氷竜の創作部屋

創作(一次・二次混同)の中でも特に小説を掲載

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おしながき

うちの連中プロフリンク
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竜医(幻想獣医)のあれこれ
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大陸と異界の関わりetc
大陸の魔法に関して
雑多な創作設定・ネタまとめ
---------------一次創作小説(自キャラオンリー)----------
当ブログに掲載されている小説は、短編連載物中心で「こういった現代文明とファンタジーが混じったような世界での各キャラの日常」をテーマにしております。
とても長いので細かく分割
その1
その2
その3
その4
その5
その6
---------------------一次創作小説(交流系)-------------------
頻出するよそ様のキャラのリンクはここに
雨月以下王子s
レナ
メリエル以下召喚獣たち
ドラビット族
----------------以下各リンク集--------------------------------
その1
その2
その3
その4
-------------------二次創作小説--------------------------------
物は試しで設置、注意表現含むものが多いかもしれない

・マキュッと変身
アルガティアのマーキュライトカーバンクル化、Transfur要素入り
1
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未分類 |

夢竜住まいし精神世界

ここはゴルダの精神世界上に作られた談話室。
いつもは1人なのだが、クェムリーヴェスがやってきてからは2人でこの空間を共有している。
魂にくっ付いている関係上、クェムリーヴェスが単体で具現化できるのはこの世界の中のみ。

「しかしなんでまた君はあんな仕事を受けたんだい?」

「受けようが断ろうが、面倒ごとになることは目に見えていたから受けた。結果的には断ったほうが面倒ごとは少なかったが」

精神世界上でのみ面と向かって話せるため、ゴルダとクェムリーヴェスの会話は毎日こんなものばかり。
たまにゴルダがやっているゲームの話や料理の話などもするのだが、大抵は仕事に関する話が多い。

「ま、いいけどさ。君らしいといえば君らしいし。でも受ける仕事は考えた方がいいよ?異界だとそこの警察とかの世話になりかねないし」

「中国に依頼で行ったときの話か?あの時は口止め料で高くついたな」

ゴルダはウォッカ片手に、クェムリーヴェスはジンライムを片手にそれぞれ話をしている。
今日の談話室は暖炉に火はついておらず、窓から見える空は快晴の月夜。

「ところでさ、君も気づいてると思うけどさっきから君と僕以外の気配がするんだよね。少なくとも見知ったものじゃない」

ゴルダのグラスに入っていた氷が溶け、カランと音を立てた瞬間。
クェムリーヴェスが耳をかすかに動かしてそんなことを呟く。

「口には出さんかったが、確かにもう1人いるな。俺とお前くらいに精神属性が強い」

クェムリーヴェスの一言にゴルダはグラスをテーブルへ置き、ソファから立ち上がる。
今のところ敵意は感じられないが、隠しているだけの可能性もあるため油断はならない。

「誰かは分からんが、入り口の前に突っ立ってないで入ってこい」

「ええ、そうさせてもらいますわ。でも、どうしてここでも飲んだくれているのかは存じ上げませんか」

皮肉のようにも聞えるようなことを言いつつ、水色を基調とした竜が扉を開けて談話室へと入って来る。

「君、夢竜だね。闇竜の国が消えたと同時に精神世界へ肉体ごと旅立ったとされる」

夢竜。
精神属性への適性が極めて高いとされる闇竜の一種族であるが、かの闇竜国アルヴァスが国としての概念を消したと同時に
肉体ごと精神世界へ移住し、この世界から姿を消したとされる。
一部の夢竜はこの世界へ残り、現在も暮らしているとのことだが真相は不明。
なぜなら、あのシアですらも夢竜たちの動向を把握しきれていないからだ。

「よくお分かりで、でも無理もないかしら。あなたも精神属性と闇属性の使い手のようだし」

夢竜は意外と大きい右手を口元に当てながらクェムリーヴェスに言う。
一方ゴルダは何事もなかったかのようにウォッカを注ぎ足し、また飲んでいた。

「あらあらあら、そこのも居たの。ただの飲んだくれかと思ったけど、そうでもなさそう」

ウォッカを飲むゴルダに、夢竜はまた飲んだくれなどと馬鹿にするように言いながら近寄り、左手で腹を小突く。

「何がしたい?酒が欲しいなら入れよう、何を飲む?」

腹小突きをそういうニュアンスで汲み取ったのか、酒が飲みたいのならば何がいいと夢竜に聞くゴルダ。
夢竜は少し考えるように顎のあたりに手を置き、沈黙。

「ジントニック」

数十秒沈黙したのち、夢竜はジントニックを所望。
ゴルダは余計なことは何も言わず、ジントニックをそそくさと作って出す。

「ありがとう、でもその動じなさそうな顔はいかがなものかと」

「口の利き方を考えたまえお嬢さん」

夢竜の嫌味ったらしい物言いに、さすがのゴルダもどうなのかと思ったのだろう。
口の利き方を考えろと言ったところ、夢竜は目を怪しげに光らせながら

「そうは言ってもあなた、嫌味言われることを何とも思ってない節があって?」

ゴルダの心を読んできた。
言うまでもなく、この夢竜に嫌味などを言われてもゴルダは何とも思っていない。
なぜかと言うと、ムキになったところでどうしようもないと思っていた節があったからだ。

「どうでもいいことだ、それより名を名乗れ。読めるなら俺の名は名乗らずとも分かるだろ」

どうでもいいことと切り捨て、夢竜に名を名乗れと言い出したゴルダ。
夢竜はまたあらあらあらと呟き、一言。

「ナルファリンシンズ。姓は忘れたわ、私の記憶力も意外とポンコツね」

と名乗り、ジントニックを飲む。
夢竜改めナルファリンシンズは談話室の中を一通り見渡すとソファへ座り、

「あなたもおかけにならない?こちらが座り、そっちが立って話をされるとなんだか嫌なのよね」

遠回しに立って話をされると見下されているようで嫌だと言うナルファリンシンズに、
ゴルダは反論も肯定もせず向かい合うように座る。
ナルファリンシンズはそんなゴルダに一瞬笑いかけると、グラスを置いて自分の爪の手入れを始めた。

どこから爪を手入れする道具を出したのかと思われがちだが、精神世界では自分が欲しいと思ってイメージしたものは
大体具現化して取り出すことができる。
無論、誰もが何でもかんでも出せるわけではなく精神属性への適性によって取り出せるものの種類などが変わる。
ナルファリンシンズレベルの適性であれば、爪の手入れ道具を出すことなど朝飯前。

「ここで爪の手入れはやめていただきたいものだが」

酒を飲む場所で爪の手入れをするなと言うゴルダに、ナルファリンシンズはゴミ箱を出し、その上で爪を削りだす。
ここまでくるとゴルダも言っても無駄だと悟り、葉巻のようなものに火をつけた。

「精神世界で生き始めて何年くらいだ?」

葉巻を吸いながら問うゴルダにナルファリンシンズは爪を削る手を止め、顔を上げるときょとんとした顔で

「さぁ?少なくとも3桁年は経過していると思うわ、精神世界での時の概念は望まないと構築されないのよね。でも、記憶は薄れる薄れる」

覚えているはずがないと言い切り、また爪を手入れしだす。

「そろそろ俺は精神世界から離れるとしよう、いい加減寝る」

「そう、おやすみなさい」

「もう寝るのかい?僕はもう少し居るけど」

寝ると言ってグラスを消し、葉巻を置いたゴルダは談話室を出た。
ゴルダが自身の精神世界に作り出している空間はこの談話室のみで、談話室の外は誰かの精神世界あるいは精神世界からの出口。
なお、ゴルダがこの談話室から出たとしても空間は維持される。
なぜならクェムリーヴェスはこの談話室内でほとんどを過ごしているからだ。
ゴルダが入ってきていないときは勝手に談話室を作り替えたりして使っているようではあるが。

