氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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マキュっと変身

それは、何気無くルライエッタがアルガティアの所へ来たのが始まりだった。
この日はなぜか、ルライエッタは携帯を持って来ており。何かのアプリを起動してアルガティアに見せびらかしていた。

「あら、かわいい」

晩秋の昼下がり。
ルライエッタに携帯の画面を見せびらかせられつつ、緑茶を啜っていたアルガティアはそう呟く。
見せびらかせられていたのは、いわゆるパズドラというゲームの画面で、水属性のカーバンクルであるマーキュライトカーバンクルが表示されている。
モンスターの実在もへったくれもないドランザニアで、このようなゲームを目につける者はよっぽどの物好きくらいだろう。
それを見てかわいいというアルガティアもたいそうな物好きだろうが。

「なんでまた見せたの?」

ズズズと緑茶を啜り、おやつの饅頭を手に取りながらアルガティアはルライエッタに聞く。
それを聞かれたルライエッタは何やら怪しいタブレットを取り出す。
そのタブレットは青々としていて、何なんだこれはと言いたくなるレベルだ。

「なんか色々試した末にできたマーキュライトカーバンクルになる薬だ」

「ふうん、それでどうしてそんなものを作ったの?」

「いや、それは」

どうやって作ったかを聞く前に、アルガティアはルライエッタにどうして作ったのかを聞く。
この問いにルライエッタはすぐには理由を言えず、黙り込む。
ルライエッタが考えている間に、アルガティアはそのタブレットをルライエッタから取り上げる。

「賢竜って、時々わけのわからないものを作るわよねえ」

そう言ったかと思えば、アルガティアは注ぎ足した緑茶と共にそのタブレットを一つ服用してしまう。
これには、考えていたルライエッタも目玉が飛び出しかねないほどに驚いた顔をして

「本当に飲んでしまったのか?」

とアルガティアに聞いた。
それにアルガティアは軽く頷き、また緑茶を啜りながら饅頭を食べ始める。
特に変化がないので、ルライエッタはなんだ失敗作かとほっとした。
だが実際は、効果が現れるのが遅かっただけで、失敗作ではなかったことにルライエッタは気づかずに帰ってしまった。

それは、夕食後にアルガティアが風呂を浴びて部屋へ戻って来た時だった。
バスローブ姿から寝巻きへ着替えようとそれを脱ぐと

「毛?」

はらりとバスローブの中から水色の毛が落ちたので、アルガティアはそれを拾い上げてじっと見つめる。
それは、マーキュライトカーバンクルの水色の毛と酷似しているようにも思えるものであったが、アルガティアはさほど気にせずに寝巻きに着替え、机に腰掛けて読みかけの呪文書を開く。
だがそれも、妙な額の違和感で中断せざるを得なくなる。
なんだろうかと、手で触れてみれば何か硬いものがへばりついていた。
それは、引っ張って取れるようなものではなかったのでアルガティアはほったらかしてさっさと寝ようとベッドへ入る。
だが、体がムズムズする感覚がして寝ようにも寝れない。
どうしようと考えている間に、次第にアルガティアの体が白と水色の毛で覆われてきた。
普通、体にこのような変化が起きれば大抵の者は動揺するのだが、アルガティアは動揺するどころかむしろ受け入れているようにも見える。

「んー、今さら?」

アルガティアは薬の効果に若干不満を持ちながらも、自分がマーキュライトカーバンクルになりつつあることに何の動揺も葛藤も抱かず、事なかれでどうにでもなれ状態。
今や、アルガティアの体は八割方マーキュライトカーバンクルの体そのものへと変化してきている。
特徴的な尻尾も生え、耳も瓜二つなものへと変化し、原型が残っているのはその顔つきと手足に目くらいだろう。

「意外とかわいい、かも?」

九割方変化した辺りで、アルガティアは鏡でほぼ完全にマーキュライトカーバンクルとなった自分の姿を見て、多少ながらうっとりした気分になった。
もとより、記憶にある者へ変身できる能力と魔法を取得してはいるものの、滅多に使わない上にそのバリエーションは両手で数える程。
しかも、全て自分が望んでいるものではないのだ。
だが、今回は違う。
自分がかわいいと思い、内心なれるものならなりたいという姿になれたので文句はない。
その上、戻れなくともいいと思っているのもポイントであると同時に問題でもある。

