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氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

おしながき

うちの連中プロフリンク
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創作世界観
竜医・幻想獣医の表面考察(?)
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竜滅病に関するまとめ
ドランザニア語まとめ
設定のあれこれ(種族)
大陸の山・川・etc
竜医(幻想獣医)のあれこれ
能力とかいろいろ
大陸と異界の関わりetc
大陸の魔法に関して
雑多な創作設定・ネタまとめ
---------------一次創作小説(自キャラオンリー)----------
当ブログに掲載されている小説は、短編連載物中心で「こういった現代文明とファンタジーが混じったような世界での各キャラの日常」をテーマにしております。
とても長いので細かく分割
その1
その2
その3
その4
その5
その6
---------------------一次創作小説(交流系)-------------------
頻出するよそ様のキャラのリンクはここに
雨月以下王子s
レナ
メリエル以下召喚獣たち
ドラビット族
----------------以下各リンク集--------------------------------
その1
その2
その3
その4
-------------------二次創作小説--------------------------------
物は試しで設置、注意表現含むものが多いかもしれない

・マキュッと変身
アルガティアのマーキュライトカーバンクル化、Transfur要素入り
1
未分類 |

合う合わないの見極めこそ困難である

その日の朝の会議で、フィルスはアルガティアから次のようなことを言い渡される。

「あなたの司書長と図書館責任者の負担を減らすために、
 前に話していた司書実務経験者を副司書長兼責任者候補として1人採用した。今日から出勤なので中途採用前提での研修よろしく」

なぜアルガティアが中途採用で副司書長兼責任者候補として採用したのか?
それは以前フィルスがアルガティアに、自身の図書館関係の仕事負荷が大きすぎて文部大臣諸々の仕事をするのが難しいと相談を持ち掛けたことまでさかのぼる。
この相談を持ち掛けられた際、アルガティアは確かにフィルスへの負荷が大きいことを懸念。
だが、バカ真面目なフィルスはそれをほぼ口にせず黙々と仕事をこなしていたので、アルガティアももう1人採用するといった考えは保留。

「さすがに文部大臣絡みの仕事まで加えると首が回らなくなってくるんだけど、1人増やしてくれないかな?最低でも司書の実務経験があるものを」

リフィル王宮図書館は、フィルスの下に2人ほど司書が居るものの、その2人は司書長や責任者を補佐させられるほどのレベルに達していないとして
フィルスが司書長と責任者を兼任して図書館を管理していた。
最初はそれでよかったのだが、アルガティアが唐突にフィルスを文部大臣的ポジションへ任命してしまったためにフィルスの仕事量と負荷は増加。
前述したとおり、フィルスはバカ真面目なためそれでもどうにか文部大臣などの仕事もこなし、たまに仕事の量が多すぎるなどの文句は言っていたが
「無理」の一言を言った試しはなかった。
その後、とある一件によりフィルスの仕事が今までにないほどに増加したためにフィルスもさすがに

「これ以上は1人で回せないのでもう1人入れてくれ」

と相談したのだ。

「ところで、アルガティアが採用試験を全部やってたから僕はどんな人が入るのか分からないんだけど」

アルガティアからは雇用条件として月約40万(注、総支給額)の給与に、賞与を最低給与3ヶ月、
その他福利厚生諸々を聞かされていたが、実際にどんなものを採用したのかは聞かされていない。

どんな人が入るのかという問いに、アルガティアは今回入って来るものが書いてきたと思わしき履歴書と実務経歴書を差し出す。

「セイグリッド王立大卒業、そこで司書の資格を習得。カルコンドラという世界のベルヴィアディット王立図書館で司書を60年。
 総責任者ではないものの責任者と司書長補佐の経験あり。
 翻訳魔法は幻獣語レベル(訳注、ほとんどの言語に対応可能)まで」