さて、その数時間後。
ゴルダはベッドからいつも通り起き上がり、一通り身支度を済ませると食事当番のため朝食の用意を始める。
半覚醒睡眠という、半分は寝て半分は起きる眠り方をしているゴルダは起床後1秒もかからず行動を開始できるのだが
クェムリーヴェスが魂にくっ付いてからはそれもやや難しくなっているのだという。

「意図的に切り替えられないことが欠点だ、この眠り方は」

サラダチキンをほぐしてサラダを作りつつ、ゴルダはナルファリンシンズのことを考える。
彼女が談話室へ入ってきた瞬間、ゴルダは自分の魂にクェムリーヴェスとは別の何かがくっ付いたような感覚を覚えた。
精神世界と魂も、また切っては切り離せない関係である以上致し方ないと言えば致し方ないのだが、魂にまで干渉してくるものはそう多くない。

「おい、起きてるか?」

ゴルダはクェムリーヴェスに声をかける。
すると、クェムリーヴェスとナルファリンシンズが同時に

「どうしたんだい?」

「おはよう、朝早いのね」

と応答してきたのでゴルダは無意識のうちに舌打ちする。
どうやらナルファリンシンズはゴルダの精神世界に居つくようになったようだ。

「今度から同時に話すな、1人ずつでだ。あとお前が俺の精神世界に居座るようになったことはこの際気にしない」

ゴルダはそれだけを言ってまた朝食の用意へ。
その間クェムリーヴェスとナルファリンシンズが何かを話していたが、聞いている限りではゴルダ自身のことのようであった。

「すでに俺の魂を侵食しているのか?まあそれは確定事項だろう。問題はどこまで入って来るかだが」

ミリシェンスが飲む紅茶用に湯を沸かしながら呟いたゴルダに、ナルファリンシンズがふわっと

「そこまで奥まで入り込めそうにないわね、だらだらと精神世界で生きてきたから魂にはくっつけてもそれ以上は」

魂にくっ付くのが精一杯であると断言。
だがその物言いからして、衰えた力を取り戻せれば全てを侵食することもたやすそうだ。
ナルファリンシンズを含めた夢竜の情報が少ない今は、本人から直接聞き出すか調べるほかない。

「それと、夢竜について私に聞いても無駄よ。精神世界で生きすぎて自分がどういう種族なのかすぐには思い出せないから。セイグリッドへ行ったら?」

聞こうとしていたことを読まれていたのか、ナルファリンシンズに自分がどういう種族だったのかすぐには思い出せないのでセイグリッドへ行けと言われた。
幸いにも今日は特に依頼が1つだけなので時間の余裕は十二分にある。

「こういう時に限ってシアから何の反応もないのも気がかりだ。城の図書室へ行くか」

そそくさと朝食を用意したうえで済ませ、ゴルダは依頼へと向かう。
今日の依頼は決して怪しくはない荷物運び。
ただの建築用の機械運びなのだが、依頼主である建築会社のトラックが1台修理のために足りないので軽トラックでもいいから出してくれというものだった。
依頼主との待ち合わせ場所へと向かう途中、車内でゴルダが流す音楽にナルファリンシンズが反応する。

「この曲、確かとある科学の超電磁砲(レールガン)のオープニングよね。意外だわ」

アニメの曲を聴くことを意外だと言い出したナルファリンシンズ。
だがゴルダは運転に集中しているために話は聞いている反応しない。

「こう見えてゴルダは平沢進とかも聞くから侮れないよ」

「平沢進?なんだか聞いたことがあるわね」

自由奔放に会話する2人を差し置き、ゴルダは引き続き運転に集中する。
自分の精神の中でこんなことをされたら集中もへったくれもないのではと思われがちだが、クェムリーヴェスが意図的に仕切りを作っているので問題ない。
仕切りの向こう側の話は聞こえるが、ゴルダの集中を決して邪魔することはないのだ。

「助かったぜ、いつも悪いな」

「危ないブツでなければお安い御用だ、また用があったら呼べ」

その後何事もなく依頼を終わらせたゴルダは、自分の軽トラへ再び乗り込んで一度家へ戻る。
帰路の途中、ゴルダはナルファリンシンズもとい夢竜が持つ精神属性と闇属性への適性に関し自分なりに探りを入れた結果を頭の中で展開。
正直なところ、本来の力を取り戻せばクェムリーヴェスを超えかねないほどの適性はあると見て間違いはない。
また、ゴルダ自身の精神属性耐性も突破されかねないが、ナルファリンシンズが芯まで侵食してくる可能性は現時点では低い。

「いまだシアからの反応なし、静観しているのかはたまた無視しているのか」

運転しながらそんなことを呟いていると、クェムリーヴェスから

「僕が感知した範囲ではシアは静観モードだね。何の意図があって静観しているのかは不明だけど」

シアが静観モードであることを告げられた。
だいたいこういう時に限って静観している場合はこっちから来るのを待っていることが多く、本当の様子見である。
以前ゴルダはなぜ分かってるなら来いと言わないとシアに問いただしたこともあったが、適当にはぐらかされた。

「ひとまず帰ることが先決だ」
ゴルダはそう決断し、アクセルを踏み込んで帰路を急ぐ。

場所は変わり、セイグリッド城図書室。
あの後飛ばしすぎと2人に言われながらも帰り着いたゴルダは家に鍵を放り投げ、座標指定テレポートでセイグリッドへとやって来た。

「泣竜じゃねえ、それはアルガントだ。かといって吸血竜でもない」

火竜族に関する本と比べると多いが他の種族と比べて少ない闇竜族の本棚を調べる。
闇竜族も火竜族と同じく国が消えたと同時にこの世界のあちこちあるいは異界へ散り、シアですらもまだちゃんとこの世界には居るということ以外は把握できていない。
故にまだ国があったころの本が多く、国が消えた後に出た本はほんのわずか。

「『夢竜備忘録』、この本だけか」

ようやく見つけ出した本は、まだ闇竜の国アルヴァスがあったころに書かれたとしか思えないほどに古い本。
奥付の発刊日は大陸歴2800年後半と実に200年近く前の本だ。
こんなにも古い本が状態の良い状態で置かれているのは、アルカトラスがそういった方向にも力を入れている証拠。

「発刊年見てふと思い出したんだけど、大陸歴2800年後半なら私はまだ子供だったわ」

奥付を調べてたゴルダに、ナルファリンシンズがそんなことを言う。
つまりナルファリンシンズの実年齢は200後半か300手前ということになる。

「でも、年ばかり重ねても何の意味もないことはあなたも分かるでしょう?無駄をひたすら積み重ねるだけの生。精神世界での生がまさにそれだった」

「俺と出会ってそれが変わったと?だがそれはただのきっかけだ、本当に変えられるか否かはお前次第」

遠回しにあなたと出会ったことで変われたと言うナルファリンシンズを、本当に変われるかどうかはお前次第だと言い切るゴルダ。
その後、『夢竜備忘録』を読んでいると、頭に紙飛行機でも当たったかのような違和感を感じたかと思いきや

「来て」

シアがただ一言こっちへ来いとだけ告げてきた。
何ともシンプルな呼びつけ方である。

そうしてシアのところへ行くと、寝起きと言わんばかりの顔で出迎えられた。
ゴルダはそれを見るや無言で目の前に座り、シアが覚醒するのを待つ。
やがて覚醒したシアは一旦人の姿でサフィが運んできた朝食を取り、また元の姿へ戻ってから

