氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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聖竜とエルフと半竜半吸血鬼と

光竜王国セイグリッド、ドランザニア民主共和国からはるか北西にある、この国を治めるは白い体毛に青い目を持つ竜。
名はアルカトラス、世界を滅ぼすなど朝飯前な力を持つがいつもは抑えている。
そんなアルカトラスが、今日はなぜか暇を持て余していた。

「ふむ、せっかくだからあやつらを呼んでみるか」

アルカトラスは自室へ行き、何やら魔法を使った。
その頃、ドランザニアの東南沖合に位置する島国。聖リフィル王国では黒髪に緑の目のエルフが従者と茶を楽しんでいた。
名はアルガティア、これでも王位継承者にして現国王。おっとりとした性格で口数は少ないが民からは信頼されている。
そして、アルガティアがクッキーを取ろうとした瞬間。本人は消えてしまう。
しかし従者達は動じない、どうせまたセイグリッド国王のアルカトラスの仕業だろうと分かっていたからだ。

そして、こちらはドランザニアの山岳部にある屋敷。
そこに1人の半竜半吸血鬼が住んでいた、姿は紫の髪に赤い目にメイド服。名はサフィ。
特に何をする訳でもなく、外を見ながらくつろいでいたがこれまたいきなり消えた。

「ふむ、来たな」

面食らった顔で現れた2人を見て、アルカトラスは従者に用意をさせる。
しばらく向き合っていた2人だが、サフィがナイフの手入れを始めたのでアルガティアは何やらメモ帳らしきものを広げて何かを書きだす。
2人は会うたびにこの調子である。折り合いが付かない訳ではないが、性格的な問題だろう。
もちろん、話す時は話すが。話す時とそうでない時の温度差がやはり激しい。
かつて共闘したことがあるらしいが、その時の強さはのちに語り継がれるほどだったとか。

「またか、やれやれ…」

また互いに見向きもしない状況になっているのを見て、アルカトラスは少し呆れた様子で言う。

「ほら、飲むといい」

従者が持って来た茶と菓子を出してアルカトラスは言う。
しかし、一口茶に手を付けた所でサフィが

「煮出した湯の温度が低い、味がおかしくなってる」

と従者が入れて来た茶に文句を付ける、アルガティアもそれを聞いてゆっくりと頷く。
2人ともこういうのに関しては玄人なので従者は反論できない。
ましてや、メイドの知識と技術を持ったサフィに言われては。反論する事を考えることから許されない。

「まあいいわ、淹れ直すのも勿体ないし。そこらにあるような普通の値段の奴ならまだしも、最高級品の煮出し温度を間違えたらダメよ?」

菓子には何も言わずに食べながらサフィは言う。
サフィにそう言われた従者は頭を下げ、その場を離れる。
そして、再び沈黙が流れる。

「…最近、調子はどうだ?」

このままではいかんと、アルカトラスは2人に話題を振り。あえて互いに会話をさせるよう促す。
サフィはオレンジの皮をナイフでむきながらアルカトラスとアルガティアを見て