この世界の採用文化は本人の写真を求めないことが多いが、複数の姿を有している場合はそれぞれの姿の写真ないし、その類のものを用意させるという文化。
また、本人が用意しなくても採用担当者が念写魔法などでその姿を別で記録していることもしばしあるという。
今回も採用者だけはアルガティアが念写で姿を記録していたようで、念写紙がアルガティアから渡された履歴書と実務経歴書の間からはらりと落ちる。

「有毛種の竜族?パッと見た感じはこの世界では使い手が居ないに等しい星属性を使えるようにも見えるけど」

念写氏に書かれた姿は、星形の瞳孔に角が生えた有毛種の竜族。
フィルスの一言にアルガティアはこうとだけ答える。

「星と闇の有毛種竜族、氷と精神属性の幻獣族の間に生まれた混血種の子。額の角は核石が角へ変化したもの」

それだけ分かればいいと思ったのか、フィルスはそろそろ図書館へ行かねばと踵を返して会議室を去る。
フィルスのその態度にアルガティアは何とも思わないのかと思われがちだが、全く気にせず自分も会議後の朝の仕事へ。

「名前は、ケレスティッチェ=X(ザスティン)=エスポリンティーヌ。
 エスポリンティーヌ家って少数派の中の少数派属性の星属性を研究し、扱っていたはずだけど家系が途絶えてるはずなんだよな」

図書室へと向かいながら、なおも資料を眺めていると採用者の名前に目が行くフィルス。
エスポリンティーヌ家はセイグリッド地方の竜族の家系であり、フィルスも言っているように星属性を使い、研究していたという。
その先祖は闇竜の国アルヴァスの出身で、どの世代からかは不明だが少なくともアルヴァスという国が消える前にはセイグリッドへ移り住んで星属性の研究を始めたらしい。

「ザスティン家というのは聞いたことないから適当につけたミドルネームかもね」

資料を片付け、図書室へと入るフィルス。
一般開放前の時間1時間前には図書室へ行き、掃除が済んでいるかと今日の仕事の確認ののちに重要事項だけを共有する朝礼を行って開放時間を待つ。
それがフィルスの司書長兼総責任者としての仕事。
だが今日は、新しく中途で入ってきたものへの研修がある。

「念写された姿だけではどんな相手か分らない以上、会って話して見極めないとね。皆おはよう」

「おはようございます、フィルス司書長」

「すでに掃除は完了しています、おはようございます」

「フィールシェアノスンラッタチィ、アマルガンディッチ(訳注、カンチィアス語(この世界とつながりのある別世界の公用語)で『フィルス司書長おはよう』と言っている)」


3人の司書が挨拶を返し、その中で1人だけ挨拶を返さない有毛竜。
その竜こそがケレスティッチェ本人であった。

「話は聞いています」

手を差し出してきたケレスティッチェにフィルスは律儀だなと思いつつも同じように手もとい前足を差し出して握手。
その際、ケレスティッチェの手に肉球がないことにフィルスは気づいたが大したことではないのですぐに手を離す。

「さて、ケレスティッチェの紹介もしないといけないし朝礼をしようか」

そして朝礼を5分足らずで終わらせ、ケレスティッチェの研修を行うフィルス。
だがここで、ケレスティッチェがこの図書館の規則、他の国の図書館およびこの国の王宮図書館以外との連携に関する情報を把握していたので
フィルスはアルガティアから渡された資料に今一度目を通す。
そこには採用日と初出勤日である今日との間で1か月半近い間が開いていることを知る。

「この採用日から今日までの空白は何をしてたんだい?」

後は実務での研修しかないと判断しつつも、空白期間がどうしても気になったのでケレスティッチェにフィルスは問う。
その問いに対するケレスティッチェからの返答は

「司書であることを利用してあちこちの図書館などへ赴き、ここで働くうえで必要な情報を集めていました。アルガティアの指示で」

あちこちの図書館へ赴いたりして、仕事に必要な情報を集めていたとのこと。
しかもそれは、アルガティアからの指示だという。
それを聞いてアルガティアらしいと思いながらも、フィルスは実務面での研修を開始した。