「ナルファリンシンズと話をさせて」

単刀直入にナルファリンシンズと話をさせろと言ってきた。
これにゴルダは少し考えた後に

「俺の体を借りて出てこれるか?」

ナルファリンシンズに変身能力を用いて出てこれないかと聞く。
それに対して帰ってきたのは、肉球のある大きな手で頭をぱふぱふされたかのような感覚。
肯定の意思表示とみなして間違いないだろう。

「ならば、出てこい。だが俺の意識は2割は最低でも残しておけよ」

そう言った次の瞬間。
急にゴルダの手、そして腕の骨格が変わりだした。
5本指から4本指へ、手は大きく、腕は太く、そして紫に近い青と水色の毛が生えだす。
さらに今までなかった肉球が出現し、爪も伸びる。

次に体自体の骨格が多少縮み、かなり太い尻尾が生えてきたかと思えば女性っぽい骨格に変わる。
ナルファリンシンズはどうやら女性のようである。
体毛が生えそろい、体のあちこちに模様が浮かび上がり、これまた大きな垂れ耳へと変わったところでゴルダもといナルファリンシンズは顔を上げ、自分の耳をかき上げると軽く頭を振るう。

「初めましてかしら?」

クェムリーヴェスと同じ斜めの瞳孔をした目でシアを見つめながら、ゴルダもといナルファリンシンズはお茶を頂戴という仕草をする。
シアは図々しいとも思わず、サフィを呼んで茶を準備させるとナルファリンシンズと共に飲み始めた。

「実際に会うのは初めてかしらね、夢竜たちは皆肉体を捨てて精神世界へ移り住んでしまったから。その理由を知る由もなかった」

茶を飲みながらナルファリンシンズになぜ精神世界へ移り住んだのかを遠回しに問うシア。
それにナルファリンシンズはこう答えた。

「肉体の縛りを捨てるためとでも言えばよいかしら?必要ならば誰かの精神へ入り込んで乗っ取ればいい話」

肉体の縛りを捨てるため。
精神世界に関してはアルカトラスとあまり触れないよう取り決めていたため無頓着に近い状態であったが、これを聞いてふと考えさせられる。
だがたとえ精神世界へ行けたとしても、その姿を自在に変えたりすることが可能なのは精神属性への高い適性があるもののみ。
それ以外のものは姿を変えることなど叶わない。

「でも肉体を捨てて、精神世界へ移り住めるのは限られたものだけ。だから私は新たな生を提供し続ける」

「私はあなたのしていることを否定するつもりなんてなくてよ?神としての仕事を全うできる、素晴らしいことじゃないの」

その言葉に、なぜかシアは救われた気がした。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

小説(一次) |

ナルファリンシンズ

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種族:夢竜(闇と精神属性への適性が極めて高い)
性別:♀
身長:1.5m
年齢:不詳
性格:おっとりしているようで棘のある言動が見え隠れする
それは唐突にゴルダの精神世界に居座りだした。
どこから来たのかも分らず、名だけを名乗り、姓は忘れたという。
ゴルダの精神世界へ居座り続けるうちに、魂をも侵食しだす。
やがては彼女も、1つの魂へと結合される。
クェムリーヴェスに匹敵し、本気を出せばそれ以上の精神属性を持つ彼女の実力は未知数。
しかしそれでもゴルダの精神を根元まで侵食することはできなかった。

テーマ:キャラクター設定/紹介 - ジャンル:小説・文学

創作関係全般 |

ヘルハウンディアとゴルダ

「あらあら、おかしいと思いません?普通サイコパスは自分から自称するはずはないんですけれど」

「あえて自称する真性も居るという。俺はそういう真性に会ったことがないが、サイコパスに共通しているのは厄介極まりないという点だ」

ある日、ゴルダの家に唐突にやって来た瑠璃夢の知り合いと称する黒犬、ヘルハウンディア。
その物腰の柔らかさにフウやユウが懐くのは容易かったのだが、
ゴルダだけはどうにもヘルハウンディアのある一側面が気になって仕方なかった。
それは----

『誰かを殺すことを一切躊躇しない、サイコパスもしくは狂者特有の罪悪感のなさ』

読めない瑠璃夢、人を利用することをいとわないセフィール、暗殺者の顔を持つコロン。
癖のある者たちと関わってきた中でも、ヘルハウンディアのこのサイコパスあるいは狂者特有の罪悪感のなさという顔にゴルダは興味を持った。
だが、ヘルハウンディアも馬鹿ではない故にそれについて触れられてもはぐらかしたりして表に出そうとしない。

「この紅茶、おいしいですね。瑠璃夢が褒めるだけのことはあります」

「あらありがとう。でも私の淹れ方って癖が出るのよね」

ミリシェンスを褒めているところを見るに、サイコパスもとい狂者の一側面をひた隠すために社交性だけは磨きをかけている様子。
ゴルダはそんなヘルハウンディアに探りをかけようとしたが、クェムリーヴェスから

「やめたほうがいいよ。この亜人、精神属性への適性も只者じゃない。ましてや狂者だから『呑まれる』よ?」

などと言われたためやめることにした。

やがてティータイムを終えて、フウとユウに混じってゲームをしだしたヘルハウンディア。
難なくコントローラーを握って遊んでいる辺り、現代文明に疎いというわけでもないらしい。

「あなたはやらないんですか?」

ヘルハウンディアに一緒にマリオパーティをしないのかと聞かれ、ゴルダは首を横に降って

「こいつらが起きているとできないゲームがしたくてな。お前は知っているかは分からんがアウトラスト2とかそういうのだ」

「その無表情な顔で、そんなホラーゲームをするのなら是非とも見てみたいものですね。今夜泊まっても?」

アウトラスト2などをやりたいから今はいいと返したゴルダに、
ヘルハウンディアはにっこり笑ってプレイしているのを見てみたいので泊まっていいかと聞いてきた。

「知り合ったばかりの奴をやれそれ泊めるほど、俺は警戒心が薄いわけではない。
 第一お前が瑠璃夢の知り合いだというのも、半信半疑だ。もう一度言うが、お前には狂者の一面が垣間見える。
 瑠璃夢は読めないだけだったからいい、お前はそういう問題じゃない。だからああいいぞとは答えられん」

完全に信用しているわけではないし、いきなり深く信用するわけにもいかんと言い切ったゴルダに対し、
ヘルハウンディアは顎のあたりに片手を当てながら上目遣いでゴルダをじっと見る。

「色気使いしても俺の意思が変わらんことくらい、お前も片鱗ながら理解しているはずだ。ヘルハウンディア」

「それもそうですよねぇ、ゴルダさんって女の色気とは程遠い世界で生きてきたとしか思えませんし、
 ましてやそういう方向な方でもない。三大欲求の一つがすっぽり抜けた状態でどう生きてきたんでしょうか?」

「俺の性欲は知識を探求する欲ヘと全て消えた。そして言ってしまうと、俺の男にあるべきものは持病の薬の副作用で
 壊死して手術で切除済みだ」

「まぁ」

少々自身の胸を持ち上げるような感じで腕を組みながら話を聞いていたヘルハウンディア。
可もなく不可もなしなどころかやや豊満なそ胸を、ゴルダはまるで診察する医者のような目線で見やる。

「触ろうともしなければ、性的な目でも見てこない。本当に不思議なお方。
 でも、もしそんな目で見てきたら、首をへし折って殺してたところですけどね。ふふ、ふふふ……」