「特には何も、いたって普通」

と言うと、むいたオレンジを2人に投げてよこす。
アルガティアはそれを魔法で受け止め、口へ放り込む。
アルカトラスは口でそのまま受け止めて食べた。

「私は少し忙しい、賢者の竜の里とある話がまとまらない」

オレンジを食べ終えたアルガティアはそう呟き、紅茶に手を付ける。
それを聞いたサフィはふうんという顔をして

「あいつら、頑固なの多いからね。全部が全部じゃないけど」

賢者の竜には頑固者が多いと言う。
アルガティアはそれに頷き

「うん、長老とかそのレベルになると簡単に考えを曲げたりしないからちょっと厄介」

口内に残るオレンジの風味と味で紅茶の味がおかしくなり、少し渋い顔をしながら言うと

「ところで、あなたは?」

アルカトラスにも同じ話題を振る。
自分にその話題が振られると思っていなかったアルカトラスは慌てた様子で

「この数週間はかなり忙しかった、毎日のように異世界の国々へ回っていたからな。特に数日前に行った日本は…」

回った出先で起きた出来事を色々と2人へ話す。
そんな中日本に反応したのか、サフィが

「ああ、日本ね…最近大変らしいわね。数日前にメイドの関係で行って帰って来たばっかりだけど」

と言いだす。
アルガティアはそれを興味深そうに聞きながら

「最近何かと薬草類の注文が多いのよね」

とだけ言う。
そして、そんなこんなで数時間が経った。

「少し外にでも行こうか?」

アルカトラスに聞かれ、2人は頷く。
ふっさりしたアルカトラスの背へアルガティアはよじ登り、サフィはジャンプで飛び乗る。
もっとも、こんな事が出来るのは吸血鬼の血による異常な身体能力のせいだろう。

「まあ、適当に行こうか」

あまり速くない速度で飛び上がり、アルカトラスは言う。
こうして、3人がやって来たのは氷竜国リヴァルスとの国境の境目にある山のふもと。
夏ではあるが、容赦なく北風が吹きこんで来てこの場所は寒い。

「寒い…」

至って平気な様子のサフィを見て、アルガティアはアルカトラスの体毛へ隠れる。
それ系統の呪文は使えるはずだが、なぜか使おうとしない。
それを見かねたアルカトラスは、自分の胸元へアルガティアを持って来て防寒呪文を使った。

「本当にここだけは雪積もるね、夏でもお構いなしに」

武器もろくに構えずに辺りを歩き回るサフィを、アルガティアは遠目に見ている。
そして、どこからか狼が現れた。
サフィとアルカトラスにはには全く警戒していなかったが、アルガティアに対しては少し警戒する素振りを見せる。

「…?」

首のあたりを掻いているアルカトラスの前で、アルガティアはどこからともなく笛を取りだす。
その笛は、アルガティアがまだ王位を受け継ぐ前に行く宛のない旅をしていた竜人からもらったものだ。
笛を構えて静かに吹き始めると、警戒していた狼たちが嘘のように警戒を解いて近寄って来た。
ちなみに、今アルガティアが吹いているのはあらゆる者の心を落ち着かせる唄。
大抵の者はこれを聞いただけで、争いなどをあっという間に止めてしまうと言われている。
アルガティアが吹き終えると、狼たちは懐いた犬のように尻尾を振ってアルガティアの前に座っている。

「ほう、その唄を知っているとは」

アルカトラスが興味深々に聞いて来る、サフィは狼たちとどこかへ行ってしまって見当たらない。
アルガティアはその問いに頷いて答える。

「懐かしい唄だ」

アルカトラスに前足で頭を撫でられ、雪が髪に付いたがアルガティアは気にしない。
そして、アルカトラスの前足に雪が付いてるのにアルガティアは気付いて落とし、前足の毛を見て短剣を出し

「手入れ、してあげる」

と言って前足を出させた。
その頃、サフィはと言うと狼と別れて1人で周辺で野草を探している。
この辺は雪に埋もれている以外と使える野草が自生しているのでそれを探しているのだ。

「ああ、あったわ。これこれ」

採取用のナイフを使って、器用にサフィは採取して行く。
この時、後ろから何かが近付いているのにサフィは気付いていたがあえて気付かないふりをする。
そしてその何かが背後を取ろうと構えた瞬間、その何かの額にナイフが刺さった。

「馬鹿め」

雪蛇と呼ばれる、リヴァルスとその周辺にしか住んでない蛇の屍を引っ掴み。サフィはその場を離れる。
ちなみに、この雪蛇は薬の材料にもなるが。食用として食べてもおいしいらしい。

「この辺りはあまりいじってなかったからな、伸び放題だ」

前足の肉球の間からもっさりと伸びた体毛を剃ってもらいながらアルカトラスは言う。
他はかなり目につくので従者にやってもらっていたが、この部分は全くと言っていいほどいじっていない。
アルガティアが剃り終える頃には綺麗に整えられていた。