「館外持ち出し禁止という意味での禁書、多くないです?」

禁書リストの整理をやらせていると、ケレスティッチェがあまりにも多くないかと言いだす。
フィルスは禁書が多い理由としてそのほぼすべてが魔法書で危険度が高いものもあり、その上借りたまま返さない盗人までいるからだと説明。
ケレスティッチェはその説明に一応納得したような顔をするが、この後言った一言がフィルスを渋い顔にさせた。

「ではその盗人を徹底的に追い詰めて取り戻した後に、処刑して晒し首にでもしてしまえばよろしいのでは?
 ベルヴィアディット王立図書館に居た時も魔法書を盗む輩は居ましたが、私が本にかけれていた盗難防止魔法で逆探知した上で本の所在を把握。
 盗人はとっ捕まえて斬首刑。その首は晒し首にされましたよ。なにせ盗みが殺し同様死罪になるような国でしたので」

裏が出ていないアルガティアでも、度が過ぎれば処刑やむなしと言いそうだが晒し首まではいかない。
だが、裏が出ていればそれはそれで分からない。
あの姉御肌の正確ならば自ら首を斬り、晒し首にしかねないからだ。

「盗みが死罪というと、リヴァルスと同じくらいか。あそこもあそこで法が厳しいし」

「下手をすると、リヴァルスよりも厳しかったかもしれません」

実務経験があるためか、実務面での研修もすんなり進んで昼の時間を迎えるとケレスティッチェの方から一緒に昼休憩に入ろうと誘ってきた。
だが、フィルスはさっさと片付けたい仕事があると言って先に入るように言う。

「ゆっくり話したいことがあるんですけどダメです?」

妙な目線を投げかけながらそう言われ、フィルスは一つ大きくため息をついた。
ご存知の方も多いと思われるがフィルスは緊急時を除いて邪魔をされるのをとても嫌う性格であり、
ケレスティッチェの行動はフィルスの仕事を邪魔する行為そのもの。

「一つ君に話していなかったねケレスティッチェ、僕は今みたいに緊急時などやむを得ない事情がある場合を除いて邪魔されるのが大嫌いなんだ。
 今回は知らなかったということ僕も抑えるけど、よっぽどのことがない限り集中しているときとかに邪魔するのはやめてほしい」

ケレスティッチェがそのフィルスの性格を把握しているはずがないため、
フィルスはやむ負えない場合を除いて集中しているときに邪魔しないでほしいと告げて一緒に昼休憩へ。

「食べないんです?」

「魔力が十二分にあれば1日3食とらずとも問題ないよ」

王宮の関係者が一堂に会して食事をとる大広間で、先に昼食を食べていたアルガティアと少し距離を置いて座ったフィルスとケレスティッチェ。
ケレスティッチェはサンドイッチを食していたが、フィルスは緑茶をすするだけで何も食べていないので食べないのかと聞いたところ、
魔力さえあれば3食食べずとも支障はないと返された。

「ところで気になったんだけど、エスポリンティーヌ家って星属性魔法研究してたよね。君も使えるの?」

「初歩的な部分であれば使えますよ。けど研究してた資料なんてほとんど残ってないうえに、残っている資料も縁切りした実家にしかないわ。
 だからやるなら基礎研究からやり直しね」

星属性魔法のことを話題に出した際、縁切りしているという言葉が飛び出てきたのでフィルスは耳をかすかに動かして反応。
ケレスティッチェはそれを見てさらっとフィルスに

「父方が星と闇、エスポリンティーヌ姓で死去。母方が氷と精神属性で私が異界の図書館司書になると言い出した時に縁切り。
 別世界で司書をやりたいって私の意見と、セイグリッドの図書館で司書をしなさいって母さんとの意見が分かれて、
 『私は異界で司書やりたいから親子の縁は切らせてもらう』って言って飛び出したの」