「何が言いたい?その答えを聞くつもりはないから答えんでいいが。
 それと用あって俺は少し出かけるが、あまりフウやユウに変なことするなよ」

「ご心配におよびませんよ、行ってらっしゃい」

これ以上ヘルハウンディアと話していると疲れると判断したゴルダは、
ヘルハウンディアとのティータイム中にミリシェンスから言われた夕食の食材を買いに出る。

「あなたの服、ほつれてない?胸のあたりが」

「直してもすぐほつれるんですよね」

またゲームに没頭していると、ふと隣へやって来たミリシェンスに服がほつれてないかと聞かれたヘルハウンディア。
都度都度自分で縫い直してはいるのだが、それでも自分が気が付かないうちにほつれてしまう事が多い。

「直せるけど直す?一応替えの服はあるし、1時間位もらえれば」

「それじゃあ、着替えとミシンとか貸してもらえますか?自分で直せるので」

ミリシェンスに直すかどうかと聞かれ、着替えとミシンなどを貸してもらえるかどうかをヘルハウンディアは聞く。
その問いにミリシェンスはヘフィアにゴルダと共用で使っているミシンと裁縫道具といつも一着は置いている
聖竜布の服を差し出す。

「それじゃあ、借りますね」

といって着替えるべく、トイレへ。
なぜトイレなのかというと、目に入った限りで着替えられそうな場所がそこしかなかったからだ。

それからしばしの間を置いてトイレから出てきたヘルハウンディアは、
自身の体毛の色とは反発する白い服装をしていた。
着た直後は不釣り合いなサイズでなんでこんなものをと思っていたのだが、
数秒してからヘルハウンディアのサイズに合わせて突如縮んだのでこれまた何この服はとヘルハウンディアは思うのだった。

「大丈夫だったかしら?その服、この世界の創造神である聖竜の毛から作られた布で出来てるから
 あなたのような地獄の住人には属性的にきついかと思ったけど」

ふと着替えてできたところを、ミシンと裁縫道具を用意し終えたミリシェンスに気づかれてそんなことを聞かれたヘルハウンディア。
ヘルハウンディアはそんなミリシェンスにふふっと笑いながら

「なーんとも、ありませんでしたよ?それにしてもこの服って不思議ね。着るもののサイズに合わせて変化するようですし」

なんともなかったと返し、自分のもともと着ていた服のほつれ直しを始める。
それをみたミリシェンスはまあ大丈夫だろうと家事の続きへと戻った。

一方その頃ゴルダはというと、悪い意でタイミングよく瑠璃夢と出くわして共に買い物をしていた。

「なんじゃ、ヘルハウンディアのやつ来ているのか?」

「お前の知り合いだと言うから家に上げたが、黒い部分の見え隠れがすさまじい」

「あやつはそんなやつじゃ。だが正直私も、ヘルハウンディアの殺しに対して躊躇しないという点はいただけぬが」

買い物をしながらそんな会話を交わすゴルダと瑠璃夢。
何も知らないものからすれば、この2人はなんて会話をしているんだと思われがちであるが一切気にしないのもまたこの2人である。

「して、今日は何を作るつもりなのだ?」

「ミリシェンスが考えているから俺は分からん、食材買ってこい言われて来ただけだ」

「なるほどな」

青果コーナーでセロリ、レタスのようでそうでない野菜、ズッキーニを選定しながら瑠璃夢に献立を聞かれるも、
ミリシェンスが考えているので自分は知らないし、買い物に来ているのは買ってこい言われただけだと話すと、
瑠璃夢は無理やり納得したような返事を返す。

「あと一つお前に聞きたいことがある。ヘルハウンディアから地獄出身であることをほのめかされたことはあるか?」

「はて?あやつがその類いのことを言った記憶は私にはない。期待には添えられんな」

ここでふと、瑠璃夢なら知っているだろうとヘルハウンディアから地獄出身であるとほのめかされたことがあるかどうかを聞くゴルダ。
だが、瑠璃夢の答えは記憶にないの即答。
嘘をついているようにも思えたのだが、ゴルダは深く追求せずに軽く瑠璃夢の方を見て頷くと青果コーナーを抜けて缶詰などが並ぶコーナーへ。

「お主に言おうかどうか迷ったが言うことにした。
 ヘルハウンディアとの関わりは程々にしておくのだ。あのセフィールのように利用されても知らんぞ。
 あやつは温和そうに見えて、人を己が掌の上で踊らすのに長けている」

「忠告どうも」

カーバンクルビーンズ(高い魔力を秘めた食用豆、味は食べる者により異なる。合わないと腐った納豆のような味がする)の水煮の缶詰を
3つほどカートへ入れながら瑠璃夢にヘルハウンディアに関わりすぎるなと忠告され、
軽い返事を返してから今度はエーテルパイン(赤土ではなくエーテルを多く含む土でしか育たないパイン、エーテルは果糖になるため害はない)と、
エルフマンゴー(リフィルでしか育たないマンゴー、エルフが多く住む地でしか育たない。甘いというよりすっぱい)のシロップ漬けの缶詰の他にも
いろんな果物の缶詰をカートへ入れるゴルダ。

「フルーツカクテルとやらか?」

「ミリシェンスが買ってこいと渡したメモに書いてあるものからしてそうだろう。だがあいつのフルーツカクテルは若干酒が入る」

「私は酒は平気だ。こう見えて酒は飲める年だ」

「分かった分かった」

そんなこんなでゴルダと瑠璃夢は買い物を済ませて帰路へつくのだった。

「ふう、直りましたよ」

そしてその一方では、ヘルハウンディアが自身の服のほつれを直し終えて着替えるところ。
だがしかし、ほつれを直したことで逆にほつれていたときよりも胸のあたりがきつく感じた。

「ほつれの直し方間違えましたかね?」

着替え終えた瞬間から感じる胸のあたりの違和感を気にしながら言うヘルハウンディアに、
ヘフィアはなるほどねという顔をしてヘルハウンディアの胸の辺りを指すと何かを呟く。
するとどうだろうか、ほつれを直したことで感じていた胸のあたりの違和感がすっと消えて程よい感覚になったのだ。

「サイズ直しの魔法ってやつよ、バストでもウエストでもどこでも直せるわ」

「便利ねぇ」

そんな話をしていると、どうやらゴルダが帰ってきたらしい。
だがヘルハウンディアはゴルダとは違うもう1人の気配を感じて

「瑠璃夢、久しいわね。いつぶりかしら?」

すかさず瑠璃夢の名を口に出して帰ってきたゴルダの方を見やる。
瑠璃夢は一瞬ヘルハウンディアを渋い顔で見たが、何も言わずにユウとフウのところへ。

「ありがとう、これで夕食は大丈夫よ」

「客人が来ている以上お前では手が足りんだろ、今日は当番じゃないが手伝うぞ」

ミリシェンスに買ってきたものを渡すついでに、
瑠璃夢とヘルハウンディアが来ているので自分も料理をすると言い出したゴルダに

「いいわ、ヘフィアにやらせるから。それよりヘルハウンディアを注視してなさい。どうにも引っかかるの」

ミリシェンスはヘフィアにやらせるからヘルハンディアを見ているように言う。
引っかかるとは言うのだが、ゴルダも同じくヘルハンディアのことで引っかかっており、
聞きたいこともあるので二つ返事で了承してハルハウンディアのところへ。

「さて戻ったわけだが」

「お帰りなさい」

ヘルハウンディアと少々距離を置いて座ったゴルダはひとまず戻ったことを伝える。
それに対してヘルハウンディアは器の小さいものならば、
馬鹿にされたとしか思えないような笑みとともにお帰りなさいと返す。

「瑠璃夢とはどう出会った?」

単刀直入に切り出してきたゴルダに、ヘルハウンディアは一瞬不意をつかれたような顔をして
自分の手を見つめながら意味もなく犬歯を舐めつつゴルダにそれを見せ、こう返す。

