氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

狐少女と狼少女とゴルダ

今、ゴルダの目の前には狐と狼の亜人族の少女が何かを期待するかのような目線を投げかけている。
この2人はゴルダがとある理由で保護し、この世界の出身ではないことと狐のほうがりりで狼のほうがるるという
名前であることしか分からない。

「参ったな」

ゴルダは街中でそれぞれの髪の色に合わせたへそ出しの服装の少女らの目の前で思慮にふける。
保護した時の状態が状態だったので最初は2人ともゴルダを警戒していたものの、
危害を加える相手ではないと判断したのかりりのほうは警戒を解いてくれたが、
るるだけはゴルダに牙を見せて威嚇するなどまだ警戒を解いてくれない。

ちなみに、この世界で相手に牙を見せるというのは喧嘩を売っているという意思表示になるのだが
ゴルダはそんなことは全く気にも留めない。
むしろ気にするのはならず者を含めたガラの悪い連中ばかりである。

「そういえばお兄さんの名前聞いてないよ?酷いことしないなら教えてほしいな」

りりにお兄さんと呼ばれてゴルダは複雑な気分になった。
なぜならばゴルダの実年齢は200代、とてもお兄さんと呼べる年ではないのである。
それだけ若く見られているということかと思いながらも、りりに一言だけ

「ゴルダ」

と自らの名を名乗った。
りりはその名前を聞いてこう返す。

「かっこいい名前だね!」

一方るるはゴルダとりりが普通に会話をしているのを見て、
何か言いたげな
視線を投げかけていたがゴルダはそれに気づかず

「移動しよう。ここではちょっと話がしにくい」

りりとるるに場所を移動しようと言い、ついて来るよう促す。
るるはそんなゴルダを睨みつけながらもりりと共について行く。

「いらっしゃい、ずいぶん長い間来てくれなかったじゃないの」

「こっちもいろいろある。それくらい汲み取ってくれ」

さすがにいつものカフェではダメと判断したのだろうか、
やって来たのはシャールイズの経営するカフェYrizer(イェリゼラ)。
このカフェならばゴルダを狙う輩が来てもシャールイズが潰してくれるのでまず問題はないといったところか。
欠点としては店内が最小限の照明しかなく暗いところだろう。

「小さいお客さんね」

シャールイズがりりとるるを見てニヤリと笑いながら言う。
ゴルダは手を出すんじゃねえぞという目でシャールイズを見て適当に注文。

「いいわ、ごゆっくり」

注文を聞いたシャールイズは店の入り口の表記を閉店に変え、
誰の邪魔も入らないようにしたうえで店の奥へと消える。
なぜシャールイズがこうしたのかというと、
ゴルダがした注文の中に

「誰の邪魔も入らないようにしてくれ」

という意味合いの注文が紛れていたからである。

「るる、そんなに拗ねるな。だが今から大事な話するから耳だけは貸してほしい」

しゃべろうともせずそっぽを向いたままのるるにゴルダはそう言って、
2人をこの後どうするかを話す。

「このまま俺が面倒を見るのもいいんだが、元の世界へ帰す方法も模索しなければならない」

だがしかし、それを聞いたとたんにりりが

「こっちでゴルダと暮らすの!絶対離れないもん」

ゴルダと暮らすなどとと言い出し、出身世界へは帰らない宣言をする。
それを聞いていたるるも

「りりが言うなら私も同じ。元の世界へは絶対に帰らない」

りりが言うなら自分も帰らないと断言。
それを聞いたゴルダは片手で頭を抱えてどうすんだ俺と言わんばかりの顔をする。

「ゴルダが助けたせいだね。りりは完全に懐いてるし、るるもほんの少しだけ信用してる」

クェムリーヴェスが割り入って言った一言に、ゴルダはさらに頭を抱えることになった。
さらにそこへ魔力切れ後に敵の援軍と(訳注「泣きっ面に蜂」)言わんばかりにメルムーアが

「ゴルダちゃん、その子たちについてだけど元の世界へ帰す術が今のところないわ。詳しくはこっちへ来た時に」

などと言ったがためにゴルダはシャールイズが運んできたコーヒーを一気飲み。
それが淹れたてのホットコーヒーだとすぐに気付いて

「あちっ」

となった。

ちなみにここで、りりとるるがどうやってゴルダと出会ったのかというと
たまたま依頼を終えて帰路に就こうとしていたゴルダの目に、
異界から迷い込んだものを拉致するなどして人身売買などを行う輩が
2人の少女に拘束具をつけてどこかへ連れて行こうとしていたのが目に留まり、
手裏剣投擲からのデザートイーグル発砲でその輩を撃退。
そのまま保護したのだ。

「いまさら1人や2人同居人が増えたところでなんともないではあるが」

頭の中でそう呟きながら2杯目のコーヒーを片手にりりとるるに、
そんなに離れたくないならば無理に引き離すのも慈悲が無さすぎるので、
しばらくは自分のところに住むように話す。

「あとりりはもう呼び捨てにしていたが、るるも基本的に俺のことは呼び捨てでいい。俺はさん付けされるのは複雑な気分になる」

自分のことは呼び捨てにしろと言われたるるは何で?という顔をしたが
ゴルダがしろと言っているならばしたほうがいいのではと思いながら

「よ、よろしく。ゴルダ」

少しかしこまり気味になりながらよろしくと言う。
ゴルダもそれに答えるかのように

「こちらこそ、りり共々な」

このやり取りからゴルダはりりが素直、るるがあまり素直ではない性格だと判断。
しかしゴルダにとっては素直でないのは大した問題ではない。
るるの性格よりも厄介で付き合い難いものと何度も依頼で関わってきているからだ。

「これおまけ、2人とも食べなさい」

そう言ってシャールイズが出したのはレアチーズタルトだがそうには見えないケーキ。
りりとるるはそれに何の迷いもなく食いつき、食べる。
ゴルダはシャールイズになぜまたと聞いたがシャールイズはそれ以上聞いたら噛むわよと言いたげな
目線を投げかけるだけ。

「やはりお前の考えていることは分からんな」

煙草のようなものを吸おうとしてりりとるるが居ることに気づいて片付けながら
ゴルダはおいしそうにケーキを食べる2人を眺めていた。

その後、Yrizer(イェリゼラ)を出て帰宅したゴルダ。
すでにミリシェンスへはメルムーアから話が通っていたらしく、
特に何も言われることは無かったが

「りり、るる。先にお風呂入りなさい。準備はしてるから」

先に風呂に入れとだけは告げて台所へ。
一方マティルーネはるるに若干の興味を示し、
ルァクルはまた同居人が増えるのかとだけ呟き。
レルヴィンはるるに近寄って匂いを嗅ぎ、自分と同じ匂いがするとゴルダに言う。
それ以外にもレルヴィンは何か言っていたが、ゴルダには自分と同じ匂いがする以外は訳せなかった。
なお、ヘフィアは所用でアストライズへ行っていて今日は居ない。

「おいおい、服はどうするんだ」

りりとるるが風呂に入っている間、ゴルダはミリシェンスに着替えをどうするのかと聞く。
するとミリシェンスは聖竜布の服を取り出した。
半袖と半ズボン1組で真っ白、サイズがだいぶ大きいが聖竜布の特性で着用者に合わせて変化するので
これと言って問題はない。
だが、この貴重というレベルを超えた聖竜布の服を2組もどこから持ってきたのかは謎のまま。

「ああ、メルムーアが魔法で投げてよこしたのか」

ゴルダはこの服をよこした主がメルムーアで間違いないと思いながら外へ出て一服。
どれくらい時間がたったかわからないが、吸い終わって家の中へ戻ってくるとミリシェンスに