父方が死去、母方とは将来のことで意見が合わずに縁切りしたと話す。
なおフィルスはアルガティアが親代わりを務めていたので本当の親は分からない。

「そんなにさらっと言えるってことは、確固たる意志と覚悟を持って縁切りしたってことだよね?口調に未練がましさがないし」

「そういうことです、なので母さんがまだ生きてるかどうかも知らないしそんなこと眼中にもない。所詮他人です、血の繋がりあれど」

締めに恐ろしいことを言い放ったケレスティッチェに、フィルスはそうかいとその場を流す。
本を盗む輩は首を斬って晒し首にしてしまえばいいという発言を含め、敵に回すと色々厄介なことになりかねなさそうである。

「断言しておきますが、フィルス司書長と敵対するつもりは毛頭ないです。採用決定後にどういう相手なのかを調べてますので」

顔に出ていたのか、はたまた考えを読まれたのかは不明だがケレスティッチェの一言にフィルスはただ頷いて返事を返すほかなかった。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ケレスティッチェ=X(ザスティン)=エスポリンティーヌ

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種族:片親が星と闇属性持ちの竜族(有毛種)、片親が精神属性と氷属性持ちの幻獣族の間に生まれた混血種
性別:幻獣族の特性を引いているため不安定だが概念上は♀
身長:フィルスより若干大きいか同程度
年齢:100から先は覚えていない
性格:与えられた仕事はよっぽどのことがない限リやり通す

フィルスの王宮図書室司書長兼総責任者という肩書の負担を分散するためにアルガティアが
「世界問わず司書の実務経験がある」という条件で探していた際に採用した竜族と幻獣族の間の子。
以前は異界(地球ではない)のとある図書館で司書を務めていたという。

装備している腕輪はフィルスの首輪と同じく魔力制御用。
これがないと己が司る属性のバランスが取れず魔力が暴走してしまう。
青いスカーフは竜毛布で作られており、親の片身。

角が生えているが、これは幻獣族が額に宿す核石が角へ突然変異したものでむやみに触ってはいけない。
年齢差のある部下と上司という関係で最初こそはやりづらい面もあったようだが、すぐに解消した。

両親は片親は他界、片親は異界で図書館の司書になると言い出した際にほぼ絶縁状態。
肉球は手足共にあるが、意図的に隠したり出したりできる。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

夢竜住まいし精神世界

ここはゴルダの精神世界上に作られた談話室。
いつもは1人なのだが、クェムリーヴェスがやってきてからは2人でこの空間を共有している。
魂にくっ付いている関係上、クェムリーヴェスが単体で具現化できるのはこの世界の中のみ。

「しかしなんでまた君はあんな仕事を受けたんだい?」

「受けようが断ろうが、面倒ごとになることは目に見えていたから受けた。結果的には断ったほうが面倒ごとは少なかったが」

精神世界上でのみ面と向かって話せるため、ゴルダとクェムリーヴェスの会話は毎日こんなものばかり。
たまにゴルダがやっているゲームの話や料理の話などもするのだが、大抵は仕事に関する話が多い。