「それはあなたが知って何かメリットのあることですか?あるからこそ聞くんでしょうけど。
 残念ながら、私も瑠璃夢との慣れ始めはよく覚えてはいないんですよね。
 互いにいつの間にか知り合いになっていた。ただそれだけのことです」

ヘルハウンディアが本当のことを言っているのか?あるいは嘘をついているのか?
試しに精神属性で探りを入れてみたのだが、その戻り値はまるで適当に材料をミキサーにかけてドロドロにした何かのよう。
瑠璃夢のように嘘をついているのかすらも判別できない。

「記憶にございません、といったところか。それはそれで正直でいい。
 もう一つ聞きたいことがある、こっちが本命と言ってもいいかもしれないな」

頭に乗ってきたマティルーネを無視しつつ、
ゴルダはこれが本題だとヘルハウンディアの方へと向き直り、目を細める。

「ふふふ……そんなに怖い顔しなくても、私は答えられる範囲であれば聞かれたことには答えますよ」

目を細めて自分を見てきたゴルダに、
ヘルハウンディアはかすかに笑いつつそんなに怖い顔をしなくてもと言う。

「地獄の出身かそうではないか、それが知りたい。お前から冥府のものの気配を感じて仕方がない」

地獄の出身か否か。
ゴルダがヘルハウンディアに最も聞きたいのはただそれだけ。
ヘルハウンディアはその問いに対し、また自分の胸を両腕で抱え上げるように腕組みすると静かに一言、

「その問いに対する私の答えは、私でも分からない、よ。自分の生い立ちすらも分からないんですもの」

自分でも生い立ちが分からないので答えかねると返した。
そのイレギュラーな返事にゴルダはどこか納得の行かないような感じでふぅむと呟き、
改めてこんな質問をする。

「親の記憶もないか?親が地獄の出身ならお前から冥府のものの気配を感じてもなんらおかしくはない」

親の記憶があるか否か?
ユウやフウには核地雷級の禁則事項であるがゆえに一度も聞いたことが無いその問いをヘルハウンディアに投げたゴルダ。
親の記憶の有無に対してヘルハウンディアは口癖かのように口元をほころばせ、
ゴルダの胸のあたりに人差し指を当てて

「父方、母方、どちらか定かではないけどどっちかが地獄で生まれ育ったことだけは覚えている。
 でも私は親の記憶が判然としないの、まるでそこだけ記憶を切除されたかのようにね。
 ゴルダさんなら分かるかしら?これが第三者が意図的にしたものなのか、それとも私の本能がそうさせているのか」

両親のどちらかは分からないが地獄で一方が生まれ育ったことを覚えていると話すも、
それ以上の記憶は切り取られたかのように覚えていないのだという。
その原因が分かるかと、ヘルハウンディアは上目遣いで聞いてきたがゴルダは首を横に振って

「俺はどっちかというと内科や外科メインだ、精神や神経科は得意ではない」

遠まわしに力になれそうにないと断言。
ゴルダから告げられた冷たくも力強さを感じる返事に、ヘルハウンディアは突然大声で笑いだしたかと思えば

「やっぱりゴルダさんって瑠璃夢から聞いていた以上に面白い人だと分かりましたよ。
 今のであなたのこと気に入りました。私の好奇心をここまで刺激してくる人なんてそうそういませんからね。
 瑠璃夢もこんなに面白い人と知り合いなら早く押してくれてもいいのに」

面白いので気に入ったとゴルダに断言。
一方のゴルダはお前はは何を言っているんだとまたもや目を細めながら、
未だに自分の胸元に触れていたヘルハウンディアの人差し指にそっと両手を置いて

「それは分かった。だから俺の胸元に触れている手をどけるんだ」

触れている手をどけるよう淡々と言い放つ。
だがヘルハウンディアは触れるのをやめるどころか、今度は両手を腰の後ろへと回してハグの動作を取る。

「自分が何をしているか分かっているのか?」

「ええ、もちろんですよ」

分かってなさそうな返事を返しつつ、ゴルダを強く抱きしめるヘルハウンディア。
全くもってヘルハウンディアが何をたくらんでいるのか読めないため、
不機嫌そうに唸るゴルダは強引にヘルハウンディアを引き離して


「そろそろいい加減にしろ、お前の考えていることが微塵にもわか……」

いい加減にしろと言いかけるも、唐突にヘルハウンディアから頬にキスをされてしまう。

「もう好きにしろ。俺やミリシェンス達の邪魔をしたり、危害を加えなければ泊っても構わん」

これにゴルダは折れたと同時に呆れ果てて、邪魔したり危害を加えなければ泊っても構わないと話す。
ヘルハウンディアは怪しげな笑みを浮かべながら、ゴルダにこんな頼みごとをする。

「あなたを瑠璃夢の言っていたもう1つの姿で、抱っこしたいのですけど。変身してくれます?」

ヘルハウンディアの一見かわいいもの好きそうな頼みに、何か裏があるのではと訝しむゴルダ。
今の状況を一言で言うのならば、信用のかけらもない依頼主を相手に報酬交渉をしているようなもの。
今のゴルダは提示された報酬で依頼を受けるか否かの決断を迫られている。

「今でなくともいいだろう」

ゴルダの決断はまさかの返答保留。
なにやらそれを面白おかしそうな目で見ていた瑠璃夢がクックと笑いながら

「なんじゃ、優柔不断じゃの。即決せんか」

その場で決めろと煽る。
しかし瑠璃夢の煽りなど眼中にもないゴルダはまだ寒い外へと出る。

「セフィール以上に調子狂うぞあいつ」

煙草のようなものを吸いつつ頭を冷やしていると、ヘルハウンディアも外へ出てきて何も言わずに横へ立つ。

「どこまでお前は俺に興味を持っている?」

「どこまでかしら?」

そんな会話を1本吸い終えるまで続けた2人。
家の中へ戻ろうとした瞬間、唐突にまだ残っている雪をヘルハウンディアが丸めて投げつけてきた。
ゴルダはそれをカーバンクルの姿になって回避。

「捕まえましたわ」

回避して地面へ着地した瞬間、ヘルハウンディアに後ろから抱きかかえられて思わずゴルダは

「む……」

と声を出す。
だがヘルハウンディアはお構いなしに胸元あたりでゴルダを抱く。
その際、異様に胸を押し付けられる違和感を感じて

「あまり胸を押し付けてくれるな」

胸を押し付けるなと言ったのだが、ヘルハウンディアはゴルダの耳を甘噛みして

「嫌です、だってかわいいんですもの」

拒否の意を示し、しばらくそのまま立った状態で抱いていた。

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狐少女と狼少女とゴルダ

今、ゴルダの目の前には狐と狼の亜人族の少女が何かを期待するかのような目線を投げかけている。
この2人はゴルダがとある理由で保護し、この世界の出身ではないことと狐のほうがりりで狼のほうがるるという
名前であることしか分からない。

「参ったな」

ゴルダは街中でそれぞれの髪の色に合わせたへそ出しの服装の少女らの目の前で思慮にふける。
保護した時の状態が状態だったので最初は2人ともゴルダを警戒していたものの、
危害を加える相手ではないと判断したのかりりのほうは警戒を解いてくれたが、
るるだけはゴルダに牙を見せて威嚇するなどまだ警戒を解いてくれない。

ちなみに、この世界で相手に牙を見せるというのは喧嘩を売っているという意思表示になるのだが
ゴルダはそんなことは全く気にも留めない。
むしろ気にするのはならず者を含めたガラの悪い連中ばかりである。

「そういえばお兄さんの名前聞いてないよ?酷いことしないなら教えてほしいな」

りりにお兄さんと呼ばれてゴルダは複雑な気分になった。
なぜならばゴルダの実年齢は200代、とてもお兄さんと呼べる年ではないのである。
それだけ若く見られているということかと思いながらも、りりに一言だけ