「あなたも入ってきなさい、りりとるるはもう上がったわ」

そう言うミリシェンスの目線の先にはマリオパーティをするりりとるるの姿が。
ゴルダは分かったと返し、風呂場へ。
湯に入る気はなかったのでシャワーだけを済ませて上がってきたゴルダにりりとるるが

「ゴルダ、マリオパーティしよ?」

マリオパーティをしようと誘ってきたので3人でやることに。
その後はミリシェンスの作った夕食を食べ、
ゆっくりしているとゴルダはいつの間にか寝ていた上にカーバンクルの姿へ変身していた。

「あれ、このもふもふ誰?」

「誰だろ?」

目を開けるとりりとるるが自分を不思議そうに見ていたので

「ゴルダだが?」

自分であると言ってみることに。
すると声が同じだったためかりりとるるはゴルダに唐突に抱き着く。

「ぶっ」

いきなり2人に抱き着かれてゴルダは核石に触れられてビクッとしたものの
匂いで引き離す気にはなれなくなった。

「もふもふー」

りりとるるに左右からもふもふされ、
ゴルダはなんとも言えない顔をしながらしたいようにさせる。

「また寝ていたか」

再び目を覚ました時には時刻は日付が変わり午前1時過ぎ。
りりとるるはゴルダに抱き着いたまますやすやと寝息を立てていた。

「どのみちメルムーアの所に行かねばか」

両手に花の状態など眼中にもないゴルダは今後のことを考えながらまた寝る。
メルムーアとシアから何を言われるかも知らずに。

「起きなさい。りりとるるはもう朝食済ませてるから」

ミリシェンスに起こされ、自身の頬を引っ叩きながら目覚めるゴルダ。
一方りりとるるは2人でスマブラの真っ最中。
耳の辺りを掻きながら人の姿に戻り、朝食を黙々と食すゴルダにりりが

「ゴルダ、スマブラやろうよ」

スマブラをしようと誘ってきた。
まだほんのり湯気の立つコーヒーを片手にゴルダは少し考えたのちに

「後でな」

今は食事中だと言って退ける。
りりはそれにえーと言いたげな顔をしつつるるとのスマブラに戻った。

「お寝坊さんね」

「いきなり意思飛ばすな。コーヒー吹きかけただろうが」

突如メルムーアからの意思飛ばしが入り、ゴルダは吹きかけたコーヒーを飲み込んでから応答。
言わずともりりとるるを連れてこいとのことだろう。

「りりとるるの件か?」

「ええ、今日中に必ずきてね」

ミニトマトを食べつつメルムーアに聞くゴルダ。
メルムーアはそれを肯定、暇が出来たら今日中に一度来るよう告げて意思飛ばしをやめた。

「ゴルダ、スマブラ付き合って。りり弱い」

「弱いって何よー、るる吹っ飛ばし狙いしかしないじゃん」

メルムーアの邪魔がなくなったのでまた黙々と食べ始めたゴルダのところへ今度はるるがやって来て、
りりが弱いのでスマブラの相手をしてほしいと言ってきた。
これにりりは弱いとはなんだと噛み付き、りりとるるは互いに睨み合う。

「そうゲームでカッカするな、別のをやろう」

そう言って立ち上がったゴルダが出したのは、Horizon zero down。
すでにクリア済みなのだが雰囲気がとてもいいのでわざわざ引っ張り出したのだ。

なお、りりとるるはその世界観にあっという間に引き込まれた。

「ゴルダ、このゲーム何?」

しばらくHorizon zero downをプレイしていると、るるがソフトを保管している箱から出した一本のゲームを見て、ゴルダは渋い顔をする。
何を隠そう、そのゲームは色々な意で危ないアウトラスト2。

「るる、そのゲームはダメだ。片付けろ。怖いなんてもんじゃないゲームだ」

ゴルダの言い方から察したのか、るるはアウトラスト2を片付けて他のゲームを出す。

次にるるが出したのは、アウトラスト2よりはマシだがホラーゲームという面ではりりがどんな反応をするか分からないバイオハザード7。

「やりたいのか?」

いつの間にか頭に乗っていたマティルーネに気付いてからゴルダはるるに聞く。
るるは即座に頷いた。
どうやら本気のようだが、りりがどんな反応をするかが分からない。

「俺は構わんが、りりが大丈夫かどうかだな」

そう言いながらゴルダが横目でりりを見ると

「ふえぇ……ホラーゲーム嫌い」

あからさまな拒絶反応を示していた。
それでもるるはやる気のようなので、ゴルダは念押し気味に

「どうなっても知らんぞ」

とだけ言ってりりとマティルーネ、レルヴィンとルァクルを連れて家の外へ。。
その際るるが絶叫する声が聞こえてきたがゴルダは無視して外へと出た。

「まだ少し暑いね」

「この暑さもあと一週程だ。次第に涼しくなって冬を迎える」

いまだに照りつける夏の日差しに手を仰ぎながら言うりりに、
頭上のマティルーネを守るべくどこからか出した日傘をさしながらゴルダは夏もあと一週ほどで終わると返す。

レルヴィンとルァクルはしばしりりについて匂いなどを嗅いでいたがすぐにやめる。

「私と似た匂いだ」

ルァクルがそう言ったのに対して、レルヴィンは判然としない素振り。
それを見ていたゴルダはレルヴィンに何かを命令。
するとレルヴィンはりりを咥えたかと思えば自分の背に乗せる。
超大型犬かそれ以上の大きさのあるレルヴィンならば、りり程度の大きさなら背に軽々と乗せられるのだ。

「大丈夫だ、そのまま乗ってろ」

状況を把握していないりりにゴルダはそう告げ、
レルヴィンの横へと立つ。

「ちょっとごわごわだけどもふもふ」

首の辺りをもふもふしてくるりりにレルヴィンはやれやれと言いたげな顔をする。

「やはりお前は懐かれやすいな」

ルァクルの一言にレルヴィンはなぜか唸ったがそれも一瞬。
すぐにスイッチを切り替えてりりを背に乗せたまま森の方へ。

「好きにさせとけ」

いいのかという目線を投げかけるルァクルにゴルダはレルヴィンなら問題ないと言い、
1人でバイオハザード7をやっているるるのところへ。
ルァクルはレルヴィンの後を追った。

「やはりか」

家の中へと戻ると、るるがミリシェンスに泣きついていたので思った通りだと呟くゴルダ。
ミリシェンスに渋い顔で見られたがゴルダは気にすることなくゲームを片付ける。

「デッドスペースやアウトラスト2じゃなくて幸いだったな」

「ホラーゲームは片付けなさい」

ミリシェンスに言われ、ゴルダはりりとるるがやるとまずいことになるゲームを片付けてるるに視線を移す。

一晩経ってそこまで警戒されることはなくなったのだが、
どこかしら気を許せない雰囲気をるるは醸し出している。
なお、これも狼の気質かとゴルダは微塵にも気にしてはいないのだが。

「そういえば、りりとるるの服直して。レルヴィンはまだ戻ってこないでしょうし」

洗濯し終えて乾いたりりとるるの服をミリシェンスに突き出され、
ゴルダは頭を掻きながらそれを受け取ってソファに座るとヘフィアと共用の裁縫道具を出して、
昨日例の輩にやられたと思わしきほつれや破けを直しだす。

「なにこれ?」

るるが裁縫道具の中に入っていた白い布切れを出して聞く。
それにゴルダは

「万能補修布だ。縫い付けてもつぎはぎしているようには見えなくなる」

万能補修布だと答えてるるからその布を取ると、
適度な大きさに切ってりりの服の背のナイフか何かで切り裂かれた箇所に縫い付けて補修。

「りりはよく傷を負わなかったな。切り裂かれた状態から明らかな殺意を感じる」

その一言にるるがドキッとしてミリシェンスの手を握る。

「あなたも狙われてる身なんだから用心しないと。りりやるるもまた狙われるかもしれない」

淡々とるるに分からないよう、幻獣語で言うミリシェンスにゴルダはそうだなと同じく幻獣語で返す。

「るるはお前には完全に気を許しているようだが」

「さあ?」

ゴルダのるるがミリシェンスに気を許しているという一言に対し、
ミリシェンスはすっとぼけたような返事をする。

手を握ったりなどといったミリシェンスへの仕草を見る限りでは、
るるはミリシェンスに気を許しているようにも見えるが真相は不明。
一方りりはゴルダにもミリシェンスにも気を許しているようだが。