「ま、いいけどさ。君らしいといえば君らしいし。でも受ける仕事は考えた方がいいよ?異界だとそこの警察とかの世話になりかねないし」

「中国に依頼で行ったときの話か?あの時は口止め料で高くついたな」

ゴルダはウォッカ片手に、クェムリーヴェスはジンライムを片手にそれぞれ話をしている。
今日の談話室は暖炉に火はついておらず、窓から見える空は快晴の月夜。

「ところでさ、君も気づいてると思うけどさっきから君と僕以外の気配がするんだよね。少なくとも見知ったものじゃない」

ゴルダのグラスに入っていた氷が溶け、カランと音を立てた瞬間。
クェムリーヴェスが耳をかすかに動かしてそんなことを呟く。

「口には出さんかったが、確かにもう1人いるな。俺とお前くらいに精神属性が強い」

クェムリーヴェスの一言にゴルダはグラスをテーブルへ置き、ソファから立ち上がる。
今のところ敵意は感じられないが、隠しているだけの可能性もあるため油断はならない。

「誰かは分からんが、入り口の前に突っ立ってないで入ってこい」

「ええ、そうさせてもらいますわ。でも、どうしてここでも飲んだくれているのかは存じ上げませんか」

皮肉のようにも聞えるようなことを言いつつ、水色を基調とした竜が扉を開けて談話室へと入って来る。

「君、夢竜だね。闇竜の国が消えたと同時に精神世界へ肉体ごと旅立ったとされる」

夢竜。
精神属性への適性が極めて高いとされる闇竜の一種族であるが、かの闇竜国アルヴァスが国としての概念を消したと同時に
肉体ごと精神世界へ移住し、この世界から姿を消したとされる。
一部の夢竜はこの世界へ残り、現在も暮らしているとのことだが真相は不明。
なぜなら、あのシアですらも夢竜たちの動向を把握しきれていないからだ。

「よくお分かりで、でも無理もないかしら。あなたも精神属性と闇属性の使い手のようだし」

夢竜は意外と大きい右手を口元に当てながらクェムリーヴェスに言う。
一方ゴルダは何事もなかったかのようにウォッカを注ぎ足し、また飲んでいた。

「あらあらあら、そこのも居たの。ただの飲んだくれかと思ったけど、そうでもなさそう」

ウォッカを飲むゴルダに、夢竜はまた飲んだくれなどと馬鹿にするように言いながら近寄り、左手で腹を小突く。

「何がしたい?酒が欲しいなら入れよう、何を飲む?」

腹小突きをそういうニュアンスで汲み取ったのか、酒が飲みたいのならば何がいいと夢竜に聞くゴルダ。
夢竜は少し考えるように顎のあたりに手を置き、沈黙。

「ジントニック」

数十秒沈黙したのち、夢竜はジントニックを所望。
ゴルダは余計なことは何も言わず、ジントニックをそそくさと作って出す。

「ありがとう、でもその動じなさそうな顔はいかがなものかと」

「口の利き方を考えたまえお嬢さん」

夢竜の嫌味ったらしい物言いに、さすがのゴルダもどうなのかと思ったのだろう。
口の利き方を考えろと言ったところ、夢竜は目を怪しげに光らせながら

「そうは言ってもあなた、嫌味言われることを何とも思ってない節があって?」

ゴルダの心を読んできた。
言うまでもなく、この夢竜に嫌味などを言われてもゴルダは何とも思っていない。
なぜかと言うと、ムキになったところでどうしようもないと思っていた節があったからだ。

「どうでもいいことだ、それより名を名乗れ。読めるなら俺の名は名乗らずとも分かるだろ」

どうでもいいことと切り捨て、夢竜に名を名乗れと言い出したゴルダ。
夢竜はまたあらあらあらと呟き、一言。

「ナルファリンシンズ。姓は忘れたわ、私の記憶力も意外とポンコツね」

と名乗り、ジントニックを飲む。
夢竜改めナルファリンシンズは談話室の中を一通り見渡すとソファへ座り、

「あなたもおかけにならない?こちらが座り、そっちが立って話をされるとなんだか嫌なのよね」

遠回しに立って話をされると見下されているようで嫌だと言うナルファリンシンズに、
ゴルダは反論も肯定もせず向かい合うように座る。
ナルファリンシンズはそんなゴルダに一瞬笑いかけると、グラスを置いて自分の爪の手入れを始めた。

どこから爪を手入れする道具を出したのかと思われがちだが、精神世界では自分が欲しいと思ってイメージしたものは
大体具現化して取り出すことができる。
無論、誰もが何でもかんでも出せるわけではなく精神属性への適性によって取り出せるものの種類などが変わる。
ナルファリンシンズレベルの適性であれば、爪の手入れ道具を出すことなど朝飯前。

「ここで爪の手入れはやめていただきたいものだが」

酒を飲む場所で爪の手入れをするなと言うゴルダに、ナルファリンシンズはゴミ箱を出し、その上で爪を削りだす。
ここまでくるとゴルダも言っても無駄だと悟り、葉巻のようなものに火をつけた。