「ゴルダ」

と自らの名を名乗った。
りりはその名前を聞いてこう返す。

「かっこいい名前だね!」

一方るるはゴルダとりりが普通に会話をしているのを見て、
何か言いたげな
視線を投げかけていたがゴルダはそれに気づかず

「移動しよう。ここではちょっと話がしにくい」

りりとるるに場所を移動しようと言い、ついて来るよう促す。
るるはそんなゴルダを睨みつけながらもりりと共について行く。

「いらっしゃい、ずいぶん長い間来てくれなかったじゃないの」

「こっちもいろいろある。それくらい汲み取ってくれ」

さすがにいつものカフェではダメと判断したのだろうか、
やって来たのはシャールイズの経営するカフェYrizer(イェリゼラ)。
このカフェならばゴルダを狙う輩が来てもシャールイズが潰してくれるのでまず問題はないといったところか。
欠点としては店内が最小限の照明しかなく暗いところだろう。

「小さいお客さんね」

シャールイズがりりとるるを見てニヤリと笑いながら言う。
ゴルダは手を出すんじゃねえぞという目でシャールイズを見て適当に注文。

「いいわ、ごゆっくり」

注文を聞いたシャールイズは店の入り口の表記を閉店に変え、
誰の邪魔も入らないようにしたうえで店の奥へと消える。
なぜシャールイズがこうしたのかというと、
ゴルダがした注文の中に

「誰の邪魔も入らないようにしてくれ」

という意味合いの注文が紛れていたからである。

「るる、そんなに拗ねるな。だが今から大事な話するから耳だけは貸してほしい」

しゃべろうともせずそっぽを向いたままのるるにゴルダはそう言って、
2人をこの後どうするかを話す。

「このまま俺が面倒を見るのもいいんだが、元の世界へ帰す方法も模索しなければならない」

だがしかし、それを聞いたとたんにりりが

「こっちでゴルダと暮らすの!絶対離れないもん」

ゴルダと暮らすなどとと言い出し、出身世界へは帰らない宣言をする。
それを聞いていたるるも

「りりが言うなら私も同じ。元の世界へは絶対に帰らない」

りりが言うなら自分も帰らないと断言。
それを聞いたゴルダは片手で頭を抱えてどうすんだ俺と言わんばかりの顔をする。

「ゴルダが助けたせいだね。りりは完全に懐いてるし、るるもほんの少しだけ信用してる」

クェムリーヴェスが割り入って言った一言に、ゴルダはさらに頭を抱えることになった。
さらにそこへ魔力切れ後に敵の援軍と(訳注「泣きっ面に蜂」)言わんばかりにメルムーアが

「ゴルダちゃん、その子たちについてだけど元の世界へ帰す術が今のところないわ。詳しくはこっちへ来た時に」

などと言ったがためにゴルダはシャールイズが運んできたコーヒーを一気飲み。
それが淹れたてのホットコーヒーだとすぐに気付いて

「あちっ」

となった。

ちなみにここで、りりとるるがどうやってゴルダと出会ったのかというと
たまたま依頼を終えて帰路に就こうとしていたゴルダの目に、
異界から迷い込んだものを拉致するなどして人身売買などを行う輩が
2人の少女に拘束具をつけてどこかへ連れて行こうとしていたのが目に留まり、
手裏剣投擲からのデザートイーグル発砲でその輩を撃退。
そのまま保護したのだ。

「いまさら1人や2人同居人が増えたところでなんともないではあるが」

頭の中でそう呟きながら2杯目のコーヒーを片手にりりとるるに、
そんなに離れたくないならば無理に引き離すのも慈悲が無さすぎるので、
しばらくは自分のところに住むように話す。

「あとりりはもう呼び捨てにしていたが、るるも基本的に俺のことは呼び捨てでいい。俺はさん付けされるのは複雑な気分になる」

自分のことは呼び捨てにしろと言われたるるは何で?という顔をしたが
ゴルダがしろと言っているならばしたほうがいいのではと思いながら

「よ、よろしく。ゴルダ」

少しかしこまり気味になりながらよろしくと言う。
ゴルダもそれに答えるかのように

「こちらこそ、りり共々な」

このやり取りからゴルダはりりが素直、るるがあまり素直ではない性格だと判断。
しかしゴルダにとっては素直でないのは大した問題ではない。
るるの性格よりも厄介で付き合い難いものと何度も依頼で関わってきているからだ。

「これおまけ、2人とも食べなさい」

そう言ってシャールイズが出したのはレアチーズタルトだがそうには見えないケーキ。
りりとるるはそれに何の迷いもなく食いつき、食べる。
ゴルダはシャールイズになぜまたと聞いたがシャールイズはそれ以上聞いたら噛むわよと言いたげな
目線を投げかけるだけ。

「やはりお前の考えていることは分からんな」

煙草のようなものを吸おうとしてりりとるるが居ることに気づいて片付けながら
ゴルダはおいしそうにケーキを食べる2人を眺めていた。

その後、Yrizer(イェリゼラ)を出て帰宅したゴルダ。
すでにミリシェンスへはメルムーアから話が通っていたらしく、
特に何も言われることは無かったが

「りり、るる。先にお風呂入りなさい。準備はしてるから」

先に風呂に入れとだけは告げて台所へ。
一方マティルーネはるるに若干の興味を示し、
ルァクルはまた同居人が増えるのかとだけ呟き。
レルヴィンはるるに近寄って匂いを嗅ぎ、自分と同じ匂いがするとゴルダに言う。
それ以外にもレルヴィンは何か言っていたが、ゴルダには自分と同じ匂いがする以外は訳せなかった。
なお、ヘフィアは所用でアストライズへ行っていて今日は居ない。

「おいおい、服はどうするんだ」

りりとるるが風呂に入っている間、ゴルダはミリシェンスに着替えをどうするのかと聞く。
するとミリシェンスは聖竜布の服を取り出した。
半袖と半ズボン1組で真っ白、サイズがだいぶ大きいが聖竜布の特性で着用者に合わせて変化するので
これと言って問題はない。
だが、この貴重というレベルを超えた聖竜布の服を2組もどこから持ってきたのかは謎のまま。

「ああ、メルムーアが魔法で投げてよこしたのか」

ゴルダはこの服をよこした主がメルムーアで間違いないと思いながら外へ出て一服。
どれくらい時間がたったかわからないが、吸い終わって家の中へ戻ってくるとミリシェンスに

「あなたも入ってきなさい、りりとるるはもう上がったわ」

そう言うミリシェンスの目線の先にはマリオパーティをするりりとるるの姿が。
ゴルダは分かったと返し、風呂場へ。
湯に入る気はなかったのでシャワーだけを済ませて上がってきたゴルダにりりとるるが

「ゴルダ、マリオパーティしよ?」

マリオパーティをしようと誘ってきたので3人でやることに。
その後はミリシェンスの作った夕食を食べ、
ゆっくりしているとゴルダはいつの間にか寝ていた上にカーバンクルの姿へ変身していた。