「それはともかく、りりのはこれでいい」

補修し終えたりりの服を横へ置き、るるの服の補修に取り掛かろうとした瞬間。
るるがゴルダの針を持つ手を握って

「私自分でやる」

と言い出したので教えるべきか?と、
ミリシェンスを見ると教えるべきと言わんばかりにニコッとする。

「そうか、ならば教えるとしよう」

ミリシェンスの反応をみたゴルダはるるに糸の通し方から教え始めた。

「なぜにこんなところへ?」

「ここなら静かに過ごせる」

一方レルヴィンの背に乗って森の中へやって来たりりは、背から降りて2人の周辺を散策。
レルヴィンとルァクルが何かを話しているのだが、
りりには全く何を言っているかが分からずじまい。

「戻るか?」

「もう少し居よう」

ちなみにルァクルだけはレルヴィンの言っていることをほぼ完全に理解できるようで、
こうして会話をすることも可能。

「しかしゴルダはなんと言うか、こう言うのを連れて来る能力でもあるのか?」

「かもしれん」

ゴルダはこういう存在を連れて来る能力でもあるのかと話していると、
りりがルァクルを抱き上げようとしたものの重すぎて断念。

「無理はするものじゃないぞ」

理解できるかどうかを度外視して言ったレルヴィンにりりは

「じゃあゴルダは無理してないの?」

ゴルダはどうなのかと返してきた。
どうやらレルヴィンの言っていることを理解しているらしい。

「あいつは異常だ。無理をするの定義が違う」

レルヴィンの一言にりりはぽかんとして2人を見やる。
どうやら何と言ってるかは理解できるが、
言ってる内容までは理解できてないようだ。

「子供に無茶振りしすぎだお前は。弱きものに配慮するお前でもそこまでは頭が回らんか」

ルァクルの辛辣な一言にレルヴィンはぐぬぬと言わんばかりに唸る。
それを聞いていたりりは喧嘩はダメだよと2人を制するも、
レルヴィンとルァクルは何事もなかったかのようにりりに振る舞う。

「変なの、それより戻ろうよ」

りりに言われてルァクルとレルヴィンは顔を見合わせて何かを同意するかのように互いに頷くと

「戻ろう」

レルヴィンはりりを咥えて背に乗せルァクルと共に家へ引き返す。

その頃家ではるるとゴルダが服の補修をしていた。
なおミリシェンスは食器を洗ったり洗濯機を回したりして、一切手を貸す様子は見受けられない。

「るるは手先が器用な方か?初めてにしては縫い方が様になっている」

例の布と魔力の糸で自分の服を補修していたるるに、
ゴルダは縫い上がりを見て手先は器用な方かと聞く。

「分かんない」

るるの一言にゴルダは頭を掻きながらやはり信用されてないかと思う。
クェムリーヴェスが干渉してくるまでもなく、
るるからわずかな拒絶の意を感じたからだ。
素直ではないと分析はしていたのだが、
ここまでされるとりりとは付き合い方を変えるべきかとまで思い始めた。

「だって器用かどうかなんて、今まで気にしなかったもん」

るるが付け加えるように言った一言にそうかとしかゴルダは返せず、
クェムリーヴェスからは

「相変わらず乙女心を掴むのが下手なものだ」

などと称されてしまう。

「開けて」

気付けばりりが戻ってきていたので、
ゴルダはりりを家の中へ入れて裁縫を続けていたるるの手を一旦止めてシアのところへと向かう準備をする。

「行くぞ、お前らの今後を決める上で話さねばならん相手に会いに」

そう言うや、りりとるるを連れ座標指定テレポートでセイグリッドへ向かうゴルダ。

「いらっしゃい」

ゴルダがやって来たのは、シアの居る塔。
高度が高いために寒いのだが、なぜか空気が薄いと感じることはない。
そしてそこに待っていたのはメルムーア。
シアと似た白い有毛竜だが角ではなく耳があり、目の色もゴルダと瓜二つ。
目の前に唐突に現れた大きな存在にりりとるるはぽかんとしていたが、
自分らを襲うような存在ではないことだけは把握している様子。

「大きいもふもふ……」

るるの一言にメルムーアは手招きをして

「触ってみる?遠慮なんていらないわ」

触ってみないかと聞く。
るるは何の警戒心持たずにメルムーアに近づくと前足を触りだす。
ゴルダと比べ一切警戒心を持たないのは、
メルムーアの聖属性と言う面もあるだろうが、
それ以上に癒しの神で全てを受け入れるスタンスであることの方が大きいだろう。

「シアは?」

そんなるるを見てかすかに鼻で笑いながらシアはどこに居るとゴルダは聞く。
メルムーアは一瞬言わなくても分かるでしょ?と言いたげな顔をしてから

「応接室、2人の身分証作って待ってるわよ」

シアがりりとるるの身分証を作って待っている。
これはどういうことかと言うと、ゴルダは幻想獣医や何でも屋以外に異界から迷い込んだものを保護した上でシアやメルムーアに報告。
その後元の世界へ帰すまでの間面倒を見たりするという仕事も請け負っている。

なおこの仕事をしているものは、
ゴルダ以外にも多数居るがゴルダは会ったことがない。
そして、メルムーアが2人を帰す術が今のところないと言っていたあたり、身分証を用意しているのはそう言うことだろう。

「りり、るる行くぞ。メルムーアも」

そう言ってゴルダはシアの居る応接室へと向かう。

「法があるとはいえ、こんな簡単にセイグリッド国籍の身分証をポンポン発行していいのかと俺は疑問になることがある」

「いいのよ、アルカトラスの許可もあるから」

念写で作成されたと思わしきりりとるるの顔写真が貼られた、
パスポートとはまた別のセイグリッド国籍であることを示すゴルダと同じアルカトラス姓の身分証を見ながら、
応接室へやって来たゴルダは呟くがシアはアルカトラスも許可してるから問題ないと返す。
その一方でるるはメルムーアを、りりはシアをもふもふしていたがゴルダはさせたいようにさせて話を続ける。

「それで昨日の話だけど、どうやってもりりとるるの持つ波形と部分一致する世界すらも引っかからないのよ。1000万に1の割合でしか起こり得ない事象だから暗中模索」

自分の前足に頬ずりするりりをよそに、
シアはゴルダにりりとるるをすぐに元の世界へ帰せない理由を説明。
本来そのものが持つ出身世界の波形は、部分的にでもどこかの世界と必ず一致するもの。
だが今回のケースのように部分一致でも全く引っかからない場合もあるのだ。
こうなると世界の検索に通常の倍以上の時間がかかり、いつ一致する世界が出てくるかも不明。

「厄介だな、しかしりりとるるは俺と離れる気はないようだが」

「絶対ゴルダと暮らすのー」

一通り話を終えて厄介だなと言ったゴルダにりりは、
一緒に暮らすと考えを曲げる気は無いという意思表示をした。
その後ろでは黙ってメルムーアをもふもふしていたるるも頷いていたがゴルダは気付いてない。

「しかしまあ、よく念写でここまでできるな」

りりとるるの身分証を手に取り、貼られている顔写真を見たゴルダの一言にシアは

「難易度低いのはそんなに多くないわ」

簡単な相手は少ないことを告げる。
それもそうだろうとゴルダは2人の身分証をしまってソファに座ると同時に、
カーバンクルの姿に変身して腕組みの状態で片目だけを開けたまま黙りこくる。