「ん、降ってきたか。これはいかんな」

ちらりちらりと降って来た雪を見て、アルカトラスは呟く。
雪は段々降る量が多くなり、そろそろこれはまずいとアルガティアを前足の間へ入れてサフィが戻るのを待つ。
大雪になって来た頃、サフィは白い蛇の屍をいくつも持って帰って来た。

「よし、帰るぞ」

2人を乗せてアルカトラスはセイグリッドへ戻る。
戻った後、サフィは城の台所を無理矢理借りて雪蛇の皮を剥いだりし。最後は身を蒲焼にしてアルカトラスとアルガティアの所へ持って行く。
アルガティアは何これと言う顔で雪蛇の蒲焼を見ていたが、それも最初だけですぐに気にせずに食べ始める。
アルカトラスには小さすぎるのか、ほんの数秒で平らげた。

「なかなかおいしいわ」

「雪蛇は蒲焼がおいしいのよ」

2人の会話を聞きつつ、アルカトラスは従者から渡された書類に目を通す。

「あら、もうこんな時間。帰るわ」

アルガティアはそう言って、転移呪文で帰ってしまう。
サフィもまた

「じゃあね、楽しかったわ」

と言って帰った。
2人が帰った後、アルカトラスはやれやれと呟いてその日は寝てしまう。

「何だ、海へ?」

翌日、訪ねて来た2人に海へ行かないかと聞かれ。アルカトラスは少し考える。
今日も特に忙しい訳ではないので、アルカトラスはすぐにいいと返事を返す。
そして、3人がやって来たのはドランザニアの南部にある人気のない海岸。
遊泳が禁止されていたり、軍の基地に属している訳ではないが。誰も居ない。

「ふむ、久々に…」

アルカトラスはどこからともなく竿を取り出して岩場へ向かう。
後ろ足の肉球は大丈夫なのかと言うのは、気にしてはいけない。

「この辺でいいな」

仕掛けを投げ、竿を岩の隙間へ押し込んで掛かるのを待つ。
その頃2人はと言うと、サフィは必死に火を起こし。アルガティアは海へ潜っている。
意地でも魔法で火を起こさず、原始的な方法などでサフィは火を起こす気のようだ。
何故そんな事にこだわるのかは不明ではあるが。

「ふう、やっと燃え始めた」

サフィは大きく燃えている焚火を見て言う。
そうしている内にアルガティアがひょっこりと海から上がって来た。
貝類などだごっそり入った網袋を渡して、アルガティアはその場で雨雲を出して潮を洗い流した。

「とりあえず、焼く準備するわ」

そして、サフィが焼く準備をする一方でアルカトラスはと言うと

「大漁だな」

と言って、そろそろ竿を片付けようとした瞬間。
強烈な引きが竿を襲い、海へそのまま引き込まれそうになる。

「いかんいかん」

アルカトラスは慌てて竿を掴む。
それでしっかりと針が掛かったのか、それはさらに暴れ。竿を海へ引きずり込もうとする。
魔法などは使わずに、己の純粋な力で釣り上げようと岩場で踏ん張る。

「あーあ、まだかしら。もう下ごしらえ終わったのに」

下ごしらえを終え、アルカトラスが戻るのを待ちながらサフィは言う。
アルガティアが取って来た貝などはすべてすぐに焼けるようにされている。
岩場の方へ行った事だけは分かっているが。

「ちょっと行ってくるわ」

アルガティアにそう言って、サフィは岩場の方へ行く。
そこでは、アルカトラスが掛かった獲物と格闘していた。
竿を引きつ引かれつ、糸がなぜ切れないのかが不思議でたまらないサフィだが

