちに、小屋は見つかった。
小屋の戸を開け、中へ入るとゴルダはまず暖炉に火を付けた。
薪が燃えやすかったのか、可燃性の何かが入っていたのかは分からないが暖炉はすぐに燃え上がり、灯りと暖をもたらす。

「ここの座標は…よし、覚えた」

座標探索魔法でこの小屋の座標を調べ、ゴルダはその座標を暗記した。
座標指定テレポートは、この座標が要となるので目的地の座標は暗記しておかなければならないのだ。

「さて、身軽にしたところで再開するか」

狩猟用狙撃銃を予備の弾も持たずに装備し、ナイフを確認したゴルダは暖炉の火を灯したまま小屋を出た。
先ほどよりも吹雪がひどくなっており、あまり長時間は行動できそうにない。

「参ったな---ん?」

ゴルダがPDAに搭載されているGPSで現在地を調べ、座標探索魔法で調べた座標とPDAに表示されている座標を照合している時だった。
どこからともなく、狼のものと分かる遠吠えが聞こえた。
その遠吠えのパターンから、大方の意を予測したゴルダはその遠吠えが聞こえた辺りの方へ足を進める。
吹雪がひどくなってきているために、先ほどより視界は悪化し一メートル先すら見えづらい。
一応竜の血を持ち、その目も持っているゴルダだがそれでも見えづらくなってきてる。

「いかんな、これ以上は視界不良で不意打ちされたらたまらん」

ついには数十センチ先すら見えづらくなってきたため、ゴルダは小屋へ退却することに。
座標指定テレポートで小屋へ戻り、中へ入るとすぐに暖炉に薪を追加する。

「まだ昼か、参ったな。PDAはGPSの電波が入る以外は他の電波が圏外で使い物にならん」

GPS以外の電波が圏外と表示されたPDAをいじりつつ、ウォッカを飲みながら吹雪が収まらないかとぼんやり窓の外を見る。

「何をするか」

他の荷物は食料と狙撃銃と散弾銃の予備の弾くらいしかなく、暇つぶしに使えそうなものはない。
仕方ないので、少し寝ようかと思った瞬間。何者かが小屋の扉に体当たりしたらしく。ドンと鈍い音がした。
何だと思ったゴルダは、散弾銃を手に取って扉を開け放つ。

「おかしい、誰も居ない」

だが、外には誰も居らず。ゴルダは何なんだと扉を閉めようとしたが

「狼…噂のリヴァルスウルフか?だがしかしひどい傷だな」

扉の横に深い傷を負って瀕死の狼が倒れていたので、ゴルダはどうしたもんかと考えた後

「っしょっと」

慎重にその狼を小屋の中へ運んで、どこからか薬などを取り出すと

「あんなところで気付いたら死んでましたなんてのは、俺とて胸糞悪いからな」

ひとまず治療を施してやった。
瀕死の状態ではあったが、それは大したことではない傷が多いせいで衰弱していただけで治療して少し休ませれば回復するレベルだった。
獣医関係の事も大学で学んでいてよかったと思った反面、ゴルダは自然の摂理にこの狼を背かせてしまったことを若干後悔する。
だが、治療してしまったものは仕方がないので回復したら雪原へ帰すつもりで居た。

「何だかな」

治療され、命の危険を脱して寝ている狼を見て、ゴルダはこれまたどこからかスケッチブックと鉛筆を取り出す。
何をするかと思えば、包帯姿のその狼をスケッチし始めた。
それはゴルダが子供の頃からいろんなものをスケッチし続けていたために身に着いた技能。
大学に入ってからは学科で飼われている竜をスケッチしており。
スケッチを必要とする実験や実習は他の学生に重宝されたこともある。