それを見たるるが黙りこくるゴルダに近寄り、その頰を左右へと引っ張ってみたが反応がない。

「あれ?」

今度は面白半分で嚙みつこうとしたが、噛みつく寸前でゴルダの片手に押さえつけられて

「さすがにそれは、いかん。いいな?」

やめろと諭された。
るるはそれにしょぼくれたかのような顔をしてまたメルムーアをもふもふしだす。

「というわけで、よろしくね」

「出るもん出なかったら流石の俺でも渋るぞ」

頼んだわと言ったシアに対してゴルダが返した一言を聞いて、
メルムーアとシアはあらあらと同時に言い放った。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(交流) |

特に題名の無いフォルテの森での出来事

「そんなに美味くもない」

イファルシアから貰ったミントテロにならないミントを食みながら、
カーバンクルの姿をしたゴルダはフォルテの森をのそのそと歩く。
後ろからマティルーネとルァクルが付いてきているがゴルダは一切気に留めない。

「あっ、危なっかしいやつ!」

たまたま通りかかったミスティに安定の危なっかしいやつ呼ばわりされ、
ゴルダは目を細めてミスティを見る。
最初は自信たっぷりにカーバンクルのゴルダを見ていたミスティは、
何かを悟ったかのようにぷいとそっぽを向いて森の奥へ飛んで行ってしまう。

「あいつは相変わらず分からん」

そこまで森の中は暑くないので自己冷却魔法を止めたゴルダの目の前に今度はスノーウィーが現れる。

「あらこんにちは」

スノーウィーは目の前に居るカーバンクルがゴルダだとは気付かずに声をかけてきた。
それを見たマティルーネが空気を読まずに

「このカーバンクルはゴルダ」

などと言ったがためにスノーウィーはハッとし、じっとゴルダを見つめる。
一方ゴルダは額のアメジストを怪しく光らせ、スノーウィーの爪を見て

「手入れしてるか?乙女の嗜みだろう?あまり映えてない気がするが」

淡々と手入れをしているかを聞いた。
スノーウィーはそれに余計なお世話よと言いかけたが

「してくれるかしら?そこまで言うならできるでしょ?」

ゴルダの腕を試すかのようにやってくれないかと頼む。

「バウムのところでな」

それに対してゴルダはバウムのところでやると一言言い放ち、
スノーウィーを置いて奥へ進む。

「今日も今日とて分からん奴だゴルダは」

ルァクルの一言にスノーウィーとマティルーネはそっと頷く。

「スノーウィー以外の冷たき雰囲気を感じる」

その頃バウムは以前シアが持ってきた本を読みながらまったりしていたが、
唐突なスノーウィー以外の冷たい雰囲気を感じて顔を上げる。

「ゴルダのようだがそうではない気もする」

バウムが思慮に更けているとその視界にスノーウィーとマティルーネにルァクルと、
とても濃い紫毛の黄色目のカーバンクルがやって来た。

「そんな姿になれたのか?」

「つい最近からだ」

一言二言の会話を交わし、ゴルダはスノーウィーの前足を持ってその爪をまじまじと見る。
一応綺麗には見えるのだが、診察眼を使って見ているゴルダにはそうは見えてない様子。

「やりますかね。と言いたいところだが一つだけ聞いておく、お前は俺を信用しているか?」

ゴルダの一言にスノーウィーはどう言う意よ?と問いただす。

「最初に爪の話をした時、お前は不快とも何とも思ってないように思えた。単に寛容なのか、あるいは俺を信用しているのかのどっちでしかない」

その問いただしに爪の話をした時のことを言い、
スノーウィーが不快とも気にしてくれて嬉しいのどちらにも属さない感情を抱いているように思えたと話す。

なぜこんなことをゴルダが聞いたのかというと、
クェムリーヴェスが信用されているかも分からないのにそんな話をしない方がいいなどと言ったがためだ。

「そんなのどうだっていいでしょ。さあやって」

スノーウィーがゴルダを信用しているというのが図星だったのかは不明だが、
そんなことはいいから早くしなさいと前足を突き出すスノーウィー。

ゴルダもそれ以上問うことはなく、
どこからか出した爪の手入れセットでスノーウィーの前足の爪を手始めに拭き始めた。

「何をしているのだ?」

横からバウムに聞かれてゴルダは手入れ前の下準備用の薬と思わしき液体で布を湿らせ、
右前足を拭きながら

「爪を手入れしている限りはこの外の世界では普通にやっていることだ。それが竜族であれど」

爪を手入れしていると返す。
バウムはそれを聞いて

「なるほど、乙女の嗜みに必要な行為か」

と今一つ理解してないような顔をしつつ強引に理解したように振舞う。

「本格的に削る必要はなさそうだ」

「削っちゃ嫌」

削ろうと爪用のやすりを取り出したゴルダにスノーウィーは削ることを拒否。
ゴルダも本人が嫌なら削るまいとやすりを置き、
スノーウィーの爪の先を切る。

「あまり切りすぎるのも良くない。これだけだ」

爪の先を切られたスノーウィーは自分の前足をまじまじと見た。
いつもは樹木で爪研ぎをするので、
いざ爪を切られると若干の違和感を感じるようになったが特段気にするものでもないので気にしないことに。

「他の爪も切ろう」

そう言ってゴルダはスノーウィーの前足の爪だけではなく後ろ足の爪も切る。

「整えるために削ってもいいか?」

「やり過ぎないでよ?あと角も手入れして」

さすがに切った後の整えのためにやすりで削っていいかを聞いたところ、
スノーウィーはやり過ぎないことを条件に許可。
その上角の手入れまでしろと言って来た。

「どうせなら体毛の手入れ含め全種やってやる。後出しジャンケンは俺はあまり好きじゃない」

爪をやすりで削って整えながらゴルダはどうせなら全身やってやると言い出す。
スノーウィーが後からここもこっちもと言うのを防ぐためだろう。

「気が効くのね、無表情な割には」

スノーウィーの皮肉交じりの一言にゴルダはさらっとそうかとだけ返し、
爪の整えを続行。

「このような技術を元からゴルダは持っていたのか?」

スノーウィーの身だしなみを整えているゴルダを見、
バウムはマティルーネとルァクルに聞く。

「知らない。ゴルダはいつの間にか技術を身につけていたりするから」

マティルーネはそれに、
いつの間にか身につけていることが多いので知らないと返す。
一方でルァクルは

「アルガティアから教わったとは聞いたことがある」

アルガティアが教えたと言う。
それを聞いたバウムはアルガティアなら教えかねないと思いつつ咳払い。
2人の様子を眺めるのに戻る。

「ストレスを感じている、あるいは疲労が溜まってないないか?体毛がごわついている」

「自覚ないわ」

角よりも先に体毛を有毛竜用の櫛で梳かしている最中に、
違和感に気付いたゴルダがスノーウィーに聞いてみるが自覚はないようだ。
自覚のないストレスと疲労ほど厄介というのは一応診る立場にあるゴルダには考えるまでもない事実。
しかしスノーウィーから返ってきた答えは自覚なし。

「たまには気を休めろ」

自覚がないと言うスノーウィーにゴルダはたまには休めとだけ告げて角を磨く。
スノーウィーの角は溶けたり凍結したりを繰り返して形の変わる代物。
角ゆえそれなりの強度はあるのが、
折れる時は折れるので手入れは慎重にしなければならない。