「あれ、このもふもふ誰?」

「誰だろ?」

目を開けるとりりとるるが自分を不思議そうに見ていたので

「ゴルダだが?」

自分であると言ってみることに。
すると声が同じだったためかりりとるるはゴルダに唐突に抱き着く。

「ぶっ」

いきなり2人に抱き着かれてゴルダは核石に触れられてビクッとしたものの
匂いで引き離す気にはなれなくなった。

「もふもふー」

りりとるるに左右からもふもふされ、
ゴルダはなんとも言えない顔をしながらしたいようにさせる。

「また寝ていたか」

再び目を覚ました時には時刻は日付が変わり午前1時過ぎ。
りりとるるはゴルダに抱き着いたまますやすやと寝息を立てていた。

「どのみちメルムーアの所に行かねばか」

両手に花の状態など眼中にもないゴルダは今後のことを考えながらまた寝る。
メルムーアとシアから何を言われるかも知らずに。

「起きなさい。りりとるるはもう朝食済ませてるから」

ミリシェンスに起こされ、自身の頬を引っ叩きながら目覚めるゴルダ。
一方りりとるるは2人でスマブラの真っ最中。
耳の辺りを掻きながら人の姿に戻り、朝食を黙々と食すゴルダにりりが

「ゴルダ、スマブラやろうよ」

スマブラをしようと誘ってきた。
まだほんのり湯気の立つコーヒーを片手にゴルダは少し考えたのちに

「後でな」

今は食事中だと言って退ける。
りりはそれにえーと言いたげな顔をしつつるるとのスマブラに戻った。

「お寝坊さんね」

「いきなり意思飛ばすな。コーヒー吹きかけただろうが」

突如メルムーアからの意思飛ばしが入り、ゴルダは吹きかけたコーヒーを飲み込んでから応答。
言わずともりりとるるを連れてこいとのことだろう。

「りりとるるの件か?」

「ええ、今日中に必ずきてね」

ミニトマトを食べつつメルムーアに聞くゴルダ。
メルムーアはそれを肯定、暇が出来たら今日中に一度来るよう告げて意思飛ばしをやめた。

「ゴルダ、スマブラ付き合って。りり弱い」

「弱いって何よー、るる吹っ飛ばし狙いしかしないじゃん」

メルムーアの邪魔がなくなったのでまた黙々と食べ始めたゴルダのところへ今度はるるがやって来て、
りりが弱いのでスマブラの相手をしてほしいと言ってきた。
これにりりは弱いとはなんだと噛み付き、りりとるるは互いに睨み合う。

「そうゲームでカッカするな、別のをやろう」

そう言って立ち上がったゴルダが出したのは、Horizon zero down。
すでにクリア済みなのだが雰囲気がとてもいいのでわざわざ引っ張り出したのだ。

なお、りりとるるはその世界観にあっという間に引き込まれた。

「ゴルダ、このゲーム何?」

しばらくHorizon zero downをプレイしていると、るるがソフトを保管している箱から出した一本のゲームを見て、ゴルダは渋い顔をする。
何を隠そう、そのゲームは色々な意で危ないアウトラスト2。

「るる、そのゲームはダメだ。片付けろ。怖いなんてもんじゃないゲームだ」

ゴルダの言い方から察したのか、るるはアウトラスト2を片付けて他のゲームを出す。

次にるるが出したのは、アウトラスト2よりはマシだがホラーゲームという面ではりりがどんな反応をするか分からないバイオハザード7。

「やりたいのか?」

いつの間にか頭に乗っていたマティルーネに気付いてからゴルダはるるに聞く。
るるは即座に頷いた。
どうやら本気のようだが、りりがどんな反応をするかが分からない。

「俺は構わんが、りりが大丈夫かどうかだな」

そう言いながらゴルダが横目でりりを見ると

「ふえぇ……ホラーゲーム嫌い」

あからさまな拒絶反応を示していた。
それでもるるはやる気のようなので、ゴルダは念押し気味に

「どうなっても知らんぞ」

とだけ言ってりりとマティルーネ、レルヴィンとルァクルを連れて家の外へ。。
その際るるが絶叫する声が聞こえてきたがゴルダは無視して外へと出た。

「まだ少し暑いね」

「この暑さもあと一週程だ。次第に涼しくなって冬を迎える」

いまだに照りつける夏の日差しに手を仰ぎながら言うりりに、
頭上のマティルーネを守るべくどこからか出した日傘をさしながらゴルダは夏もあと一週ほどで終わると返す。

レルヴィンとルァクルはしばしりりについて匂いなどを嗅いでいたがすぐにやめる。

「私と似た匂いだ」

ルァクルがそう言ったのに対して、レルヴィンは判然としない素振り。
それを見ていたゴルダはレルヴィンに何かを命令。
するとレルヴィンはりりを咥えたかと思えば自分の背に乗せる。
超大型犬かそれ以上の大きさのあるレルヴィンならば、りり程度の大きさなら背に軽々と乗せられるのだ。

「大丈夫だ、そのまま乗ってろ」

状況を把握していないりりにゴルダはそう告げ、
レルヴィンの横へと立つ。

「ちょっとごわごわだけどもふもふ」

首の辺りをもふもふしてくるりりにレルヴィンはやれやれと言いたげな顔をする。

「やはりお前は懐かれやすいな」

ルァクルの一言にレルヴィンはなぜか唸ったがそれも一瞬。
すぐにスイッチを切り替えてりりを背に乗せたまま森の方へ。

「好きにさせとけ」

いいのかという目線を投げかけるルァクルにゴルダはレルヴィンなら問題ないと言い、
1人でバイオハザード7をやっているるるのところへ。
ルァクルはレルヴィンの後を追った。

「やはりか」

家の中へと戻ると、るるがミリシェンスに泣きついていたので思った通りだと呟くゴルダ。
ミリシェンスに渋い顔で見られたがゴルダは気にすることなくゲームを片付ける。

「デッドスペースやアウトラスト2じゃなくて幸いだったな」

「ホラーゲームは片付けなさい」

ミリシェンスに言われ、ゴルダはりりとるるがやるとまずいことになるゲームを片付けてるるに視線を移す。

一晩経ってそこまで警戒されることはなくなったのだが、
どこかしら気を許せない雰囲気をるるは醸し出している。
なお、これも狼の気質かとゴルダは微塵にも気にしてはいないのだが。

「そういえば、りりとるるの服直して。レルヴィンはまだ戻ってこないでしょうし」

洗濯し終えて乾いたりりとるるの服をミリシェンスに突き出され、
ゴルダは頭を掻きながらそれを受け取ってソファに座るとヘフィアと共用の裁縫道具を出して、
昨日例の輩にやられたと思わしきほつれや破けを直しだす。

「なにこれ?」

るるが裁縫道具の中に入っていた白い布切れを出して聞く。
それにゴルダは

「万能補修布だ。縫い付けてもつぎはぎしているようには見えなくなる」

万能補修布だと答えてるるからその布を取ると、
適度な大きさに切ってりりの服の背のナイフか何かで切り裂かれた箇所に縫い付けて補修。

「りりはよく傷を負わなかったな。切り裂かれた状態から明らかな殺意を感じる」

その一言にるるがドキッとしてミリシェンスの手を握る。

「あなたも狙われてる身なんだから用心しないと。りりやるるもまた狙われるかもしれない」

淡々とるるに分からないよう、幻獣語で言うミリシェンスにゴルダはそうだなと同じく幻獣語で返す。

「るるはお前には完全に気を許しているようだが」

「さあ?」

ゴルダのるるがミリシェンスに気を許しているという一言に対し、
ミリシェンスはすっとぼけたような返事をする。

手を握ったりなどといったミリシェンスへの仕草を見る限りでは、
るるはミリシェンスに気を許しているようにも見えるが真相は不明。
一方りりはゴルダにもミリシェンスにも気を許しているようだが。