「もうちょっと勇ましい感じでスケッチしたいが、文句は言えん」

一時間ほどスケッチを続け、ゴルダは鉛筆を置く。
少々アレンジしている部分はあるが、その他はそっくりそのまま今そこに寝ている狼と瓜二つ。

「結構きつい薬使ったから一晩で良くはなると思うが、どう説得してどう傷の事を聞きだすかだな」

翻訳呪文を使えば、大方どんな生き物との会話も可能だがゴルダはどう説得してあの傷は誰にやられたと聞くかを考える。
野生の者が相手では、言動に特に注意しなければならない。

「ま、今日中はこいつの看病だな」

またウォッカを飲みつつ、ゴルダはその狼の看病を続けた。


「…おっと、いつの間にか寝てたか」

いつのまにか寝ていたのか、気付けば時刻は午前二時過ぎ。吹雪も収まっているようで小屋の中は物音一つしない。
と、ここでゴルダはあの治療したあの狼が居なくなっていることに気付く。
寝ていたと思わしき場所には、噛み切られて解き捨てられた包帯と爪で引っ掻いた後が床に残っていた。

「これはただの引っ掻き跡じゃないな、文字か?文字と言えばあいつ、リヴァルスウルフだったのか」

文字のようにも見えるその引っ掻き跡を見たゴルダは、あの狼がリヴァルスウルフであると確信した。
だが、追いかける前に残された文字のような引っ掻き跡が何を意味しているのかを調べなければならない。

「翻訳呪文で分かるか…?とりあえず書き写すか」

ゴルダはスケッチブックと鉛筆を再び手に取り、その引っ掻き跡を書き写して翻訳呪文で読めるかを試みる。

「『感謝、またどこかで』という意か」

意が分かったところで、ナイフをチェックして散弾銃を持って小屋を出るゴルダ。
ご丁寧にも、あの狼は小屋を出て行った後に扉を閉めていた。
念の為にと散弾銃に弾を装填し、背負い直すとまるで導かれるかのようにゴルダは一直線にある方向へ向かって歩いて行く。
どれくらい歩いただろうか、やがて夜明けの時間に差し掛かって来た頃。目の前に雪に覆われた森が現れた。
ゴルダはそこへ何の迷いもなく足を踏み入れ、奥へと進んでいく。
森へ入った瞬間から、何かに監視されていると感じたゴルダだが。無視してどんどん奥へと入っていき、ある場所で足を止める。

「獣臭いし血生臭い、辺りには獣骨。ビンゴだな」

ゴルダが居るこの場所、こここそが狼たちの巣であることに間違いは無いようだ。
だが、監視されているように感じるものの。巣の主たちは姿を現さない。

「出てきたらどうだ?ボスでも誰でも」

このまま突っ立っていても仕方ないので、ゴルダが呼びかけるとどこからともなく狼たちが出てきた。
恐らくこれがリヴァルスウルフなのだろう、外見は普通の狼と全く変わらない。

「こいつらが…リヴァルスウルフか、中身が違うだけで外見は普通の狼と変わらんと」

だが、リヴァルスウルフたちは出て行けと威嚇しているわけでもなく。その雰囲気はまるで待っていたと言わんばかりである。
やがて、ゴルダの目の前にいかにも群れのボス格と思える狼が現れる。
ボス格とも思えるリヴァルスウルフが現れた瞬間、回りののリヴァルスウルフたちは急に伏せた。
ゴルダはこれは目上への尊厳だなと思い、自身も両手を前で合わせて軽くお辞儀をする。
軽くお辞儀をした瞬間、ボス格のリヴァルスウルフも伏せをしてお辞儀を返した。
その行為が本当にお辞儀なのか何なのかは分からないが、ゴルダはとりあえずお辞儀と認識する。

「古くより、お前たちが夢に出るイコール呼ばれていると言う言い伝えがリヴァルスにはある」

ボス格のリヴァルスウルフは少しだけ唸った、ゴルダはこれを「ふむ」と言っていると受け取った。

「決闘なら引き受けよう、俺の言っていることは分かるだろう?準備を頼む」

持って来ていた散弾銃から弾を抜いて片付け、銃の入った袋を遠くへ投げ飛ばすとゴルダは腰に差していたナイフを抜く。
ボス格のリヴァルスウルフは、周りの仲間にもっと下がれと言わんばかりに威嚇して下がらせる。