「日々形を変える角、心も森も等しく日々変わり行く。変わらぬものなどあまりない」

意味深なことを呟きながら角を磨き終えたゴルダは今度はバウムのところへやって来て

「前足出してみろ、少し毛を剃ろう」

バウムに前足を出すように言い、
自分はハサミと剃刀を出す。

「あまり触るでないぞ」

バウムの話を聞いていたのか不明だが、
ゴルダはそれを聞いていたのかは分からないが手始めに前足の爪を無理矢理出して状態を見る。

「良好良好」

そう言うや、口笛を吹きながらバウムの前足の毛をちまちま切っていくゴルダ。
端から見れば、狂人が前足を切り落とすための下準備をしているようにしか見えないが。

「あまり私の肉球を触ってくれるな」

ハサミで肉球と肉球の間からはみ出した毛を切っているゴルダに、
バウムは肉球を触るなと言うがやはりゴルダは口笛を吹きながらハサミで毛を切るだけ。

「あれ絶対楽しんでるわ」

ゴルダに綺麗にされたスノーウィーがそう呟く。
その一方でマティルーネは昼寝中で、ルァクルはなぜか蝶を追いかけている。

「むぅ」

今度はゴルダに前足をマッサージされてバウムは渋い顔をしていた。
決して不快ではないのだが、どうにもくすぐったくて仕方がないのだ。

「揉み甲斐がある」

前足に止まらず、足首までマッサージの手が伸びてきたことにバウムは何かを言いかけたが、
不思議と落ち着くので何も言わないことに。

「その技術は我流か?」

「いや違う、癒しの竜から教えてもらった。揉み方から魔力の流し方まで」

なおも口笛を吹きつつマッサージをするゴルダにバウムは我流かと聞いたが、
癒しの竜からの伝授だと返される。

「技術と知識は受け継ぎ受け継いでこそ真価がある。受け継がれない技術や知識は結局そこまでだったと言うことだ」

トントンとバウムの右前足首を叩きながら言うゴルダにバウムは

「確かに、知識と技術は受け継いだら誰かにまた受け継がせないと廃れてしまうな」

ゴルダの言うことに淡々と納得するのであった。

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ゴルダと輝星と昏黒

「昏黒こっちだよ、早く早く」

夏もまだ日の高いうちから昏黒を連れてセイグリッドへやってきた輝星。
だが昏黒の方は夏の日差しの強さを物ともしてない様子で輝星に淡々とついていく。

今日セイグリッドへとやってきたのは以前シアに

「自分に足りないものの探し方にはコツがある」

といったようなことを言われたのを思い出し、
それを聞きに来たのである。

「あれー?シア様どころかメルムーア様もいないや」

城の中を歩き回るも、シアどころかメルムーアの姿も見えず。
居ないねと言いながら輝星が昏黒と城の中を歩いていると、
イファルシアに似た体型に濃い紫毛で額にアメジスト。
満月のような黄色い目のカーバンクルが体から冷気をほんのり出しながら歩いているのを発見。

「昏黒、あのカーバンク知ってる?見たことないけど」

誰だろうと輝星が昏黒に聞くも首を横に振られて分からないという意思表示をされてしまう。
だが、いま2人の目の前に居るカーバンクルは姿こそはかわいいのだが無表情だ。
無表情というと、輝星は昏黒の他にもう1人を思い浮かべた。
それはアルカトラスの孫である

「もしかしてとは思うけど、ゴルダさん?」

ゴルダ、輝星が頭に浮かんだ無表情のもう1人の名がそれだった。
濃い紫毛のカーバンクルは輝星と昏黒をまじまじと眺めてから

「よく俺だと分かったな、ご無沙汰といったところか?」

自分がゴルダであることを認めたうえで久々かと聞く。
輝星はその問いに対して

「久しぶりだね。ところでゴルダさんってアルカトラス様以外にも変身できるの?」

久々に会ったことを肯定しつつアルカトラス以外にも変身できるのかと聞く。
ゴルダはそれにこの姿が何よりの証明だろと言いたげな目線を輝星へ投げる。
なお、昏黒はカーバンクルの姿のゴルダを見て

「輝星が好きそうだ。無表情なのを除けば」

と思うのだった。

その後2人はなおも冷気を出し続けるゴルダに連れられて応接室へ。
ゴルダの話によるとシアとメルムーアはどちらも今日は仕事があって忙しいのだという。
だが、メルムーアは大学で講義をしているので昼過ぎには戻ってくるだろうとのこと。

「ゴルダさん、触ってもいい?」

応接室で互いにソファに無言で座っていると唐突に輝星から触っていいかと聞かれるゴルダ。
輝星がもふもふ好きなのはシアやアルカトラスから聞いているので知ってはいたものの、
実際に触っていいかと聞かれるといかんともしがたい。

だが、断れば輝星ががっかりして信用を無くしそうなので
触るなとは言わずに

「フィルスやイファルシアのように額は触るな。いいな?」

額に触らないようにという条件を課してもふもふを許可。
許可されるや輝星はわーいとゴルダを手始めにハグ。
いきなりのハグにゴルダは渋い顔をしたが輝星から漂う甘い匂いを感じてすぐ無表情に戻る。

「やっぱりフィルス君やイファルシアちゃんみたいにかわいさが物足りないなぁ」

子供ゆえの純粋な意見にもゴルダは強いことはあえて言わずに

「もふもふさえあれば、かわいさがそこまでなくても大丈夫。お前はそうじゃないのか輝星?」

と静かに返す。
それを横で聞いていた昏黒は同意するかのように頷いていた。
基本的に喋らないことが多い昏黒だが、
こういったジェスチャーなどで意思表示はしてくれるので意思疎通が全くできないわけではない。

「もふもふもいいけど、やっぱりかわいさも必要だと僕は思うんだ。ゴルダさんはどう思う?」

深く考えれば哲学の域に達しそうな問いにゴルダは軽くこう返す。

「もふもふイコールかわいいではない、かっこよさや美しさもまたもふもふを惹きたてる。俺の考えはそれだけだ」

輝星はその返しを聞いて少し考えるような仕草をしてから、
ゴルダの耳のあたりを触りながらこんなことを言う。

「惹きたて方って色々なんだね。昏黒も言ってたよ、物事を一方向からだけ見ちゃいけないって」

「王子になるということは将来竜王となる。つまり国を治める存在になるということだ。そうなれば物事を一点集中で見ても仕方がない」

昏黒から物事を一方向からのみ見てはいけない。
多方向から見る必要があると言われたと話され、
ゴルダは将来国を治めることになる以上、
物事を一点からしか見れないようでは国はまとめきれないと返しつつ輝星に触られた耳を動かした。

「そこに居たのね、やっと講義終わったわ」

スッと応接室に入ってきたメルムーアに、昏黒は軽く頭を下げて挨拶。
輝星はゴルダをもふもふしていたのですぐには気づかなかったが昏黒が頭を下げているのに気付き

「あっ、メルムーア様」

「いらっしゃい」

遅れて挨拶。
なおゴルダは輝星の方をずっと見ていたので気配だけを感じて

「来るとは思っていた」

と呟き輝星を撫でた。
なおその後はメルムーアが輝星にゴルダには関係のないことを話しっぱなしだったとか。

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真夏の昼下がりのひと時

外が昇華しかねない暑さにもかかわらず、
快適な温度と湿度が保たれたゴルダの家の中。

そんな家の中で、
瑠璃夢の膝に座るミリシェンスよりも濃い紫の毛で満月のような黄色い目のカーバンクル。
その隣にはルーナの膝に座るアイレ。
床ではフウがレルヴィンにもたれてポケモンのムーンをプレイ中。
ミリシェンスはユウとマティルーネと共にブレイクタイム。
ヘフィアは家中の刃物を研ぐ作業をしていた。

「しかし、お前がこんなかわいい姿に変身できるとはな」

「俺とて色々ある、追求するな。あと額を触らないでくれ」

クックと笑いながら、膝の上の濃い紫毛のカーバンクルことゴルダを撫でる瑠璃夢。
ゴルダは瑠璃夢の手が自分の額に宿るアメジストこと核石に触れようとしたので、
額に触るなと言ったが瑠璃夢はお構いなしに触れる。
それに一瞬ビクッとしたゴルダは瑠璃夢の手を掴んで