「精神世界で生き始めて何年くらいだ?」

葉巻を吸いながら問うゴルダにナルファリンシンズは爪を削る手を止め、顔を上げるときょとんとした顔で

「さぁ?少なくとも3桁年は経過していると思うわ、精神世界での時の概念は望まないと構築されないのよね。でも、記憶は薄れる薄れる」

覚えているはずがないと言い切り、また爪を手入れしだす。

「そろそろ俺は精神世界から離れるとしよう、いい加減寝る」

「そう、おやすみなさい」

「もう寝るのかい?僕はもう少し居るけど」

寝ると言ってグラスを消し、葉巻を置いたゴルダは談話室を出た。
ゴルダが自身の精神世界に作り出している空間はこの談話室のみで、談話室の外は誰かの精神世界あるいは精神世界からの出口。
なお、ゴルダがこの談話室から出たとしても空間は維持される。
なぜならクェムリーヴェスはこの談話室内でほとんどを過ごしているからだ。
ゴルダが入ってきていないときは勝手に談話室を作り替えたりして使っているようではあるが。

さて、その数時間後。
ゴルダはベッドからいつも通り起き上がり、一通り身支度を済ませると食事当番のため朝食の用意を始める。
半覚醒睡眠という、半分は寝て半分は起きる眠り方をしているゴルダは起床後1秒もかからず行動を開始できるのだが
クェムリーヴェスが魂にくっ付いてからはそれもやや難しくなっているのだという。

「意図的に切り替えられないことが欠点だ、この眠り方は」

サラダチキンをほぐしてサラダを作りつつ、ゴルダはナルファリンシンズのことを考える。
彼女が談話室へ入ってきた瞬間、ゴルダは自分の魂にクェムリーヴェスとは別の何かがくっ付いたような感覚を覚えた。
精神世界と魂も、また切っては切り離せない関係である以上致し方ないと言えば致し方ないのだが、魂にまで干渉してくるものはそう多くない。

「おい、起きてるか?」

ゴルダはクェムリーヴェスに声をかける。
すると、クェムリーヴェスとナルファリンシンズが同時に

「どうしたんだい?」

「おはよう、朝早いのね」

と応答してきたのでゴルダは無意識のうちに舌打ちする。
どうやらナルファリンシンズはゴルダの精神世界に居つくようになったようだ。

「今度から同時に話すな、1人ずつでだ。あとお前が俺の精神世界に居座るようになったことはこの際気にしない」

ゴルダはそれだけを言ってまた朝食の用意へ。
その間クェムリーヴェスとナルファリンシンズが何かを話していたが、聞いている限りではゴルダ自身のことのようであった。

「すでに俺の魂を侵食しているのか?まあそれは確定事項だろう。問題はどこまで入って来るかだが」

ミリシェンスが飲む紅茶用に湯を沸かしながら呟いたゴルダに、ナルファリンシンズがふわっと

「そこまで奥まで入り込めそうにないわね、だらだらと精神世界で生きてきたから魂にはくっつけてもそれ以上は」

魂にくっ付くのが精一杯であると断言。
だがその物言いからして、衰えた力を取り戻せれば全てを侵食することもたやすそうだ。
ナルファリンシンズを含めた夢竜の情報が少ない今は、本人から直接聞き出すか調べるほかない。

「それと、夢竜について私に聞いても無駄よ。精神世界で生きすぎて自分がどういう種族なのかすぐには思い出せないから。セイグリッドへ行ったら?」

聞こうとしていたことを読まれていたのか、ナルファリンシンズに自分がどういう種族だったのかすぐには思い出せないのでセイグリッドへ行けと言われた。
幸いにも今日は特に依頼が1つだけなので時間の余裕は十二分にある。

「こういう時に限ってシアから何の反応もないのも気がかりだ。城の図書室へ行くか」

そそくさと朝食を用意したうえで済ませ、ゴルダは依頼へと向かう。
今日の依頼は決して怪しくはない荷物運び。
ただの建築用の機械運びなのだが、依頼主である建築会社のトラックが1台修理のために足りないので軽トラックでもいいから出してくれというものだった。
依頼主との待ち合わせ場所へと向かう途中、車内でゴルダが流す音楽にナルファリンシンズが反応する。