「大丈夫だ、銃なんて卑怯な武器は使わん。使うのはこのナイフくらいだ」

ナイフしか持っていないことをボス格のリヴァルスウルフに示すと、急に近寄って来て腰のあたりを嗅いできた。
何かの臭いを感じたのか、威嚇するように唸られたのでゴルダは

「酒もダメってか?分かった分かった」

腰に下げていた携帯酒瓶を観戦者たちの所へ持って行って置く。
その横には投げ捨てたはずの銃があったので、ゴルダはご丁寧にどうもと呟いて背を向ける。

「さっさと始めたいところだが、決闘とはいえ礼儀は大事だな」

ナイフを一旦戻し、ゴルダがよろしく頼むという意でまたお辞儀をするとボス格のリヴァルスウルフも同じように伏せた。
そして互いに目があった瞬間、観戦していた一匹が遠吠えする。どうやら開始の銅鑼の代わりらしい。

「見た限りほとんど互角、油断はならないな」

ナイフを再び抜いて構え、ゴルダは相手の出方を伺って身構えた。
観戦しているリヴァルスウルフたちは、それを静かに見ている。
誰一匹として動かないのはやはり神聖と言われているこの決闘を邪魔するとケジメを受けるからだろう。

「さあ、どう来る?一気に間合い詰めて噛みついて来るか?」

相手も身構えたまま沈黙しているので、先に仕掛けようかどうかを考えていた時。
リーダー格のリヴァルスウルフが最初に動いた。一気に間合いを詰めて飛びかかろうとしてきたのだ。
ゴルダはそれを見切っていたかのように回避し、軽いパンチを一撃食らわせる。
もちろん、ゴルダはすぐに耐性を立て直して次の攻撃に備える。

「一歩間違えば喉噛み切られたな、危ない危ない」

これはちょっとナイフでの斬撃は難しいと判断したゴルダはナイフを戻し、素手に切り替えた。
ただでさえ狼と言う危険な相手なのに、それに素手で対抗するなど愚かどころでは済まない行為。
だが、半分は人あらざる血が流れているゴルダは油断しなければそれでも十分だ。

「そこだ」

ゴルダは隙をついて即座に飛びかかってリーダ格のリヴァルスウルフを抑え込む。
何をするかと思えば、そのまま腹の真ん中あたりを両手で掴んで半エビぞり状態で後ろへ投げ飛っぱなす。
これはプロレス技の投げっぱなしジャーマンと呼ばれる技で、プロレス技の中では危険技に分類される。
もちろん、ゴルダはリーダー格のリヴァルスウルフを殺さないようにかなり勢いを殺して投げっぱなした。
ギャンとリーダ格のリヴァルスウルフは鳴くが、勢いをかなり殺されてた上に雪がクッションとなってさほどダメージは受けなかった。
投げっぱなした後、ゴルダはすぐに両手を離して横へ転がって距離を取る。

「グワゥ!」

リーダー格のリヴァルスウルフがゴルダに噛みつきにかかる、風のような速さの一撃をゴルダは腕で受け止める。
がっぷりと噛みつかれたその腕からは、血が流れて地面に垂れて雪を赤く染めているがゴルダは動じない。
そのまま牙を食い込ませ、肉を噛み千切ろうとしているリーダ格のリヴァルスウルフをゴルダは蹴りで振り払う。

「やるじゃないか、これだと少し狂犬病が気になるな」

未だに出血している傷口に、布を包帯代わりに巻いたゴルダは来いよと手招きする。
だがリーダ格のリヴァルスウルフは、その手には乗らないと言わんばかりに警戒して様子を見ている。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