「やめろ、俺でも不意打ちはたまにはびっくりする」

今一度やめろと強めに鋭い目付きをしながら言う。

「なんじゃ、アイレは触っても平気だと言うのにつまらぬの」

それに瑠璃夢はアイレなんともないのにつまらんと不満を漏らし、
掴まれていた手を振りほどく。

「瑠璃夢さん、この世界のカーバンクルたちは下手に額の石を触られるのを良しとしないんですよ。魔力制御が乱れるとかで」

そこへルーナがフォローを入れるように触ってはいけない理由を説明。
瑠璃夢はそれでも納得いかないような様子で

「そこまで触られるのが嫌なら私もう触らん。確約はできぬが。だが私の膝には座れ」

渋々触らないことに了承するも、
膝には座れとそこは譲らなかった。

「あっ、アローラロコンの色違い」

フウの一言にゴルダはピクリと耳傾け、
瑠璃夢の膝から降りてフウの3DSを覗く。
確かにそれはアローラロコン色違いで、
色違いを示す星もついていた。

「色違いはやれそれ出る代物じゃないからな」

「やったー」

なんだかんだでムーンを殿堂入りまでクリアしたフウが始めたのは、
野生で手に入る伝説や幻を除いたポケモンの色違い集め。

ネットなどを使ってコツコツとではあるが、
集まってはきてはいるようである。

「あれがソシャゲだったら、とんでもないことになってるわね」

アローラロコン色違いではしゃぐフウを見て、
ミリシェンスはあれがソシャゲだったらどうなっていたか分からないと話す。
「使う人はいくらでも使うみたいですね、ちょっと怖いです」

ミリシェンス一言にユウは、
ソシャゲに際限なく注ぎ込める者が怖いと返す。

「種類と腐ってる以外の状態問わずの、人参というか野菜ガチャがあったらいいのに」

2人のソシャゲのガチャの話に反応したのだろうか、
マティルーネが人参もとい野菜ガチャでもあればいいのにと呟く。
それに対しユウは苦笑いし、ミリシェンスはそれはそれでと言いたげな顔をしながらコーヒーを飲む。

「これ、私の膝に戻れ」

「もう十分だろう?」

フウとポケモンをし始めたゴルダに瑠璃夢は膝に戻れと言うが、
ゴルダは本来の人の姿へ戻り、もう十分だろと断言。
だが瑠璃夢はまだ満足してない様子である。

「あー、なるほど。これは簡単に満足しないね」

クェムリーヴェスが瑠璃夢に探りを入れたらしく、
簡単に満足するはずがないと断言。

相変わらず不満げな顔をする瑠璃夢にゴルダはいつものように

「雪見だいふくで手を打とう。俺もあの姿は気に入っているがあのままずっとというのは厳しい」

ともかく瑠璃夢をどうにか文句を言わせないようにしようと、
雪見だいふくを出そうと言ったが瑠璃夢は首を横へ降り

「今日はその手には乗らぬ。私の膝に戻るか居座られるかを選ぶがよい」

膝に戻るか居座られるかを選べと言い出す。
それを聞いたクェムリーヴェスはゴルダに

「遅かったや。今日はいつもと同じ手が通用しないよって忠告しようしたのに」

いつもと同じ手は通用しないと言おうとしたが遅かったと話すが、
クェムリーヴェスの場合最初から言う気などなかったことをゴルダは知っていた。

「ダメですよ瑠璃夢さん、ゴルダさんを困らせちゃ。変身能力って意外と魔力使うから難しいんだよ。下手すれば元に戻れなくなるってシアさん言ってたよ」

すると、今の今までルーナの膝の上でボーっとして黙っていたアイレが唐突に瑠璃夢へ向けてそんなことを言い放つ。
予想外の者からの一言に、
瑠璃夢は一瞬たじろいだがすぐ何事もなかったかのように

「そこまで言うなら、お前が私の膝に来い。私を満足させてみるがよ」

アイレに自分の膝へ来いと膝をポンポンと叩いて促す。

だがアイレは渋い顔を投げかけるだけで拒否。
瑠璃夢も知っていたと言わんばかりの顔をしてから

「仕方ない。雪見だいふくで勘弁しようではないか。だが条件がある。私にそれを食べさせるのだ。膝の上で」

雪見だいふくで勘弁するが、
膝の上で自分に食べさせろという我儘な条件を押し付けてきた。

「それでお前が満足するとは思えんのだが、本当にそれでいいのか?」

ゴルダの問いに瑠璃夢は今さら何をと言わんばかりの顔で

「早くやるがよい」

早くしろと催促。

ゴルダはそれに分が悪そうな顔をしながら変身能力を発動。
次の瞬間ゴルダ居た場所には濃い紫毛で満月のように黄色い目、アメジストを額に宿したカーバンクルがそこには居た。

「一瞬で変身出来ちゃうんですね」

変身したゴルダを見てのルーナの一言を軽い頷きで流し、
台所の方へと歩いていくゴルダ。

「妙だな、買い置きがあったはずだが」

冷凍庫を引っかき回すゴルダに、
見かねたミリシェンスが奥の方にあった雪見だいふくを差し出す。

「最近こっちの世界で作られなくなって、全部日本からの輸入になってるのよね」

ミリシェンスの「最近は買うと高い」という、
遠回しな一言をこれまた首を縦に振る返事で済ませたゴルダは瑠璃夢の元へ。

「早くするのだ」

せかす瑠璃夢にゴルダは待てと制し、
無表情な顔で瑠璃夢の膝にふわりと座って開封。
中には餅に包まれたバニラアイスが二つ、
若干の白い煙を上げて白い餅の肌をさらけ出していた。

「そしてこれを、こうする」

次にゴルダが取り出したのはなんの変哲もない皿にナイフ。
その皿に雪見だいふくを取り分け、
ナイフでさらに切り分ける。

「私の取り分が少ないのだが」

そんな文句を言う瑠璃夢にゴルダは切り分けた一つを取り、
瑠璃夢の口に近づける。

瑠璃夢は自分の言いだしたことなので黙って口を開け、
ゴルダが近づけた雪見だいふくを受け入れた。

「溶け始めてるが、美味じゃの。もっとだ」

一欠片で満足するとでも思っていたのかと言わんばかりに、
美味とは言いつつも次を要求する瑠璃夢。

そして二欠片目を口に入れた後、
ゴルダは瑠璃夢の膝に座ったままアイレとルーナに

「お前達も口開けろ、食わせてやるから」

食わせるから口を開けるように言う。
アイレとルーナは言われた通りに口を開けていると雪見だいふくが入れられる。

いきなり口の中へ雪見だいふくを入れられ、
アイレもルーナもぽかんとしたものの、
口の中で溶けて広がる甘さに思わず顔がほころぶ。

「うまいか?」

ほんのりと口元に笑みを浮かべ、
うまいかとゴルダに聞かれた2人はそっと頷く。

「それは良かった」

無表情かつ怒り以外の表情を見せたことのないゴルダが、
カーバンクルの姿ではあるものの笑顔を見せたことで瑠璃夢はそんなゴルダを思いっきり抱きしめる。

「やめろ」

いきなり抱きしめられれてびっくりしたのだろうか、
やめろと言ったゴルダに瑠璃夢は頬ずりをしながら不敵に笑い

「私がかわいいものに目がないことは知っておるだろうに」

と言ってまた額を触る。
するとどうだろうか、魔力制御に異常をきたしたらしくゴルダは黄昏たような状態に。

「だっ、大丈夫ですか?ゴルダさん」

それを見たルーナが慌てて声をかけるとゴルダは手を追い払うような仕草をした。
問題ないということらしい。

「やっぱり触らない方がいいよ」

アイレに触らない方がいいと言われた瑠璃夢は少し考えてから、
急にアイレも引き寄せてゴルダと一緒にまた抱きしめる。

「お前達、今日は私のところに泊まれ。異論は認めぬぞ」

その直後の瑠璃夢の一言にゴルダとアイレは

「きついジョークだ」

「えー?」

それぞれ苦笑いに困った顔をした。
だが瑠璃夢はそんなことはお構いなしに2人を連れて行ってしまったという。

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もう一つのアルガティアとアイレにルーナとルーエ

夏真っ盛りのリフィルの昼下がり。
暑さに完全にやられ、干からびたような状態のアイレの横では、
ルーナがダメになった弓の弦を張り替えようとあの手この手を試すも上手く行かずに困っていた。