「この曲、確かとある科学の超電磁砲(レールガン)のオープニングよね。意外だわ」

アニメの曲を聴くことを意外だと言い出したナルファリンシンズ。
だがゴルダは運転に集中しているために話は聞いている反応しない。

「こう見えてゴルダは平沢進とかも聞くから侮れないよ」

「平沢進?なんだか聞いたことがあるわね」

自由奔放に会話する2人を差し置き、ゴルダは引き続き運転に集中する。
自分の精神の中でこんなことをされたら集中もへったくれもないのではと思われがちだが、クェムリーヴェスが意図的に仕切りを作っているので問題ない。
仕切りの向こう側の話は聞こえるが、ゴルダの集中を決して邪魔することはないのだ。

「助かったぜ、いつも悪いな」

「危ないブツでなければお安い御用だ、また用があったら呼べ」

その後何事もなく依頼を終わらせたゴルダは、自分の軽トラへ再び乗り込んで一度家へ戻る。
帰路の途中、ゴルダはナルファリンシンズもとい夢竜が持つ精神属性と闇属性への適性に関し自分なりに探りを入れた結果を頭の中で展開。
正直なところ、本来の力を取り戻せばクェムリーヴェスを超えかねないほどの適性はあると見て間違いはない。
また、ゴルダ自身の精神属性耐性も突破されかねないが、ナルファリンシンズが芯まで侵食してくる可能性は現時点では低い。

「いまだシアからの反応なし、静観しているのかはたまた無視しているのか」

運転しながらそんなことを呟いていると、クェムリーヴェスから

「僕が感知した範囲ではシアは静観モードだね。何の意図があって静観しているのかは不明だけど」

シアが静観モードであることを告げられた。
だいたいこういう時に限って静観している場合はこっちから来るのを待っていることが多く、本当の様子見である。
以前ゴルダはなぜ分かってるなら来いと言わないとシアに問いただしたこともあったが、適当にはぐらかされた。

「ひとまず帰ることが先決だ」
ゴルダはそう決断し、アクセルを踏み込んで帰路を急ぐ。

場所は変わり、セイグリッド城図書室。
あの後飛ばしすぎと2人に言われながらも帰り着いたゴルダは家に鍵を放り投げ、座標指定テレポートでセイグリッドへとやって来た。

「泣竜じゃねえ、それはアルガントだ。かといって吸血竜でもない」

火竜族に関する本と比べると多いが他の種族と比べて少ない闇竜族の本棚を調べる。
闇竜族も火竜族と同じく国が消えたと同時にこの世界のあちこちあるいは異界へ散り、シアですらもまだちゃんとこの世界には居るということ以外は把握できていない。
故にまだ国があったころの本が多く、国が消えた後に出た本はほんのわずか。

「『夢竜備忘録』、この本だけか」

ようやく見つけ出した本は、まだ闇竜の国アルヴァスがあったころに書かれたとしか思えないほどに古い本。
奥付の発刊日は大陸歴2800年後半と実に200年近く前の本だ。
こんなにも古い本が状態の良い状態で置かれているのは、アルカトラスがそういった方向にも力を入れている証拠。

「発刊年見てふと思い出したんだけど、大陸歴2800年後半なら私はまだ子供だったわ」

奥付を調べてたゴルダに、ナルファリンシンズがそんなことを言う。
つまりナルファリンシンズの実年齢は200後半か300手前ということになる。

「でも、年ばかり重ねても何の意味もないことはあなたも分かるでしょう?無駄をひたすら積み重ねるだけの生。精神世界での生がまさにそれだった」

「俺と出会ってそれが変わったと?だがそれはただのきっかけだ、本当に変えられるか否かはお前次第」

遠回しにあなたと出会ったことで変われたと言うナルファリンシンズを、本当に変われるかどうかはお前次第だと言い切るゴルダ。
その後、『夢竜備忘録』を読んでいると、頭に紙飛行機でも当たったかのような違和感を感じたかと思いきや