「胸もいい感じ、少し大きいけど」

なんとも言えない事を言っている間に、手足と目も完全にマーキュライトカーバンクルそのものへと変化し、アルガティアはそのものとなった。

「もっふもっふ」

自分の耳を触りながらベッドへ入り、アルガティアはすやすやと寝息を立てて就寝した。

その翌朝、寝室がやけに騒がしいので何だろうと思いながら起きると従者がアルガティアの姿を見て

「アイエエエ!?陛下のお姿変わってるナンデ!?」

と絶叫していた。
アルガティアはその絶叫に目もくれず、いつものように着替えようとクローゼットの方へ歩いて行き、正装ローブを着る。
この姿になっても、元の姿と服のサイズは変わってはいなかった。

「でも、少し胸がきついわね」

変わっているといえば、バストのサイズくらいだ。
それでも、着れないことはない。
相変わらず従者たちはアルガティアの変わった姿に絶叫しているが、気にすら留めず大広間へ向かう。

「姉さんったらまた」

「今度のは気に入った」

妹のイレーヌとそんな会話を交わしつつ座るアルガティアだが、従者たちは目を点にしてじっと見ている。
無論、アルガティアは数ミリも気にかけていない。

「今回は簡単には戻らないから」

「むぅ」

従者にじっと見られたまま、朝食の時間は過ぎていった。
やがて国務の時間が訪れた。
マーキュライトカーバンクルの姿になっても物書きをするには支障はないようで、黙々とこなす姿が見られる。
従者もようやく落ち着いたのか、じっと見ることもなくなった。

「ああ、こんなことになってたか」

しばらく国務をしていると、ルライエッタがやって来てやっぱりかという顔をした。
アルガティアはこの姿には満足していると目線で言うと、また国務へ戻る。

「アルガティア、ちょいと重要な話がある。あの薬な、一度使うと普通には元に戻れないことが分かった」

アルガティアはそれで?という顔をし、額の宝石をポリポリと掻く。
普通には元の姿に戻れないと言われたにも関わらず、随分と悠長な様子だ。
それもそのはず、アルガティアはこの姿に満足しているからだ。

「あー、もういい」

アルガティアの態度にルライエッタは、もういいと呆れた様子で背を向けると去って行った。
それに対しアルガティアは鼻歌を歌いながらなおも黙々と書類の処理を続けていた。

やがて国務もひと段落したので、ふわふわと浮遊しながら城の中を徘徊していると、イレーヌとエゼラルドに遭遇。
姿は変われど中身は変わらずとでも言うのだろうか、マーキュライトカーバンクルの姿のアルガティアを見ても、エゼラルドは

「また?」

と一言だけ聞いて同属性ならよかったのにと付け足す。
アルガティアはそれに頷き、エゼラルドの頭を軽く撫でて池の方へ向かう。

「うん、やっぱりかわいい」

池の水面に映る自分の姿にまたもやうっとりするアルガティア。
アルガティアがこんな一面を見せるのは、そうそうないことだ。

時間は過ぎて、夕方。
晩秋ということもあり、夕方は多少ながら肌寒い。
いつの間にかうとうとして寝ていたのか、アルガティアがハッと目を覚ますとそばでエゼラルドとイレーヌもぐっすりと寝ていた。
それを見たアルガティアはなぜかクスッと笑って二人を起こす。

「ん、おはようアル」

「寝ちゃってたわ」

二人を起こしたアルガティアは、どこからともなく箒を取り出し、地球でよくイメージされる魔女のようにそれに跨ると、イレーヌをその後ろに乗せる。

「まさか箒で飛ぶつもり?」

「そうよ」

箒で飛ぶのかとイレーヌに聞かれたアルガティアはそうよと即答。
これには、アルガティアをよく知っているイレーヌですらもぽかんとせざるを得なかった。
だが、乗せられたからには拒否するつもりもなく、イレーヌは黙ってアルガティアの後ろに乗ったままだ。

アルガティアは軽くイレーヌにウィンクし、そのまま箒で空へ飛び立つ。
秋の夕方の少し冷たい空気が、二人の肌を叩く。
エゼラルドは、その後ろから少し間をあけてついてきている。
受ける風の量などは、エゼラルドに乗って飛んでいるときとさほど変わらないが、安全面ではそうでもなかった。
なぜなら、箒から落ちれば地面へ一直線だからだ。
だが、その危険性を拭い去るかのように、アルガティアの箒さばきは上々であった。
絶妙なバランスを取り、イレーヌが落ちることがないようにしている。
数分ほど飛んだところで、アルガティアは静止の状態を取って、奥ゆかしく何も語らずに空の向こうを指差す。

「あ、日の入り」

「近くで見るともっときれい」

「でも眩しいよ」

アルガティアたちは、そんな会話をしながら日の入りの鑑賞を愉しんだ。

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

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