「せっかくシアさんから聖竜毛の弦をもらったのに」

この世界の弓の弦は幻獣の抜け毛から作られた弦や竜毛で作られた弦など、
様々な種類の弦が存在する。
ルーナがシアからもらった弦は、使用者の純粋な心に応じて様々に変化するものである事以外は一切不明。
ルーナは幻獣毛の弦と同等に引きしぼりやすいとのことでもらったのだが。

「溶ける以前に蒸発しそうだよ」

影に居ることは居るのだが、
それでも防ぎきれない暑さでアイレは水に戻った氷のごとくだらけていた。

「さっきまでゴルダさん居たのに居なくなってるし、アルガティアさんも姿を見てない。誰に教わればいいのかしら」

つい先ほどまで、ここにゴルダも居て軽く話をしていたのだが、
いつの間にかマティルーネとルァクルを連れて姿を消しており。
アルガティアはというと、
ゴルダの話では朝から講義や王としての仕事が忙しいので午前中は暇ではないと聞かされていた。

なお、アルガティアに関してルーナとアイレはゴルダからこんなことを言われている。

「今日はやたら王の威厳たっぷりで喧嘩腰かつ姉御肌だが、たまにあるから普通に接しろ。態度を変えられることをあまり好かないからな」

いつもはおっとりお姉さんな感じのアルガティアが、今日は姉御肌で喧嘩腰。
しかも王の威厳を放っていると聞いて、
アイレは頭上に魔力を具現化させた?をいくつも浮かべ、
ルーナは喉に魚の小骨でも刺さったかのような違和感を覚えた。

「どう言う意味なんだろう?」

なおも弦の張替えに挑みながらそんなことをルーナが呟いていると、
ゴルダからリフィル王立大だと教えてもらった建物の方から本を片手に抱え、
いつものようなゆったりした歩き方ではなく確かに地面を踏みしめ、
国王たる威厳を示す歩きで移動するアルガティアが視野に入る。

「なんだか目つきも鋭い」

そしてアルガティアがいつもと違うのは歩き方だけではなく、
その目つきすらも、いつものとは打って変わった鋭い目つきをしていた。

「なんだか声掛けの怖いなぁ。でもゴルダさん居ないし、弓の弦の張り方知ってるのアルガティアさんくらいだろうし」

一瞬いつもと違う雰囲気のアルガティアに怖気ついたが、
ルーナは他に弓の弦を張り替える方法を聞ける相手がアルガティアくらいしかいないので、
雰囲気のことなどかなぐり捨ててアルガティアに声をかけた。

「アルガティアさん」

その一言にアルガティアは鋭い目つきのままこちら側に向き直り、
口元を緩めてルーナ後ろで溶けた氷のような状態のアイレを見てから

「私に何か用かルーナ?用があるなら聞く。午後はそこまで忙しくはない。それとこの時間は影にいても暑いが大丈夫か?アイレが溶けているぞ」

要件を聞いた上でこの時間は影にいても暑いことを指摘し、
アイレが溶けていると話す。

アルガティアのこの一言でルーナが振り返ると、
そこには暑さで溶けぐったりしたアイレの姿が。

「どこか涼しいところありますか?」

状況を理解したルーナの一言に、
アルガティアは踵を返して無言でアイレを連れてついてくるよう促す。
ルーナはそんなアイレを抱えてアルガティアの後をついて行く。

「従者に一言言えば良かったものを、こんな暑い外にいたら熱中症で死んでもおかしくはない。危機管理が薄いぞ」

移動しながらアルガティアにそんな説教をされながら、
アイレを抱えたルーナはいつもの応接室とは違う部屋の前までやって来た。

他の部屋の扉と違い、国章が彫られた扉から察するにここはアルガティアの自室だろう。

「入れ、遠慮は要らない。ゴルダも入ったことがある」

入れと言われたからには入らない訳にもいかず、
こんな暑い回廊で棒立ちするのも危険なのでともかく入ることに。

部屋の中は涼しいことには涼しいのだが、
アルガティアの部屋は一国王の自室であるにもかかわらず、
家具類はベッドや本棚に机とソファにテーブルなどの必要最小限。
壁の収納もそこまで容量は大きくなさそうである。

「国王の部屋ならもっと物があるかと思いましたが、必要な物だけなんですね」

アイレをソファに寝かせ、
部屋を一通り見回したルーナに言われてアルガティアは鼻で笑うと

「国王としての仕事と、講師としての仕事は全て書斎だ。自分一人の時間を作るだけなら家具類はこれだけで構わん」

プライベートな時間を過ごすだけならこれで十分だと返すと、
アイレにどこからか取り出した薬のような何かを飲ませた。

「熱中症の薬で水分補給も可能な薬を飲ませた。1時間ほど安静にしてれば治る」

何を飲ませたんですかと言いそうな顔のルーナに、
アルガティアは飲ませたのは熱中症の薬なので落ち着けと遠回しに言う。

アルガティアのそんな一言と鋭い目つきの中に私を信じろという一言を感じ、
ルーナはそれ以上何も言わずにアルガティアに聞かれる前に自分の弓を取り出す。

「アルガティアさん、弦の張替え方教えてくれませんか?ゴルダさん居たので聞こうとしたんですがいつの間にか居なくなってて」

弦の張り方を教えてくれと言われたアルガティアは、
ソファに座って脚を組みながら

「構わない。が、この後ルーエが来ることになっている。すぐには無理だがいいのか?」

ルーエが来るのですぐには教えられないことを話す。
ルーナはそれでも構わないという意思表示を込めて頷く。

「お前もルーン語などに興味があるなら、私とルーエの話を横で聞いてるといい。知識への探究心は生きる上で重要なものだ」

アルガティアはそう言ったきり、
アイレとルーナに関わることをやめてテーブルの上に本を並べるとまた脚を組んだ姿勢で座る。

「随分堂々とした座り方するんですね。こう言うのは失礼かと思うんですが、あまりにも女王らしかぬ振る舞いをするなとも」

アルガティアの座り方に、女王らしかぬ座り方だと無礼もへったくれもないルーナの一言に対し、
アルガティアはふふっといつもと違うおっとりした雰囲気の笑い方ではなく、
威厳のありそう雰囲気の笑いを飛ばし

「悪くは無いだろう?もっとも、いつもの性格の私を知っていれば違和感しか感じないとは思うのだが」

悪くはないだろう?とルーナに問いかけつつ、
元の性格を知っていては違和感しか感じないだろうと言う。

「来ましたよ、アルガティアさん」

ルーナがアルガティアの問いに再び頷いて返答したと同時に、
ルーエがアルガティアの部屋の中へと講義で使っていると思わしき本を抱えて入ってくる。

「こっちだ、とりあえず座れ」

やはり脚を組んだままの状態でルーエを迎え入れたアルガティア。

「あっ、ルーナさん居たんですね。それにアイレも」

「ちょっとアルガティアさんに用があってね」

ルーナもアイレもルーエに会うのは初めてではないが、
会う機会がそこまでないためこうして会うことは珍しい。

「さて、始めようか」

ルーエとアルガティアがルーン語について話している間、
ルーナは薬を飲んでから一切起きる気配のないアイレを撫でながら2人の話に耳を傾ける。
やはり言っていることは断片的にしか理解できないが、
聞いていて飽きるものではなかった。