「来て」

シアがただ一言こっちへ来いとだけ告げてきた。
何ともシンプルな呼びつけ方である。

そうしてシアのところへ行くと、寝起きと言わんばかりの顔で出迎えられた。
ゴルダはそれを見るや無言で目の前に座り、シアが覚醒するのを待つ。
やがて覚醒したシアは一旦人の姿でサフィが運んできた朝食を取り、また元の姿へ戻ってから

「ナルファリンシンズと話をさせて」

単刀直入にナルファリンシンズと話をさせろと言ってきた。
これにゴルダは少し考えた後に

「俺の体を借りて出てこれるか?」

ナルファリンシンズに変身能力を用いて出てこれないかと聞く。
それに対して帰ってきたのは、肉球のある大きな手で頭をぱふぱふされたかのような感覚。
肯定の意思表示とみなして間違いないだろう。

「ならば、出てこい。だが俺の意識は2割は最低でも残しておけよ」

そう言った次の瞬間。
急にゴルダの手、そして腕の骨格が変わりだした。
5本指から4本指へ、手は大きく、腕は太く、そして紫に近い青と水色の毛が生えだす。
さらに今までなかった肉球が出現し、爪も伸びる。

次に体自体の骨格が多少縮み、かなり太い尻尾が生えてきたかと思えば女性っぽい骨格に変わる。
ナルファリンシンズはどうやら女性のようである。
体毛が生えそろい、体のあちこちに模様が浮かび上がり、これまた大きな垂れ耳へと変わったところでゴルダもといナルファリンシンズは顔を上げ、自分の耳をかき上げると軽く頭を振るう。

「初めましてかしら?」

クェムリーヴェスと同じ斜めの瞳孔をした目でシアを見つめながら、ゴルダもといナルファリンシンズはお茶を頂戴という仕草をする。
シアは図々しいとも思わず、サフィを呼んで茶を準備させるとナルファリンシンズと共に飲み始めた。

「実際に会うのは初めてかしらね、夢竜たちは皆肉体を捨てて精神世界へ移り住んでしまったから。その理由を知る由もなかった」

茶を飲みながらナルファリンシンズになぜ精神世界へ移り住んだのかを遠回しに問うシア。
それにナルファリンシンズはこう答えた。

「肉体の縛りを捨てるためとでも言えばよいかしら?必要ならば誰かの精神へ入り込んで乗っ取ればいい話」

肉体の縛りを捨てるため。
精神世界に関してはアルカトラスとあまり触れないよう取り決めていたため無頓着に近い状態であったが、これを聞いてふと考えさせられる。
だがたとえ精神世界へ行けたとしても、その姿を自在に変えたりすることが可能なのは精神属性への高い適性があるもののみ。
それ以外のものは姿を変えることなど叶わない。

「でも肉体を捨てて、精神世界へ移り住めるのは限られたものだけ。だから私は新たな生を提供し続ける」

「私はあなたのしていることを否定するつもりなんてなくてよ?神としての仕事を全うできる、素晴らしいことじゃないの」

その言葉に、なぜかシアは救われた気がした。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ナルファリンシンズ

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種族:夢竜(闇と精神属性への適性が極めて高い)
性別:♀
身長:1.5m
年齢:不詳
性格:おっとりしているようで棘のある言動が見え隠れする
それは唐突にゴルダの精神世界に居座りだした。
どこから来たのかも分らず、名だけを名乗り、姓は忘れたという。
ゴルダの精神世界へ居座り続けるうちに、魂をも侵食しだす。
やがては彼女も、1つの魂へと結合される。
クェムリーヴェスに匹敵し、本気を出せばそれ以上の精神属性を持つ彼女の実力は未知数。
しかしそれでもゴルダの精神を根元まで侵食することはできなかった。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

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