「それはともかく、りりのはこれでいい」

補修し終えたりりの服を横へ置き、るるの服の補修に取り掛かろうとした瞬間。
るるがゴルダの針を持つ手を握って

「私自分でやる」

と言い出したので教えるべきか?と、
ミリシェンスを見ると教えるべきと言わんばかりにニコッとする。

「そうか、ならば教えるとしよう」

ミリシェンスの反応をみたゴルダはるるに糸の通し方から教え始めた。

「なぜにこんなところへ?」

「ここなら静かに過ごせる」

一方レルヴィンの背に乗って森の中へやって来たりりは、背から降りて2人の周辺を散策。
レルヴィンとルァクルが何かを話しているのだが、
りりには全く何を言っているかが分からずじまい。

「戻るか?」

「もう少し居よう」

ちなみにルァクルだけはレルヴィンの言っていることをほぼ完全に理解できるようで、
こうして会話をすることも可能。

「しかしゴルダはなんと言うか、こう言うのを連れて来る能力でもあるのか?」

「かもしれん」

ゴルダはこういう存在を連れて来る能力でもあるのかと話していると、
りりがルァクルを抱き上げようとしたものの重すぎて断念。

「無理はするものじゃないぞ」

理解できるかどうかを度外視して言ったレルヴィンにりりは

「じゃあゴルダは無理してないの?」

ゴルダはどうなのかと返してきた。
どうやらレルヴィンの言っていることを理解しているらしい。

「あいつは異常だ。無理をするの定義が違う」

レルヴィンの一言にりりはぽかんとして2人を見やる。
どうやら何と言ってるかは理解できるが、
言ってる内容までは理解できてないようだ。

「子供に無茶振りしすぎだお前は。弱きものに配慮するお前でもそこまでは頭が回らんか」

ルァクルの辛辣な一言にレルヴィンはぐぬぬと言わんばかりに唸る。
それを聞いていたりりは喧嘩はダメだよと2人を制するも、
レルヴィンとルァクルは何事もなかったかのようにりりに振る舞う。

「変なの、それより戻ろうよ」

りりに言われてルァクルとレルヴィンは顔を見合わせて何かを同意するかのように互いに頷くと

「戻ろう」

レルヴィンはりりを咥えて背に乗せルァクルと共に家へ引き返す。

その頃家ではるるとゴルダが服の補修をしていた。
なおミリシェンスは食器を洗ったり洗濯機を回したりして、一切手を貸す様子は見受けられない。

「るるは手先が器用な方か?初めてにしては縫い方が様になっている」

例の布と魔力の糸で自分の服を補修していたるるに、
ゴルダは縫い上がりを見て手先は器用な方かと聞く。

「分かんない」

るるの一言にゴルダは頭を掻きながらやはり信用されてないかと思う。
クェムリーヴェスが干渉してくるまでもなく、
るるからわずかな拒絶の意を感じたからだ。
素直ではないと分析はしていたのだが、
ここまでされるとりりとは付き合い方を変えるべきかとまで思い始めた。

「だって器用かどうかなんて、今まで気にしなかったもん」

るるが付け加えるように言った一言にそうかとしかゴルダは返せず、
クェムリーヴェスからは

「相変わらず乙女心を掴むのが下手なものだ」

などと称されてしまう。

「開けて」

気付けばりりが戻ってきていたので、
ゴルダはりりを家の中へ入れて裁縫を続けていたるるの手を一旦止めてシアのところへと向かう準備をする。

「行くぞ、お前らの今後を決める上で話さねばならん相手に会いに」

そう言うや、りりとるるを連れ座標指定テレポートでセイグリッドへ向かうゴルダ。

「いらっしゃい」

ゴルダがやって来たのは、シアの居る塔。
高度が高いために寒いのだが、なぜか空気が薄いと感じることはない。
そしてそこに待っていたのはメルムーア。
シアと似た白い有毛竜だが角ではなく耳があり、目の色もゴルダと瓜二つ。
目の前に唐突に現れた大きな存在にりりとるるはぽかんとしていたが、
自分らを襲うような存在ではないことだけは把握している様子。

「大きいもふもふ……」

るるの一言にメルムーアは手招きをして

「触ってみる?遠慮なんていらないわ」

触ってみないかと聞く。
るるは何の警戒心持たずにメルムーアに近づくと前足を触りだす。
ゴルダと比べ一切警戒心を持たないのは、
メルムーアの聖属性と言う面もあるだろうが、
それ以上に癒しの神で全てを受け入れるスタンスであることの方が大きいだろう。

「シアは?」

そんなるるを見てかすかに鼻で笑いながらシアはどこに居るとゴルダは聞く。
メルムーアは一瞬言わなくても分かるでしょ?と言いたげな顔をしてから

「応接室、2人の身分証作って待ってるわよ」

シアがりりとるるの身分証を作って待っている。
これはどういうことかと言うと、ゴルダは幻想獣医や何でも屋以外に異界から迷い込んだものを保護した上でシアやメルムーアに報告。
その後元の世界へ帰すまでの間面倒を見たりするという仕事も請け負っている。

なおこの仕事をしているものは、
ゴルダ以外にも多数居るがゴルダは会ったことがない。
そして、メルムーアが2人を帰す術が今のところないと言っていたあたり、身分証を用意しているのはそう言うことだろう。

「りり、るる行くぞ。メルムーアも」

そう言ってゴルダはシアの居る応接室へと向かう。

「法があるとはいえ、こんな簡単にセイグリッド国籍の身分証をポンポン発行していいのかと俺は疑問になることがある」

「いいのよ、アルカトラスの許可もあるから」

念写で作成されたと思わしきりりとるるの顔写真が貼られた、
パスポートとはまた別のセイグリッド国籍であることを示すゴルダと同じアルカトラス姓の身分証を見ながら、
応接室へやって来たゴルダは呟くがシアはアルカトラスも許可してるから問題ないと返す。
その一方でるるはメルムーアを、りりはシアをもふもふしていたがゴルダはさせたいようにさせて話を続ける。

「それで昨日の話だけど、どうやってもりりとるるの持つ波形と部分一致する世界すらも引っかからないのよ。1000万に1の割合でしか起こり得ない事象だから暗中模索」

自分の前足に頬ずりするりりをよそに、
シアはゴルダにりりとるるをすぐに元の世界へ帰せない理由を説明。
本来そのものが持つ出身世界の波形は、部分的にでもどこかの世界と必ず一致するもの。
だが今回のケースのように部分一致でも全く引っかからない場合もあるのだ。
こうなると世界の検索に通常の倍以上の時間がかかり、いつ一致する世界が出てくるかも不明。

「厄介だな、しかしりりとるるは俺と離れる気はないようだが」

「絶対ゴルダと暮らすのー」

一通り話を終えて厄介だなと言ったゴルダにりりは、
一緒に暮らすと考えを曲げる気は無いという意思表示をした。
その後ろでは黙ってメルムーアをもふもふしていたるるも頷いていたがゴルダは気付いてない。

「しかしまあ、よく念写でここまでできるな」

りりとるるの身分証を手に取り、貼られている顔写真を見たゴルダの一言にシアは

「難易度低いのはそんなに多くないわ」

簡単な相手は少ないことを告げる。
それもそうだろうとゴルダは2人の身分証をしまってソファに座ると同時に、
カーバンクルの姿に変身して腕組みの状態で片目だけを開けたまま黙りこくる。

それを見たるるが黙りこくるゴルダに近寄り、その頰を左右へと引っ張ってみたが反応がない。

「あれ?」

今度は面白半分で嚙みつこうとしたが、噛みつく寸前でゴルダの片手に押さえつけられて

「さすがにそれは、いかん。いいな?」

やめろと諭された。
るるはそれにしょぼくれたかのような顔をしてまたメルムーアをもふもふしだす。

「というわけで、よろしくね」

「出るもん出なかったら流石の俺でも渋るぞ」

頼んだわと言ったシアに対してゴルダが返した一言を聞いて、
メルムーアとシアはあらあらと同時に言い放った。

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