「訳してみなさい。今の話が理解できれば訳せる」

いつの間にか脚を組む姿勢をやめて、
普通の座り方でルーエに自分の書いたルーン語を訳してみるように言うアルガティア。
ルーエはそれを難なく訳し、それをアルガティアに見せる。

「悪くはないわ。私の言ったことを的確に抑えていて訳し方も申し分ない」

その後もこんなやり取りを続けてる傍で、
ようやくアイレが目を覚ます。

「んー」

寝ぼけているのだろうか、
ルーナが撫でるのをやめるとアイレは何を考えたのか唐突に自分の尻尾を咥えて食べ始めた。

「アイレ、何やってるのよ」

ルーナが話しかけてもアイレは自分の尻尾を食べたまま虚無の表情を浮かべている。

「あら、暑さで頭をやられたのか?」

ルーエにルーン語を教える手を止めて聞いて来たアルガティアにアイレは

「ふぉんなふぉとにゃひよ」

寝ぼけた口調で尻尾を食べたままそんなことはないと否定。
そんなアイレの姿を見たルーエは思わず

「口の中に毛が残っちゃいますよ?」

冷静に口の中に毛が残るのでやめておけと言う。
だがそれでもアイレはやめる気配がない。

「しばらくそのままにしときなさい、そのうち正気に戻る」

何を言っても無駄なのでしばらくそっとしておくように言うアルガティアに、
またもやルーナは思い出したかのように

「弦の張り方教えてください」

アルガティアに弓の弦の張り方を教えて欲しいと言う。
それに対してアルガティアはティーセットなどが入っている戸棚の前まで歩き、
茶の準備を済ませて戻って来てから

「いいわ。でも今はティータイム。急ぎで要り用ではないのだろう?午後は私もそこまで忙しくはないと話したはず」

教えるのは構わないが、急ぎで必要としないならば今はティータイムだと言う。

「そ、それもそうですけど」

アルガティアの鋭い目つきに押され、
ルーナは少し引き気味になりながらも肯定。
するとアルガティアは鋭い目つき一瞬緩ませて微笑むと

「よろしい。アイレはそっとしておいてルーエもティータイムにしよう」

2人に茶を出してティータイムに入る。

その間アイレはやはり尻尾を咥えたままボーっとしていた。

さて、それからどれくらい経ったかは不明だが唐突にアルガティアの部屋の扉が開く音がする。

「ルーナは居るか?」

ゴルダの声に気付き、ルーナが振り向くとそこにはマティルーネとルァクル。
そしてミリシェンスよりも濃い紫の毛に黄色い目。
額にアメジストを宿したフィルスと同じ尻尾のカーバンクルがルーエと同じ二足歩行で歩いてこちらへやって来た。

「ゴルダか。その姿、よほど気に入ったのかしら?」

「この姿で居ると癒される」

ルーナと未だに尻尾を咥えていたアイレがハッと咥えていた尻尾を離し、
このカーバンクルがゴルダなのか?と信じられないと言いたげな顔で見つめている。

「ゴルダさんに変身能力があるのは知ってましたけど、ボクと同じカーバンクルに変身できるとは知りませんでした」

アルガティアにおかわりを注いでもらい、
それを一口飲んでからルーエは謎のカーバンクルの姿のゴルダに言う。

「ゴルダにも色々ある。そちらが知らないようなこともな」

ルァクルの一言にルーエはなるほどと一人納得。
一方のアイレとルーナは、未だに理解が追いついてないのか混乱しているようにも見える。

「2人はまだ知らないと思うが、ゴルダはカーバンクルの魂がくっついている。そのせいで今のような姿になれるし、精神属性もかなりの適性がついている」

アルガティアから説明されて、
ゴルダはルーナとアイレの間に割って入るように座り、
マティルーネはアルガティアの膝の上に、
ルァクルはルーエの足元に座る。

「飲む?」

「いや、いい」

アルガティアに茶を飲むかと聞かれてゴルダはいいと返し、
アイレが先ほどまでやっていたように自分の尻尾を咥えて目を閉じる。

「それ、幻獣族の間で流行ってるらしいな。私の記憶ではユキヒョウと言う動物が自分を落ち着かせる為に尻尾を咥えることがあるようだが」

自分の尻尾を咥えて目を閉じたゴルダを見て、
アルガティアは最近幻獣族の間で流行っていると言いつつ、
ユキヒョウが落ち着くために自分の尻尾を咥えることがあると話す。

「居ますね、ボクが出ている講義にもユキヒョウ亜人の学生がいますけど、たまに自分の尻尾咥えてるの見かけます。こんな風に」

アルガティアの話を聞いて、
ルーエは自分が出ている講義に居るユキヒョウ亜人もこうして居たと自分の尻尾を一瞬咥えた。

「よく咥えられますね、私には無理ですけど」

ルーナは一瞬尻尾を咥えたルーエとずっと尻尾を咥えて目を閉じているゴルダを見て、
ルーナは自分もやってみようとしたが無理だったので私には無理だと呟く。

「無理にするものでもない」

そう言うアルガティアに、
アイレはまた尻尾を咥えて目を閉じたままのゴルダに向きなおる。

「なんとも微笑ましい光景だわ」

皮肉か本音か分からないマティルーネの一言にルーエがまた自分の尻尾を咥えて

「ほひれほひふくふぇ」

落ち着くねと静かに返す。

「アルガティアさん、弦の張り方教えてください」

「構わない。少し準備するから待て」

弦の張り方はティータイムの後に教えると言われたことを覚えていたルーナは、
尻尾を咥える3人をよそに今度こそは弦の張り方を教えて欲しいと言う。

アルガティアはそれにすんなり応じ、
自分の弓と道具を取り出してルーナに弦の張り方を教え始める。

「そうだ。あまりきつくし過ぎるな」

ルーエが尻尾咥えをやめてルーン語の自習を始めた頃、
ルーナとアルガティアは弦の本格的な張替えへと入る。
使用者の癖に合わせて調整が必要なため、
アルガティアもその調整の方法をルーナへと教えた。

「実際に引いてみるんだ。軽く感じればきつくするし、重く感じれば緩める」

ルーナは魔力の矢を装填せず、アルガティアの言う通りに弓を引き絞る。
引き絞った感じでは重くも軽くも感じず、
聖竜弦は幻獣弦とはまた違った感覚を得られた。

「問題はなさそうね。それでいいなら仕上げをして終わり」

アルガティアは張替え後の仕上げまで丁寧に教え、
ルーナは問題なく弦の張替えを終える。

「かすかに今の性格のアルガティアに畏怖しているな。ルーナ、アイレ」

尻尾咥えを解除し、ゴルダは静かに言い放つ。

今の今まで尻尾を咥えて黙っていたのは、
精神を集中させてルーナとアイレの精神に探りを入れていたからだ。

「だっていつもと雰囲気が変わりすぎだもの、そりゃ怖くもなるよ」

と言うアイレに対してルーナは

「でも、結局いつものアルガティアさんとそこまで変わらないので、恐怖心も話していくうちに薄れましたよ」

話せばいつものアルガティアとそこまで変わらないので恐怖心も薄れたと返す。

すると2人の言葉の対してアルガティアが

「私はどんな性格であろうとお前達をどうこうするつもりはない。少なくとも今の所は。だが、お前達を傷付ける奴らに私は容赦しない」

どんな性格であろうが悪いようには扱わない。
そして傷付けるような奴は放っておかないと話した。

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