花見のようです

三の月、季節は春へと向けて歩み。寒冷な環境から温暖な環境へと変化しつつある。
無論、ドランザニア大陸も例外ではなく。各地で冬が終わり、春が息吹き始めている。

ドランザニア大陸の中で、最も春が来たことが良く分かる事と言えば。光竜王国セイグリッドの万年桜だろう。
この万年桜は、アルカトラスとシアが世界と大陸を創造し、生物が誕生して数か月もしないうちにシアが植えたもの。
桜は、それから毎年のように花を咲かせながら実を実らせて成長していき。今では第二の世界樹と言われるほどの大きさ。
桜の木の根元の周辺には、超小規模ながら村が存在し。アルカトラスが万年桜の管理を一任させているとか。

そんな万年桜は、三千年以上の時を生き延びてもなお、毎年花を咲かせる不思議な存在である。
それもそのはず、生の創造神で管理者のシアが力を僅かながら分け与えているのだから。
見上げると桜色に染められた春のこの万年桜は、大陸百景の一つにもなっている。
また万年桜の根元の周辺は、春には風で散った花びらが根元周辺に積もり。花びらの絨毯を作り上げる。
自然が作り上げたその花びらの絨毯はとても美しく、これもまた大陸百景の一つになるほど。
そのため、その花びらの絨毯を見ようと地球からも観光客がこの時期は毎年多く訪れ。花見客も多い。

「おや、もう桜の時期か」

城の自室で、国務をしているアルカトラスは風に乗って部屋へ入って来た桜の花びらを見てそう呟く。
年度末と言うこともあり、国の予算の決算書類などを作っていたアルカトラスだが。花びらを見てその手を止めた。
春の暖かい風が、窓から吹き込み。アルカトラスの白い体毛をなびかせる。

「あら、仕事はいいのかしら?」

紅茶を淹れて持ってきたサフィは、外を見ているアルカトラスに聞く。

「構わんよ、大方終わっている。後は下の者からの書類が上がってこなければできない仕事だ。急がせてはいるがな」

アルカトラスは、サフィに下から書類が上がってこないと残りの仕事はできないと返す。
その返事に、サフィはそうとだけ返して紅茶を置くとアルカトラスに一礼して座標指定テレポートで部屋から消えた。

「花見、いいかもしれぬな」

窓を背にして、仕事に戻ろうとしながらアルカトラスはぼそりとそう呟いた。

「眩しいわ…」

一方、こちらは塔の頂上で暇を持て余しているシア。
今日は良く晴れた快晴日で、塔の頂上には容赦なく春の日の光が照り付けている。
面倒なあまり、日差し対策をしていなかったシアは、こんなところではのんびりできないと塔を離れる。

「桜でも見てこようかしらね」

ここで、シアはふと自分が数千年前に植えた桜の事を思い出す。
当時、何気ない気持ちで植えたのは良かったが。放置しておくわけにもいかないのでそれからずっと自分の力を使い、密かに管理していた。
とはいえ、それは内面的なものにしか過ぎない。
外面的---直接木の健康状態を見たり、木に登って枝落としをする管理は根元周辺の村の者達が行っている。

「最後に直にあの見に行ったのは、もう千年以上前だわ」

根元周辺の村の者達にも挨拶をして来ようと、塔を離れたシアは万年桜がある場所へと向かった。
万年桜周辺は、遠目で見ても観光客や花見客でごった返していた。
このままだと少々きついかなと思ったシアは、体を数メートル程度にまで縮小させて村の外れへ降り立つ。

「ルシェル(こんにちは)」

降り立った目先で、村人と思わしき者と出会い。シアは挨拶する。
その村人らしき者は、シアに無言で手を合わせておじぎをすると颯爽と去っていく。
創造神は敬い崇めよという考えがまだある事に納得しながら、シアは村の中を散策する。
この村は十程度の家で構成されており、村人は老若男女全員が万年桜を管理するための知識と技術を要している。
そのためにここに住んでいるので、それくらいは当然なのだろう。