「かなり手厳しそうね」

アルカトラスは竿に集中していて聞く耳を貸さない。
これはどうしようかと考えていたサフィだが、急に思いついたようにアルカトラスを背後から掴んで力を貸す。
それに一応気付いたアルカトラスだが、少しでも気を抜くと竿を持って行かれそうなので気付いてないふりをする。

「ちっ、なんて引きなの」

一向に釣り上げられない獲物に、サフィは魔法でも使おうかとするがアルカトラスから余計なことをするなと言う無言の圧力を感じて断念する。
そしてそれから30分後、一人ぽつりと取りのこされたアルガティアは1人で椅子に腰かけ。紅茶を飲みながら海を眺めていた。
特に荒れた様子も無く、穏やかな海。ただし日光は容赦なく照り付ける。

「…」

時々焚火に木の枝を入れ、火が消えないようにし。紅茶を飲む。
しかし、それも次第に退屈になって来た。
もう一度潜ろうかとも思ったが、面倒な上疲れる。

「うーん」

外出時にしか着けない、動きやすい服が潮風になびく。
いつもはローブなどを纏い。国王としての威厳を現していたのだが、アルガティアはその服装はあまり好きではない。
国王と言う型枠にとらわれず、民と仲良くやって行きたいと言うのが本音である。

「遅い」

ついに痺れを切らしたアルガティアは岩場の方へと向かう。
そこでアルガティアが見たのは、掛かった獲物と格闘する2人の姿だった。
それを見て完全に呆れたアルガティアは、海の上を歩けるようにして岩場から海へ入り糸を引っ掴むと一気に引っ張り上げた。

「アサセマグロか、それもかなりでかい」

岩場へと叩きつけられる前にアサセマグロを受け止めてアルカトラスは言う。
ようやく釣り上げたと、サフィは胸をなでおろした。

「さて、持って帰って調理しようか」

「それはそうと、貝とかがもう焼ける状態なんだけど」

元の場所へ戻って来て、サフィが下ごしらえを済ませた貝などを指して言う。
それを見たアルカトラスは、では焼こうと悠長なことを言った。
どの道さっさと焼いて食べるつもりだったので、サフィは何も言わずに焼い3人で食べて帰った。

「さて、私の出番ね」

またもや城の厨房を無理矢理借りてアサセマグロをさばき、次々と料理していく。
とりあえず従者全員にも行き渡るようにメニューを考え、盛り付ける。
セイグリッド城に居る従者はさほど多くはない。
しかしそれでも数十人は居るので、注意が必要。

「こんなところかしら」

盛り付け終わった食事を見て、サフィは言う。
時期が時期で帰省などであまり従者は居ないが、なんとか夕食に出る全員に行き渡った。
味は好評、アルカトラスもアルガティアもおいしいと言ってくれた。
そして食事を終え、晩酌でもしようとアルカトラスの部屋で3人は集って飲んでいたのだが

「えへへ」

弱めのを少し飲んだだけで、様子がおかしくなったアルガティアを落ち着かせるのに少し時間がかかった。
実はアルガティア、酒乱かつある意味酒に弱いと言う体質持ち。
2人はそれを忘れて飲ませてしまっていたのだ。

「危なかったな」

「ええ」

互いにワイングラスを取り、魂でも抜けたかのような状態のアルガティアを見ながら2人は月を眺めつつワインに口を付ける。
しかし、そんなアルガティアも数分後には復活して紅茶をたしなみ始める。

「いい月ね」

「月見酒というのも、また味なものだ」

サフィにワインを注いでもらいながらアルカトラスは言う。
そして、アルガティアが居ないのに気付いた2人だが。アルカトラスの頭の上にちょこんと座っているのに気付く。
何食わぬ顔で紅茶を飲むアルガティアを見てサフィは

「そんな所好むなんて、本当に不思議」

と言う。
アルガティアはそれに対して

「落ち着くもの」

と答える。
それを聞いたアルカトラスとサフィは、笑った。
からかうようではなく、そうかそうかとでも言うような笑い方。
この3人の関係が、今後も崩れることはないだろう。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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