「大きいな、私もよくここまで力を使ったな」

やがて、シアは村を離れて万年桜が見上げられる位置にまでやって来た。
風が吹くたびに、普通では考えきれないほどの花びらが舞い。顔にその花びらが触れる。

「大きさは…塔の三分の一、今は横に成長しているわね。もう縦への成長は止まっているようだけど」

歩くたびに爪と爪の間に挟まる花びらを気にしつつも、シアは根元までやって来た。
根の一本当たりの直径は、トンネルの直径に比例するほどの大きさ。
三千年以上の時を生きてきた証でもあり、まさに自然の神秘でもある。

「こう見てると、花見したいわねえ…そうだ、アルカトラスにしないか聞いてみようかしら」

ふと花見がしたいと思ったシアは、アルカトラスにしないか聞いてみようと思って城へと向かう。
同じように、アルカトラスも花見がしたいと思っていたがもちろんシアはそれを知らない。

「こんなものか、後は下から上がってこなければできぬな」

現状で仕上げきれる全ての書類を片付け、アルカトラスは尻尾をパタパタさせながら読みかけだった本を読み始めた。
本来ならば、下に早く書類を上げるように催促しに行くべきではあるが。しつこく催促したところで何も変わらない。
なのでアルカトラスは、あえて何も言わないのだ。

「アルカトラス、今暇かしら?」

唐突に部屋へ入って来たシアに、アルカトラスはノックぐらいして入らぬかと言って読んでいた本から目を離す。

「単刀直入に言うわ、花見がしたいの」

花見がしたいとシアに言われ、アルカトラスは言うとは思っていたとでも言いたげな顔をした。

「明日時間を持て余しているのは、我とお前だけだろう。構わぬぞ」

アルカトラスの返答に、シアはやったと喜ぶ子供のような顔をする。
だが、花見をするにしても準備などの問題はある。それをふと思い出したシアはそれらはどうするかを聞く。

「抜かりはない」

その問いにアルカトラスはそう答え、また本を広げて読書にふける。
そう、と言いたげな顔をしながらシアは部屋を出た。

「花見、ね…ずいぶん時間に余裕がおありのようで?」

紅茶ではなく、緑茶を持ってきたサフィは目を合わせずにアルカトラスに言う。

「しつこく催促しても、逆効果だろうに」

湯呑を持って緑茶を啜りながら、アルカトラスはサフィにそう言い返す。
サフィはそれもそうでしょうけどと言うと

「甘やかしすぎても、ダメだということは頭に入れておいてね」

甘やかしすぎるのもダメだと釘を刺した。
それに対して、アルカトラスはそんなことは分かっているとでも言いたげな表情をした。

そして翌日、やる事が無いので国家予算の決算報告書に計算ミスがないか再確認をしているアルカトラス。
そんなアルカトラスに、ムサヅキが暇を持て余して訪ねてきた。

「ううむ、どうした?」

ムサヅキを片目でちらりと見、決算報告書を置いてアルカトラスは聞く。

「暇、それだけのことだが」

暇と言ったムサヅキに、アルカトラスは万年桜でも見に行かぬかと聞く。

「花見ならば酒があればよいが、最近飲んでないのでな」

酒と聞いて、アルカトラスはサフィを呼び出す。
もう何を言われるのか分かっていたサフィは、飲み過ぎは厳禁と言って地下倉庫の酒樽を二つ持ち出すことを許可。
アルカトラスが何かの拍子に飲みすぎたりしないよう、サフィによって酒の管理は厳重にされている。

「シアはどうしたのかしらね、朝食以降見ていないけど」

いつの間にか酒樽を二つ持ち出してきたサフィは一緒に行くんじゃなかったのと聞く。
アルカトラスは、先に行ったのだろうと言ってムサヅキと万年桜へと向かう。
万年桜の周りは、今日も花びらの絨毯が敷き詰められており。幻想的とも取れる雰囲気を醸し出している。

花見のようです…の続きを読む

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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